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4章 ファイナルライブ
230話 七不思議
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美術室は美術準備室を挟んだ隣の教室。
大きな木のテーブルとパイプ椅子、
生徒の席と向かい合わせになっている。
テーブルにはなにもなく隣の
準備室に向かう。
準備室には美術部員が描いた絵、
絵画資料、使用済みの何枚も
重ねられたパレットなどが所狭しと
並んでいる。
テーブルの上に体育館、というメモが。
スマホのライトがあるとはいえ夜の学校は出そうで怖い。
(むしろ美術室でこそ何かありそう
だけど)
体育館は東校舎の渡り廊下を渡った
先にある。
美術室を出て、階段を降りる。
僕が先頭で降りていると
踊り場にある大きな鏡が目に入る。
「ねぇ、ここに鏡あったっけ?」
「夏休みの間に入ったんじゃない?」
蓮たちは僕を追い越して降りていく。
鏡に触れるくらい手を伸ばして
鏡の中の自分を見つめる。
首を少し傾げて
(微笑んでいる?僕は微笑んでいるの?)
心のうちを悟ったように鏡の僕は
舌を出す。
(っ!?)
怖くなって階段を駆け降りる。
鏡に写っている僕が手を振っていた。
焦った僕は階段を最後の一段を踏み外す
「いっ、」
その場に座り込んだ。
足を捻ったが歩けないことはない。
「大丈夫?」
「うん、平気・・・え、」
普通に返してしまったが、ここに僕以外
誰もいない。それに声の主は幼い
子供みたい。
クスクスと複数の男女の幼い笑い声。
上から聞こえる気がして見上げると
少し笑い声が大きくなる。
「なにが起きてるの?」
立ち上がろうとすると、目の端に
絆創膏が映る。
(切り傷とかじゃないから使えないけど)
「・・・ありがとう」
体育館に向かうと類たちが待っていた。
「遅いよ、雪希」
「ごめん、類」
蓮は誰が見てもわかるほど怯えていた。
上履きと体育館シューズを履き替える
棚の上に音楽室と書かれたメモ。
メモは見つけたし体育館をすぐに出ようと思ったが中からボールがバウンドする音が聞こえる
体育館の引き戸を少し開けると
バスケットボールがバウンドしていた。
空中で止まったり、また動き出したり
忙しない。まるで
「本当にゲームをしてるみたい」
舞に喉まで出掛かった言葉を取られた。
ゴールに入ったボールは空中で
止まっている。次の瞬間、僕たちに
すごい速さで飛んできた。
咄嗟に僕は類の腕を、舞は蓮の腕を
引っ張った。
ドォン!と鼓膜を破るくらいの音。
引き戸はボールの形に一部出っ張った。
のめり込んだボールは落ちて、何度か
弾んで止まった。
「ありがとう雪希」
「助かったよ、舞」
2階の渡り廊下、3階へ続く奥の階段。
階段を上っているともうピアノの音が
聞こえてくる。
中を覗くと鍵盤だけが動いていた。
「これ、あれでしょ?!
自動ピアノってやつ!」
「誰がこんな手の込んだ仕掛けを
するの!」
舞と蓮の掛け合いを若干うるさく
思っていると壁にかかっている肖像画の目が一瞬光った気がした。
静かに、という圧を案じる。
音楽室を離れて反対側にある、
生徒会室へ駆け込む。
「い、今は緊急事態だからいいでしょ。それより思い出したことがあるんだ。
俺が1年の時に聞いたこの学校の
七不思議」
蓮は今までにないくらい真剣だった。
「先輩が言ってたんだ。
一 本当は12段の階段が一段増える
二 理科室の模型が動く
三 鏡の自分が笑う
四 体育館でボールの音が響く
五 音楽室のピアノ
六 子供の笑い声
七 トイレの花子さん」
指を立てながら説明していく。
「階段、理科室、鏡、ボール、ピアノ、笑い声、花子さん。
鏡と笑い声、花子さんはまだ
経験してないよね」
「鏡と笑い声なら僕が」
類の言葉に続くと僕たちは舞を見た
「・・・え、」
大きな木のテーブルとパイプ椅子、
生徒の席と向かい合わせになっている。
テーブルにはなにもなく隣の
準備室に向かう。
準備室には美術部員が描いた絵、
絵画資料、使用済みの何枚も
重ねられたパレットなどが所狭しと
並んでいる。
テーブルの上に体育館、というメモが。
スマホのライトがあるとはいえ夜の学校は出そうで怖い。
(むしろ美術室でこそ何かありそう
だけど)
体育館は東校舎の渡り廊下を渡った
先にある。
美術室を出て、階段を降りる。
僕が先頭で降りていると
踊り場にある大きな鏡が目に入る。
「ねぇ、ここに鏡あったっけ?」
「夏休みの間に入ったんじゃない?」
蓮たちは僕を追い越して降りていく。
鏡に触れるくらい手を伸ばして
鏡の中の自分を見つめる。
首を少し傾げて
(微笑んでいる?僕は微笑んでいるの?)
心のうちを悟ったように鏡の僕は
舌を出す。
(っ!?)
怖くなって階段を駆け降りる。
鏡に写っている僕が手を振っていた。
焦った僕は階段を最後の一段を踏み外す
「いっ、」
その場に座り込んだ。
足を捻ったが歩けないことはない。
「大丈夫?」
「うん、平気・・・え、」
普通に返してしまったが、ここに僕以外
誰もいない。それに声の主は幼い
子供みたい。
クスクスと複数の男女の幼い笑い声。
上から聞こえる気がして見上げると
少し笑い声が大きくなる。
「なにが起きてるの?」
立ち上がろうとすると、目の端に
絆創膏が映る。
(切り傷とかじゃないから使えないけど)
「・・・ありがとう」
体育館に向かうと類たちが待っていた。
「遅いよ、雪希」
「ごめん、類」
蓮は誰が見てもわかるほど怯えていた。
上履きと体育館シューズを履き替える
棚の上に音楽室と書かれたメモ。
メモは見つけたし体育館をすぐに出ようと思ったが中からボールがバウンドする音が聞こえる
体育館の引き戸を少し開けると
バスケットボールがバウンドしていた。
空中で止まったり、また動き出したり
忙しない。まるで
「本当にゲームをしてるみたい」
舞に喉まで出掛かった言葉を取られた。
ゴールに入ったボールは空中で
止まっている。次の瞬間、僕たちに
すごい速さで飛んできた。
咄嗟に僕は類の腕を、舞は蓮の腕を
引っ張った。
ドォン!と鼓膜を破るくらいの音。
引き戸はボールの形に一部出っ張った。
のめり込んだボールは落ちて、何度か
弾んで止まった。
「ありがとう雪希」
「助かったよ、舞」
2階の渡り廊下、3階へ続く奥の階段。
階段を上っているともうピアノの音が
聞こえてくる。
中を覗くと鍵盤だけが動いていた。
「これ、あれでしょ?!
自動ピアノってやつ!」
「誰がこんな手の込んだ仕掛けを
するの!」
舞と蓮の掛け合いを若干うるさく
思っていると壁にかかっている肖像画の目が一瞬光った気がした。
静かに、という圧を案じる。
音楽室を離れて反対側にある、
生徒会室へ駆け込む。
「い、今は緊急事態だからいいでしょ。それより思い出したことがあるんだ。
俺が1年の時に聞いたこの学校の
七不思議」
蓮は今までにないくらい真剣だった。
「先輩が言ってたんだ。
一 本当は12段の階段が一段増える
二 理科室の模型が動く
三 鏡の自分が笑う
四 体育館でボールの音が響く
五 音楽室のピアノ
六 子供の笑い声
七 トイレの花子さん」
指を立てながら説明していく。
「階段、理科室、鏡、ボール、ピアノ、笑い声、花子さん。
鏡と笑い声、花子さんはまだ
経験してないよね」
「鏡と笑い声なら僕が」
類の言葉に続くと僕たちは舞を見た
「・・・え、」
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