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4章 ファイナルライブ

228話 姉妹

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「今日から日記をつけようと思うの」
姉はそう言ってノートに名前を書いた。
「天宮美緒、なんで日比谷美緒
じゃないの?」

姉は結婚した。
つい先日のことだ。
「日比谷美緒はこれからたくさん使う
でしょ?でも天宮はもう使わない。
このノートでくらいは天宮でいたいの」
意味不明な言葉と突拍子もない行動は
今に始まったことじゃない。

お転婆という言葉は姉に相応しいくらい
昔から落ち着きがなかった。
そんな姉を私は好きだった。
姉という範疇を超えて。

姉が中学生の時に好きな人ができたと
聞けばその人にはもう彼女がいると
きいたと嘘をついて恋が実る前に
刈り取った。

県外の高校にはいって少し
したら芸能活動を始めたと聞いた。
アイドルという歌って踊るものだと
言う。
数年後、姉を含んだ5人チームの名前は
地元でも知らない人はいないくらい
有名になった。

ファンレター、贈り物
「見て、あきら、すごくない?」
送られた写真と電話口から聞こえる
姉の声に嫌気がさす。

他人からもらってなんで嬉しいの?
家族以外の贈り物とかいらないでしょ?
そんな言葉ばかりが頭を支配する。

姉が23の時、それぞれが見て目指しているものが違うということで解散した。
その直後に姉の結婚を知った。

今更だが、天宮は一帯の大地主。
古い式たりもありその一つが戦略結婚。
それに反いた姉は意見の戦略結婚
させたがる両親と大喧嘩の末、
勘当された。

相手は俳優で現場で何回か交流するうちに交際に発展、そして結婚。
解散、勘当してわずか1年。
「おめでとう、お姉ちゃん」
笑みを張り付けたが内心は相手が
憎かった。

私から姉を奪った義理の兄になる人が
大嫌いだ。
直後ということもあり、表向きでは
ああいうことにして本当の理由は
これなんじゃないかと世間は騒いだ。

その2年後に甥が産まれて、7年後に
姪が生まれた。
この際、甥はいい。でも姪の存在が
気に入らない。姉と義兄の血の
入った女の子。

1番近くにいる女は私だけでいいのに。
歪んでいると言われてもこれが
私の愛情だ。

姪が懐かずそれを私に相談してくれたら
好都合。そのまま甘い言葉を使って私に溺れてくれれば万々歳、と思っていた。


姪は姉を拒んだ。ここからが想定外。
姉の家に呼ばれて浮かれて行ってみれば
説教だった。
私がやったことがバレたから。
甥が付け口したのかと思ったが
すぐに姉から甥から聞いたわけじゃないと言われた。

考えれば私に預けてしばらく経ってからだと言われた。反論したがすべて正論で返される。

今までさせたことのないくらい怒られて
絶縁を言い渡された。
私はちょっと困ればいいと思って、
姉が出かけている間に引き出しに順番通りにしまってあったノートを適当に
とりクローゼットや、本棚隙間などに
バラバラに隠した。

1と2は持ち帰った。
凝縮された新婚生活の記録。
1番大切な部分がなくなって、
私に問い詰めると思う。

それでいい、もう一度姉の声を
聞くことができれば。
でも何ヶ月経っても電話はなく、
数年後に事故で死んだと知った。

父親と母親の耳にも入ったが
そうか、の一言で泣きもしなかった。
孫の存在も知らない。

葬儀には行かなかった。
行けば本当にいなくなったと認めざるを得ないから。
未だにノートは返せていない。
返すといっていいのかわからないけど。

先日数年ぶりに会った甥と姪。
姉から受け継いだはずの髪色は青色に
染まっていた。

姪は何も変わっていなかった。
でも成長するにつれどことなく姉に
似てきて面白くない。

ちょっと意地悪しただけで甥は怒り心頭で面白かった。
これが最後。これからは会いに行くことは無いと思う。






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