虹色の薔薇が咲く場所は

如月 りん

文字の大きさ
上 下
217 / 267
4章 ファイナルライブ

217話 雲泥の差

しおりを挟む
友達をやっていれば大体わかってしまう
「午後、暇?」
「ま、まぁ」
「じゃあ、遊ぼうよ」

紗南のキラキラとした目が思い浮かぶほど楽しそうな紗南。
一旦、切ってスタッフさんに聞くと
友達はモザイクかけるから大丈夫と
言われ、また電話をかけて
行き先を決める。

私は家に一度帰り、TVシャツ、
ハーフパンツ、通気性のいいレギンス、
をトートバックに入れて戻ってきた。

「雪希、私ちょっと友達と遊びに
行ってくるね」
寝室を開けると書き終えた手紙を封筒に入れていた。

「わかった。いってらっしゃい、
気をつけてね」
「うん」
近くにいたスタッフさんにも声をかけて
私は事務所を出る。

ー正午ー
待ち合わせ場所で紗南を待っている。
「ねぇ、あれってRainbow Roseの
舞じゃない?」
「ほんとだ、なにかの撮影?」
(紗南、早く来て)

こうジロジロ見られるのはいい気が
しないな。
「ごめーん、遅れた」
私の心情とは裏腹に元気な声で走って
くる紗南。

「それで今日は紗南のリクエストで
アスレチック場にしたけど、
なんでそこにしたの?」
「活動だけじゃ体力つかないかなって」
(私はそれに付き合わされるのか。
まぁいいけど。私も動きたかったし)

さっきより人が増えた気がする。
(なんで?)
「隣にいる子って本物かな」
「あの子?何かしてるの?」
「スミレ女子校で生まれたアイドル
グループ、フラワーの1人。
紗南ちゃんに似てるなって」

私は思わず紗南の両肩を掴んだ
「な、なに?」
「いや、そんなに有名なんだなって」
「頻繁にメディアにでてるあなた達に
比べたら雲泥の差だけどね」

「サイン欲しいな」
「握手してほしい」
など聞こえる。
(でもこれから遊びに行くんだよね)

紗南はニヤリとして
「オレンジ担当フラワー1の元気
キャラ!紗南です!」
伸ばした右手を左から右へ流し、
ウインクすると歓声と拍手が。

感極まって目を輝かせていたと思ったら
耳打ちされた 
「ほら、舞も」
「え、」
周りは期待しているような目。

「Rainbow Roseの赤紫担当、舞だよ。私のこと、覚えてくれたら嬉しいな。
君だけのアイドルになってみせるよ」
最初は元気に、次は少し照れるように、
最後はささやくように、を意識した。

紗南の時とは比べものにならないくらいの歓声と拍手。
「これが本物か」
と紗南は沈んでいた。

2人で握手していると長蛇のれ
「あの、・・まだ行かないんですか?」
「「あ・・・」」
カメラを回し続けるスタッフさんに
言われて気づく。


「いや、ダメじゃん。時間!」
「そうだ!すっかり忘れてた」
「舞が調子のるから!」
「やり始めたのは紗南じゃん!」
と冗談めかしたやり取りの後、
その場にいた皆さんに謝ってから
目的地に向かう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

「南風の頃に」~ノダケンとその仲間達~

kitamitio
青春
合格するはずのなかった札幌の超難関高に入学してしまった野球少年の野田賢治は、野球部員たちの執拗な勧誘を逃れ陸上部に入部する。北海道の海沿いの田舎町で育った彼は仲間たちの優秀さに引け目を感じる生活を送っていたが、長年続けて来た野球との違いに戸惑いながらも陸上競技にのめりこんでいく。「自主自律」を校訓とする私服の学校に敢えて詰襟の学生服を着ていくことで自分自身の存在を主張しようとしていた野田賢治。それでも新しい仲間が広がっていく中で少しずつ変わっていくものがあった。そして、隠していた野田賢治自身の過去について少しずつ知らされていく……。

ほつれ家族

陸沢宝史
青春
高校二年生の椎橋松貴はアルバイトをしていたその理由は姉の借金返済を手伝うためだった。ある日、松貴は同じ高校に通っている先輩の永松栗之と知り合い仲を深めていく。だが二人は家族関係で問題を抱えており、やがて問題は複雑化していく中自分の家族と向き合っていく。

無敵のイエスマン

春海
青春
主人公の赤崎智也は、イエスマンを貫いて人間関係を完璧に築き上げ、他生徒の誰からも敵視されることなく高校生活を送っていた。敵がいない、敵無し、つまり無敵のイエスマンだ。赤崎は小学生の頃に、いじめられていた初恋の女の子をかばったことで、代わりに自分がいじめられ、二度とあんな目に遭いたくないと思い、無敵のイエスマンという人格を作り上げた。しかし、赤崎は自分がかばった女の子と再会し、彼女は赤崎の人格を変えようとする。そして、赤崎と彼女の勝負が始まる。赤崎が無敵のイエスマンを続けられるか、彼女が無敵のイエスマンである赤崎を変えられるか。これは、無敵のイエスマンの悲哀と恋と救いの物語。

将棋部の眼鏡美少女を抱いた

junk
青春
将棋部の青春恋愛ストーリーです

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)

チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。 主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。 ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。 しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。 その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。 「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」 これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。

燦歌を乗せて

河島アドミ
青春
「燦歌彩月第六作――」その先の言葉は夜に消える。 久慈家の名家である天才画家・久慈色助は大学にも通わず怠惰な毎日をダラダラと過ごす。ある日、久慈家を勘当されホームレス生活がスタートすると、心を奪われる被写体・田中ゆかりに出会う。 第六作を描く。そう心に誓った色助は、己の未熟とホームレス生活を満喫しながら作品へ向き合っていく。

隣の優等生は、デブ活に命を捧げたいっ

椎名 富比路
青春
女子高生の尾村いすゞは、実家が大衆食堂をやっている。 クラスの隣の席の優等生細江《ほそえ》 桃亜《ももあ》が、「デブ活がしたい」と言ってきた。 桃亜は学生の身でありながら、アプリ制作会社で就職前提のバイトをしている。 だが、連日の学業と激務によって、常に腹を減らしていた。 料理の腕を磨くため、いすゞは桃亜に協力をする。

処理中です...