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4章 ファイナルライブ

125話 抜け出して

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「やっぱり夜でも外は蒸し暑いね」 
「もうすぐ8月だからね。
これからもっと暑くなるんじゃない?」 
街頭や建物の明かりで周りは明るく
誰もいない。

「少しくらい風が吹いてくれても
いいのに」
口を尖らせる雪希の頬から一滴
汗が流れた。
「多分今は風が吹いても生ぬるいと
思うよ」

「雪希は最近どんな感じ?
辺里くんたちと会ってるの?」
「2人とも忙しいみたいで
なかなか・・・。でもたまにグループ
チャットで話してるよ。
お互いの近況とか」
「お互いの、・・・あれ?」
(今まで、なんとも思わなかったけど
これってまずい?)

「どうしたの?舞」
「辺里くんたちだけだなって思って。
うちに来たの」
「あー、そういえばそうだね
今思えば軽率だったよね」
「うん。あの2人が黙ってくれてるから普通に生活できてるけどカミングアウト
されてたらどうなってたかなって」
「ただじゃ済まないよね」

(普通に高校生男女4人で同じ屋根の下に
住むって世間の反応は良くないに
決まってるのに。
なにもないけど、いや、何かあったら
大問題)

チラッと雪希を見る。
(雪希はあれ以来親の話を聞かないけど
大丈夫なのかな。でもプライベートで
そのうえ
デリケートなことだし。こっちから
聞くのも)

その時、強い風が吹いて私と雪希の髪は
なびいた。
室内の明かりが照明のようで白い髪は
煌めいた。
「きれい」
独り言はバッチリ聞こえていたようで
「え?」
と聞き返された。

「雪希の髪、きれいだなって。
さらさらしてて、でも柔らかくて。
ちょっと触るね」
口先だけの断りを入れて髪を一束すくう
「舞?」
「いいな。私もこんなさらさら
だったらな」

羨ましいな、なんて思っていると
触っている髪の毛を手のひらから
滑り落とし、逆に私の毛先を触る。

「舞の髪、僕は好きだけどな。
きれいな黒髪で真っ直ぐで。」
柔らかな笑顔で手を離した。

「ありがとう、雪希」
(でもやっぱり羨ましいな)
なんて考えているとくしゃみ。
咄嗟に咳払いをして誤魔化す。
「そろそろ中に入ろうか」
笑って促す。
「そうだね」

室内は少し暑かった。
(温度差で風邪引きそう)
雪希は自分の両手を差し出して
「舞、ちょっと両手出してくれる?」
と促した。

手を出すと、雪希の両手に包まれた。
「なにしてるの?」
「冷えは手足からくるっていうでしょ。だからだよ」
私の冷たい手の甲は雪希の手のひらで
冷たさはなくなった。
「ありがとう、雪希」

両手を解いて今度は指先を握る。
「手で特に冷えを感じやすい場所は
指先だからね。夏だからって気を
抜いたらダメだよ」
(前も思ったけど男の子なんだよね。
身長も出会った頃は私とあまり変わら
なかったのに今は頭一つ分高いな)

感傷に浸っていると
「舞、もう大丈夫?」
と顔を覗き込まれる。
「あ、うん。ありがとう」
(なんか急に意識したら恥ずかしく
なってきたな)

握っていた手を離して後をついて
部屋に行く。
先に雪希が寝室に入る。
扉を少し隙間を開けて同時に
「「おやすみ」」
と言い合い布団に入る
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