虹色の薔薇が咲く場所は

如月 りん

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3章 サードライブ

194話 バレンタイン *嘔吐あり

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「甘い、流石の僕でもちょっと 
キツイかな」
「でも全部既製品でよかったね。
8割は高級ぽいけど」
「残りの2割は義理で
年中買える物だから後回しにしよう。
計算して食べないと絶対体調崩す。」

お正月が終わったら次のイベントは
バレンタイン。
去年ももらったけど今年は去年に
比べて多い。
(好きになってくれた人が多いっていうのは嬉しいけど)

「でも一つ一つ怯えなくていいのは
嬉しいね」
雪希の言葉に1番反応したのは類。
類は1回えずいただけで平気らしい。
次に蓮。側からみてわかるほど
肩が跳ねた。

(ここまで動揺する類、初めてかも。
でも流石にあれはね)

~去年のバレンタイン~
大量に貰ったチョコレート。
全て廃棄はもったいないから、いくつか選別して食べるようにしている。

選別した類宛の生チョコを食べていた
本人は急に眉間に皺を寄せた。
「どうしたの?類」
早く異変に気づいたのは雪希。

「いや、なんかこのチョコレート
少ししょっぱい気がして」
「スイカに塩をかけるような
ものじゃない?」
蓮は呑気ドーナツを食べながら反応する

「それに、なんか匂いも独特というか」
匂いを嗅ぐ類、
「お菓子ってこんな匂いする?」

生チョコの入った箱を私に近づけ
恐る恐る嗅ぐとたしかにココアパウダーの匂いの他に変な匂いがする。
「確かに、なにって聞かれると
わからないけど」

「俺も一個もらい、」
「あ、」
横から出た蓮の手。
類は咎めることなく箱に蓋をした。

「ん、・・・ん?」
咀嚼していた蓮の顔も眉を顰めた。
口に手を入れて
「ちょっと汚いよ」
雪希の困った声はすぐに真顔になる。

指先に唾液と混ざったチョコレート、
そして細い何かが口の中に繋がっている
「え、」
「それってまさか」
瞬時に理解した類はトイレに
蓮はキッチンの流しに走る。

私はすぐに生チョコを
処分して蓮の様子を見る。

「蓮」
蓮は何度もうがいして嘔吐反射
させている。
類の方は雪希が行き雪希の心配する声と
苦しそうな嗚咽が聞こえる。
多分、無理矢理吐こうとしてるんだと
思う。

背中を強めにさすると胃液とチョコ、
消化中のドーナツが出てきた。
20分ほどして落ち着いたらしいが
2人の顔は真っ青を通り越して白かった

それからバレンタインは既製品にだけ、手作りは一切禁止と公式で発表された。もちろん異物混入は避けて。
~バレンタイン回想終了~

既製品でも留めてあるテープとか、
フィルムの切り口など細かいところまで
入念にチェックして私たちの手に渡る。それでも自分で確認は欠かせない。
しないと気が済まない。

「あの時、ホワイトデーの場所を
通るの避けてたよね。2人して」
「当たり前、あんな思いして普通にする方がおかしい」

2人は高そうなチョコレート、一粒ずつ
色々な角度で見て、匂いを確認してから
少量噛み、それから残りを食べるを
繰り返す。

「それでも何で2人してチョコレート
拒否しないの?」
お菓子のフィルムを剥がしながら
2人に聞く。

「その一つでバレンタイン禁止って
いうのは純粋な子の気持ちも、
あの一件と同じ扱いにする気がして」
答えた類に蓮も頷く。

(2人して変なところで優しいよね)
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