上 下
193 / 266
3章 サードライブ

193話 元日

しおりを挟む
ー元日ー
「今年も不束なリーダーを
よろしくお願いします」
「「「お願いします」」」

類と舞が作ったお雑煮、
スーパーで買ったお節料理を小さな
重箱に俺と雪希で詰めて
こたつでのんびり食べている。

「舞って翔さんと連絡取ってるの?」
「取ってるというか、一方的かな。
起きたら翔からハッピーニューイヤーのスタンプとあけおめって、」
「軽いね」
伊達巻きを食む舞に聞いたのは雪希。
舞は特に気にする様子なく答える。

「思ったよりスーパー混んでたね」
「お節コーナーは空いてたけどね」
「元日の午前中にお節を買う人って
そうそういないからね」
(元日って言ってももうお昼だけどね)
時計の針は12時30分を指している。

「3人は他からメールきた?」
「あの、先輩たちからと友達、
鈴川さんと戸田くんかな」
「宮本さんと辺里くん」
「俺はクラスのグループかな」
「俺も」
そんな感じ、と答えようとしたら
スマホが鳴る

「え、蓮。私たち以外に電話してくれる人いるの?」
「流石に失礼すぎじゃない?舞」
相手は茉里から

ごめんと一言謝り、部屋で電話に出る
「あ、お兄ちゃん?
今大丈夫?」
「うん、
どうしたの?」
「特に理由は、あ、
あけましておめでとう」
「おめでとう」
なんかどことなく歯切れが悪く感じる
(電話だから?)

「カウントダウンライブ、
すごかったね。会場の熱気が
すごかった」
「え、見た?
カウントダウンライブ。生で?」
「うん、お兄ちゃん輝いてた」
「そ、そっか」
身内に見られるってすごい恥ずかしいな
だから言わなかったのかもしれない。

「たまきさんは?」
恐る恐る聞くと息を飲むのが聞こえた。
(歯切れが悪いのってたまきさん関連?)
「カウントダウンライブのあとね、
お兄ちゃんのグッズをすごい
買ってたんだ」
「へ?」
予想してなかった答えに間抜けな
声が出る。

「帰りの車の中で、
お兄ちゃんすごかったね、別人みたい
ってテンション上がってたり、
でもこれからも知らない場所で根を生やすのかって、しみじみしてたり
とにかく情緒不安定だった」
「そ、そっか」
(ダメだ、さっきからそっかしか
出てこない)

「お兄ちゃん、あのね今日、朝方に
目が覚めてたまきさんの部屋の前を通るとたまきさんも起きてて、
聞こえちゃったんだ。私が卒業したら あの家に帰ろうかなって言ってるの」
「・・・それって独り言?」
「お父さんもいたと思う」
茉里の声は弱々しい。

「あの人はなんて?」
「どっちでもいいって。
私が高校に電車乗り換えなしで通えるからいいんじゃないかって」
「どの道、俺は基本この家だしな。
茉里は、どう思ってるの?」
「私は、どっちでもいい。
でもそれだと1人暮らしをどうしようかなって。電車で通える距離なのに
わざわざ一人暮らしで余計な出費を
出すのはどうなんだろうって」
「やっぱり、窮屈?」

茉里は少し悩んで
「どうなんだろう、でもそう思ってる
時点で窮屈に思ってるのかなって。
ご、ごめんね、年明けすぐ、
しかも大きなライブ後にこんな暗い話」
「別に、全然気にしてないよ」
「もう少し、考えてみるよ」
「うん、なにも力になれなくてごめん」
「お兄ちゃんのせいじゃないよ。
私が優柔不断なだけ。じゃあね。
体調には気をつけてよ」
と電話は切れた。

(妹ってやっぱりかわいいな)
再びこたつに入るとお餅はすっかり
固くなっていた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ときめき部~無気力な日々が変るまで~

オリオン
青春
心の底から喜んだことも、悲しんだこともない無気力な青年 港空 陽志(こうく ようし)、そんな彼は高校2年生の時、ビラを配っている 先輩達に捕まり、断ることも出来ずにときめき部という部活に入る事になった。 その部活は少数の部活で、僅か3人しかいない部活動だった。 部活の内容も良く分からず、全員でときめきを探すなどと言う そんな理解不能の部活、だが、入ってしまった以上は仕方ない 彼はこの部活に入る事となった。 この選択が自分の世界を大きく変えるとも知らずに。

【完結】Nurture ずっと二人で ~ サッカー硬派男子 × おっとり地味子のゆっくり育むピュア恋~

丹斗大巴
青春
 硬派なサッカー男子 × おっとり地味子がゆっくりと愛を育むピュアラブストーリー  地味なまこは、ひそかにサッカー部を応援している。ある日学校で乱闘騒ぎが! サッカー部の硬派な人気者新田(あらた)にボールをぶつけられ、気を失ってしまう。その日から、まこの日常が変わりだして……。 ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* サッカー部の硬派男子 未だ女性に興味なしの 新田英治 (やばい……。 なんかまだいい匂いが残ってる気がする……) × おっとり地味子  密かにサッカー部を応援している 御木野まこ (どうしよう……。 逃げたいような、でも聞きたい……) ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴*   便利な「しおり」機能をご利用いただくと読みやすくて便利です。さらに「お気に入り」登録して頂くと、最新更新のお知らせが届きますので、こちらもご活用ください。

神木さんちのお兄ちゃん!

雪桜
キャラ文芸
✨ キャラ文芸ランキング週間・月間1位&累計250万pt突破、ありがとうございます! 神木家の双子の姉弟・華と蓮には、女性に間違えられるくらい美しい容姿を持つ、それはそれは『美人な兄』がいた。 その美貌と笑顔で、常に人を魅了しまくるお兄ちゃんは、老若男女問わずモッテモテ! だけど、そんな兄には重大な欠点があった。 これは、神木家の三兄妹弟が繰り広げる、笑いあり涙ありな日常系青春グラフィティ。 天使?悪魔? それとも、ただのお兄ちゃん? あなたはうちの兄のこと、どう思いますか?

バス・ドライバー日記

深町珠
青春
愛紗は、18歳で故郷を離れ、バスガイドとして働いていたが 年々不足する路線バスドライバーとして乗務する事を志願。 鉄道運転士への憧れが、どこかにあったのかもしれない。 しかし、過酷な任務。女子であるが故の危険性。会社は 長閑な田舎への転属が適当ではないかと判断する。 複雑な感情を抱き、彼女は一週間の休暇を申し出、帰郷する。 友人達と共に旅しながら、少しづつ、気持ちを開放していく愛紗。 様々な出会いがあり、別れを経験して・・・。 現役路線バスドライバーであった方の手記から、現実を背景に描く セミドキュメンタリードラマ。 日生愛紗(21):バスガイド=>ドライバーへ転身中 藤野友里恵(20):同僚ガイド 青島由香(20):同僚ガイド。友里恵の親友。 石川菜由(21):愛紗の親友。寿退社=>主婦 日光真由美(19):人吉車掌区乗務員。車掌補。 荻恵:21歳。熊本在住。国鉄熊本車掌区、車掌。 坂倉真由美:19歳。熊本在住。国鉄熊本車掌区、車掌補。 三芳らら:15歳。立野在住。熊本高校の学生、猫が好き。 鈴木朋恵:19歳。熊本在住。国鉄熊本車掌区、車掌補。 板倉裕子:20歳。熊本在住。国鉄熊本車掌区、車掌。 日高パトリシアかずみ:18歳。大分在住。国鉄大分車掌区、客室乗務員。 坂倉奈緒美:16歳。熊本在住。熊本高校の学生、三芳ららの友達・坂倉真由美の妹。 橋本理沙:25歳。大分在住。国鉄大分機関区、機関士。 三井洋子:21歳。大分在住。国鉄大分車掌区。車掌。 松井文子:18歳。大分在住。国鉄大分車掌区。客室乗務員。

彼女たちをトップアイドルに育てるのが俺が生まれた大きな理由の一つだったりするわけであり。

てたまろ
キャラ文芸
主人公、雨木川還流(あまぎかわかえる)の前に現れた宝城キルト、彼の持っていた見たことの無い不思議な人形が還流(かえる)の夢の中に出て来て運命を感じる。 その人形をきっかけに還流とキルトは女の子を集めネオ・アイドルという新しいジャンルに挑戦するが様々な妨害により事務所が倒産寸前の危機に追い込まれてしまう。 デビュー曲、セカンドシングルと惨敗で後がない、サードシングルで起死回生を図る。 ネオ・アイドルグループ『プリミアムフォー』個性豊かな4人の女の子たちの成長物語でもある。 王城臣(おうぎおみ) 小学5年生、小1から事務所に入所、テレビの教育バラエティー番組に出演していた、明るいキャラで人気もあり多くの支持を集めている。主人公とは兄妹の様な関係。 許斐心(このみこころ) 高校1年生、中三の時ひょんなことから舞台に立つことになりそのまま事務所へ入所、本人はアイドル志望ではなく女優として活動していきたい。 須賀彗夏(すがすいか) 高校2年生、プリミアムフォーのリーダー、積極的で行動力がありメンバーをまとめる力がある、ダンサー志望でストリートダンスをしていた所スカウトされる。 出雲伊莉愛(いずもいりあ) 高校2年生、彗夏とは中学からの付き合い、身長170、5センチ、高身長から見せるダンスはダイナミックで迫力があり定評がある。アニメや漫画が好きでオタク、妄想癖あり。 多くの涙や恋愛模様その他夢や目標に向かって進んでいく、そんな物語です。

転校生とフラグ察知鈍感男

加藤やま
青春
まず朝、転校生と曲がり角でぶつかります。その転校生と同じクラスになります。恋に落ちます。 予想外の展開も裏切りもハラハラもありませんが、ほっと安心しながら読める作品です。 次の展開を予想しながら、その予想が当たるのをお楽しみください。

夏の終わりに目覚めたら

茉白いと
青春
高校二年の萩野遼希は、同じ園芸部に所属する柊汐音から意味ありげな発言をされたことがきっかけで交流するようになっていた。しかしとあることから、汐音が隠していた「秘密」を知ることになり──。

義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。 「再婚するから」 そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。 次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。 それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。 ※他サイトにも掲載しております

処理中です...