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3章 サードライブ
191話 堪忍袋
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「雪希、」
「ふざけないで。
そんなくだらない理由で
舞の気持ちを軽んじたの?
曲に込めた想いを知らないで
盗作して、本当の作者に向けられるはずの感想をもらって優越感に浸ってそれで満足できるの?」
赤くなった頬を押させて嗤った。
「気持ち?想い?
そんなの知りませんよ。
先に世に出しちゃえば勝ちなんです。
優越感なんていりません。
舞さん」
雪希に向かっていた顔は雪希をかわして
私と目があった。
「傷つきました?悔しかったですか?」
その問いに対して私はただ睨むだけ。
なのに彼女は分かったように
「そうですか。あなたが絶望を
感じてくれたのならやった甲斐が
ありました」
穏やかに発せられて言葉。
(ただの一曲、
満点の星空でも見えないほど小さな
星のような曲。
さいごまで聞いてもらえても
感動してくれるかはわからない。
気に入ってくれるかわからない。
そもそも聞いてくれるかもわからない。
またつくればいい、でも)
「っ、」
あなたはなにも分かってない!
その後に矢継ぎ早に柄にもなく
捲し立てようとした。
でもそれはできなかった。
雪希の振り上げた拳が見えたから。
「雪希!」
類と蓮がすぐに雪希を抑えたが
頭に血が上ってるのか暴れている。
(こんなに荒れてる雪希はじめて)
「すみませんでした」
しばらくして冷静になった雪希は
再び私の隣に座る。
「ほんとうですよ。嫁入り前の娘の顔を叩くなんて、非常識にも程があります」
落ち着いた声に無性に腹が立つ。
(なんで100歩譲って許してあげるみたいな感じで言ってるの?元はと言えば
あなた達が原因なんだけど)
「とりあえず雪希くんは3日間の仕事を
白紙にして学校以外は
外に出ないように。
気持ちはよくわかるけど手が出るのは
ダメだからね。
この事は千鶴に頼んでおくよ」
「はい、迷惑をかけて
すみませんでした」
俯いた雪希は本当に反省しているように見える。
「それと、今回の問題はみんな口外
しないでね。もちろんネットにも。
舞ちゃん、作詞についてはこっちから
SNSにやんわりと伝えるからそれまで
待ってて欲しい」
「はい、わかりました」
お誕生日席、
と呼ばれる場所にいる七瀬さん。
私には笑顔だが美冬ちゃんに向ける笑顔は冷たい。
「本格的に彼女、いや彼女達の処分に
ついて考えないとね。
もちろん、今回のことは口外しないようにとは言ったけど親御さんには
伝えさせてもらうからね」
親御さん、そう言った瞬間、
余裕をかましてた彼らは慌て出す。
「親ってそんな」
「この前以上に怒られる」
「当たり前だよ。みんな未成年だからね。何かあったか伝える義務がある。
でも、窃盗の件は舞ちゃんに委ねるよ。警察に伝えるか、ここだけで済ますか」
「七瀬さん、警察には伝えない方向
でお願いします。」
少し彼らの顔色が明るくなったが
釘を刺す。
「分かってますか?
同情なんて一欠片もありませんよ。
少なからず私たちの仕事に影響が
出そうだからです。
私が一般人だったら容赦なく警察に
行くと思います。」
その後はすぐに解散となり、
私達は家でのんびりくつろいでいた。
部屋に入ろうとした雪希を引き止める。
「雪希、」
「ん?」
「ありがとう、怒ってくれて。
でもごめんね、それで雪希が、」
「別にいいよ、気にしないで」
言い終わる前に雪希は被せて
1階からブーイングが。
「怒ったのは雪希だけじゃないけどね」
「俺だって取り繕うの大変だったよ。 でもびっくりした。
雪希が手をあげるなんて」
「なんか黙ってられなくて」
困り顔で笑った雪希。
もう一度、お礼を言って離れようとしたら腕を引かれて
「最初に僕を頼ってくれたから相殺」
と耳元で囁かれた。
「ふざけないで。
そんなくだらない理由で
舞の気持ちを軽んじたの?
曲に込めた想いを知らないで
盗作して、本当の作者に向けられるはずの感想をもらって優越感に浸ってそれで満足できるの?」
赤くなった頬を押させて嗤った。
「気持ち?想い?
そんなの知りませんよ。
先に世に出しちゃえば勝ちなんです。
優越感なんていりません。
舞さん」
雪希に向かっていた顔は雪希をかわして
私と目があった。
「傷つきました?悔しかったですか?」
その問いに対して私はただ睨むだけ。
なのに彼女は分かったように
「そうですか。あなたが絶望を
感じてくれたのならやった甲斐が
ありました」
穏やかに発せられて言葉。
(ただの一曲、
満点の星空でも見えないほど小さな
星のような曲。
さいごまで聞いてもらえても
感動してくれるかはわからない。
気に入ってくれるかわからない。
そもそも聞いてくれるかもわからない。
またつくればいい、でも)
「っ、」
あなたはなにも分かってない!
その後に矢継ぎ早に柄にもなく
捲し立てようとした。
でもそれはできなかった。
雪希の振り上げた拳が見えたから。
「雪希!」
類と蓮がすぐに雪希を抑えたが
頭に血が上ってるのか暴れている。
(こんなに荒れてる雪希はじめて)
「すみませんでした」
しばらくして冷静になった雪希は
再び私の隣に座る。
「ほんとうですよ。嫁入り前の娘の顔を叩くなんて、非常識にも程があります」
落ち着いた声に無性に腹が立つ。
(なんで100歩譲って許してあげるみたいな感じで言ってるの?元はと言えば
あなた達が原因なんだけど)
「とりあえず雪希くんは3日間の仕事を
白紙にして学校以外は
外に出ないように。
気持ちはよくわかるけど手が出るのは
ダメだからね。
この事は千鶴に頼んでおくよ」
「はい、迷惑をかけて
すみませんでした」
俯いた雪希は本当に反省しているように見える。
「それと、今回の問題はみんな口外
しないでね。もちろんネットにも。
舞ちゃん、作詞についてはこっちから
SNSにやんわりと伝えるからそれまで
待ってて欲しい」
「はい、わかりました」
お誕生日席、
と呼ばれる場所にいる七瀬さん。
私には笑顔だが美冬ちゃんに向ける笑顔は冷たい。
「本格的に彼女、いや彼女達の処分に
ついて考えないとね。
もちろん、今回のことは口外しないようにとは言ったけど親御さんには
伝えさせてもらうからね」
親御さん、そう言った瞬間、
余裕をかましてた彼らは慌て出す。
「親ってそんな」
「この前以上に怒られる」
「当たり前だよ。みんな未成年だからね。何かあったか伝える義務がある。
でも、窃盗の件は舞ちゃんに委ねるよ。警察に伝えるか、ここだけで済ますか」
「七瀬さん、警察には伝えない方向
でお願いします。」
少し彼らの顔色が明るくなったが
釘を刺す。
「分かってますか?
同情なんて一欠片もありませんよ。
少なからず私たちの仕事に影響が
出そうだからです。
私が一般人だったら容赦なく警察に
行くと思います。」
その後はすぐに解散となり、
私達は家でのんびりくつろいでいた。
部屋に入ろうとした雪希を引き止める。
「雪希、」
「ん?」
「ありがとう、怒ってくれて。
でもごめんね、それで雪希が、」
「別にいいよ、気にしないで」
言い終わる前に雪希は被せて
1階からブーイングが。
「怒ったのは雪希だけじゃないけどね」
「俺だって取り繕うの大変だったよ。 でもびっくりした。
雪希が手をあげるなんて」
「なんか黙ってられなくて」
困り顔で笑った雪希。
もう一度、お礼を言って離れようとしたら腕を引かれて
「最初に僕を頼ってくれたから相殺」
と耳元で囁かれた。
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