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4章 ファイナルライブ
最終回 無限の可能性
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デビューライブと同じ日に
正真正銘のラストライブ。
会場には4色のペンライトが私たちを
照らす。
「ずっと私たちを好きでいてくれて
ありがとう」
「僕たちを見つけてくれて
ありがとう」
「俺たちをステージに
立たせてくれてありがとう。
6年間」
「「「ありがとうございました!」」」
この景色を私は絶対に忘れない。
ー5年後ー
「今回のアイドル部門で入賞したのは
フラワーです。彼女たちは高校生の時に、」
バスから降りて電化製品店のテレビから
聞こえる声に笑みが溢れた。
目的地までいくにつれて人気が
なくなる。
「久しぶりだね、類。
前にきたのは2年前かな。
ずっと忙しくて来れなくてごめん」
雪希は芸能界を辞めた。
専門学校卒業後、メイクアップアーティストとして活動している。
フリーだけどアイドル時代の知名度と
確かな腕前で予約はいっぱいらしい。
(恋愛面は知らないけど、
辺里くんと宮本さんの結婚で、
宮本さんのメイクを頼まれたって
言ってたっけ。)
兄は古民家カフェを営業。
元アイドルが経営しているからか、
最初は大繁盛、今はゆったりと落ち着いたカフェになっている。
蓮は俳優。事務所は変わったらしい。
雑誌に載ったり様々なCMに出たり、
ドラマの主演になったり国内で活躍中。
私は七瀬さんのご厚意で事務所で
働かせてもらっている。
衣装制作を手伝ったり、杏奈さんと杏子さんのレッスンの手伝いをしていたり、
様々なサポートをしている。
「類、私来月結婚するんだ、蓮と。
落ち着いたから報告しようと思って」
ー半年前ー
事務所の空き部屋の一つを貸して
もらった。
「久しぶり、舞」
懐かしい声に心が躍る。
「久しぶり、蓮。元気だった?」
「うん、おかげさまで。
忙しいけど楽しくやってる」
目を細めて隣に座る。
翔のこと茉里ちゃんのこと、お互いの仕事のこと、たくさん話して
「舞は今付き合ってる人はいるの?」
「え?」
急な問いかけに思わず顔を見る。
その目は真剣だった。
「いない、けど」
「好きな人は?」
「別に、いない」
(何この質問。
いま、まさかね)
蓮は膝においていた手を取る。
「舞、俺はずっと前から舞のことが好きだ。
仲間以上に異性として。
これから先、ずっと隣にいてほしい。
支えてほしいし支えたい。
だから」
体が熱くなる。
冗談を言っている雰囲気は微塵もない。
「俺と結婚してください」
(お付き合いをすっ飛ばして!?
とは思うけど、嬉しいのは事実だし)
「ぅん」
聞こえるか聞こえないかの小さな返事。
蓮は私を立ち上がらせて抱きしめる。
「一緒に幸せになろう」
「・・・もう幸せだよ」
背中に腕をまわす。
「舞」
顔を上げると愛おしそうに見つめて
いる。
「愛してる」
そう告げる顔を引き寄せて
背伸びをする。
当たり前だけどレモンの味では
なかった。
ー回想終了ー
「式はしないんだけどね。お互い忙しいし、私も絶対に式を挙げたいってわけ じゃないから。
お父さんたちには来週、蓮と報告する
予定。
またくるね。
今度は予定があえば蓮と一緒に」
そう言って舞は帰って行った。
薬指の銀色の指輪。
先週来てくれた蓮も指輪をしてたから
もしかしてと思ったし、
舞の報告も驚かなかった。
両親、雪希、当時のクラスメイト数人、
担任、楓さん。
楓さんは、当時俺のことが好きだったって言ってくれた。
今はいい感じの相手がいるらしい。
他にもたくさんの人が来てくれたから
別に退屈はしていない。
美緒さんたちともたまに交流がある。
俺のことも父親のことも別に
恨んでいなかった。
俺が生きていたら違う道もあったのかなって思う。舞が知らなくて済んだのかなって思う。でも変えられないし
時間は戻せない。
空から眺めるのも悪くない。
何十年経って、こっちに来たら
その時は4人で語り明かそうか。
それまで気長に待ってるよ。
少女が母親に言った。
「高校生になったよ。
オーディションに受けていいよね!
私、アイドルになりたいの。
Rainbow Roseの舞ちゃんみたいな」
憧れは次の憧れを生む。
正真正銘のラストライブ。
会場には4色のペンライトが私たちを
照らす。
「ずっと私たちを好きでいてくれて
ありがとう」
「僕たちを見つけてくれて
ありがとう」
「俺たちをステージに
立たせてくれてありがとう。
6年間」
「「「ありがとうございました!」」」
この景色を私は絶対に忘れない。
ー5年後ー
「今回のアイドル部門で入賞したのは
フラワーです。彼女たちは高校生の時に、」
バスから降りて電化製品店のテレビから
聞こえる声に笑みが溢れた。
目的地までいくにつれて人気が
なくなる。
「久しぶりだね、類。
前にきたのは2年前かな。
ずっと忙しくて来れなくてごめん」
雪希は芸能界を辞めた。
専門学校卒業後、メイクアップアーティストとして活動している。
フリーだけどアイドル時代の知名度と
確かな腕前で予約はいっぱいらしい。
(恋愛面は知らないけど、
辺里くんと宮本さんの結婚で、
宮本さんのメイクを頼まれたって
言ってたっけ。)
兄は古民家カフェを営業。
元アイドルが経営しているからか、
最初は大繁盛、今はゆったりと落ち着いたカフェになっている。
蓮は俳優。事務所は変わったらしい。
雑誌に載ったり様々なCMに出たり、
ドラマの主演になったり国内で活躍中。
私は七瀬さんのご厚意で事務所で
働かせてもらっている。
衣装制作を手伝ったり、杏奈さんと杏子さんのレッスンの手伝いをしていたり、
様々なサポートをしている。
「類、私来月結婚するんだ、蓮と。
落ち着いたから報告しようと思って」
ー半年前ー
事務所の空き部屋の一つを貸して
もらった。
「久しぶり、舞」
懐かしい声に心が躍る。
「久しぶり、蓮。元気だった?」
「うん、おかげさまで。
忙しいけど楽しくやってる」
目を細めて隣に座る。
翔のこと茉里ちゃんのこと、お互いの仕事のこと、たくさん話して
「舞は今付き合ってる人はいるの?」
「え?」
急な問いかけに思わず顔を見る。
その目は真剣だった。
「いない、けど」
「好きな人は?」
「別に、いない」
(何この質問。
いま、まさかね)
蓮は膝においていた手を取る。
「舞、俺はずっと前から舞のことが好きだ。
仲間以上に異性として。
これから先、ずっと隣にいてほしい。
支えてほしいし支えたい。
だから」
体が熱くなる。
冗談を言っている雰囲気は微塵もない。
「俺と結婚してください」
(お付き合いをすっ飛ばして!?
とは思うけど、嬉しいのは事実だし)
「ぅん」
聞こえるか聞こえないかの小さな返事。
蓮は私を立ち上がらせて抱きしめる。
「一緒に幸せになろう」
「・・・もう幸せだよ」
背中に腕をまわす。
「舞」
顔を上げると愛おしそうに見つめて
いる。
「愛してる」
そう告げる顔を引き寄せて
背伸びをする。
当たり前だけどレモンの味では
なかった。
ー回想終了ー
「式はしないんだけどね。お互い忙しいし、私も絶対に式を挙げたいってわけ じゃないから。
お父さんたちには来週、蓮と報告する
予定。
またくるね。
今度は予定があえば蓮と一緒に」
そう言って舞は帰って行った。
薬指の銀色の指輪。
先週来てくれた蓮も指輪をしてたから
もしかしてと思ったし、
舞の報告も驚かなかった。
両親、雪希、当時のクラスメイト数人、
担任、楓さん。
楓さんは、当時俺のことが好きだったって言ってくれた。
今はいい感じの相手がいるらしい。
他にもたくさんの人が来てくれたから
別に退屈はしていない。
美緒さんたちともたまに交流がある。
俺のことも父親のことも別に
恨んでいなかった。
俺が生きていたら違う道もあったのかなって思う。舞が知らなくて済んだのかなって思う。でも変えられないし
時間は戻せない。
空から眺めるのも悪くない。
何十年経って、こっちに来たら
その時は4人で語り明かそうか。
それまで気長に待ってるよ。
少女が母親に言った。
「高校生になったよ。
オーディションに受けていいよね!
私、アイドルになりたいの。
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憧れは次の憧れを生む。
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