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3章 サードライブ
188話 盗作
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「よろしくお願いします。」
新曲の打ち合わせ。
でもなんかチラチラと私を見て
よそよそしい。
「あの、どうしたんですか?」
1人が私におずおずと聞いてきた。
「この曲って、舞ちゃんが
作詞したんだよね?
どれか参考にした、とかないよね?」
「え、はい。オリジナルです」
「あのタイトルで検索してくれる?」
「タイトル、ですか?」
スマホを出して検索欄にタイトルを
入力する。
「憧れを追い越したその先へ」
「え、」
その曲は私が作ったのと酷似していた。
憧れた人と同じ業界に飛び込んだこと、
仲間との絆、取り巻く環境に対して、
気づいたら憧れだけじゃなく別の意識も
あったこと。
表現は違うけど分かる。
だって私が作詞したことだ。
わからない方がおかしい。
「ち、違います!
私、盗作なんてしてません!」
「それは分かってるよ。
舞ちゃんの歌詞は重みを感じる。
でも先にこの曲が出ているんだ。
このSNSで歌詞が出た直後は
絶対に印象が悪い。悪いけどこの話は
こちらで預からせて」
「わかり、ました」
私が積み重ねた時間をこの人は奪った。
(許さない、絶対に!・・・っ!)
このコメントの下の方に投稿された日付が書かれている。
(この日付、私がSNSにタイトルを
載せた日の後だ!)
自分のSNSのアカウントを確認すると
(合ってる、
でも酷似してるだけで盗作なんて
言えない
同じ考えを持つこともある)
自分の思いを公開できないことが
とても悔しい。
歯を食いしばり、握った手は震える。
結局、今日は何も進められないからと
解散になった。
家に帰るとちょうど雪希と鉢合わせた。
(今は誰にも会いたくなかったのに、
こんな)
「舞、そんな暗い顔してどうしたの?
何があったの?」
何か、ではなくて何が。
(雪希にはなにかあったってバレたか。
いや、こんな顔じゃ雪希じゃなくても
分かるか)
「なんでもない、大丈夫だから」
部屋に行こうと、早歩きで通り過ぎようとした。
でも広げた手が行かせてくれない。
「なんの冗談?私、
着替えたいんだけど」
「嘘でしょ、僕だって舞たちの嘘つく
時の癖くらい分かるよ。それにあの時の僕と同じこと言ってる、大丈夫って。
大丈夫って、ほんとは辛いのに自分を
誤魔化す時に1番使うと思うんだ。」
何も知らない雪希に苛立ってきた
「雪希と私を一緒にしないでよ」
「じゃあなんで泣きそうなの」
小さい子供に聞くよくな優しい声。
抑えていた感情のダムが決壊して
鼻の奥がツンとした。
「私の曲、見送りになったんだ」
「え、」
(見送られた、自分で言っておいて
ダメージを負うなんて)
改めて突きつけられた事実に
心は軋む。
泣かないように違うことを考える。
雪希は私をソファに座らせて落ち着く
まで待ってくれた。
「見送りって何があったの?」
「私の方が知りたい。今日話を進めようとしたら同じタイトルの、
全く同じじゃなくて酷似した
ものがあるって言われて」
「それで、見送りに?」
頷くと雪希はハッとして
すぐに優しい顔で頭を撫でる。
「舞、残念だったけど舞の頑張りは
僕たちがよく知ってるよ。
その歌詞見せてほしいな。
舞が何を感じて、どう思ったのか
知りたい」
立てかけてあるバックから小さめの手帳を取り出す。
私は背を向けたからわからなかった。
雪希の今まで見たことない怖い顔を
新曲の打ち合わせ。
でもなんかチラチラと私を見て
よそよそしい。
「あの、どうしたんですか?」
1人が私におずおずと聞いてきた。
「この曲って、舞ちゃんが
作詞したんだよね?
どれか参考にした、とかないよね?」
「え、はい。オリジナルです」
「あのタイトルで検索してくれる?」
「タイトル、ですか?」
スマホを出して検索欄にタイトルを
入力する。
「憧れを追い越したその先へ」
「え、」
その曲は私が作ったのと酷似していた。
憧れた人と同じ業界に飛び込んだこと、
仲間との絆、取り巻く環境に対して、
気づいたら憧れだけじゃなく別の意識も
あったこと。
表現は違うけど分かる。
だって私が作詞したことだ。
わからない方がおかしい。
「ち、違います!
私、盗作なんてしてません!」
「それは分かってるよ。
舞ちゃんの歌詞は重みを感じる。
でも先にこの曲が出ているんだ。
このSNSで歌詞が出た直後は
絶対に印象が悪い。悪いけどこの話は
こちらで預からせて」
「わかり、ました」
私が積み重ねた時間をこの人は奪った。
(許さない、絶対に!・・・っ!)
このコメントの下の方に投稿された日付が書かれている。
(この日付、私がSNSにタイトルを
載せた日の後だ!)
自分のSNSのアカウントを確認すると
(合ってる、
でも酷似してるだけで盗作なんて
言えない
同じ考えを持つこともある)
自分の思いを公開できないことが
とても悔しい。
歯を食いしばり、握った手は震える。
結局、今日は何も進められないからと
解散になった。
家に帰るとちょうど雪希と鉢合わせた。
(今は誰にも会いたくなかったのに、
こんな)
「舞、そんな暗い顔してどうしたの?
何があったの?」
何か、ではなくて何が。
(雪希にはなにかあったってバレたか。
いや、こんな顔じゃ雪希じゃなくても
分かるか)
「なんでもない、大丈夫だから」
部屋に行こうと、早歩きで通り過ぎようとした。
でも広げた手が行かせてくれない。
「なんの冗談?私、
着替えたいんだけど」
「嘘でしょ、僕だって舞たちの嘘つく
時の癖くらい分かるよ。それにあの時の僕と同じこと言ってる、大丈夫って。
大丈夫って、ほんとは辛いのに自分を
誤魔化す時に1番使うと思うんだ。」
何も知らない雪希に苛立ってきた
「雪希と私を一緒にしないでよ」
「じゃあなんで泣きそうなの」
小さい子供に聞くよくな優しい声。
抑えていた感情のダムが決壊して
鼻の奥がツンとした。
「私の曲、見送りになったんだ」
「え、」
(見送られた、自分で言っておいて
ダメージを負うなんて)
改めて突きつけられた事実に
心は軋む。
泣かないように違うことを考える。
雪希は私をソファに座らせて落ち着く
まで待ってくれた。
「見送りって何があったの?」
「私の方が知りたい。今日話を進めようとしたら同じタイトルの、
全く同じじゃなくて酷似した
ものがあるって言われて」
「それで、見送りに?」
頷くと雪希はハッとして
すぐに優しい顔で頭を撫でる。
「舞、残念だったけど舞の頑張りは
僕たちがよく知ってるよ。
その歌詞見せてほしいな。
舞が何を感じて、どう思ったのか
知りたい」
立てかけてあるバックから小さめの手帳を取り出す。
私は背を向けたからわからなかった。
雪希の今まで見たことない怖い顔を
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