上 下
156 / 267
3章 サードライブ

156話 自己満足

しおりを挟む
コーヒーに常備されているミルクと
ガムシロップを一つずつ入れて 
混ぜる。

(ライトのボルトが緩んで他はしっかり
閉まっていたとして、ライトが落ちて
他の器具とかも落ちてくるって
あるのか?しかも一緒じゃなくて
数秒後に。
あの時は気づかなかったけど
冷静に考えたら、不自然?
でもそっち方面に詳しい訳じゃないけど
今さ気になったって)

「あの、そのステージを設営してた
会社って・・・!」
目の前の人が属していた会社だ。
配慮が足りなかったな。
「すみません」
「いえら前の会社のことなので」
(前?)
「あの会社は倒産しました。
1人の勝手で怪我人を出して存続なんて
できませんから」
「そうですか。あの一つだけいいですか?なんで3年経った今、その事を?」

「マスコミのスクープ魂はすごいですからね。完全にほとぼりが冷めるまで
待とうと思いまして」
(今はマスコミや週刊誌の他に一般人にも警戒しないといけない時代だからな)

アイスコーヒーをストローで飲んだが
氷が少し溶けて飲みやすくなっていた。
チーズケーキも思ったよりさっぱり
していて口説くない。
(また来ようかな)

でも男性は紅茶には口をつけず、
タルトもほとんど食べてなかった
「本当は自己満足なんです」
「自己満足?」
ケーキを食べる手が止まる。

「はい、封筒を郵便受けに入れてから
本当にあれでよかったのかとずっと後悔していました。
一度、直接お話した方が自分が
安心できるんじゃないかと」
(自己満足、ねぇ。) 

「すみません、さっきは1つと言いましたがあと2つほどいいですか?」
「いいですよ、いくつでもなんでも
聞いてください」
顔色がほんの少し明るくなった。

「ありがとうございます。
どうして、寮、封筒を入れた場所を知っていたんですか?」
「Rainbow  Roseを潰すと聞いた時、
娘がクラスメイトにアイドルグループの1人がいると言っていたのを思い出してその日の夜、娘が類くんのことを詳しく教えてくれてクラスの集合写真で顔を見せてもらって、翌日、尾行して封筒を入れました。」
(まぁそれまで防犯意識は
皆無だったからな、俺たち。
あれ、防犯カメラもない。
鍵だって盗まれたら簡単に合鍵を作れる。そもそもピッキングされたら・・・
セキュリティガバガバ過ぎない?
よく今まで問題なかったな)

「あの、大丈夫ですか?」
「あ、すみません。考え事をしてて。
あなたは後悔していると言っていましたけど何も後悔することはないですよ。
最終的に出場を決めたのは俺たちなんですから。寧ろ感謝してるんです。」
ハッとして顔を上げた。

「あの文書で警戒することができました。知らなかったらもっと大怪我に
なっていたかもしれません。
あなたとこうして話すことも出来なかったです。
今でも色々なことが出来ているのは
あなたのおかげです。
ありがとうございました」

「そんな、俺は・・・」
しどろもどろに視線を泳がす。
「なら、ライブを見に来てくれませんか?それで自分の行動がここまで成長
させたんだと思ってください。
助けたことを誇ってください。」

男性は頷いた。
それから2人してケーキと飲み物を完食
して席を立つ。
お会計は別でしようとしたが、
大丈夫だと言われ一緒にお会計して
もらった。カフェをでて
「ありがとうございます」
「いや、こちらこそ聞いてくれて
ありがとう、ライブ楽しみにしてるね」
小さくだが笑っていた。

その後帰ったら舞たちがSNSで俺が
カフェにいたことがバレてしまった。
(うまく男性のことは避けて
撮ってくれたが)

機嫌を損ねた舞と雪希に今度奢る
約束をしてなんとか収まった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

その花は、夜にこそ咲き、強く香る。

木立 花音
青春
『なんで、アイツの顔見えるんだよ』  相貌失認(そうぼうしつにん)。  女性の顔だけ上手く認識できないという先天性の病を発症している少年、早坂翔(はやさかしょう)。  夏休みが終わった後の八月。彼の前に現れたのは、なぜか顔が見える女の子、水瀬茉莉(みなせまつり)だった。  他の女の子と違うという特異性から、次第に彼女に惹かれていく翔。  中学に進学したのち、クラスアート実行委員として再び一緒になった二人は、夜に芳香を強めるという匂蕃茉莉(においばんまつり)の花が咲き乱れる丘を題材にして作業にはいる。  ところが、クラスアートの完成も間近となったある日、水瀬が不登校に陥ってしまう。  それは、彼女がずっと隠し続けていた、心の傷が開いた瞬間だった。 ※第12回ドリーム小説大賞奨励賞受賞作品 ※表紙画像は、ミカスケ様のフリーアイコンを使わせて頂きました。 ※「交錯する想い」の挿絵として、テン(西湖鳴)様に頂いたファンアートを、「彼女を好きだ、と自覚したあの夜の記憶」の挿絵として、騰成様に頂いたファンアートを使わせて頂きました。ありがとうございました。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編3が完結しました!(2024.8.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

桑原家のツインズ!高校デビュー☆

みのる
青春
桑原家の『ツインズ』が、高校生になりました!誰しにも訪れた、あの青春時代…(懐)

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

GIVEN〜与えられた者〜

菅田刈乃
青春
囲碁棋士になった女の子が『どこでもドア』を作るまでの話。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

拝啓、お姉さまへ

一華
青春
この春再婚したお母さんによって出来た、新しい家族 いつもにこにこのオトウサン 驚くくらいキレイなお姉さんの志奈さん 志奈さんは、突然妹になった私を本当に可愛がってくれるんだけど 私「柚鈴」は、一般的平均的なんです。 そんなに可愛がられるのは、想定外なんですが…? 「再婚」には正直戸惑い気味の私は 寮付きの高校に進学して 家族とは距離を置き、ゆっくり気持ちを整理するつもりだった。 なのに姉になる志奈さんはとっても「姉妹」したがる人で… 入学した高校は、都内屈指の進学校だけど、歴史ある女子校だからか おかしな風習があった。 それは助言者制度。以前は姉妹制度と呼ばれていたそうで、上級生と下級生が一対一の関係での指導制度。 学園側に認められた助言者が、メンティと呼ばれる相手をペアを組む、柚鈴にとっては馴染みのない話。 そもそも義姉になる志奈さんは、そこの卒業生で しかもなにやら有名人…? どうやら想像していた高校生活とは少し違うものになりそうで、先々が思いやられるのだけど… そんなこんなで、不器用な女の子が、毎日を自分なりに一生懸命過ごすお話しです 11月下旬より、小説家になろう、の方でも更新開始予定です アルファポリスでの方が先行更新になります

処理中です...