上 下
136 / 266
3章 サードライブ

136話 なんで生きてるの?

しおりを挟む
(思い出を上塗り、か)
引き出しから俺ににつかわしくないピンクと白のチェックの封筒を取り出す。
中には何か軽く硬いものが入っているのが分かる。
茉里がくれたものだ。

~回想~
「私が退院するまで開けちゃダメだからね」
と言われた。
荒れに荒れていた俺は笑顔で封筒を受け
取って帰りの車の中で握りつぶした。
「茉里は優しい子よね。こんな子でも兄だと慕ってくれるんだもの。
あなたも努力して茉里から、頼られるようになりなさい」

(は・・・?慕う?頼る?意味わかんない。
勝手に慕ってきてるんだよ。
慕って欲しいなんて思ってないし
頼って欲しいとも思ってない) 

母さんは口を開けば茉里の事ばかり。
「あ、コンビニがある。茉里が好きそうな
雑誌あるかな」
駐車場に止めて車を降りて母さんに
ついていく。

「母さん、俺は・・・」
「蓮はまだお小遣いが残ってるでしょ。
自分で買いなさい」
「あ・・・うん」
茉里の時は笑顔で、楽しそうにしていたのに俺には冷たく目も合わせてくれない

(ここにいるのは茉里じゃなくて俺だよ。
なんで俺を見てくれないの?
なんで怖い顔をするの?
俺は何をした、俺はバカだから言ってくれ
ないと分からないよ。言ってくれたら
なおすよ?できるように頑張るから・・・!
だから・・・!俺にも笑ってよ、)

明らかに違う兄妹の扱いをする両親に嫌気がさして、みてもらえている茉里に嫉妬して、
あの日、俺は・・・

~回想終了~
今思えば、怒りとか嫌悪感とか感情の矛先を茉里に向けて最低って言葉しか出てこない。

やりたかったかもしれない事ができる機会を奪った。
行きたい場所だってあったはず、
友達と笑って遊ぶ時間、
趣味に打ち込む時間、
勉強する時間、
真剣になる瞬間、
呼吸する時間すら俺は・・・。

封筒を引き出しに戻して、
電気もつけっぱなしで、ベットに入り布団を頭まで被る。

茉里と隣を歩いている、笑っていた茉里。
俺の記憶にいる茉里より少し成長している。
「次はあっちに行こう!」
楽しそうにはしゃいで腕を掴み、足早に踏み出した瞬間、ガラッと場面は変わる。

病室だ。俺にてをのばしたあのばめんだ。
(今度こそ・・・!) 
と思ったが、俺の思考は関係ないと
言わせるようにそこにいる俺は病室の外へ
飛び出した。

また場面は変わり暗い背景に光のない瞳、
正気を失くした茉里がいる。
茉里に触れようとしたら軽く後ろに下がった「茉里?」
俺を見る目は笑っていた。
「私、もっと生きたかったんだ・・・」
「え、」
呟きをよそに茉里は続ける。
「私、行きたい中学があったんだよ。
やりたいこともあった。
あの時、お兄ちゃんがあんなことしなければいけてたはずなの!できていたはずなの!
なんでステージに立っているの?
なんで仲間といるの?
なんで笑ってるの?
・・・なんで生きてるの?」
弾けたように俺の意識は覚醒した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

通り道のお仕置き

おしり丸
青春
お尻真っ赤

これからの僕の非日常な生活

喜望の岬
青春
何の変哲もない高校2年生、佐野佑(たすく)。 そんな彼の平凡な生活に終止符を打つかのような出来事が起きる……!

カイリーユと山下美那、Z(究極)の夏〜高2のふたりが駆け抜けたアツイ季節の記録〜

百一 里優
青春
【3x3バスケに打ち込んだ"くすぶり系"男子は、幼馴染の美男系バスケ女子の心を掴めるのか? 随時更新】リユこと森本里優は横浜の高2男子。わけありでテニス部を辞めた今は、密かに小説を書きつつ、バイトをしてバイク購入も目指している。近所で幼馴染の同級生・山下美那(ミナ)はバスケ部の中心選手で人気者の美形女子だ。美那とは、仲良しだった幼稚園以後は付かず離れずの友達関係にある。 夏至も近い夏の日、美那が「親が離婚しそうだ」と、父親のDVで親の離婚を経験しているリユに相談する。さらに、自分をもてあそんだ大学生のストリートボーラーをバスケで見返す気の美那は、なぜか経験のないリユを3x3バスケチームに誘う。 その日を境にリユの人生が大きく動き出す。 憧れのバイクの入手、3x3バスケの特訓、泊りがけの夏休みのバイトに、図書室の美少女との恋、さらには高校生2人+大学生2人のチームで3x3大会への出場。美那との距離も次第に縮まり、幼なじみから親友、そして……。 そのほか、カメラや写真、建築、LGBTなどの話題も出てきます。 舞台は主に神奈川県横浜市ですが、長野県の軽井沢、松本市などは撮影助手バイトでの旅先、また東京や横須賀、三浦半島なども登場します。 リユの欲しいバイクはカワサキZ250。憧れのバスケ選手はNBAのカイリー・アービング。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体等とは一切関係がありません。 ※参考文献:『1冊でわかる3X3バスケ入門 ルールから戦術、練習法まで』著者・中祖嘉人、発行所・株式会社マイナビ出版、2021年5月31日初版第1刷発行

彼女たちをトップアイドルに育てるのが俺が生まれた大きな理由の一つだったりするわけであり。

てたまろ
キャラ文芸
主人公、雨木川還流(あまぎかわかえる)の前に現れた宝城キルト、彼の持っていた見たことの無い不思議な人形が還流(かえる)の夢の中に出て来て運命を感じる。 その人形をきっかけに還流とキルトは女の子を集めネオ・アイドルという新しいジャンルに挑戦するが様々な妨害により事務所が倒産寸前の危機に追い込まれてしまう。 デビュー曲、セカンドシングルと惨敗で後がない、サードシングルで起死回生を図る。 ネオ・アイドルグループ『プリミアムフォー』個性豊かな4人の女の子たちの成長物語でもある。 王城臣(おうぎおみ) 小学5年生、小1から事務所に入所、テレビの教育バラエティー番組に出演していた、明るいキャラで人気もあり多くの支持を集めている。主人公とは兄妹の様な関係。 許斐心(このみこころ) 高校1年生、中三の時ひょんなことから舞台に立つことになりそのまま事務所へ入所、本人はアイドル志望ではなく女優として活動していきたい。 須賀彗夏(すがすいか) 高校2年生、プリミアムフォーのリーダー、積極的で行動力がありメンバーをまとめる力がある、ダンサー志望でストリートダンスをしていた所スカウトされる。 出雲伊莉愛(いずもいりあ) 高校2年生、彗夏とは中学からの付き合い、身長170、5センチ、高身長から見せるダンスはダイナミックで迫力があり定評がある。アニメや漫画が好きでオタク、妄想癖あり。 多くの涙や恋愛模様その他夢や目標に向かって進んでいく、そんな物語です。

甘党探偵月影ましろ《とびきりのスイーツはソネットゲームの後に》

月見十五夜
青春
 御伽《おとぎ》高校に通う月影ましろは、学生でありながらある仕事をしていた。  世界では、人知れず忘れ去られることを恐れた童話たちが各地で平穏に暮らす人々を巻き込んで危害を加えている。  面倒事と思いながらも、具現化した童話ーー物語《ソネット》の暴走をまるで探偵のごとく、月影ましろが解決する。

【完結】Nurture ずっと二人で ~ サッカー硬派男子 × おっとり地味子のゆっくり育むピュア恋~

丹斗大巴
青春
 硬派なサッカー男子 × おっとり地味子がゆっくりと愛を育むピュアラブストーリー  地味なまこは、ひそかにサッカー部を応援している。ある日学校で乱闘騒ぎが! サッカー部の硬派な人気者新田(あらた)にボールをぶつけられ、気を失ってしまう。その日から、まこの日常が変わりだして……。 ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* サッカー部の硬派男子 未だ女性に興味なしの 新田英治 (やばい……。 なんかまだいい匂いが残ってる気がする……) × おっとり地味子  密かにサッカー部を応援している 御木野まこ (どうしよう……。 逃げたいような、でも聞きたい……) ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴*   便利な「しおり」機能をご利用いただくと読みやすくて便利です。さらに「お気に入り」登録して頂くと、最新更新のお知らせが届きますので、こちらもご活用ください。

#星色卒業式 〜きみは明日、あの星に行く〜

嶌田あき
青春
 2050年、地球の自転が止まってしまった。地球の半分は永遠の昼、もう半分は永遠の夜だ。  高校1年の蛍(ケイ)は、永遠の夜の街で暮らしている。不眠症に悩む蛍が密かに想いを寄せているのは、星のように輝く先輩のひかりだった。  ある日、ひかりに誘われて寝台列車に乗った蛍。二人で見た朝焼けは息をのむほど美しかった。そこで蛍は、ひかりの悩みを知る。卒業したら皆が行く「永遠の眠り」という星に、ひかりは行きたくないと言うのだ。  蛍は、ひかりを助けたいと思った。天文部の仲間と一緒に、文化祭でプラネタリウムを作ったり、星空の下でキャンプをしたり。ひかりには行ってほしいけれど、行ってほしくない。楽しい思い出が増えるたび、蛍の胸は揺れ動いた。  でも、卒業式の日はどんどん近づいてくる。蛍は、ひかりに想いを伝えられるだろうか。そして、ひかりは眠れるようになるだろうか。  永遠の夜空に輝くひとつの星が一番明るく光るとき。蛍は、ひかりの驚くべき秘密を知ることになる――。

僕の周りの人達には秘密がある

ノア オリバー
青春
ぼくの周りの人たちには、何か秘密がある。例えば横の席の子とか前の席の子とか。女の子に囲まれたぼくは一人一人の秘密を解決していくのだった。 「僕に話してみなよ」 これは優しい声音で聞く、優しく頼りになる彼を好きになっていく少女達の恋物語。

処理中です...