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3章 サードライブ
135話 上塗り
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俺は自分の部屋に戻ろうと部屋を出ると舞と
ぶつかりかけた。
「おっ、と。ごめん」
「だ、大丈夫」
「蓮が出てきたってことは類、空いたかな」
「え、うん」
舞の視線は俺をすり抜ける
「類になんの用?」
「え、それは・・・。」
明らかに視線が泳いでいる。
「まぁ言いたくない事は誰にだってあるからね。俺の用事は終わったからどうぞ」
(嘘、悔しいくせに)
そこから離れるために歩き出すと
「意外」
舞の呟きに振り返る
「え、なにが?」
「てっきり、舞の悩みなんてくだらない事
だからそうだんするだけ無駄だよ、って
いうと思ったのに」
「どんなイメージ持ってるの、俺に対して」
部屋のベットにダイブしてため息をつく
(嫉妬とか・・・ガキかよ)
「そういえば会長のことも考えないといけないんだよな」
本気の告白でも、OKすることはまず無いと
思うけど。
(でも会長だしな、絶対に暴走しないとも言い切れない)
ハッとしてスマホのカレンダーを見る。
自分の気持ちや会長以上に大事な日が
近づいている。
「舞の、誕生日・・・」
去年は、バスボムのセットと
紙石鹸をあげた気がする。
雪希は持ち運びができるミニ加湿器。
類はオーダーメイドの手帳。
5月始まりで終わりは今年の4月。
舞にとってはとにかく使いやすいと思う。
翌日、休日で類は収録でいなかった。
リビングで悶々と考えているとガチャン、
と音がして、振り向くと
片付け中に舞がマグカップを割ってしまったらしくものすごくショックを受けていた。
聞くと母親が使っていたものらしい。
(過去形・・・もしかして)
初等部の頃から使ってるから仕方ない、
長く使えた方、と笑っていたがやっぱり思い出があるのか悲しそうだった。
持っていた取っ手をワークトップに置いて
拾える大きさの破片をビニール袋に黙々と
静かに拾い入れていた。
「素手で平気?」
「多分、だいじょ」
隣で屈んで拾おうとしたら声が止まった。
(やっぱり)
浅い切り傷かと思ったけどずっと指を押さえて動かない。
「舞?そんな深く切っ」
抑えている指の間から流れて床に血溜まりができる。
数秒、思考が停止したが
「どうしたの?」
背後から聞こえた雪希の声に我にかえり
リビングのティッシュボックスを引っ掴み
手を伝う血を拭いてから舞の指を圧迫して、
床の血を拭く。
しばらくして忙しない足音が聞こえ、
振り返ると雪希が救急箱を持っていた。
(どこにあったんだろう)
慣れた手つきで応急処置を施してから念の
ため皮膚科へ促した。
幸い跡は残らないと帰ってきた舞に聞いたが
ただ指を縫う一方手前までだったらしく
ゾッとした。
「2人とも過保護すぎじゃない?
私が小さい頃に何も無いところで転んだ時
にした翔と同じ反応なんだけど」
「その時とは勝手が違うだろ」
ため息をつきながらも
(本当によかった)
「至極、安心したような顔してるけど
大袈裟じゃない?」
「大袈裟じゃ・・・」
「大袈裟じゃないよ」
大袈裟だと笑う舞に呆れて反論しようとしたら雪希と被ってしまった。
いつもの声色が違くて雪希はほぼ真顔に近い表情をしていた。
「大袈裟じゃないよ、舞
誰だって仲間が怪我したり病気になかったら焦ったり心配するのは当たり前だと
思うけど」
「ご、ごめん、雪希」
あの後、レッスンの休憩や休みの日にネットや雑貨店で探してみたがやはり同じ物は
なかった。
(同じ物・・・。本当に同じ物でいいのか?)
悩んだがそれとなく舞に聞いてみた。
「形あるものはいつか壊れるから仕方ないっていうのは分かってる。
むしろ壊れたものと同じものをもらうと戸惑うかな。
今までの思い出を上塗りされるみたいで。
私の場合は、だけどね」
いたずらするように笑う顔に
自分の考えを見透かされているようで焦った。
ぶつかりかけた。
「おっ、と。ごめん」
「だ、大丈夫」
「蓮が出てきたってことは類、空いたかな」
「え、うん」
舞の視線は俺をすり抜ける
「類になんの用?」
「え、それは・・・。」
明らかに視線が泳いでいる。
「まぁ言いたくない事は誰にだってあるからね。俺の用事は終わったからどうぞ」
(嘘、悔しいくせに)
そこから離れるために歩き出すと
「意外」
舞の呟きに振り返る
「え、なにが?」
「てっきり、舞の悩みなんてくだらない事
だからそうだんするだけ無駄だよ、って
いうと思ったのに」
「どんなイメージ持ってるの、俺に対して」
部屋のベットにダイブしてため息をつく
(嫉妬とか・・・ガキかよ)
「そういえば会長のことも考えないといけないんだよな」
本気の告白でも、OKすることはまず無いと
思うけど。
(でも会長だしな、絶対に暴走しないとも言い切れない)
ハッとしてスマホのカレンダーを見る。
自分の気持ちや会長以上に大事な日が
近づいている。
「舞の、誕生日・・・」
去年は、バスボムのセットと
紙石鹸をあげた気がする。
雪希は持ち運びができるミニ加湿器。
類はオーダーメイドの手帳。
5月始まりで終わりは今年の4月。
舞にとってはとにかく使いやすいと思う。
翌日、休日で類は収録でいなかった。
リビングで悶々と考えているとガチャン、
と音がして、振り向くと
片付け中に舞がマグカップを割ってしまったらしくものすごくショックを受けていた。
聞くと母親が使っていたものらしい。
(過去形・・・もしかして)
初等部の頃から使ってるから仕方ない、
長く使えた方、と笑っていたがやっぱり思い出があるのか悲しそうだった。
持っていた取っ手をワークトップに置いて
拾える大きさの破片をビニール袋に黙々と
静かに拾い入れていた。
「素手で平気?」
「多分、だいじょ」
隣で屈んで拾おうとしたら声が止まった。
(やっぱり)
浅い切り傷かと思ったけどずっと指を押さえて動かない。
「舞?そんな深く切っ」
抑えている指の間から流れて床に血溜まりができる。
数秒、思考が停止したが
「どうしたの?」
背後から聞こえた雪希の声に我にかえり
リビングのティッシュボックスを引っ掴み
手を伝う血を拭いてから舞の指を圧迫して、
床の血を拭く。
しばらくして忙しない足音が聞こえ、
振り返ると雪希が救急箱を持っていた。
(どこにあったんだろう)
慣れた手つきで応急処置を施してから念の
ため皮膚科へ促した。
幸い跡は残らないと帰ってきた舞に聞いたが
ただ指を縫う一方手前までだったらしく
ゾッとした。
「2人とも過保護すぎじゃない?
私が小さい頃に何も無いところで転んだ時
にした翔と同じ反応なんだけど」
「その時とは勝手が違うだろ」
ため息をつきながらも
(本当によかった)
「至極、安心したような顔してるけど
大袈裟じゃない?」
「大袈裟じゃ・・・」
「大袈裟じゃないよ」
大袈裟だと笑う舞に呆れて反論しようとしたら雪希と被ってしまった。
いつもの声色が違くて雪希はほぼ真顔に近い表情をしていた。
「大袈裟じゃないよ、舞
誰だって仲間が怪我したり病気になかったら焦ったり心配するのは当たり前だと
思うけど」
「ご、ごめん、雪希」
あの後、レッスンの休憩や休みの日にネットや雑貨店で探してみたがやはり同じ物は
なかった。
(同じ物・・・。本当に同じ物でいいのか?)
悩んだがそれとなく舞に聞いてみた。
「形あるものはいつか壊れるから仕方ないっていうのは分かってる。
むしろ壊れたものと同じものをもらうと戸惑うかな。
今までの思い出を上塗りされるみたいで。
私の場合は、だけどね」
いたずらするように笑う顔に
自分の考えを見透かされているようで焦った。
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