虹色の薔薇が咲く場所は

如月 りん

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2章 セカンドライブ

96話 皮肉

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「舞がアイドルになったら1番最初のライブ
お兄ちゃんに見せてくれよ」
「え、ヤダー」
「えー!なんで、」
「お兄ちゃんにはちゃんとレッスンやライブをいっぱいして上手になった私を見て欲しいの!」
「まぁ、しょうがないか。でも上手くなったと思ったらお兄ちゃんにライブ見せてくれ」
「うん、やくそく」

そう指切りをして、そして
「父さん!母さん!」

「まだ若かったのに。かわいそに」
「下の子はまだ10歳だろ?
どうすんだろうな」

一度開いたパンドラの箱はもう閉められない
ー4年前ー
「俺、アイドルになりたいんだ。」
「アイドル?」
「うん。歌って、踊って見てくれる人みんな笑顔で。そんなステージに俺は立ちたいんだ。」
「お兄ちゃんならできるよ。きっと。
お兄ちゃんがアイドルになったら私も
アイドルをなりたい。ステージでキラキラ
しているアイドルに」
俺は翌年にあるアイドルオーディションに
向けてがむしゃらに頑張った。
歌も、踊りも。父さんも母さんもまだ生き
てて頑張れって、絶対にライブ見に行くって
応援してくれて。

でも、アイドルになる前に父さんも母さんも不慮の事故で亡くなった。
夕飯の買い物に行く途中だった。
俺と舞は留守番をしていて、
2人で遅いなって話してたところに
近所のおばさんが血相を変えて、
ー事故に遭ったー

すぐに舞と一緒におばさんの車に乗せてもらって病院へ行った。
「手は尽くしましたが」
告げられたその一言で全てを悟った。 
先生から説明を受けたり、その後の流れなどを聞いたが頭に入ってこなかった。
(何言ってるんだろう。父さんも母さんも
まだ生きてるのに。なんでそんなこと言うんだろう)
こんなことばかり頭の中をぐるぐる
回っていた。

お葬儀が行われても別になんとも
思わなかった。
ただ眺めていると制服の裾を舞が引っ張った。
「お兄ちゃん、」
(父さん、母さん。俺が舞を育てる。
これからもっと頑張るから)

でも決意しても上手くはいかなかった。
一気に両親を亡くして不安定になった舞は
笑わなくなった。
(やっぱり俺だけじゃ駄目かな)
俺も自暴自棄になって
オーディションのために歌って踊って
舞を蔑ろにした。
そして1年後。オーディションに合格した俺は
寮に住むようになった。
今思えば、小学生の子供を1人で居させるって
正気の沙汰じゃなかったな。
笑わなくなった=しっかりしたって勝手に
解釈して舞を1人にした。

過去の約束がパンドラの箱を開けるって皮肉でしかない。
「ほんと、皮肉だよな」
舞も仲間に恵まれてよかった。
でも仲間が更なる皮肉になるなんて今の俺は
思いもしなかった。

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