虹色の薔薇が咲く場所は

如月 りん

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2章 セカンドライブ

91話 ごめんなさい

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翌日、私たちは千鶴さんの車で
事務所に向かい2階にある
レコーディングスタジオへ。

初めて見る機械に興奮が抑えられない。
(本当に自分たちの歌がCDになるんだ)
昨日辺里くんたちが帰った後、かなり練習
したけど不安しかない。 
「「「「よろしくお願いします」」」」

まずはメインだ。
4人で時間を区切り、スタジオを使って収録をする。が、うまくいかない。
わかっていたはずだったのにわかっている
つもりでいたんだと痛感する。
ミスをするたびに罪悪感がのしかかる。
スタミナもどんどんすり減るので集中力が
少しずつ減る、間違えてはいけないと
いうプレッシャーが膨れ上がりパートが
遅れたり抜けたりしてそして
「今日はもう終わりにしようか」
担当さんから冷たく発せられた言葉が
胸を締め付ける

「類くんから始まって舞ちゃん、蓮くん
雪希ちゃん、計3時間この後も別のグループの収録があるんだ。悪いけど、今日はもう、
ここまでだ。」
「「「「・・・はい」」」」
時計を見ると19時55分を指していた

帰りの車の中で
「大丈夫ですか?」
「すみません、次はちゃんとできるように
します」
千鶴さんの言葉に力無く類は答えた。
握っていたスマホが明るくなる。

今から来ないか、
仕事で舞たちの寮の近くに来ている
んだ。近況報告会しないとか?

とのことだ。場所はーー
一応、みんなに聞いたが渋っていた。

正直、私も今は翔には会いたくない。
スマホのメールを開き
ごめん。今日は私含めみんな疲れてるから
また今度でいいかな。皆さんにごめんなさいって言っといて。
と送り電源を切る。

千鶴さんに寮まで送ってもらい
中に入るが空気は重かった。
次のレコーディングは来週の土曜日。

(それまでに完璧にしてみせる。
そういえば家に帰ることなかったな。
あー、だめだ宿題やらないと。
夕食もまだだな。)

とりあえず数学の教科書をめくり
ノートを開く。
宿題をしようとしてもレコーディングが
頭から離れない。
(出来なかった。担当の方たちにも迷惑を
かけた。蓮たちの足を引っ張っることになったかな)
出来なかった、
その事実だけが残る。

(悔しかった、惨めに思える。たった一回。
たった一回で落ち込んでちゃいけない。
分かってる)
でもノートにシミがつく。
声は出さないようにと必死に唇をかむ。
教科書に添えている手に力が入り、
グシャと音を立てシワがつく。

「ごめん、ごめんなさい」
宿題をできそうにないので重ねて
机の端に置く。
ティッシュで鼻をかんだが嗚咽で呼吸が
不規則になり咽せる。
呼吸を穏やかにしようとゆっくり4カウントをしながら深呼吸を繰り返す。
鼻をかみ深呼吸を繰り返して約20分後。

落ち着いてきた頃、部屋のドアがノックされ
類の声が聞こえる。
「舞、さっきコンビニ行ってきて
サンドイッチとか買ってきたんだ。
雪希と蓮にも言ったんだけど返事だけ返ってきて部屋から出てこなくて。
冷蔵庫に入ってるからよかったら。」
「ありがとう、類。後でいただくね」
少し間が空いて寂しそうな
「うん」
が聞こえ足音が遠のく。
(ごめん、類)

食欲がなくシャワーだけ浴びて浴室を出て
てベットに入る。
時刻は22時になっていた。
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