上 下
64 / 266
1章 ファーストライブ

64話 失礼します

しおりを挟む
「る、類。舞、雪希も」
俺の前に3人は現れた
「な、なんでここに」
「まぁ細かいことはいいじゃん」
舞はサラッと言った
(細かいか?)

「人の家に勝手に上がり込んで、何しにきた。というかどこから入ってきた」
父さんは類たちを指差して言った。
「すみません、玄関が空いていたので上がらせてもらいました。何しにした、ですか。
俺たちの仲間を迎えにきたんです」
類は笑顔であっけらかんに応えた。
仲間、どうせ口先だけだと思ってしまう俺は
捻くれてるな。
こんな俺が自分が1番大嫌い。

俯く俺に雪希と舞が軽く肩を叩く。
「では、俺たちは失礼します。」
俺は類に手を引かれて家を出る。
後から来た雪希と舞。雪希は俺の荷物を肩にかけている。
「ごめん、みんな。迷惑かけて」
呟きに類にたちは顔を見合わせ笑う
「蓮にとって迷惑だと思っても俺たちは
迷惑だなんて思ってない」
「え、」
「それに、認められないって言ってたけどそれは違う、俺たちはとっくに蓮を認めているよ。蓮にとって、親に認められることが価値観なら俺はそれを否定する」
類は首を振り、雪希に視線を送る。

「親に認められなくてもいいんじゃないかな。なにも認めてる存在が親だけって縛りはない。兄弟でもいい、祖父母でもいい、
友達でもいい、仲間でもいい。」
雪希は微笑んだ、が

「どうして、どうして俺を認めてくれる?」
「どうして、かぁ」
視線を落とし項垂れる俺に
今度は舞が話し出す。
「認めるってさ、実際は結構難しいよね。
だってこれをこうしたら認めるって基準がないんだもん。でも、好きだよ、私たちは蓮のことが大好きだよ。大好きだから一緒にいたい。活動したい。これだけじゃだめかな?」
舞は頬を掻き、眉を下げて言った。

(こんな、こんな近くにいたんだ。
認めてくれる、いや、
認めてくれていた存在が3人も)
「ありがとう、認めてくれて」
「僕たちだけじゃないよ」
「え?」
訳がわからないまま、寮へ戻る俺たち。

テーブルの上には大量の
「これは?」
「ファンレターだよ」
類はそう言って一つを手に取り俺に渡す
宛名はRainbow Roseの蓮くんへ。
シールを丁寧に剥がし便箋を読む。

ファンレターを書くのは初めてでこれで合っているのかわかりませんがどうしても伝えたくて出させてもらいました。
デビューライブを娘と一緒に見ました。
初めてのライブで緊張しているのか
声も振りも震えているのを感じました。
でも頑張っている姿に勇気をもらいました。
最近は仕事と家事の板挟みで軽いノイローゼ
気味でしたか、Rainbow Roseの特に蓮くん
に前を向ける力をもらいました。
ありがとうございます。
前回のライブで姿が見えなかったので
心配しました。学業との両立、大変かもしれません。私も娘も応援しています。 

丁寧な字で綴られた便箋、封筒の中には
俺の担当色のクレヨンでがんばれと拙い字で書いてあった。

(俺を認めて、応援してくれる人がこんなにいるんだ)
感無量で潤む目を擦る。
「これでも、まだ自分は認められてないって思う?」
類の問いに首を振る。
(誰かに認められたくて
俺はアイドルになったんだ)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

It's Summer Vacation.

多田莉都
青春
中学3年生のユカは、成績が思うように伸びない日々が続いていた。 夏休み前の塾内模試の結果により、遂に最上位クラスのSクラスから落ちてしまった。 失意の底にあったユカは、塾からの帰り道に同じマンションに住む幼馴染のアカネ、リサと久しぶりに会う。 幼馴染といてもうまく笑うことのできないユカにリサが言った。 「じゃあ、明日、三人で遊びに行こうよ」

本当にあった怖い話

邪神 白猫
ホラー
リスナーさんや読者の方から聞いた体験談【本当にあった怖い話】を基にして書いたオムニバスになります。 完結としますが、体験談が追加され次第更新します。 LINEオプチャにて、体験談募集中✨ あなたの体験談、投稿してみませんか? 投稿された体験談は、YouTubeにて朗読させて頂く場合があります。 【邪神白猫】で検索してみてね🐱 ↓YouTubeにて、朗読中(コピペで飛んでください) https://youtube.com/@yuachanRio ※登場する施設名や人物名などは全て架空です。

偶然なんてそんなもの

桃井すもも
恋愛
偶然だなんて、こんなよく出来たことってある?   巷で話題の小説も、令嬢達に人気の観劇も、秘めた話しの現場は図書室って相場が決まってる。 けれど目の前で愛を囁かれてるのは、私の婚約者なのだけれど! ショートショート 「アダムとイヴ」 「ままならないのが恋心」 に連なります。どうぞそちらも合わせて二度お楽しみ下さい。 ❇100%妄想の産物です。 ❇あぁ~今日も頑張った、もう寝ようって頃にお気軽にお読み下さい。 私も、あぁ~今日も妄想海岸泳ぎ切った、もう寝ようって頃に書いてます。 ❇妄想スイマーと共に遠泳下さる方にお楽しみ頂けますと泳ぎ甲斐があります。

彼女に二股されて仲間からもハブられたらボッチの高嶺の花のクラスメイトが高校デビューしたいって脅してきた

すずと
青春
 高校生活を彼女や仲間たちと楽しく過ごしていた枚方京太はある日、彼女が他の男といる現場に遭遇してしまう。  彼女の二股が発覚したあくる日、京太が二股をしたことになり仲間たちから卑下されてハブられてしまう。  楽しかった高校生活から一変、二股クソやろうのレッテルを貼られてしまい、暗い高校生活となってしまった京太。  高校2年の5月。  京太は高嶺の花のクラスメイト、東堂優乃の着替え中に教室に入ってしまった。  着替えを見られた優乃は、慌てながらも京太に近づいて、スマホでなぜかツーショットを撮りだした。 「わ、わたしを高校デビューさせてください。さもないとこの写真をばらまきます」  彼女に二股されて仲間からもハブられたらボッチの高嶺の花のクラスメイトが高校デビューしたいって脅してきた京太の新しい高校生活が幕を開ける。

バスでのオムツ体験

rtokpr
エッセイ・ノンフィクション
バスで女の子がオムツを履く話です

警視庁雑務部雑務総務課〜父の無実の罪を晴らすため就職しました〜

産屋敷 九十九
ミステリー
 アクションミステリー×ローファンタジー  アメジストクルーズ船自爆テロ事件。  乗客員2532人、乗組員1211人死亡。生存者は0人。  原因は、超能力者による自爆テロとされた。  爆発の元となった能力は、『パイロキネシス』だった。  この船には、高良正人の父が乗っていた。  正人の父も超能力者であり、その能力はパイロキネシスだった。  テロの実行犯は父とされた。 「父さんはやってない!」  正人は、父が実行犯でないと確信していた。  父の無実を立証するため、正人は決意する。  "俺は、警視庁に就職する"  父の無実の罪を晴らすために!

その女子高生は痴漢されたい

冲田
青春
このお話はフィクションです。痴漢は絶対にダメです! 痴漢に嫌悪感がある方は読まない方がいいです。 あの子も、あの子まで痴漢に遭っているのに、私だけ狙われないなんて悔しい! その女子高生は、今日も痴漢に遭いたくて朝の満員電車に挑みます。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...