虹色の薔薇が咲く場所は

如月 りん

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1章 ファーストライブ

55話 何度でも

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衣装の変更、曲のパート変更などがあるから
1週間はレッスン休みに決まった。
事務所に呼ばれたのは午前中だけで済み、
午後は病院に行こうと決めた。

帰り道
「類って、」
「ん?」
「もっと色々いうのかと思ってた。」
「色々?」
「うん、断固反対です、とか俺は意志を曲げませんとか」
(自覚ないのか)
「誰かさんが言いたいこと全部言っちゃったからな」
笑顔で言うと、
「ご、ごめん」
と焦る声で返ってきた。

「冗談、冗談」
お昼はコンビニのサンドイッチで済ませ、その足で病院へ。
舞が俺たちを忘れているなんて夢にも思わなかった。


舞が起きて安心して泣いてしまった。
類の言葉の後に紡がれたのは
ーあのさっきから何を言っているんですか?ー
動揺を隠せない。
「ま、舞?」
僕の言葉に舞は眉を顰め
「私を知ってる?失礼ですけどお名前を聞いても?」
「あ、蒼葉類」
類は動揺を隠せずに言った。
当たり前だ、僕だって頭が真っ白だ。
「中原雪希、」
「類くん、雪希ちゃん・・・。ごめんなさい、
どこかで会いましたっけ?」
「あ、」

あったどころかずっと一緒にいたよ!
慌てて口を閉ざす。今の舞に行っても不信感を募らせるだけ
(雪希ちゃん、本当にわからないんだ)

類はナースコールで看護婦さんを呼び、先生を連れてきてもらうようにお願いした。
「自分の名前を書けますか?」
先生からボールペンを借りサラサラと自分の名前を漢字で書いた。

「自分の通っている学校は?」
「川桜学園です」
「12×8は?」
「96です」
となんなく答えていたが
「この二人のことは分かりますか?」
先生は視線を僕たちに向けたが
舞は首を傾げ、ゆっくり振った。
その後先生から説明があったがほとんど
頭に入らなかった。
(忘れられるってこんなに辛いんだ)

数日後、舞は僕たちの寮へ帰ってきた。
テーブルの上に積まれた手紙
全てファンレター、
でも今は見る気にはなれない。
「ここは、」
「僕たちは訳あってここで暮らしてるんだ」
「改めて、蒼葉類です」
「中原雪希、よろしくね」
「「はじめまして」」
「日比谷舞です。よろしくお願いします」


舞が退院する前に2人で話し合った。
僕たちのことがわからないってことは
自分がアイドルをしていたことも知らない
と思う。
電話で記憶を無くしたと杏奈さんに伝えると
検討するから待ってほしいと言われ、
次の日に類と僕、交互にレッスンすることに
決まった。

約1ヶ月後、
僕と類はクリスマスライブのために家を出た。
舞を家に1人で居させるのは心配だったが、
仕方がない。
ステージでは、盛り上がりが低かった。
(やっぱり2人じゃダメだよね)
控え室でも類は浮かない顔をしていた。


類と雪希は予定があるらしく、私は寮で1人テレビを見ていた。
「次はRainbow Roseです」
司会者がそういうと、類と雪希が出てきた。
(2人ともアイドルしてるんだ、すごいな。私にはステージとか
縁遠いな)
そう思った瞬間、頭が痛くなる。

「っ、」
頭の左側を押さえる。
だんだん痛みが激しくなる。
「なんで、急、に」
数分すると波が引くようにゆっくりと痛みが引いていく。
「な、なんだったんだろう」
テレビに視線を戻ると
次のグループに変わるところだった。
「Rainbow Rose、」
聞き慣れない言葉なのになんか安心する。
「まぁ、気のせいだよね」
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