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2.姫(?)との出会い
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茂みの中で倒れている、お姫様のような貴族を見つけてしまった。
事故でも事件になりそうだ。とっさに逃げようと思うも、踏みとどまって軽く手首を握る。
…脈がある!
でも息はしていない。よく見るとかきむしったような首筋にある傷は新しい。
口元からつんと鼻をさす臭いがした。なにか詰まっている。
手袋をして口の奥に指を差し込み、人差し指と親指を交差させる。なにか粘るものを感じ指に絡めて引っこ抜く。
「カハッ!……ゴホッ!」
倒れていたお姫様は息を取り戻した。ひどく咳き込みまだ意識は朦朧としているようだ。まだ何か喉に詰まっているようで、気管からヒューヒュー音がする。
体を起こしうつむかせる。片手で胸を支え、背中の肩甲骨の間を思いっきり何度も叩く。
ドゴンッ、ドゴンッ、ドゴゴンッ!
「グッ、グァァッ、グゥッッ!」
あまりの衝撃に身をよじる姫。
「吐け!まだ詰まってるだろ。ちゃんと咳をして吐き出すんだ。」
「ゴボッ!」
粘性の高いゲル状の物質を吐き出した。
「大丈夫ですか?」
「……………あぁ。」
呼吸が少し楽になったみたいだ。窒息していたのは僅かな時間だったみたいで顔色も戻ってきた。
姫を引きずって川のそばに連れていき、水を飲ませようとする。
「飲んでください。」
「……いや、いい。」
私が見知らぬ人間だと気がついたようで警戒心を顕にする。というか貴族は湧き水なんて飲まないのも。あいにくここには牛乳なんてない。でも
「まだ胃の中に残ってますよ。水を飲まないと。」
湧き水を私が飲んでみせて安全を証明すると、やっと水をすくって飲む。
「もっと飲む。」
高圧的な態度で命令すると今度は素直に従った。
両手で水をすくい、少しづつ飲んでゆく。袖から白く細い手首がのぞく。
本当にきれいな子だ。ダークブロンドの髪に青い瞳。年は同じくらいの16,7歳くらいだろうか。貴族の子は発育がいいから、もう少し下かもしれない。
最初は女の子かと思ったが、服装からして男性みたいだ。でも体の線がすごく細い。もし私みたいに男装している女の子だったら是非知り合いになりたい。
そろそろかな。
「ちょっと失礼します。」
「ぅわっ!何をするっ!!!」
姫の背後に回り込み腕を回す。相手の鳩尾やや下で握りこぶしをつくる。反対の手で握りこぶしを握り、ぐっと体を密着させる。腹部を圧迫しないよう、前方上に体を引き上げる。
「体内に残った変な物、全部出しちゃいましょう!」
「お前っ! 王子に何をしている!!!」
おうじ?
え?……王子⁉このお姫様が⁉
グボォォォォッ!
「王子ぃぃーーーー!!」
圧迫された胃から、飲んだ水と共にドロリとした塊が出てきた。
植え込みを越えて現れた騎士の様な人が駆け寄ってくる。姫………ではなく王子を私から奪い取り様子を確認した。
倒れていたから気が付かなかったが、姫の……王子の胸にあるエンブレムは王家の紋様である白百合が彫ってある。
王子に目立った外傷が無く安心したのか、騎士の関心がこちらに向いた。
「お前、大人しく両手を前に出せ。子供に乱暴はしたくない。」
あれ?逮捕されそう。
「それより、王子様を急いで医者に連れて行かないと。毒物を飲んだかもしれませんよ。」
そこでやっと騎士は王子様の吐瀉物に気がついたようだ。
「小僧!シャルル殿下に何を飲ませた!」
「いや、知りませんけど。」
完全に犯人扱いだ。でも吐かせるところだけしか見てないなら仕方ないかもしれない。
しかしこのまま問答していたらシャルル殿下とやらを医者に看せるのが遅くなりそうだ。
よし、逃げよう。
無実の罪による尋問を喜んで受けるほど庶民は暇じゃない。労働階級なめんなよ!!!
勢いよく走り出した私の背中に「止まれ!」と怒鳴り声がかかる。
「あの子は…大丈夫だ……」
シャルル殿下が声を絞り出し擁護してくれる声が小さく聞こえた。容態が気になるが王族なら医者を選び放題だから大丈夫だろう。
新たなる追手を向けられる前に図書館から駆け出す。急いでいたため門のところで馬車に引かれそうになった。
「危ないじゃない!!気をつけなさいよ!!!」
「…すみ……ません」
走りっぱなしで上がった息できれ切れに謝った。
鍵のかかった馬車の中から若い女性が叫んだ。
「子供を引くところだったのよ!!!ちゃんと確認なさい!!!」
怒られているのは私じゃなく御者だったようだ。御者側の壁を割れんばかりに叩き怒鳴っている。呆気にとられる私を残して馬車は走り去っていった。
その後なんとか研究所へたどり着き、教授に頼まれていた文献を渡した。
「どうしたクーや。顔色が悪いが、具合が悪いのか?」
「今日、図書館で…」
シャルル殿下を見つけ、処置を行ったことを話した。
「私はすべきことを行ったつもりだけど、傍からみたら手荒で、王族に手を上げたとして捕まるかも…」
自分で言いながら事の重大性に気がつく。どんどん顔色が悪くなる私を見ながら教授が口元の髭をもふもふと動かす。
「………とりあえず、組成分析でもするかの。」
手袋についた吐瀉物を指して言った。
事故でも事件になりそうだ。とっさに逃げようと思うも、踏みとどまって軽く手首を握る。
…脈がある!
でも息はしていない。よく見るとかきむしったような首筋にある傷は新しい。
口元からつんと鼻をさす臭いがした。なにか詰まっている。
手袋をして口の奥に指を差し込み、人差し指と親指を交差させる。なにか粘るものを感じ指に絡めて引っこ抜く。
「カハッ!……ゴホッ!」
倒れていたお姫様は息を取り戻した。ひどく咳き込みまだ意識は朦朧としているようだ。まだ何か喉に詰まっているようで、気管からヒューヒュー音がする。
体を起こしうつむかせる。片手で胸を支え、背中の肩甲骨の間を思いっきり何度も叩く。
ドゴンッ、ドゴンッ、ドゴゴンッ!
「グッ、グァァッ、グゥッッ!」
あまりの衝撃に身をよじる姫。
「吐け!まだ詰まってるだろ。ちゃんと咳をして吐き出すんだ。」
「ゴボッ!」
粘性の高いゲル状の物質を吐き出した。
「大丈夫ですか?」
「……………あぁ。」
呼吸が少し楽になったみたいだ。窒息していたのは僅かな時間だったみたいで顔色も戻ってきた。
姫を引きずって川のそばに連れていき、水を飲ませようとする。
「飲んでください。」
「……いや、いい。」
私が見知らぬ人間だと気がついたようで警戒心を顕にする。というか貴族は湧き水なんて飲まないのも。あいにくここには牛乳なんてない。でも
「まだ胃の中に残ってますよ。水を飲まないと。」
湧き水を私が飲んでみせて安全を証明すると、やっと水をすくって飲む。
「もっと飲む。」
高圧的な態度で命令すると今度は素直に従った。
両手で水をすくい、少しづつ飲んでゆく。袖から白く細い手首がのぞく。
本当にきれいな子だ。ダークブロンドの髪に青い瞳。年は同じくらいの16,7歳くらいだろうか。貴族の子は発育がいいから、もう少し下かもしれない。
最初は女の子かと思ったが、服装からして男性みたいだ。でも体の線がすごく細い。もし私みたいに男装している女の子だったら是非知り合いになりたい。
そろそろかな。
「ちょっと失礼します。」
「ぅわっ!何をするっ!!!」
姫の背後に回り込み腕を回す。相手の鳩尾やや下で握りこぶしをつくる。反対の手で握りこぶしを握り、ぐっと体を密着させる。腹部を圧迫しないよう、前方上に体を引き上げる。
「体内に残った変な物、全部出しちゃいましょう!」
「お前っ! 王子に何をしている!!!」
おうじ?
え?……王子⁉このお姫様が⁉
グボォォォォッ!
「王子ぃぃーーーー!!」
圧迫された胃から、飲んだ水と共にドロリとした塊が出てきた。
植え込みを越えて現れた騎士の様な人が駆け寄ってくる。姫………ではなく王子を私から奪い取り様子を確認した。
倒れていたから気が付かなかったが、姫の……王子の胸にあるエンブレムは王家の紋様である白百合が彫ってある。
王子に目立った外傷が無く安心したのか、騎士の関心がこちらに向いた。
「お前、大人しく両手を前に出せ。子供に乱暴はしたくない。」
あれ?逮捕されそう。
「それより、王子様を急いで医者に連れて行かないと。毒物を飲んだかもしれませんよ。」
そこでやっと騎士は王子様の吐瀉物に気がついたようだ。
「小僧!シャルル殿下に何を飲ませた!」
「いや、知りませんけど。」
完全に犯人扱いだ。でも吐かせるところだけしか見てないなら仕方ないかもしれない。
しかしこのまま問答していたらシャルル殿下とやらを医者に看せるのが遅くなりそうだ。
よし、逃げよう。
無実の罪による尋問を喜んで受けるほど庶民は暇じゃない。労働階級なめんなよ!!!
勢いよく走り出した私の背中に「止まれ!」と怒鳴り声がかかる。
「あの子は…大丈夫だ……」
シャルル殿下が声を絞り出し擁護してくれる声が小さく聞こえた。容態が気になるが王族なら医者を選び放題だから大丈夫だろう。
新たなる追手を向けられる前に図書館から駆け出す。急いでいたため門のところで馬車に引かれそうになった。
「危ないじゃない!!気をつけなさいよ!!!」
「…すみ……ません」
走りっぱなしで上がった息できれ切れに謝った。
鍵のかかった馬車の中から若い女性が叫んだ。
「子供を引くところだったのよ!!!ちゃんと確認なさい!!!」
怒られているのは私じゃなく御者だったようだ。御者側の壁を割れんばかりに叩き怒鳴っている。呆気にとられる私を残して馬車は走り去っていった。
その後なんとか研究所へたどり着き、教授に頼まれていた文献を渡した。
「どうしたクーや。顔色が悪いが、具合が悪いのか?」
「今日、図書館で…」
シャルル殿下を見つけ、処置を行ったことを話した。
「私はすべきことを行ったつもりだけど、傍からみたら手荒で、王族に手を上げたとして捕まるかも…」
自分で言いながら事の重大性に気がつく。どんどん顔色が悪くなる私を見ながら教授が口元の髭をもふもふと動かす。
「………とりあえず、組成分析でもするかの。」
手袋についた吐瀉物を指して言った。
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