カンカカリャ

ムロヒ

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これは今から82年前、当時夏の季節で俺のおじぃが小学生1年生の時に体験した話

当時の時代には全部の家にエアコンがある訳でも無くおじぃの実家にもエアコンが無かったので夜にエアコンをつける風習がなく戸を開けて夜風にあたりながら寝るのが多かった

昔の古い瓦屋根の一戸建てなどは玄関やベランダだけでなく廊下にも大きな窓を設けて、家全体に風が通るように工夫されている作りをしている

その夜はまだ少し涼しいくらいで戸を開けながら家族で雑魚寝して寝ていると戸を開けているので蚊が入ってくる家族は慣れていて寝ながら無意識にパチンパチンと叩きながら蚊を退治する
このパチンパチンとする音で少し目が覚める
時間は覚えてなく深夜くらいだったと思う
少し目を開けると戸を開けていた縁側の外に人影が見えた

「ん?何か見える何だろうあれは?」

最初は蚊を退治している祖母かと思っていた

そう思いながらずっと見ているとポンポンと背中を叩く感覚がした

「にぃにぃあれ見える?分かる?」

と後ろで言ってきた
その時祖母の声だと感じた

【あれ?じゃ縁側にいるのは祖母じゃないんだ】

と思ってよ~く見ると祖母じゃない
縁側にいた何かが手に木の枝みたいな物を持ってブンブン振り回している

「ハハ!ブンブンブンブン」

最初は木の枝を振り回しているのかなと思ったがよくよく見るとそれは木の枝のような細長い指だった
指は5本ある細くて長い指をブンブンと振り回しているそんな光景

するとまた後ろから祖母が

「にぃにぃあれ見える?分かる?」

と言ってきた

『うんうん…』

声を出して返事したわけじゃなく頷く様にうんうんと祖母の問いに答えた
そのちょっとした祖母とのやりとりでパッと向こうが気がついてこっちを見ている
様子を伺う様にこっちを見ている
その時に再び後ろからポンポンと祖母が背中を叩き

「にぃにぃあれ見える?分かる?」

“にぃにぃ”は方言でお兄ちゃんって意味

「うんうん分かる分かる見える」

縁側にいたそいつがこっちに気づいているもんだから怖くなった
ずっとこっちを見ながら段々とスーと近づいてくる
怖くなって固まってしまった眠ろうと目を閉じ

「はぁ…早くどっか行け!行ってくれ」

と寝たふりをしたでもずっと後ろから祖母がポンポン背中を叩いてくる

「にぃにぃあれ見える?分かる?」

あまりにも背中を叩くので少しイライラした

「だから分かるよちょっと黙っててよあっちは気づいていてこっち向かって来てるから」

それでも背中を叩いて
ポンポン
「にぃにぃ分かる?分かる?」

と言ってきたペースも段々早くなってきて
ポンポン
「にぃにぃ分かる?分かる?」
ポンポン
「分かる?分かる?」
ポンポン
「分かる?分かる?」
ポンポン
「分かる?分かる?分かる?分かる?分かる?」

その瞬間後ろから
「ぎゃははははははははははははははっはっは」

と笑い声がしてきてビクッとして目を開けるとさっき目の前に向かってきていた得体の知れないそいつが実は祖母だった

「どうしたの?大丈夫ね?」

と祖母は心配そうに見ている

「え?後ろから背中を叩いていたの祖母じゃないの?」

でも実際に縁側で見た人影だったよく分からない物が実は祖母で後ろから背中をポンポン叩いていた物が全く何だったのか分からなかったのだ
寝ぼけていたんだろうか?

その一連の出来事を祖母に話した
その日の朝祖母はすぐにカンカカリャ(神人)に見てもらう事にした

余談なんですが
俺が今お世話になっているカンカカリャ
そのカンカカリャの”祖母“が当時おじぃを見てくれたカンカカリャだった事を聞かされ今でも代々受け継いでいる事に凄さを感じる

当時小学生だったおじぃはカンカカリャに深夜に起きた一連の出来事をカンカカリャに話すと

「ああ!あんたは雄のセーマにからかわれたね!
雄のセーマは寝ているときに襲って金縛りにする子供の姿した精霊だよイタズラ好きでね
でもセーマを決して怒らせるんじゃないよ唯一カンカカリャでも手に負えないのが精霊セーマ怒らせると精気を吸い取って心はもぬけの殻になり死に向かうよそうなったらマブイグミも出来ないからね」

そう言われると当時小学生だったおじぃにとっては怖くなってしまったと言う

明日からちょうど夏休み期間に入っており
朝日も登らない時間でまだ少し薄暗い早朝から起きボーッと目を擦りながら学校へ行き学校のグラウンドでみんなでラジオ体操をする
ラジオ体操をしているとグランドの真ん中に昨日深夜に見た人影がポンっといきなり出てきた

「あ!あれは昨日夜に見た人影?セーマ?」

セーマはこっちを見てニヤニヤ笑っている様な感じ

「ハハ!アハハ」

その時小馬鹿にされてると思い腹が立ってセーマのところに忍び寄り後ろから

「わぁーーーーーーーー」

と大きな声で脅かした
そしたらセーマはビクッとした瞬間に凄い剣幕で怒って飛びついてきた結構長い爪で背中を引っ掻き噛んできた

「わぁ痛い助けてみんな助けて」

助けを求めたがグランドにいた友達はこっちを見てケラケラ笑っているだけだった

「へ?何で?みんな助けてくれないの?」

何とか自力でバッと追払うことができセーマは学校に植えられている大きいガジュマルの木の方に逃げて行った
背中と腕は傷だらけ少し血も出ており痛い痛いと言っているとグランドで笑って見ていた友達が

「何で琉球犬とケンカしてるんだよ」

と言ってきた

「え?犬?違うよセーマ?って言う精霊が襲って来たんだよ」

そう言ったが友達は

「普通に琉球犬だよ」

そう言われセーマが逃げた方を見ると確かに琉球犬が逃げているのが見える

「あれ?おかしいな…何だったんだろう今のは…」

そう言って家に帰ると家には祖母とカンカカリャが話をしていたカンカカリャは心配で様子を見に来てくれていた

「ありゃまたセーマにからかわれたんだね背中見せてごらん」

カンカカリャは小瓶を取り出し中は茶色の液体が入っていた

「これを塗ると治りが早くなるからね」

何とそれを傷に塗ると数時間で治って痛みも消えた
良かったと安堵した

「今回これだけで済んで良かったね」

とカンカカリャは言った
さらにカンカカリャはセーマについて実際に人が襲われた話してくれた

「本来セーマを怒らせるとまず命があぶないセーマは匂いに敏感で男が面白半分でセーマに向かって放屁しセーマが激怒して足を引きずられ海に突き放され深みにはまって溺れて死んでしまったんだよ今回背中の傷だけで良かった」

と色々他にもセーマについて話をしてくれた
カンカカリャのアドバイスとしてこれから見えたら怖がらずに無視が1番という見えても見えないフリをするのが一番だと教わった
なぜなら精霊のせいで気が乱れてしまうとカンカカリャでさえも正常に気を整える事が出来ないと言う

セーマは色んな物に化ける相手に幻覚を見せたり人に悪さをする精魔
他に精霊には草木、動物、人、無生物、人工物などひとつひとつに宿っているとされる超自然的な存在だと説明されたさらにカンカカリャは言った

「精霊は万物の根源をなしているとされる不思議な“気”を持って肉体から解放された自由な霊なのだよ」

カンカカリャは今回の精霊はガジュマルの木に宿る木の精霊だったと教えられた

それからおじぃはガジュマルの木には今でも近づかないようにしていると言っていた


これが今回俺のおじぃが小学生の時に不思議な体験をした話

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