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第十七話

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【ハノ社長室】

ロム会長
「今日時間はあるか?」

ハノ社長
「時間は…有り余ってる」

ロム会長
「一緒に買い出しに」

ハノ社長
「買い出し?」

ロム会長
「庭でバーベキューをする」

ハノ社長
「バーベキュー?」

ロム会長
「そうだ!」


【精肉店】

ハノ社長
「牛と豚を部位別に全部買おう!お前は豚肉を選べ」

ロム会長
「ああ!」

ハノ社長
「炭火で焼くソーセージはフライパンで焼くのとは次元が違う」

ロム会長
「そうか!」

ハノ社長
「芋類も買おうこいつらが炭火に入るとあら不思議おいしさ倍増」

ロム会長
「次は?」

ハノ社長
「最高の材料を買って僕が調理するならおいしいに決まってる!あああっ僕とした事が酒を買うのを忘れてた取りに行こう」

ロム会長
「いや結構!ここでお別れだ助かったよ明日会社で会おうじゃぁな!」

ハノ社長
「僕と食べるんじゃ?」

会計を済ませロム会長はそそくさと車に乗り込み帰った

ハノ社長
「おいちょっと待てよ!おい僕を弄んだのか?おーい!お前って底意地が悪い!」

数時間後


【ニコ店長の家】

ニコ店長
「…」
メール
“ニコ店長、今日夜会わないか?贈り物がある!”

ハル
「何?照れてどうしたの?まさかデートの申し込み?」

ニコ店長
「まさかスーパーから連絡が来たの!カニが特売日だと今から買いに行くからハルは今日は帰って」

ハル
「何でスーパーからメールが来るのよ変でしょ?」

ニコ店長
「いいから今日は帰ってね!」

ハル
「分かった…」

【夜7時】

ニコ店長
「やば!早く準備しないと着飾る必要ないわよね!ベースメイクは透明感より健康肌を意識して…
目とリップを強調し、眉と頬は目立たせない方が良いわね!
アイメイクは、切れ長なアーモンドアイを作る!
よし!完璧!髪はコテで巻こう26ミリの大きいカールを作って服は…この前買ったやつでいいかな」

30分後

ニコ店長
「やば!結婚式に行くみたいになっちゃった!いやもうこれでいい!約束の時間まで30分しかない」

【ロム会長御殿】

ニコ店長
「会長庭で何してるんですか?」

ロム会長
「ニ、ニコ…ニコ?いつからギャルになったんだ?」

ニコ店長
「何よ!ギャルって!」

ロム会長
「冗談だ!とても綺麗だ!」

ニコ店長
「ありがとうございます恐縮です!ところでこれは何してるんですか?」

ロム会長
「何ってバーベキューしてワインでも飲もう!肉好きだろ?国産肉だ!高級な肉を特別用意した素敵な贈り物だろ?」

ニコ店長
「ええ!素敵です!あああ肉裏返さないと!」

ロム会長
「おっと!あーあ焦がした」

ニコ店長
「また焼きましょ」

ロム会長
「もう肉がない」

ニコ店長
「え?」

ロム会長
「ほら!」

ニコ店長
「全部焦がしたんですか?」

ロム会長
「ああ初めて焼くからな俺にも苦手があったようだ!その方が人間味を感じるだろ?」

ニコ店長
「アハハ!そうですね。」

ロム会長
「それにしても困ったな肉買ってこようか?また俺が焼くから!」

ニコ店長
「いいえ!結構です!」

ロム会長
「怒ってる?」

ニコ店長
「いいえ!ピザが食べたいですピザを頼みましょ」

ニコ店長はピザを頼んだ
数分後ピザが届く

ロム会長
「バーベキューがよかった」

ニコ店長
「いいえ食材全部焦がされてはもったいないです私ピザも好きなので一緒に食べましょ」

ロム会長
「そうだな!はいコレ!」

ニコ店長
「どうもありがとう!」

ロム会長
「ニコ店長、唇にチーズ付いてる!」

ニコ店長
「やだ…ここ?」

ロム会長
「そこじゃない違う!」

ロム会長がニコ店長の唇に触れる見つめ合う2人
そしてニコ店長が目を閉じる

ロム会長
「…」

ニコ店長
「…」

ロム会長も目つぶりキスをしようとしたが、過去のトラウマが頭をよぎる中年の女性、過去の記憶が蘇る

“坊やおいで!一緒にいきましょう!1人はイヤ!暴れないで!一緒に行くのよ”

ロム会長は思わずビクッと目を開けてニコ店長から少し離れる

ニコ店長
「あはは!また?どちらに突き放しますか?心の準備をします、こちら?あちら?」

ロム会長
「ニコ…実は…」

そこにハノ社長が来た

ハノ社長
「ロム!僕を捨てて一体何を…」

2人は慌てて離れるニコは立ち上がりロム会長は離れたソファに飛び込む

ハノ社長
「あ…ごめん2人でお楽しみ中か…肉に合う酒を持ってきたけど…余計なお世話だった…僕は帰るから続きをどうぞ…」

ニコ店長
「いいえ私は帰るところでしたよ!」

ロム会長
「ちょっ!」

ニコ店長
「これで失礼します」

ニコ店長は帰ってしまった
ハノ社長はすぐさまロム会長に駆け寄り土下座をした

ハノ社長
「すまない…僕は大罪を犯した」

ロム会長が睨む

ハノ社長
「本当にすまない…どうか…」


その頃ニコ店長は

ニコ店長
「ハノ社長、タイミングが悪過ぎ!それにまたキスしてくれなかった!絶対何かあるはず!もういい帰ってビール飲も!」



【翌日】

【社長室】

ハノ社長
「昨日はすまない…一緒とは知らず…邪魔したかな?俺また飛ばされるよなぁ?」

ニコ店長
「大丈夫です邪魔される事は何も起きていませんご想像されるような事は決して…」

ハノ社長
「そうか…」

ニコ店長
「社長は会長の足首の傷跡が女性恐怖症と何か関係があると思いませんか?」

ハノ社長
「そういえば知らないって言ったが実は思い出したんだ」

ニコ店長
「何を思い出したんですか?教えて下さい」

ハノ社長
「傷がついた理由は知らないが昔1回だけ見たことがある留学時代ロムはいつも1人で着替えてた更衣室を出ようとした時ドアが閉まる直前一瞬だが確かに見えた両足首の傷跡が」

ニコ店長
「両足首ですか?」

ハノ社長
「古そうな痕で縛られた後みたいだった」

ニコ店長
「縛られただけで後が残るでしょうか?」

ハノ社長
「とにかく何の傷跡か知らないが聞きづらいし教えないだろう!もしかしたら幼少期に女性に足首を縛られたとか?その傷跡が残り女性恐怖症になった」

ニコ店長
「まさかそんな…」

ハノ社長
「きっとその時の事思い出して女性に触れるのが怖いんだよ!」

ニコ店長
「あり得なくもない…」


【会長オフィス】

ロム会長
「はぁ…俺だってキスがしたい…」

ロム会長はスマホを手に取り

メール
“ニコ店長次は必ず甘いキスを…”

ロム会長
「違う!」

メール
“ニコ店長実は俺にはトラウマが”

ロム会長
「ダメだ…違う送れない…」

メール
“克服する俺に克服できないものはない”

ロム会長
「これでよし!」

【スタッフルーム】

ニコ店長
「…」

メール
“克服する俺に克服できないものはない”

ニコ店長
「どういう?何を克服すると?やっぱり会長に何かあった?ロム会長のお母様に聞いてみようかしら?でも余計聞けない…もしお母様が傷の事知らなかったら?」

そこへライから電話が鳴る

ニコ店長
「はい!“握手会のイベントがあるから是非来てくれ”?メディアに顔公開したんですか?分かりました是非行きたいです!明日ですね。ではまた明日」

メール
“会長、明日ライさんのイベントに誘われました”

数分後

メール
“何?俺も行く!”


【翌日】

【イベント会場】

ライがロム会長とニコ店長が2人でいる所を目撃する
ライはメールでニコ店長だけ控え室に呼び出した

ニコ店長
「お呼びですか?2人で話があると」

ライ
「時間はある?」

ニコ店長
「どんなご用で?」

ライ
「スピーチがあるんだスピーチ原稿のチェックをしてくれないか?」

ニコ店長
「え?私が?」

ライ
「人前に出ると思うと緊張する助けて欲しい」

ニコ店長
「ええ私でよければ」

ライ
「助かるよ」

ニコ店長
「私が言うのもあれですが完璧ですペウ先生の価値観と感性が伝わってきます」

ライ
「そう?それにペウ先生って今日はかしこまってどうしたの?でもニコちゃんに言われると安心するよ」

ニコ店長
「では失礼します」

ライはニコ店長の手を掴む

ライ
「ニコちゃん待って!」

そこへロム会長が現れる手を握っている2人

ライ
「ロム!」

ニコ店長はすぐライの手を振り払う

ニコ店長
「…」
(やばい…タイミング悪い)

ロム会長
「…」

ニコ店長
「これはその誤解ですよ!」

ライ
「そんな怖い顔するな手を握ってるだけだろ?」

ロム会長
「…」

ロム会長は黙って控え室をでた不機嫌に足早に立ち去る

ニコ店長
「待って下さい…」

ニコ店長も後を追う

ライ
「待ってこの前の俺の告白の返事を聞かせてくれないか?そんなに俺のことが嫌か?俺はあいつとは違う!」

ニコ店長
「…」

ライ
「…」

ニコ店長
「…」

ニコ店長は何も言わず出て行く
会長に追いつき


ニコ店長
「会長!あれは…」

ロム会長
「別に気にしてない!」

気まずいまま
それからライのイベントが始まった

司会者
「“一度だけの恋”は販売と同時にベストセラーですすごいですよね!」

ライ
「ええまぁ」

司会者
「今回の新刊のタイトルは“あなたへの恋”ですが先生はそんな縁に巡り会いましたか?」

ライ
「ええ最近ね!」

司会者
「本当ですか?」

ライ
「ええ!最近知り合って実はその人の事を想って書いたんです」

ライはニコ店長を見つめる

ニコ店長
「…」
(え?こっち見るって事は私の事?…)

ライはニコ店長を見つめながら

ライ
「その子を絶対に離さないつもりですすべてを懸けて守ります」

司会者
「おおお~」

会場のファンもいきなりの告白にどよめいた

ニコ店長
「…」
(なんか…イヤ)

ロム会長は不機嫌そうに会場を出て行った
ニコ店長は走って追いかけた

ニコ店長
「ちょっと待って下さい会長…相変わらず歩くのが早い…」

ロム会長
「何の用だ?」

ニコ店長
「何の用って帰るんですか?お話があります」

会場の裏で話をする事に

ニコ店長
「さっきの先生が言ってたことそれに手を握っていたことはすべて誤解です」

ロム会長
「説明しなくても俺は受け入れる!メールで言ったろ?“これからは君の好きなようにしてくれ”って」

ニコ店長
「ダメですきちんと説明させてください」

ロム会長
「なぜ?」

ニコ店長
「誤解されたくありません!もう会長と距離ができるのはイヤです」

ロム会長
「なぜ?」

ニコ店長
「好きだから」

ロム会長
「…」

ニコ店長
「何度も告白されたのに返事が遅れました私…会長が好きです」

ロム会長
「…」

ニコ店長
「あ…今のは…」

ニコ店長はこの場から去ろうとする
ロム会長はニコ店長の手を掴み抱き寄せる
ニコ店長の唇を見つめキスをしようとした
ニコ店長も受け入れ目を閉じる
ロム会長の手が震えるなかなかキスができない
ニコ店長がそれに気づきニコ店長はロム会長の頬に手を添えて優しくゆっくりとキスをした

第十八話に続く


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