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知らされた本心
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昼食を食べ終えた後は近くのショッピングモールへと向かい、前回と同じように服屋さんから雑貨屋さんまで気になったお店に二人で入っていく。
この間は自分のものを買うことで頭がいっぱいで、姫乃ちゃんが何か欲しそうにしているか見ていなかった。
今回は姫乃ちゃんの目に止まったものをしっかりとチェックして、こっそり買っておくつもりだ。
そして、今日の料理教室の後にプレゼントしようと思う。
ある服屋さんで、お互いに似合う服を選びあっている時、ふと姫乃ちゃんの方を見ると、一点に目が止まっていた。
それは洋服の間に置かれているイヤリングだった。
そのイヤリングは、桃色のものと藍色のものがあり、薄い布で花をかたどっているようだった。
姫乃ちゃんが手に取って感触を確かめて、値札を確認している。
どうしようか悩んでいるみたいだけど、買わなかったようだ。
あれにしよう。
そう思って、姫乃ちゃんにバレないようにこっそりと買っておくことにした。
その後は雑貨屋さんに寄って前回買ったものと同じ北欧の妖精さんが書かれているコップを2つ買った。
姫乃ちゃんは1つでいいんじゃないですかって言ってきけど、姫乃ちゃんの分が必要でしょって言い切って2つ買った。
これからも姫乃ちゃんと一緒に過ごしていくための大切な食器を揃えていく。
ショッピングモールで買い物を楽しんだ後は、スーパーによってから私の家に帰宅した。
そうして今年最後の料理教室、そして卒業試験を行う。
どんな料理を作らされるのかとドキドキしていたが、試験内容はまさかのカレーだった。
「こんな簡単な料理でいいの?今の私ならもっと難しいものでも、本を見ながらだったら大丈夫だよ?」
最近は姫乃ちゃんの指導も補助的なものが多くなってきて、ほとんど料理本を見ながら一人でできるようになって来ていた。
だから、カレーぐらいだったら何も見なくても作れそうだった。
「これでいいんですよ」
そう言って姫乃ちゃんは、私のことをまっすぐに見つめてくる。
姫乃ちゃんの考えはわからないけど、今年最後の姫乃ちゃんとの料理を美味しく作ることに集中しよう。
野菜を手際よく切っていき、お鍋で炒めていく。
こんな簡単なことだけど、初めの頃はうまくできなかったなぁ。
でも、前とは違って姫乃ちゃんは私のことを手伝うことなく、ただじっと私のことを見つめている。
「そんなに見られると緊張するなぁ」
思わず苦笑いを浮かべて姫乃ちゃんに遠慮してほしいと遠回しに言う。
だけど、姫乃ちゃんはそんな私の話を聞かず私のことを見続けて、
「卒業試験ですからね」
そう言って、姫乃ちゃんはなぜか寂しそうに笑った。
卒業試験のカレーを作り終わって二人で食べる。
我ながら普通の味である。
まぁ隠し味とかを入れたわけでもないし、スタンダードな食材しか入ってないからこんなもんでしょう。
そう思っているのに姫乃ちゃんが、
「うん、紗希先輩のカレーは世界一ですね」
そう言って、私のカレーをとんでもなく褒めてくる。
いつもの料理教室でも、作ったら褒めてくれるけど、ここまで褒めてはいなかった。
「そうかなぁ?普通の誰でも作れるようなカレーだと思うんだけど」
「いえ…本当に美味しいです」
そう言って、姫乃ちゃんはまた寂しそうな笑い顔を見せる。
「どうしたの?今日はなんだか変だよ。何か悩みでもあるの?」
1日を通して姫乃ちゃんの様子がいつもと違うのは気づいていた。
でも私には話したくない様子だったからずっと話題にすることを避けていた。
だけど姫乃ちゃんと会うのが今年最後になると思うと、このまま放っておくなんてできなくて思わず踏み込んだ質問をしてしまう。
「そうですね…ずっと悩んでたことがあったんです。でも今日その答えを出そうと思って1日を過ごしていたら、ちょっといつも通りには振る舞えませんでした」
ずっと悩んでいたこと…
「その悩んでいたことって何なのか、聞いてもいいの?」
この続きを聞くことに恐怖を感じながらも、姫乃ちゃんに問いかけた。
「はい、紗希先輩に聞いてほしい事があるんです」
そう言って深く深呼吸をした姫乃ちゃんは、手元を見ながらゆっくりと話し始める。
「私と紗希先輩はこんな風に仲良くなったきっかけは覚えていますよね?」
「もちろん覚えているよ、姫乃ちゃんの同期の田中くんでしょ?」
そう、最初に仲良くなったきっかけは田中くんのことを姫乃ちゃんが狙っているというところからだった。
「もう気付いているとは思いますけど、私は田中くんのことを狙っているわけではありませんでした」
「うん、途中からそれは気付いていたよ」
流石の私でも、意中の人に対する態度ではないと言うことぐらいは気付いていた。
私が休憩時間に田中くんと話していても、積極的に話しかけるのは私に対してで、田中くんにはとても消極的な対応をしていた。
だから姫乃ちゃんの目的は田中くんじゃあないんだなってことは分かった。
「紗希先輩ともっと親密な仲になりたかった。だから、そのために田中くんを口実にして飲みに誘ったんです」
確かに、何かの口実がないと姫乃ちゃんとわざわざ二人で飲みにいくなんてことはなかったと思う。
そのおかげで私達は先輩後輩としてはとっても仲良くなれたと思う。
「でも、どうして私と親密な仲になりたかったの?」
ただの先輩後輩の関係でも仕事はうまく回っていた。
だから、わざわざ二人の仲を深める必要はなかった。
「私が配属された時から先輩のことは目で追っていたんです。でもその時は、綺麗な先輩だなぁって思っていたぐらいで、特にどうこうしようとは思ってはいなかったんです」
そうして姫乃ちゃんは、ぼんやりと見つめていた手元から視線を上げて、私の方をまっすぐに見つめてきた。
「でも、先輩が思わず漏らした独り言を聞いてしまった時から。私はいてもたってもいられなくなってしまったんです」
私が漏らした独り言?一体なんて言ったんだろう…
「先輩はこう言ったんです、『私って何のために生きているんだろうなぁ』って。悲しんでるわけでもなく、怒っているわけでもなく。ただ単純にそう思っていると分かる声で言ったんです」
私はその言葉を聞いた瞬間、思わず姫乃ちゃんから目を逸らしてしまう。
姫乃ちゃんとこうして一緒にいる前までは、毎日同じことの繰り返しで特に楽しみもなかった。
お金に執着もない、地位にも興味がない、恋人がいるわけでもない。
一体私は何を目的に働いているんだろう?
ただ生きていくためだけに生きていく。
そんな日々を続けていくうちに、いつしか心が擦り切れていった。
「その言葉を聞いた時に、何とかしてあげたい、そう素直に思ったんです。先輩のことを変えてあげたいって思ったんです」
姫乃ちゃんはそう言って、変わらず真剣な声で私に語りかけてくる。
「それから私は、内気な自分に蓋をして自分の感情を思いっきり先輩にぶつけるようにしました」
確かに最初はあまり自分の感情を表に出してくれなかったけど、いつの頃からか姫乃ちゃんが何を考えているのかすごい分かるようになった。
「それから、紗希先輩ともっと仲良くなれるようなきっかけを探していました。そうして二人でのサシ飲みに漕ぎつけたんです」
あのサシ飲みがそこまで考えてくれていたものだとは思わなかった。
あの時の私は可愛い後輩を介抱する、頼れる先輩だと思っていた。
それがまさか、助けられていたのが私の方だったとは。
でもこれで姫乃ちゃんがここまで私に尽くしてくれた理由がわかった。
「なるほど。そう言う理由だったんだね」
そう言った私に、姫乃ちゃんは辛そうな表情を見せて続けていう。
「それだけだったら、良かったんですけどね…」
そうして姫乃ちゃんは何かを思い出すように目を閉じる。
そうして再び私の目を見て言う。
「紗希先輩のことを考えて、いつも紗希先輩のことを見ているうちに、どんどん気持ちが溢れてきたんです」
私を見つめる目にはただの後輩として以外の色が見え始める。
「初めは紗希先輩が辛そうじゃなければそれでよかったんです。でも、気付いたら自分の思いが変わってしまったんです。他の誰かじゃなくて、私が紗希先輩のことを幸せにしたいって」
それは私が気のせいだと思って、気のせいだと信じたかったもので…
「それに気付いてしまった時、私はもうダメになってました。無理矢理に先輩との関係を深めようと嘘をついてまで一緒の時間を作って、それだけじゃあ満足できなくて先輩の健康にこじつけて料理を作りに行くようになって…」
でもここまで言われたら逃げることはできない。
「紗希先輩…」
姫乃ちゃんが潤んだ瞳で私を見てくる。
その目から逃げてしまいたくなる気持ちを堪えて、お互いに見つめ合う。
「紗希先輩が好きです。好きなんです…」
そう言って姫乃ちゃんから堪えきれなかった思いがこぼれ落ちていく。
その思いをそっと受け止めてあげたい。
こんなどうしようもない私のことを好きだと言ってくれる姫乃ちゃんにしてあげれることをもう一度考える。
そうして、
「ごめんなさい…あなたとは付き合えない」
返事を返した。
「はい、大丈夫です。わかってましたから」
そう言いながらも溢れ続ける雫が私を殴りつけてくる。
本当にそれでよかったのかと、まだ間に合うぞと言ってくる。
「それじゃあこれ以上いても先輩が気にしちゃうと思うので今日は帰りますね」
笑いながら、でも瞳は濡れたまま姫乃ちゃんが立ち去ろうとする。
このままだと姫乃ちゃんが本当に手の届かないところに行ってしまう。
わかっているのに体は動くことができないまま、
「紗希先輩…さようなら」
姫乃ちゃんとの日々が終わりを告げた。
この間は自分のものを買うことで頭がいっぱいで、姫乃ちゃんが何か欲しそうにしているか見ていなかった。
今回は姫乃ちゃんの目に止まったものをしっかりとチェックして、こっそり買っておくつもりだ。
そして、今日の料理教室の後にプレゼントしようと思う。
ある服屋さんで、お互いに似合う服を選びあっている時、ふと姫乃ちゃんの方を見ると、一点に目が止まっていた。
それは洋服の間に置かれているイヤリングだった。
そのイヤリングは、桃色のものと藍色のものがあり、薄い布で花をかたどっているようだった。
姫乃ちゃんが手に取って感触を確かめて、値札を確認している。
どうしようか悩んでいるみたいだけど、買わなかったようだ。
あれにしよう。
そう思って、姫乃ちゃんにバレないようにこっそりと買っておくことにした。
その後は雑貨屋さんに寄って前回買ったものと同じ北欧の妖精さんが書かれているコップを2つ買った。
姫乃ちゃんは1つでいいんじゃないですかって言ってきけど、姫乃ちゃんの分が必要でしょって言い切って2つ買った。
これからも姫乃ちゃんと一緒に過ごしていくための大切な食器を揃えていく。
ショッピングモールで買い物を楽しんだ後は、スーパーによってから私の家に帰宅した。
そうして今年最後の料理教室、そして卒業試験を行う。
どんな料理を作らされるのかとドキドキしていたが、試験内容はまさかのカレーだった。
「こんな簡単な料理でいいの?今の私ならもっと難しいものでも、本を見ながらだったら大丈夫だよ?」
最近は姫乃ちゃんの指導も補助的なものが多くなってきて、ほとんど料理本を見ながら一人でできるようになって来ていた。
だから、カレーぐらいだったら何も見なくても作れそうだった。
「これでいいんですよ」
そう言って姫乃ちゃんは、私のことをまっすぐに見つめてくる。
姫乃ちゃんの考えはわからないけど、今年最後の姫乃ちゃんとの料理を美味しく作ることに集中しよう。
野菜を手際よく切っていき、お鍋で炒めていく。
こんな簡単なことだけど、初めの頃はうまくできなかったなぁ。
でも、前とは違って姫乃ちゃんは私のことを手伝うことなく、ただじっと私のことを見つめている。
「そんなに見られると緊張するなぁ」
思わず苦笑いを浮かべて姫乃ちゃんに遠慮してほしいと遠回しに言う。
だけど、姫乃ちゃんはそんな私の話を聞かず私のことを見続けて、
「卒業試験ですからね」
そう言って、姫乃ちゃんはなぜか寂しそうに笑った。
卒業試験のカレーを作り終わって二人で食べる。
我ながら普通の味である。
まぁ隠し味とかを入れたわけでもないし、スタンダードな食材しか入ってないからこんなもんでしょう。
そう思っているのに姫乃ちゃんが、
「うん、紗希先輩のカレーは世界一ですね」
そう言って、私のカレーをとんでもなく褒めてくる。
いつもの料理教室でも、作ったら褒めてくれるけど、ここまで褒めてはいなかった。
「そうかなぁ?普通の誰でも作れるようなカレーだと思うんだけど」
「いえ…本当に美味しいです」
そう言って、姫乃ちゃんはまた寂しそうな笑い顔を見せる。
「どうしたの?今日はなんだか変だよ。何か悩みでもあるの?」
1日を通して姫乃ちゃんの様子がいつもと違うのは気づいていた。
でも私には話したくない様子だったからずっと話題にすることを避けていた。
だけど姫乃ちゃんと会うのが今年最後になると思うと、このまま放っておくなんてできなくて思わず踏み込んだ質問をしてしまう。
「そうですね…ずっと悩んでたことがあったんです。でも今日その答えを出そうと思って1日を過ごしていたら、ちょっといつも通りには振る舞えませんでした」
ずっと悩んでいたこと…
「その悩んでいたことって何なのか、聞いてもいいの?」
この続きを聞くことに恐怖を感じながらも、姫乃ちゃんに問いかけた。
「はい、紗希先輩に聞いてほしい事があるんです」
そう言って深く深呼吸をした姫乃ちゃんは、手元を見ながらゆっくりと話し始める。
「私と紗希先輩はこんな風に仲良くなったきっかけは覚えていますよね?」
「もちろん覚えているよ、姫乃ちゃんの同期の田中くんでしょ?」
そう、最初に仲良くなったきっかけは田中くんのことを姫乃ちゃんが狙っているというところからだった。
「もう気付いているとは思いますけど、私は田中くんのことを狙っているわけではありませんでした」
「うん、途中からそれは気付いていたよ」
流石の私でも、意中の人に対する態度ではないと言うことぐらいは気付いていた。
私が休憩時間に田中くんと話していても、積極的に話しかけるのは私に対してで、田中くんにはとても消極的な対応をしていた。
だから姫乃ちゃんの目的は田中くんじゃあないんだなってことは分かった。
「紗希先輩ともっと親密な仲になりたかった。だから、そのために田中くんを口実にして飲みに誘ったんです」
確かに、何かの口実がないと姫乃ちゃんとわざわざ二人で飲みにいくなんてことはなかったと思う。
そのおかげで私達は先輩後輩としてはとっても仲良くなれたと思う。
「でも、どうして私と親密な仲になりたかったの?」
ただの先輩後輩の関係でも仕事はうまく回っていた。
だから、わざわざ二人の仲を深める必要はなかった。
「私が配属された時から先輩のことは目で追っていたんです。でもその時は、綺麗な先輩だなぁって思っていたぐらいで、特にどうこうしようとは思ってはいなかったんです」
そうして姫乃ちゃんは、ぼんやりと見つめていた手元から視線を上げて、私の方をまっすぐに見つめてきた。
「でも、先輩が思わず漏らした独り言を聞いてしまった時から。私はいてもたってもいられなくなってしまったんです」
私が漏らした独り言?一体なんて言ったんだろう…
「先輩はこう言ったんです、『私って何のために生きているんだろうなぁ』って。悲しんでるわけでもなく、怒っているわけでもなく。ただ単純にそう思っていると分かる声で言ったんです」
私はその言葉を聞いた瞬間、思わず姫乃ちゃんから目を逸らしてしまう。
姫乃ちゃんとこうして一緒にいる前までは、毎日同じことの繰り返しで特に楽しみもなかった。
お金に執着もない、地位にも興味がない、恋人がいるわけでもない。
一体私は何を目的に働いているんだろう?
ただ生きていくためだけに生きていく。
そんな日々を続けていくうちに、いつしか心が擦り切れていった。
「その言葉を聞いた時に、何とかしてあげたい、そう素直に思ったんです。先輩のことを変えてあげたいって思ったんです」
姫乃ちゃんはそう言って、変わらず真剣な声で私に語りかけてくる。
「それから私は、内気な自分に蓋をして自分の感情を思いっきり先輩にぶつけるようにしました」
確かに最初はあまり自分の感情を表に出してくれなかったけど、いつの頃からか姫乃ちゃんが何を考えているのかすごい分かるようになった。
「それから、紗希先輩ともっと仲良くなれるようなきっかけを探していました。そうして二人でのサシ飲みに漕ぎつけたんです」
あのサシ飲みがそこまで考えてくれていたものだとは思わなかった。
あの時の私は可愛い後輩を介抱する、頼れる先輩だと思っていた。
それがまさか、助けられていたのが私の方だったとは。
でもこれで姫乃ちゃんがここまで私に尽くしてくれた理由がわかった。
「なるほど。そう言う理由だったんだね」
そう言った私に、姫乃ちゃんは辛そうな表情を見せて続けていう。
「それだけだったら、良かったんですけどね…」
そうして姫乃ちゃんは何かを思い出すように目を閉じる。
そうして再び私の目を見て言う。
「紗希先輩のことを考えて、いつも紗希先輩のことを見ているうちに、どんどん気持ちが溢れてきたんです」
私を見つめる目にはただの後輩として以外の色が見え始める。
「初めは紗希先輩が辛そうじゃなければそれでよかったんです。でも、気付いたら自分の思いが変わってしまったんです。他の誰かじゃなくて、私が紗希先輩のことを幸せにしたいって」
それは私が気のせいだと思って、気のせいだと信じたかったもので…
「それに気付いてしまった時、私はもうダメになってました。無理矢理に先輩との関係を深めようと嘘をついてまで一緒の時間を作って、それだけじゃあ満足できなくて先輩の健康にこじつけて料理を作りに行くようになって…」
でもここまで言われたら逃げることはできない。
「紗希先輩…」
姫乃ちゃんが潤んだ瞳で私を見てくる。
その目から逃げてしまいたくなる気持ちを堪えて、お互いに見つめ合う。
「紗希先輩が好きです。好きなんです…」
そう言って姫乃ちゃんから堪えきれなかった思いがこぼれ落ちていく。
その思いをそっと受け止めてあげたい。
こんなどうしようもない私のことを好きだと言ってくれる姫乃ちゃんにしてあげれることをもう一度考える。
そうして、
「ごめんなさい…あなたとは付き合えない」
返事を返した。
「はい、大丈夫です。わかってましたから」
そう言いながらも溢れ続ける雫が私を殴りつけてくる。
本当にそれでよかったのかと、まだ間に合うぞと言ってくる。
「それじゃあこれ以上いても先輩が気にしちゃうと思うので今日は帰りますね」
笑いながら、でも瞳は濡れたまま姫乃ちゃんが立ち去ろうとする。
このままだと姫乃ちゃんが本当に手の届かないところに行ってしまう。
わかっているのに体は動くことができないまま、
「紗希先輩…さようなら」
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