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有能な代官候補の確保
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ハロルドのお墨付きをもらった後、自分の少ない荷物をカバンにしまいきる。
多少は入らなかったものもあるけど、そこはしょうがないとしよう。
どうせここの家の人たちなら私のものは心置きなく捨ててしまうだろうから置いていくことにした。
そうして私自身の準備が整ったら、後は本当に少ないが私に対して好意的だった人に挨拶をしてから出ようと思う。
この屋敷の中では階級が低い人が住んでいるあたりにやってきた。
コンコンと扉をノックをして、中からの声を聞いてから扉を開ける。
そこにいたのは、文官と一目でわかるような体つきをした気弱そうな青年がいた。
「アントム、あなたに重大な話があるの」
そう言って、先ほど起こった突然の出来事を伝える。
アントムには私が次期代官に潜り込ませるため、私の知識や考え方をみっちりと教え込んでいる途中であった。
ちなみに、なぜこの青年を選んだかといえば…1番気弱そうな文官であったためというなんとも言い難い理由である。
だけど、私の運が良かったのか彼の運が悪かったのか。
これまで先輩の文官からまともに教えを受けてこなかったため、私のこの領地の文官とは相いれない考え方を素直に受け入れてくれた。
そのせいでさらに他の文官からは扱いが悪くなったみたいだが…
まっまぁそれは良いとして、今では私の片腕とまではいかないまでも他の文官では任せられないことを彼には色々とお願いしていた。
だから、今後の方向性について一応彼には伝えておく必要があった。
「えっ婚約破棄!それに実家に帰らされる!そんなことがあっても良いんですか!」
私のことなのに、私以上に先ほどの出来事に対して怒ってくれる。
正直なところ嬉しくてしょうがない出来事だったので、こんな反応を返されると返事に困ってしまう。
でも、私のことを思って言ってくれるのは嬉しい。
「ありがとうアントム、私のためにそこまで怒ってくれて。でもいいの」
そう言って心からの笑顔をアントムに見せてあげる。
「正直この領地の運営を味方がいない状態でやっていくのにも疲れていたところなの。だから今回のことは逆に助かっちゃった」
私が気に病んでいないことを感じたアントムは怒りを収める。
だけど今度は不安そうな顔をして話しかける。
「そうですか、それなら良かったです?でも今度は僕の方が大変になりそうですね」
そう言って苦笑いを浮かべるアントム。
「確かにね、他の文官からのあなたの評価って酷いものだものね」
正直に彼の現状について口に出す。
私の仕事を手伝ってしまったせいで、私から以外は全く仕事を与えられなくなってしまっていた。
本当にここの文官は領主の影響をよく受けていると思うよ。
いくら気に入らない相手だからって、貴重な労働力を遊ばせておくなんて頭がおかしいと思う。
特に、ここのような領地が広い場合は管理する人はいくらいても足りないっていうのに…
ここの文官たちの対応の拙さについて頭を悩ませてしまう。
それも今日までのことだからいいとしよう。
まぁアントムにとっては死活問題だけど。
「これからは先輩に媚を売ってなんとか仕事をもらえるようにしないといけませんね」
下を向きため息をついて、幸薄そうな雰囲気がどんどん強くなるアントムに、思わず救いの手を差し伸べる。
「…もし良ければだけど、うちの領地に来ない?」
私の言葉を聞いた瞬間、アントムはバッと顔をあげて真剣な顔をして私に詰め寄ってくる。
「よろしいのですか!?」
「むしろ私が良いのか心配なんだけど。この領地に家族や恋人とかいないの?」
あっ聞いちゃあまずかったかな?
そう思わせる表情をしたアントムがボソボソと話し始める。
「家族はいますけど成果の上がらない文官ということで見放されていますし、恋人なんて…今まで一度もいたことはありませんね」
うわぁ~この歳まで恋人がいたことがないのか…
誰かに紹介されないとこのまま人生を終了してしまいそうだな。
そこまでの面倒は見れないけど、せめて私の仕事を手伝ってくれたことのお返しぐらいはしてあげないと。
そもそも成果が上がらない文官って思われているのも私のせいだし…
「そっそれなら私の領地に来てみたらどうかしら?あなたならすぐに採用してあげれるわよ?」
「それならすぐに!っといきたいところですが、ヘレナ様に言われた最後の仕事を終えてから向かいたいと思います」
「アントムのそういう丁寧に仕事に向き合うところ、好きよ」
私が頷きながらアントムのことを評価すると、褒められ慣れていないのかアントムは顔を赤くして狼狽出す。
「あっはい!ありがとうございます!」
アントムがこれほどまで評価されない理由が私なのでここまで喜ばれると複雑である。
「それじゃあ、次は私の領地で待っているわね」
そうして変えの効かない代官候補であるアントムを手に入れることに成功した。
多少は入らなかったものもあるけど、そこはしょうがないとしよう。
どうせここの家の人たちなら私のものは心置きなく捨ててしまうだろうから置いていくことにした。
そうして私自身の準備が整ったら、後は本当に少ないが私に対して好意的だった人に挨拶をしてから出ようと思う。
この屋敷の中では階級が低い人が住んでいるあたりにやってきた。
コンコンと扉をノックをして、中からの声を聞いてから扉を開ける。
そこにいたのは、文官と一目でわかるような体つきをした気弱そうな青年がいた。
「アントム、あなたに重大な話があるの」
そう言って、先ほど起こった突然の出来事を伝える。
アントムには私が次期代官に潜り込ませるため、私の知識や考え方をみっちりと教え込んでいる途中であった。
ちなみに、なぜこの青年を選んだかといえば…1番気弱そうな文官であったためというなんとも言い難い理由である。
だけど、私の運が良かったのか彼の運が悪かったのか。
これまで先輩の文官からまともに教えを受けてこなかったため、私のこの領地の文官とは相いれない考え方を素直に受け入れてくれた。
そのせいでさらに他の文官からは扱いが悪くなったみたいだが…
まっまぁそれは良いとして、今では私の片腕とまではいかないまでも他の文官では任せられないことを彼には色々とお願いしていた。
だから、今後の方向性について一応彼には伝えておく必要があった。
「えっ婚約破棄!それに実家に帰らされる!そんなことがあっても良いんですか!」
私のことなのに、私以上に先ほどの出来事に対して怒ってくれる。
正直なところ嬉しくてしょうがない出来事だったので、こんな反応を返されると返事に困ってしまう。
でも、私のことを思って言ってくれるのは嬉しい。
「ありがとうアントム、私のためにそこまで怒ってくれて。でもいいの」
そう言って心からの笑顔をアントムに見せてあげる。
「正直この領地の運営を味方がいない状態でやっていくのにも疲れていたところなの。だから今回のことは逆に助かっちゃった」
私が気に病んでいないことを感じたアントムは怒りを収める。
だけど今度は不安そうな顔をして話しかける。
「そうですか、それなら良かったです?でも今度は僕の方が大変になりそうですね」
そう言って苦笑いを浮かべるアントム。
「確かにね、他の文官からのあなたの評価って酷いものだものね」
正直に彼の現状について口に出す。
私の仕事を手伝ってしまったせいで、私から以外は全く仕事を与えられなくなってしまっていた。
本当にここの文官は領主の影響をよく受けていると思うよ。
いくら気に入らない相手だからって、貴重な労働力を遊ばせておくなんて頭がおかしいと思う。
特に、ここのような領地が広い場合は管理する人はいくらいても足りないっていうのに…
ここの文官たちの対応の拙さについて頭を悩ませてしまう。
それも今日までのことだからいいとしよう。
まぁアントムにとっては死活問題だけど。
「これからは先輩に媚を売ってなんとか仕事をもらえるようにしないといけませんね」
下を向きため息をついて、幸薄そうな雰囲気がどんどん強くなるアントムに、思わず救いの手を差し伸べる。
「…もし良ければだけど、うちの領地に来ない?」
私の言葉を聞いた瞬間、アントムはバッと顔をあげて真剣な顔をして私に詰め寄ってくる。
「よろしいのですか!?」
「むしろ私が良いのか心配なんだけど。この領地に家族や恋人とかいないの?」
あっ聞いちゃあまずかったかな?
そう思わせる表情をしたアントムがボソボソと話し始める。
「家族はいますけど成果の上がらない文官ということで見放されていますし、恋人なんて…今まで一度もいたことはありませんね」
うわぁ~この歳まで恋人がいたことがないのか…
誰かに紹介されないとこのまま人生を終了してしまいそうだな。
そこまでの面倒は見れないけど、せめて私の仕事を手伝ってくれたことのお返しぐらいはしてあげないと。
そもそも成果が上がらない文官って思われているのも私のせいだし…
「そっそれなら私の領地に来てみたらどうかしら?あなたならすぐに採用してあげれるわよ?」
「それならすぐに!っといきたいところですが、ヘレナ様に言われた最後の仕事を終えてから向かいたいと思います」
「アントムのそういう丁寧に仕事に向き合うところ、好きよ」
私が頷きながらアントムのことを評価すると、褒められ慣れていないのかアントムは顔を赤くして狼狽出す。
「あっはい!ありがとうございます!」
アントムがこれほどまで評価されない理由が私なのでここまで喜ばれると複雑である。
「それじゃあ、次は私の領地で待っているわね」
そうして変えの効かない代官候補であるアントムを手に入れることに成功した。
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