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元義父の必死の抵抗

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婚約破棄を告げられた私は自室へと小走りで戻る。

あの男の気が変わらないうちに早くこの屋敷から逃れるためにだ。

部屋に戻り一人の空間になると気づけば鼻歌を歌い出していた。

まるで幼な子が、初めてのピクニックに行くような気分で、帰るための荷物を整えていく。

この屋敷にくる時から全く増えることのなかった私の荷物はあっという間に整理ができる。

いつかこんな日が来ればいいなぁと夢想しながら日々の凶悪な執務と向き合っていた。

それがついに報われる時がきたということだろう!

たった一人で、ダンスを踊るように軽やかなステップで私に与えられた部屋から私のものを取り除く。

そうしてあっという間に帰り支度が済み、ウキウキしている私のところに控えめなノックの音が届く。

このタイミングで私のところを訪ねてくる相手など想像はつく。

「はい、どうぞ」

そうして私の元にやってきた相手は、元婚約者の父親であるエリック・ブライスであった。

「…トーマスから何か言いつけられたか?」

エリックが慎重に言葉を選びながら私に聞いてくる。

「はい…残念ながら私のような田舎の出の者では、この広大な領地の経営など荷が重いと言われたところです。そして婚約も破棄するとおっしゃられました」

そうして表面上は心底残念そうに振る舞う。

ここで妙な因縁をつけられて私の実家に迷惑がかかってもしょうがないしね。

「そのことなんだが、それはあのバカ息子が勝手に言ったことであって私の本意などではない」

「いえ、この領地をここまで大きくされたお爺さまのお墨付きをいただいたとおっしゃられていました。そして即刻実家に帰るように申しつけられたので、こうして準備をしているところなのです…」

正直に言って、こんなくだらない話など早く終わりにして、残り少ない荷物をカバンに詰める作業に戻りたいのだが?

そうしてこの辛気臭い屋敷から早く自由になりたい。

そんな私の心境を把握しているかのようにエリックが私に詰め寄る。

「分かりきった演技などもういい!お前は高い金と引き換えに、我が領地を再建するためにつれてきたのだ。息子のわがままなどでそれを反故にされてたまるか!」

これは不味いかもしれない、せっかく自由になれるチャンスがやってきたと思ったのにまさかここまで抵抗されるとは…

どうやってこの窮地を乗り切ってやろうかと考えていると、私にとっての救世主がドアを勝手に開けて入ってきた。

「ふんっ!まだいたのか田舎の娘よ!」

そう言って私のことを嘲ってきたのがトーマスの祖父であるハロルド・ブライスであった。
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