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ルセラ編

15話 異世界なんかで協力なんてしたくないけど2

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 十夜達はメティス率いるガーゴイル討伐隊に参加し森に来ていた。

「やっぱ夜の森は雰囲気が違うな」

「俺は夜でも全然見えるけどな」

 そう言ってアイズが自分の目を自慢する。
 フェンリルは人間と違って暗くてもよく見えるらしい。

「ダーリンさっきから同じ場所をグルグル回ってるみたいです。すごく怖いですよ!」

「俺の手握るか?」

 そう言って十夜はレイに自分の手を出した。

「はい!」

 レイは嬉しそうに返事をすると腕を絡め手を繋いだ。
 だが俺の思っていたつなぎ方ではなく指の間に自分の指を絡めながら手をつないできた。

「ってレイなんで恋人つなぎなんだ!」

「手でも握ってろって言われましたけど何つなぎかは言われてませんから」

 こうやってレイはいつも俺の言葉の隙を突いてくる。

「なんに喋ってるんですか十夜きゅん!」

「ヒュプノス!お前は先頭のはずだろなんでここにいる」

「十夜こいつがヒュプノスか!」

 アイズが素早く斧を構えた。

「待ってくださいっす!私は別に戦いに来たわけじゃないっす!ただ十夜きゅんに会いに来ただけなんっす!」

 ヒュプノスが焦りながら訴えた。

「なんなんですかあなたは!私のダーリンは渡しませんよ!」

 レイもヒュプノスを見た途端警戒しだした。
 だがレイの場合は理由が別にある気がする。

「あらあらなんすか?そんなちっちゃいお胸で何ができるんすか?十夜きゅんは大きな胸しか興味ないっすよ?私みたいにー」

「おい2人ともやめろよ」

 喧嘩腰になる二人を止めようと試みるが聞く耳を持ってくれない。

「こらヒュプノス、勝手に十夜くんのところに行くんじゃない。罰としてお前はずっといちはん前にいろ」

 十夜達がもめている時にメティスがどこからか現れた。
 この前使ったテレポートという魔法の力だろう。

「いやっす!このチビに負けたような気がするっす!十夜きゅんの隣にずっといたいっす!」

「ダメだ!」

「ちぇー十夜きゅんまたね!」

 チュッ。
 ヒュプノスが十夜の頬にキスをして列の一番前へと走り去っていった。

「今ダーリンに!」

「十夜モテモテだな」

 ヒュプノスは単純な恋心というより俺をからかっているだけな気がするが、女の子からキスされるのは悪くない。

「あっ!逃げましたよあの女!」

「すまない十夜くん」

 メティスが申し訳なさそうな顔をしたが俺は全然困っていないぞ。

「あぁ別に良いさ。で、なんでこんな討伐隊をつくったんだ」

「もちろんガーゴイルを倒すため。って言っても君は建前だってわかるだろうな。一応仕事の一環だが、話したいことがあってね」

 メティスが真剣な眼差しでこちらを見つめる。

「君はもう神王教の真実をしっているか?」

「あぁゼウス復活計画だろ」

「やはり知っていたか。ゼウス復活には選ばれし10人の子の力のを使えばゼウス復活の門が開かれる。それを阻止するには君の力が必要なんだ」

 神王教は魔王の言った通りゼウス復活を企んでいるらしい。
 メティスは信用できると言ったのはメティスが反対派だからということだろうか。

「そのわりには俺の剣を破壊しようとしていたよな」

 十夜はメティスを少し睨んだ。

「それは君の実力を調べるためだったんだ。クロノスに対抗するには全ての魔法を吸収し力にかえるダーインスレイブの力が必要だ」

 俺は試されていたということか。
 どうやらクロノスというやつはメティスでも歯が立たないほどの強力な魔法の使い手らしい。
 本当にそんな奴に俺が適うのか。

「俺にはあまり期待しない方がいいぞ」

 俺にはまだ力が足りない。
 俺は下を向き拳をぎゅっと握った。

「僕は十夜くんを信じているよ」

 メティスは俺の顔をのぞき込み微笑む。

「お前の他に止めようとしているやつはいないのか?」

「私の他に三人」

 たった三人だけだがメティスは協力者の名前を教えてくれた。
 第五の子バステト
 第七の子ヒュプノス
 第九の子アレス
 そしてメティスの計四人が反対派である。

 そしてクロノス率いる賛成派。
 第二の子アポロン 
 第三の子アルテミス
 第四の子ガイア
 第八の子ポセイドン
 この五人そして下っ端達。
 下っ端は全然クロノス側についている。

「クロノスに協力する四人は神王教の四天王です。戦力的には圧倒的に向こうが優勢」

「なぜ四天王のポセイドンは第八の子なんだ?」

 第何の子というのは神王教での序列を表している。
 だから四天王であるポセイドンは第五の子のはずだ。

「彼は元々四天王にいたバステトに決闘を申し込み、圧倒的力でバステトをねじ伏せ四天王の座を奪いました。正式な決闘ではなかったための序列はそのままですがね」

 メティス達がいてもそいつと戦うのはキツそうだ。

「まて、1人足りなくないか?」

「はい。最後の第十の子が見つかってないため僕達にとっては不幸中の幸いという訳ですよ」

「この事はアイズとレイに話して良いのか?」

「いずれ戦う事になるだろうし今話してもらって別にかまわないよ」

「いたぞ!」

 突然先頭から声がした。
 ガーゴイルを見つけたのだろう。

「私は先に先頭に戻ります」

 そう言うとメティスはテレポートで一瞬にして先頭に戻っていった。

「レイ!アイズ!先頭でガーゴイルがでた!行くぞ!」

「よっしゃいくか!」

「ボコボコにしてやりましょう!」

 十夜達はガーゴイルの出た先頭側へ向かった。

「ガー!ガー!」

 そらに黒い何かが群を作っている。
 ガーゴイルだ。
 あいつら空飛べるのか、だいぶ厄介だ。
 しかも結構いるな、40、いや50はいる。

「レイ風魔法のウィングを!」

「わかりました!ウィング!」

 十夜の背中から翼が生え空に飛んだ。

「ダーリン!ウィングは10分しかもちません!気をつけてください!」

「わかった!」

 ガーゴイルと戦うのは初めてだ。
 有効打がわからない以上手探りで探すしかない。
 いくぜダーインスレイブ

「リトルファイア!」

 ダーインスレイブが赤い炎をその身に宿した。

「ガーゴイル焼き尽くせ!爆炎剣ダーインスレイブ!」

「ガー!ガー!」

 こちらに気づいたガーゴイルが一斉に襲いかかってくる。

「喰らえ!爆炎斬!」

 炎がガーゴイルのつばさを焼き地面に叩き落とす。
 効いているようだ。
 だが無数にいるガーゴイル。
 倒しても倒してもきりがない。

「おいじゅんじゅんです」

「じゅんじゅん?ってお前は!」

 そこにいたのは白いローブを着た少女バステトだった。
 だがこの前とは全く印象が違った。
 前は俺達を殺しに来ていたし、そんな呼び方はしなかった。

「お前はバステトなのか?」

「はい私はバステト様です」

「前とは印象が違うが何かあったのか?」

 少し怖いが前ほどの威圧感はない。

「前は悪い事をしたらしいなです」

「悪い事をしたらしい?」

 十夜が首を傾げた。

「私はあなた達の事は覚えているのですがイフリートを操っていた事は覚えていないのです。申し訳ないです。すでにも老婦人に謝罪済みです」

 本当に反省しているのだろう。
 バステトは勢いよく頭を下げた。

「そうなのか」

 もしかするとこれもクロノスの力なのか?

「ところでじゅんじゅん猫の手は借りたいですか?」

「女の子に助けてもらうほど弱くはないんでね遠慮しとくよ」

「そうですか。助けて欲しいなら言ってください私は下で見てますから」

 バステトは下に降りてじっと俺を見つめる。
 ほんとに下から見るだけなのかよ。

「ガー!ガー!」

「待たせたなガーゴイルども!今倒してやるからじっとしてろ!」

 その頃別行動のレイ達は十夜が取り逃したガーゴイルを下から攻撃していた。

「ダーリン大丈夫なんでしょうか?」

「レイチャンはともかく俺は相手が空中にいる限り助けに行けない。しかもこのチームには遠距離を得意とする奴が少ないからな」

「十夜くんのお漏らしを私達がもらえば良いんですよ」

 メティスがテレポートでアイズ達の元に加勢しに来た。

「メティスか、さっき十夜から全部聞いたぞ」

「そうですか。それは良かった」

「だが俺はお前達を許した訳じゃないぞ」

 アイズがメティスに斧を向ける。

「完全に信用したわけでもない。裏切るような真似をすれば切るからな」

「そんな強気なわりには足が震えてますよ」

 アイズの足がガタガタと音を立てて震えている。
 少し恐怖心は持っているようだ。

「ふっ震えてねーし!」

「アイズさんダサいですよ」

「うるせー!」

 アイズが顔を真っ赤にして震える足を止めようと必死になっている。

「ははは!なかなか話してみると面白いお友達ですね。少し質問があるのですがあなた達はフェンリルと亜人ですか?」

「レイちゃんはともかく俺がフェンリルだってどうしてわかった」

「雰囲気とでも言っておきましょう。それでは私は十夜くんの元へ行ってきます」

 メティスは話をすぐにテレポートをして十夜の元に向かった。

「おもしれーじゃねーか!俺の正体を見抜くなんて!あいつとは一度ゆっくり酒を飲みたいもんだ」

「アイズさんなんか悪役っぽいです」

「うるせー!」

(下から見てるだけしか俺たちは出来ないけど頑張れよ十夜!)

(頑張ってくださいダーリン!)
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