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エリーゼ

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転校先の学校は、いかにも都会って感じで生徒数も多く、すぐに友達も出来て馴染めそうだったのでほっとした。

よかったよかった、と思いながら帰宅すると、家の玄関前でルーカスが待っていた。

(あ、忘れてた)

番ですがこの人のこと忘れていました。

しかし、しみじみイケメンである…きっと私が番じゃなかったら、私のことなんか見向きもしないくらい、モテてきた人なんだろうなぁ。彼は私を認めると、ぱっと破顔した。

「お帰り、エリーゼ!さあデートついでに街を案内してあげるよ!」

そして前向き、明るい性格であることは好ましい。私は学校の鞄を家に置くと、とりあえず彼について街に出てみることにした。


今日もルーカスからは甘い香りが漂ってきているし、たしかに彼のことは普通に好ましく感じる。でも、ただそれだけ。本当にこれが言われている”一度出会うと磁石のように離れがたい番”ってやつなのか、疑問になるくらい、香り以外はなんにも特別なことはない。しかも私の場合、アーヴィンが香水をつけていたらそっちのほうがいい香り!って思う自信がある。

(でもアーヴィンはもういないから忘れなきゃ…)

ルーカスは非常にエスコート慣れをしていて、彼が今までたくさんの女性と付き合ってきたであろうことは簡単に予想がついたし、そのことに何の感慨もない。これだけのイケメンでエリート予備軍、女性はほっておかないだろうと思うからだ。彼はスマートにエスコートしてくれていたが、それはでもアーヴィンとは違い、”私好みのエスコート”ではなかったが、昨日会ったばかりの人にそんなことを求めるのは酷であろう。

「君、面白いね」

私があまりにもクールな対応をし続けるからか、ルーカスはしげしげと私の顔を見下ろしてそう言った。今は彼おすすめの屋台フードのお食事クレープ的なのを食べながら川べりを歩いている。最初はレストランに行くつもりみたいだったけど、私が15歳だと知って彼はさりげなくこういう気楽コースに変更したんだろう、つくづく、モテる男なんだろうなぁ。


「面白い?」
「うん、俺のこと全然意識してないよね?」

さすがだ…モテ男ってこういうところも敏感じゃないと駄目なんだなぁ。

「正直言うと、ハイ」
「すげえ、番に拒否される俺、新しい~」

爆笑している。
まぁ拒否はしてないけれども。
興味がないだけで。

「ルーカスさん、私になにか特別なものを感じます?」
「うん、俺はね」
「他の人と、何が違います?」
「あれ、俺、暗に今までの女性関係をなじられてる感じでいい?」

思わず笑った。私が笑うと、彼の形の良い瞳が少し大きくなって私を凝視している。

「いいえ、まったく興味ないからそこらへんは大丈夫です。純粋に番というものを知りたいだけ」
「すごい破壊力……」
「?」

私が首を傾けると、彼はちょっとだけ顔を赤くした。

「あのね、まずは香りがする、すごく甘い」
「ああ、カップケーキみたいな?」
「いやいやそんな可愛いもんじゃないよ…もっと濃い甘い感じ。薔薇の花びらが一斉に咲いたような?」
「へえ…」

どうやら私の感じている香りとは違うらしい。不思議だ、興味深い。

「それから昨日すれ違った瞬間から、君のことしか考えられなくなった、どうしてくれる」
「ええ!!嘘でしょ!?」

私先程まで完璧に貴方のこと忘れてましたけど!?

「嘘ってなんで…?あああもしかしたら君は俺のこと忘れてた?」
「うん」

ルーカスががっくりと落ち込んだ。

「番に忘れられる俺、新しすぎる」
「番って私両方向だと思ってました……こんなに感覚が違うんだ」
「番に傷口に塩をぬり込まれる俺、可哀想すぎる」

いちいちコメントはしかし面白い。さすが番、嫌いなタイプではないや。

「ルーカスさんはでも番じゃなかったら私のことなんて好きになんかならないよね?」

尋ねると、彼は私のことをじっと見つめた。普通はこんなイケメンに熱く見つめられたら鼓動が跳ね上がりそうなものだけど。

(残念だけどまったくドキドキしないなぁ…)

アーヴィンが笑ってくれたほうが100%ドキドキするな。

「それはないよ。君は十分可愛いし、魅力的だよ」

まぁ…自分の見た目がそれなりってことは知ってる。
今まで告白されたこともなくはない、アーヴィンしか見えてなかったから断っていただけで。

「番だって舞い上がらないところも面白いなって思ってる」

それはでも自分でも不思議だ。番って何はなくてももっと求め合うものなんだと思ってた。ルーカスははぁーーとため息をついた。

「俺ってもしかしたらフラれる可能性もあるんだよね、これ?」

番を見つけたらほぼ婚姻する、と言われてはいるけど、勿論それは義務ではない。一般的に言われているのは、出会ってしまっても、会わなかったらそのうち番のことも忘れていくんだって。ただ普通は会った瞬間にお互いに燃え上がるから、物理的に距離を置くのが難しく、だからこそ婚姻に至るカップルがほとんどらしいんだけど。

「あーーー、うん」

ルーカスが自分の胸の上に手をおいて、冗談ぽく、傷ついた素振りをみせてきた。

「フラレたことない俺が…」

あ、自慢ですか。しかしルーカスはちょっと真面目そうな顔に戻って、確信めいた口調で私に尋ねてきた。

「好きな人がいるんだね?」

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