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ルーリアの、あの香水の香りが辺りに色濃く漂う。

エラのことを完全に無視したあまりにも無礼すぎる振る舞いだが、しかしルーリアは自分の態度は何ら落ち度はないと言わんばかりに自信たっぷりにかつての恋人を熱い眼差しで見つめている。

エラが無意識に後ずさろうとしたのを察したジェームズが妻の腕を優しく掴んだのを見て、ルーリアの美しい青い瞳が驚いたかように見開かれた。

「これはこれは…。何用でしょうか」

ジェームズが冷たくルーリアに尋ねた。

「な、何用って…ジェームズ、私は貴方に手紙を書いたのよ?返事をずっと待ってたのに…この女がきっと握りつぶしたんだろうと思って」
「…、クラーク夫人」

今やルーリアの顔からは表情が削げ落ち、滑稽なほど分かりやすく青ざめた。エラも事の成り行きを呆然と見守っているが、周囲の人々はそれ以上に彼らの会話の行く末に聞き耳を立てている。

「ぐ、愚弄って…貴方だってこの女を鶏がらだとか、つまらない冷たい、抱く価値のない女だとか散々私と一緒に笑ったじゃないのよ!」

ルーリアの言葉は棘のようにエラの心を容赦なく突き刺していく。
彼らが自分のことを影で嘲笑っていたことは予想していたことだった。彼女の腕を掴んでいるジェームズの手にぐっと力が入る。

「…クラーク夫人、恥を知ると良い。自分の愚かで軽率な行いが悔やまれる。私は一生彼女に謝罪し続けるが、彼女から許されないかも知れないくらいの罪を犯した。だが

そこに至って、ルーリアは自分の思惑が外れたことをようやく理解したようだった。血の気の引いた唇から、嘘よ…という悲痛な呟きが漏れた。

「…私は信じないわ。私のために戦争に行くって言ってくれたじゃない!この女と離婚する準備のために…!私のジェームズを返してよ、貴方は私の知っているジェームズではない!」
「クラーク夫人、口を慎みたまえ」

だんだん激高していくルーリアに対し、場違いなほど冷静なジェームズが彼女を諌める。

「貴方、ジェームズに似ている赤の他人なんじゃないの、私のジェームズは絶対にそんなことを言ったりはしないわ!…そうよ、この女が替え玉を用意したに違いないわ…」

そこに至って、エラは耐えきれず、遂に口を挟んだ。

、クラーク夫人。言いがかりは止めて下さる?」

彼女の凛とした声は辺りに響き渡り、人々は背筋を伸ばしたエラの美しさにまるで魅了されたように彼女を見つめる。ジェームズがさっと頬を紅潮させて、エラに視線を走らせた。しかしエラが口を挟んだことでルーリアはますます怒り狂った。

「嘘よ、絶対に嘘!じゃあこの人がジェームスっていう証拠を見せてよ、今ここで!本物の彼だったら背中の下あたりに蠍の入れ墨が入っているはずだもの、それを今ここで見せなさいよ!」


隣に立っているジェームスがぐっと唇を噛み締めたのが分かった。彼の表情を見て、ルーリアは狂ったように笑った。

「あの入れ墨は私はよく覚えているわ、2人で蠍に名前だってつけていたんだもの!さあ見せてご覧なさいよ偽物さん」

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