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5 It might be MY turn

「私は大馬鹿だ」

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テオとの最初の記憶は、アウグストの婚約者に選ばれてすぐのどこかの邸宅でのお茶会で兄に紹介されたのが始まりになる。私は8歳、テオは兄と同じで11歳だったと記憶している。

私より年長の兄と姉はすでに何回も両親に連れられて色々な貴族のお茶会に参加していて、テオもテオの兄弟とも顔見知りであった。特に兄はテオと気が合い、仲良くしていたのですぐに私を呼び寄せると彼に紹介したのだ。

『テオ、これ、僕の妹のユリアーナだ』

テオは今でも綺麗な容貌をしているが当時はとても可愛らしかった。綺麗な蜂蜜色の髪の毛が陽の光を浴びてキラキラ輝いていたのをよく覚えている。テオは少しだけ呆気にとられたような顔をして私を見ていた。外遊びをたくさんしていた私が侯爵令嬢にあるまじく日に焼けていたからかもしれない。

『…ユリアーナ、初めまして』

『テオドール様、初めまして』

子供とはいえ一応貴族らしく彼と堅苦しい挨拶を交わすと、私は兄に外で遊んできていいかと聞いた。

『外で遊ぶの?』

仰天したらしいテオが私に聞いた。私が答える前に兄が答えた。

『そうなんだ、こいつは本当お転婆で…本当にアウグスト様の婚約者としてやっていけるのか心配だよ』

『ーーーアウグストの?』

『ついこの間、アウグスト様がやってきてご自分でこいつがいいと仰って…淑やかさの欠片もないのになぁ』

『お に い さ ま!!』

悪い悪いと兄はさして悪びれもせず私を宥め、それからーーそうだ、兄とテオと一緒に私は外でたくさん遊んだ。テオは年下の私にとても優しく、親切だったから私はすぐに彼が好きになった。

それからテオはさりげなく寄り添ってくれていたーーいつでも。

兄弟姉妹に話せない話もテオには素直にできたし、彼が私のお転婆を見て笑ってくれるのが何より大好きだった。年頃になり私の両親に邪険に扱われてもテオは私に会いに家に来続け、オイレンブルグ家の花嫁修行が辛くて落ち込んでいる時は励ましてくれたし、辺境の森外れの屋敷に追いやられた時もひとり側にいてくれた。

(出会った時には私にはアウグスト様がいらしたから考えないようにしていたけどーーーテオは私の初恋で…)


…??


自分はアウグストと結婚する気だったくせに、と指摘されると私に返す言葉はない。アウグストとの婚約は私1人ではどうすることもできない家族を盾に取られた重石のようなものだったのだ。だから必死でアウグストのことを愛そうと努めていた。実際彼は尊敬に足る人物だったから、もし婚約破棄をされなかったら、恋人にはなれなくても親友のような夫婦になれたとは思っている。そしてテオが見つけた奥さんを私は心から祝福しようと決めていたのだ。



けれども、私はこの6年の間にテオの側にいる心地よさを知ってしまったのだ。

しかし婚約破棄で私は思いのほかの汚名を背負い、今度はこんな私をテオに背負ってもらうことは考えられなかったーー6年もの間、テオは側にいてくれたのに、彼から与えられる暖かさだけを受け取るだけ受け取って、私は何も返していなかった。今更それを後悔しても遅い。私は本当に大馬鹿だ。テオがいなければ生きていけないということに今、気づいたって、きっと遅すぎる。

「ユリアーナ」

テオが私たちの側に来てしまった。



絶望に襲われながら、私はラウラがテオに話しかけるべく口を開くのを見つめていた。

「テオドール様」

テオはラウラの方を向くと、ああ、と表情を改めた。

「私、ラウラ・ミュラーと申します」

(そうだ、こうやって挨拶を交わしたら…イケメン公爵嫡男が一目惚れしちゃうのよ…)

私は死の宣告を待つ囚人のようにただテオの次の言葉を待った。






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