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16.「お前が俺を治してくれるんだろ」
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残念ながらアロエはこの家には見当たらなかったので、アンソニーに手配を頼んだ。それから蜂蜜の瓶を一つもらって、トラヴィスの部屋に戻った。ソファに座って本を読んでいた彼に告げる。
「アロエは今日はありませんでした」
「ふ、残念そうな顔をしているからすぐに分かった」
私は思わず苦笑した。
「分かりやすすぎですね、私。でも蜂蜜をよかったら塗らせてください」
ふん、とトラヴィスが鼻を鳴らした。
「断っても塗るんだろ」
「そうです、よく分かりましたね」
「そりゃ分かるだろう」
「そんなわけで、洗面所をお借りしてもいいですか?」
彼は軽く肩をすくめた。
「好きに使え」
(なんだかんだと自由にさせてくれる……優しい人だ)
トラヴィスの許可を得たので私は洗面所へ行き、手を綺麗に洗った。洗面所も機能重視で、余計なものは一切置いていなかった。
鏡にうつった自分の姿を見ながらふと、トラヴィスのマスクについて考える。足は見せてくれたが、顔はどうだろう……。
彼とのやり取りから察するに、顔の美醜にそこまでこだわっているとは思えないが、それでも顔というのは身体の部位の中でも特別だ。顔にひとつ傷がついただけでも再起不能の精神的ダメージを与えられた患者も、男女問わず存在する。そのこともあって、自分からマスクを取るようには言い出せない。
(昨日の今日でトントン拍子で全てのハードルを越えられるわけない。体調が良くなれば、私のことを信頼して、きっと顔の傷も診せてくださるはずだわ――目に怪我はないわけだし)
マスク越しでも彼のターコイズブルーの瞳は、両目ともに美しく輝いている。
そう自分に言い聞かせながら、部屋に戻り、彼の右足の火傷跡に蜂蜜を塗らせてもらう。
「では、始めます。今日は触診も兼ねて、手で直接塗りたいのですがよろしいでしょうか」
「ああ」
私はそっと彼の火傷跡に手を伸ばした。
なるべく優しい接触を心がけながら蜂蜜を塗り始めたが、トラヴィスの身体がぴくりと震えた。
「痛いですか?」
「いや、そうではない。ただ、自分でも滅多に触らないから。それに皮膚が敏感になっているところとそうではないところがある」
私は頷いた。
「分かりました。なるべく刺激しないように気をつけます。少しでも痛みを感じたら、すぐに教えて下さい」
「ああ、分かった」
骨が陥没していると見受けられる場所を私は触りながら蜂蜜を塗り込む。
(へこんでいる……どれだけ痛かっただろう……。ああ、でも火傷の跡は白ではなくて、赤いから……きっとよくなる)
白かったり茶色くなってしまっていると、皮膚を移植する必要がでてくるほどの深い火傷を疑う必要がある。
とはいえ蜂蜜もアロエも民間療法だから、気休めといえば気休めに過ぎない。火傷跡だけではなく、右足の怪我に関してもやはりこの国の医師による診断を知りたかった。
エヴァンス家の主治医ではなく、フォスター先生に往診を頼みたい。セルゲイは許可を与えてくれたのだから後はトラヴィスが良いといえば。
私は蜂蜜を塗りながら、思いきって話し始めた。
「私が今、身を寄せているのがフォスター先生という医師の診療所になるのですが……」
「ああ、名前は聞いたことがある。身分の隔てなく診る、名医らしいな」
トラヴィスがそう言ってくれたので、勇気を出して、一気に言葉にした。
「その、先生にトラヴィス様の傷を診るよう、往診を頼んではいけないでしょうか。私は彼の専属治療師なので、そうすれば私が診断書を診ることが出来るのですが……」
彼の瞳が曇りを帯びるのが分かった。
きっと断られるだろう。
彼の顔を見ていられず、思わずうつむいてしまった。頭上でトラヴィスが躊躇っている気配がした。
しかし数秒後、彼が答えを出した。
「――ああ」
私は、蜂蜜を塗っている手を止めて、ぱっと彼を見上げた。眉間に今度は深い皺が寄っていたが、彼は今、たしかに「ああ」と答えたはずだ!
「ほ、本当ですか?」
「ああ――お前が俺を治してくれるんだろ」
私は彼の言葉が信じられなくて、ぱちぱちと瞬きをした。
“お前が俺を治してくれるんだろ”
彼が私に、歩み寄ってくれた。
私はあまりの嬉しさに、心からの笑顔を浮かべて、力いっぱい頷いた。
「はいっ! 未来の私の上腕二頭筋に賭けて!」
「上腕? は?」
トラヴィスがぽかんとしている。
「私、いつか岩壁に登るのが夢なんです。そのために今、両腕を鍛えてるんですよ」
「待て、お前が岩壁を登る?」
大学時代、ボルダリングにはまっていた私だが、本格的なロッククライミングもしたいなと常々思っていた。大学時代は大怪我をしてしまったし、また社会人になってからは、なかなかまとまった時間が取れずに、出来ず仕舞いで転生してしまったが。
「はい。実際は出来ないかもしれないんですけど、夢を見ることは自由ですから。岩壁を登って山頂から町を見下ろしたら素敵だと思いませんか? あ、また私の夢については今度説明しますね。とにかく一緒に鍛えましょう、トラヴィス様!」
私がそう言えば、彼の皺が少し解けた。
どこか面白がっているような表情になる。
「しみじみ変なやつだよな、お前」
「最初に言いましたが、私のことは女とも男とも思わず、変なやつと思ってください」
上機嫌になった私は蜂蜜を丁寧に最後まで塗り込むと、彼の傷跡をもう一度検分した。フォスター先生に往診してもらって、その上でリハビリをすれば、絶対に良くなると信じられた。フォスター先生は経験のある医師であり、適切なアドバイスをくださるはずだ。
「変なやつに俺の運命を託すことになるとはな――まぁ任せる。アロエでもなんでも塗ってくれ」
「はい! アロエが手に入り次第塗りますし、フォスター先生にも出来る限り早くに往診に来ていただきますね!」
「分かった分かった」
トラヴィスの眉間の皺はまったく変化なかったが、口調は穏やかだった。
それからリハビリの展望がどうのこうの、と彼と話したり、フォスター先生の人となりや、彼がどれだけ信頼に足りうる医師かを話しているうちに夕方になった。
私が厨房に行こうとすると、トラヴィスは当たり前のようについてきた。またしても挙動不審になるアンソニーを尻目に、彼は私が食事を作る様を眺めていた。厨房にいる間中、トラヴィスの顔はまたしても“無”であったが、最早私は気にしていなかった。
昼は和食メニューだったので、夜は洋風メニューにしようと思い、ほうれん草をたっぷりいれたマカロニグラタンを作った。牛乳ではなく、豆乳で作ることでよりタンパク質が多く摂れる。付け合せはさっぱりとたまねぎと大根の和風サラダだ。
出来上がると、厨房の向かいの部屋に晩御飯を運び込んだ。食事はもちろん、食後のレモングラスのハーブティーまでトラヴィスは綺麗に飲み干した。
それから彼の許可を得て、お風呂上がりに左足のマッサージをさせてもらうことにした。マッサージはやはりお風呂上がりにした方が効果がある。
入浴が終わったタイミングで彼の部屋を訪れた。
左足に関しては、切り傷はもうほとんど癒えていて、痛くないという。なので、軟膏を塗り込んだ。
ソファにうつ伏せに横たわってもらい、彼の左足をマッサージをした。右足があまり自由が効かないから、左足は酷使されている。余分な力をいれないように気をつけながら、しかし確実に凝り固まっている筋肉をゆっくりほぐしていく。みるみるうちに左足全体がうっすらと赤くなり、血の気が巡ったのが分かった。
「なるほど、違うもんだな」
ちょうどふくらはぎをマッサージしている時に、トラヴィスが呟いた。
「気持ちいいです? 私のマッサージ、結構患者さんたちから評判いいんですよ」
「……まぁな、気持ち、悪いわけないよな」
認めたくないが仕方ない、といった口調だったが彼が素直に頷いたので私は嬉しくなった。アロエだけではなく、左足用にマッサージ用のクリームも調達しよう、と私は思ったのだった。
右足のマッサージはフォスター先生の往診を待ってからにすることにしたが、少しでも早く良くなるよう願いをこめて、またしても右足の火傷痕に蜂蜜を丁寧に塗り込んだ。
明け方、しくしくと痛むことがないように。
(それから、少しでも健やかな睡眠をとれますように)
私はそう念じながら、マッサージをし続けた。
「アロエは今日はありませんでした」
「ふ、残念そうな顔をしているからすぐに分かった」
私は思わず苦笑した。
「分かりやすすぎですね、私。でも蜂蜜をよかったら塗らせてください」
ふん、とトラヴィスが鼻を鳴らした。
「断っても塗るんだろ」
「そうです、よく分かりましたね」
「そりゃ分かるだろう」
「そんなわけで、洗面所をお借りしてもいいですか?」
彼は軽く肩をすくめた。
「好きに使え」
(なんだかんだと自由にさせてくれる……優しい人だ)
トラヴィスの許可を得たので私は洗面所へ行き、手を綺麗に洗った。洗面所も機能重視で、余計なものは一切置いていなかった。
鏡にうつった自分の姿を見ながらふと、トラヴィスのマスクについて考える。足は見せてくれたが、顔はどうだろう……。
彼とのやり取りから察するに、顔の美醜にそこまでこだわっているとは思えないが、それでも顔というのは身体の部位の中でも特別だ。顔にひとつ傷がついただけでも再起不能の精神的ダメージを与えられた患者も、男女問わず存在する。そのこともあって、自分からマスクを取るようには言い出せない。
(昨日の今日でトントン拍子で全てのハードルを越えられるわけない。体調が良くなれば、私のことを信頼して、きっと顔の傷も診せてくださるはずだわ――目に怪我はないわけだし)
マスク越しでも彼のターコイズブルーの瞳は、両目ともに美しく輝いている。
そう自分に言い聞かせながら、部屋に戻り、彼の右足の火傷跡に蜂蜜を塗らせてもらう。
「では、始めます。今日は触診も兼ねて、手で直接塗りたいのですがよろしいでしょうか」
「ああ」
私はそっと彼の火傷跡に手を伸ばした。
なるべく優しい接触を心がけながら蜂蜜を塗り始めたが、トラヴィスの身体がぴくりと震えた。
「痛いですか?」
「いや、そうではない。ただ、自分でも滅多に触らないから。それに皮膚が敏感になっているところとそうではないところがある」
私は頷いた。
「分かりました。なるべく刺激しないように気をつけます。少しでも痛みを感じたら、すぐに教えて下さい」
「ああ、分かった」
骨が陥没していると見受けられる場所を私は触りながら蜂蜜を塗り込む。
(へこんでいる……どれだけ痛かっただろう……。ああ、でも火傷の跡は白ではなくて、赤いから……きっとよくなる)
白かったり茶色くなってしまっていると、皮膚を移植する必要がでてくるほどの深い火傷を疑う必要がある。
とはいえ蜂蜜もアロエも民間療法だから、気休めといえば気休めに過ぎない。火傷跡だけではなく、右足の怪我に関してもやはりこの国の医師による診断を知りたかった。
エヴァンス家の主治医ではなく、フォスター先生に往診を頼みたい。セルゲイは許可を与えてくれたのだから後はトラヴィスが良いといえば。
私は蜂蜜を塗りながら、思いきって話し始めた。
「私が今、身を寄せているのがフォスター先生という医師の診療所になるのですが……」
「ああ、名前は聞いたことがある。身分の隔てなく診る、名医らしいな」
トラヴィスがそう言ってくれたので、勇気を出して、一気に言葉にした。
「その、先生にトラヴィス様の傷を診るよう、往診を頼んではいけないでしょうか。私は彼の専属治療師なので、そうすれば私が診断書を診ることが出来るのですが……」
彼の瞳が曇りを帯びるのが分かった。
きっと断られるだろう。
彼の顔を見ていられず、思わずうつむいてしまった。頭上でトラヴィスが躊躇っている気配がした。
しかし数秒後、彼が答えを出した。
「――ああ」
私は、蜂蜜を塗っている手を止めて、ぱっと彼を見上げた。眉間に今度は深い皺が寄っていたが、彼は今、たしかに「ああ」と答えたはずだ!
「ほ、本当ですか?」
「ああ――お前が俺を治してくれるんだろ」
私は彼の言葉が信じられなくて、ぱちぱちと瞬きをした。
“お前が俺を治してくれるんだろ”
彼が私に、歩み寄ってくれた。
私はあまりの嬉しさに、心からの笑顔を浮かべて、力いっぱい頷いた。
「はいっ! 未来の私の上腕二頭筋に賭けて!」
「上腕? は?」
トラヴィスがぽかんとしている。
「私、いつか岩壁に登るのが夢なんです。そのために今、両腕を鍛えてるんですよ」
「待て、お前が岩壁を登る?」
大学時代、ボルダリングにはまっていた私だが、本格的なロッククライミングもしたいなと常々思っていた。大学時代は大怪我をしてしまったし、また社会人になってからは、なかなかまとまった時間が取れずに、出来ず仕舞いで転生してしまったが。
「はい。実際は出来ないかもしれないんですけど、夢を見ることは自由ですから。岩壁を登って山頂から町を見下ろしたら素敵だと思いませんか? あ、また私の夢については今度説明しますね。とにかく一緒に鍛えましょう、トラヴィス様!」
私がそう言えば、彼の皺が少し解けた。
どこか面白がっているような表情になる。
「しみじみ変なやつだよな、お前」
「最初に言いましたが、私のことは女とも男とも思わず、変なやつと思ってください」
上機嫌になった私は蜂蜜を丁寧に最後まで塗り込むと、彼の傷跡をもう一度検分した。フォスター先生に往診してもらって、その上でリハビリをすれば、絶対に良くなると信じられた。フォスター先生は経験のある医師であり、適切なアドバイスをくださるはずだ。
「変なやつに俺の運命を託すことになるとはな――まぁ任せる。アロエでもなんでも塗ってくれ」
「はい! アロエが手に入り次第塗りますし、フォスター先生にも出来る限り早くに往診に来ていただきますね!」
「分かった分かった」
トラヴィスの眉間の皺はまったく変化なかったが、口調は穏やかだった。
それからリハビリの展望がどうのこうの、と彼と話したり、フォスター先生の人となりや、彼がどれだけ信頼に足りうる医師かを話しているうちに夕方になった。
私が厨房に行こうとすると、トラヴィスは当たり前のようについてきた。またしても挙動不審になるアンソニーを尻目に、彼は私が食事を作る様を眺めていた。厨房にいる間中、トラヴィスの顔はまたしても“無”であったが、最早私は気にしていなかった。
昼は和食メニューだったので、夜は洋風メニューにしようと思い、ほうれん草をたっぷりいれたマカロニグラタンを作った。牛乳ではなく、豆乳で作ることでよりタンパク質が多く摂れる。付け合せはさっぱりとたまねぎと大根の和風サラダだ。
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それから彼の許可を得て、お風呂上がりに左足のマッサージをさせてもらうことにした。マッサージはやはりお風呂上がりにした方が効果がある。
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左足に関しては、切り傷はもうほとんど癒えていて、痛くないという。なので、軟膏を塗り込んだ。
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「なるほど、違うもんだな」
ちょうどふくらはぎをマッサージしている時に、トラヴィスが呟いた。
「気持ちいいです? 私のマッサージ、結構患者さんたちから評判いいんですよ」
「……まぁな、気持ち、悪いわけないよな」
認めたくないが仕方ない、といった口調だったが彼が素直に頷いたので私は嬉しくなった。アロエだけではなく、左足用にマッサージ用のクリームも調達しよう、と私は思ったのだった。
右足のマッサージはフォスター先生の往診を待ってからにすることにしたが、少しでも早く良くなるよう願いをこめて、またしても右足の火傷痕に蜂蜜を丁寧に塗り込んだ。
明け方、しくしくと痛むことがないように。
(それから、少しでも健やかな睡眠をとれますように)
私はそう念じながら、マッサージをし続けた。
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