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5.最推しの住むアイヴィー・エンドはやはり素敵だった
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私は外門の前で立ち尽くし、そびえ立つエヴァンス邸を見上げていた。
(うわあ、圧巻)
エヴァンス邸の外観はとにかく素晴らしかった。
一般にこの世界での家は木造建築か石造りである。それはこの高級エリアでも変わらない。そんな中、レンガ造りのエヴァンス邸は非常に目立つ。
アイヴィー・エンド……巷でそう呼ばれている建物で、その名の通り、外壁に美しい蔦が絡んでいるのが特徴だ。レンガを基調にした、温かみのあるオレンジ色の壁に緑の蔦は非常によく映える。すごくすごく映える。
今手元にスマホがあったら写真を撮って待ち受けにしたいくらいだ。
(素敵すぎる。門から入り口まで薔薇が咲いていたりしたら、めっちゃ合う……!)
小説の中でのセルゲイは伊達男ムーブだった――そんな彼が住んでいる屋敷が洒落ていないはずはないのだ。
(セルゲイに会えるの、めちゃくちゃ楽しみだな)
朝、フォスター先生とメグに別れを告げて、街馬車に乗り込んでここまでやってきた。異世界転生したと気づいてから初めて独り立ちをすること、またトラヴィスに拒否されるのでは、という不安でいっぱいだったが、いざエヴァンス邸の前に降り立ったら、どうにかなるかという思いになった。
あまりにも美しいエヴァンス邸の姿に圧倒されたというのもある。サットン家の屋敷も、フォスター先生の家よりは豪華であったが、アイヴィー・エンドとは比べ物にならない。
異世界転生という非現実を受け入れた私が、非現実だと思うくらいの別世界なのだ。
(こんな屋敷に住むお坊ちゃまが私の助けなんて必要としているわけはない。どうせすぐに家に帰されるだろうから――私は最推しの顔を拝むことを目的にしよう。だから断られても気にしない)
すぐにフォスター先生の家に戻り、また日常が始まるはずだ――。
自分にそう言い聞かせた私は数日分の着替えがつまったトランクの取手をぎゅっと握りしめて、歩き始めた。
☆
「こちらでお待ちくださいませ、サットン様」
「は、はい」
そういい置いて執事が応接間を出ていくと、ソファに腰かけた私はふうっと息を吐いた。
アイヴィー・エンドは外観のみならず、内装も重厚で素晴らしく、当主代行であるセルゲイの美意識を感じる。どこもかしこも綺麗に掃き清められ、きちんと整理整頓されている。雇われている使用人たちのレベルの高さがしのばれた。
廊下では等間隔で美術品や、花瓶に生けられた花々が置かれ、壁には肖像画や風景画などが飾られている。小ぶりだが陽の光に反射して煌めくシャンデリアが天井からぶら下がり、床に敷かれている厚めの絨毯は落ち着いた藍色だ。
決して派手すぎず、訪れた人に与える印象はどこまでも上品で優雅だ。
(いかにも男性が好みそうな内装だけど、とにかく趣味がいいなぁ)
執事の後ろを歩きながら、そんなことを考えていた。ちなみに外門から中に入ればそこは庭園で、薔薇が咲き乱れていた。薔薇が咲いていたらいいな、という願いが叶って私は内心喜んだ。
庭園の真ん中には噴水が設置されていて、エヴァンス家の潤沢な経済状況をうかがい知ることが出来た。サットン家にはもちろん噴水などなかった。
応接間も豪華で、だんだん感覚が麻痺してきた私は、最早驚かなくなっていた。革張りの立派なソファーに腰かけると、今から来るはずのセルゲイについて考え始めた。
私が読んだ 『あくでき』四巻までで、彼に関するイラストは、カラーが一枚、あとは白黒だったと記憶している。
少し濃い金色の髪で、瞳の色は碧色。身長は高いが、伊達男ゆえそこまで鍛えている感じはせず、細身。本当のヒーローであるスタングリードは黒髪、黒っぽい瞳でどちらかというと野性的な印象を与えるが、セルゲイに関しては王子様のような容貌だった。
王子のような外見だが、王子のように清廉潔白ではないところが私には刺さった。これで中身が純粋そのもの、一途だったらあまり興味を惹かれなかったに違いない。セルゲイは甘いも酸いも分かっている大人として描かれ、その上、ヒロインを翻弄する当て馬ポジション――やはり、おいしい。
一巻の後半で初登場したセルゲイだが、三巻の中盤でヒロインであるアンジェリカにきっぱり振られていたはずだ。でも四巻の終わりではアンジェリカとスタングリードの関係が少し拗れかけ、落ち込んだアンジェリカをセルゲイが慰めるシーンがあった。アンジェリカもセルゲイにはどうしてか素直になれる、という流れだった。
(『あくでき』のラストまで読めてないから、セルゲイがあの後どうなったかはわからないんだよなあ……。それに今、ライトノベルのどの時間軸なのかもーー)
そこまで考えたところで、扉が開いた。
私は慌ててソファから立ち上がった。
「お待たせしたね――なんだい、こちらが頼んで来ていただいたのだから、そんなに畏まらないでくれたまえ」
くだけた、どこか親しみやすい口調。
ぶわっと血が逆流するような、一気に覚醒するような、そんな感じがした。
(推しが喋った!!)
そこまで低くはないが、しっかりと通る声。
(こんな声なんだ……!)
二次元でしか知らなかった推しが三次元となって目の前にいる言葉にならない喜びに胸をふるわせながら、私は姿勢を戻した。
「―――!!」
(かかかっかかかかかっこいいいい)
語彙力が崩壊した。
私が『あくでき』のイラストレーターさんだったら間違いなく、背後に薔薇を散らす。そしてイラストレーターさんもそうしていた気がする。正しい。間違いなく正しい。
(蔦と薔薇だったらやっぱり薔薇。アイヴィー・エンドの、アイヴィーは蔦でも、やっぱり薔薇。庭園に咲いていたから薔薇でいいよね)
とにかく、セルゲイ=エヴァンスがそこに立っていた。
色気が滴り落ちそうな、凄まじい美男だ。
(イラストから受けたイメージ通り……! すごい、すごいすごい!)
セルゲイがにっこりと微笑んだ。
「私がセルゲイ=エヴァンスです。ご足労いただき、ありがとう。どうぞ座ってください」
(私、推しと会話してる!)
推しに認知されたという、あまりの感動ですぐには答えられなかったが、彼が怪訝そうな視線を向ける前に、と言葉を絞り出す。
「お招きいただき、ありがとうございます。私が治療師のユーリです」
なるべく落ち着いている風を装い、丁寧に貴族令嬢の礼をした。さすがに以前私が侯爵令嬢だったことを知っているセルゲイに、無礼なことは出来なかった。礼をしてから私もソファに座った。
「ユーリ……? そうか……突然一人になられて、ご苦労されただろう」
クラウディア=サットンの名前で認識していたのだろう。
そういえば先程の執事もずっと私のことをサットン様と呼んでいた。
ソファに深く腰かけたセルゲイは痛ましいものをみるかのように私を見た。彼が同情してそう言ってくれているだろうことは伝わってきたものの。
(憐れまれている……推しに憐れまれることほど辛いことはない)
しゃんと背筋を伸ばして座ると、目の前のセルゲイがその美しい瞳をみはった。
「いいえ、幸いにも私は素晴らしい出会いがありましたので、大変ではありませんでした。フォスター先生ご夫妻には本当に助けていただきました」
にっこりと微笑んだ。セルゲイはしばらくじっと私の顔を見ていたが、やがて苦笑した。
「ごめん、申し訳なかった」
最推しに謝らせてしまい、私は慌てた。
「とんでもない、何も謝るようなことはおっしゃっていません。それで――ご依頼の件ですが、私は何をさせて頂いたらよろしいでしょうか? 今日は詳細をうかがえるとのことでしたよね」
「ふっ」
セルゲイが今度は笑った。
「こんな女性もいるんだな――おっと失礼。女性を揶揄したつもりはないのだ。どうやら貴女の前では私は失言ばかりするようだね」
私はにっこりと微笑んだ。セルゲイは私を貴族令嬢として扱ってくれている。
「私はただの治療師ですわ。どうぞお気を楽になさってください」
「貴女にそう言わせてしまって悪いな――でも、ありがとう」
セルゲイがその長い足を組んだ。そんな普通の仕草すらゆったりしているようにみえ、何をしても優雅な男性である。
「治療を頼みたいのは弟のトラヴィスなんだが。事情があってね、ひとつ聞いてもらえるだろうか」
(うわあ、圧巻)
エヴァンス邸の外観はとにかく素晴らしかった。
一般にこの世界での家は木造建築か石造りである。それはこの高級エリアでも変わらない。そんな中、レンガ造りのエヴァンス邸は非常に目立つ。
アイヴィー・エンド……巷でそう呼ばれている建物で、その名の通り、外壁に美しい蔦が絡んでいるのが特徴だ。レンガを基調にした、温かみのあるオレンジ色の壁に緑の蔦は非常によく映える。すごくすごく映える。
今手元にスマホがあったら写真を撮って待ち受けにしたいくらいだ。
(素敵すぎる。門から入り口まで薔薇が咲いていたりしたら、めっちゃ合う……!)
小説の中でのセルゲイは伊達男ムーブだった――そんな彼が住んでいる屋敷が洒落ていないはずはないのだ。
(セルゲイに会えるの、めちゃくちゃ楽しみだな)
朝、フォスター先生とメグに別れを告げて、街馬車に乗り込んでここまでやってきた。異世界転生したと気づいてから初めて独り立ちをすること、またトラヴィスに拒否されるのでは、という不安でいっぱいだったが、いざエヴァンス邸の前に降り立ったら、どうにかなるかという思いになった。
あまりにも美しいエヴァンス邸の姿に圧倒されたというのもある。サットン家の屋敷も、フォスター先生の家よりは豪華であったが、アイヴィー・エンドとは比べ物にならない。
異世界転生という非現実を受け入れた私が、非現実だと思うくらいの別世界なのだ。
(こんな屋敷に住むお坊ちゃまが私の助けなんて必要としているわけはない。どうせすぐに家に帰されるだろうから――私は最推しの顔を拝むことを目的にしよう。だから断られても気にしない)
すぐにフォスター先生の家に戻り、また日常が始まるはずだ――。
自分にそう言い聞かせた私は数日分の着替えがつまったトランクの取手をぎゅっと握りしめて、歩き始めた。
☆
「こちらでお待ちくださいませ、サットン様」
「は、はい」
そういい置いて執事が応接間を出ていくと、ソファに腰かけた私はふうっと息を吐いた。
アイヴィー・エンドは外観のみならず、内装も重厚で素晴らしく、当主代行であるセルゲイの美意識を感じる。どこもかしこも綺麗に掃き清められ、きちんと整理整頓されている。雇われている使用人たちのレベルの高さがしのばれた。
廊下では等間隔で美術品や、花瓶に生けられた花々が置かれ、壁には肖像画や風景画などが飾られている。小ぶりだが陽の光に反射して煌めくシャンデリアが天井からぶら下がり、床に敷かれている厚めの絨毯は落ち着いた藍色だ。
決して派手すぎず、訪れた人に与える印象はどこまでも上品で優雅だ。
(いかにも男性が好みそうな内装だけど、とにかく趣味がいいなぁ)
執事の後ろを歩きながら、そんなことを考えていた。ちなみに外門から中に入ればそこは庭園で、薔薇が咲き乱れていた。薔薇が咲いていたらいいな、という願いが叶って私は内心喜んだ。
庭園の真ん中には噴水が設置されていて、エヴァンス家の潤沢な経済状況をうかがい知ることが出来た。サットン家にはもちろん噴水などなかった。
応接間も豪華で、だんだん感覚が麻痺してきた私は、最早驚かなくなっていた。革張りの立派なソファーに腰かけると、今から来るはずのセルゲイについて考え始めた。
私が読んだ 『あくでき』四巻までで、彼に関するイラストは、カラーが一枚、あとは白黒だったと記憶している。
少し濃い金色の髪で、瞳の色は碧色。身長は高いが、伊達男ゆえそこまで鍛えている感じはせず、細身。本当のヒーローであるスタングリードは黒髪、黒っぽい瞳でどちらかというと野性的な印象を与えるが、セルゲイに関しては王子様のような容貌だった。
王子のような外見だが、王子のように清廉潔白ではないところが私には刺さった。これで中身が純粋そのもの、一途だったらあまり興味を惹かれなかったに違いない。セルゲイは甘いも酸いも分かっている大人として描かれ、その上、ヒロインを翻弄する当て馬ポジション――やはり、おいしい。
一巻の後半で初登場したセルゲイだが、三巻の中盤でヒロインであるアンジェリカにきっぱり振られていたはずだ。でも四巻の終わりではアンジェリカとスタングリードの関係が少し拗れかけ、落ち込んだアンジェリカをセルゲイが慰めるシーンがあった。アンジェリカもセルゲイにはどうしてか素直になれる、という流れだった。
(『あくでき』のラストまで読めてないから、セルゲイがあの後どうなったかはわからないんだよなあ……。それに今、ライトノベルのどの時間軸なのかもーー)
そこまで考えたところで、扉が開いた。
私は慌ててソファから立ち上がった。
「お待たせしたね――なんだい、こちらが頼んで来ていただいたのだから、そんなに畏まらないでくれたまえ」
くだけた、どこか親しみやすい口調。
ぶわっと血が逆流するような、一気に覚醒するような、そんな感じがした。
(推しが喋った!!)
そこまで低くはないが、しっかりと通る声。
(こんな声なんだ……!)
二次元でしか知らなかった推しが三次元となって目の前にいる言葉にならない喜びに胸をふるわせながら、私は姿勢を戻した。
「―――!!」
(かかかっかかかかかっこいいいい)
語彙力が崩壊した。
私が『あくでき』のイラストレーターさんだったら間違いなく、背後に薔薇を散らす。そしてイラストレーターさんもそうしていた気がする。正しい。間違いなく正しい。
(蔦と薔薇だったらやっぱり薔薇。アイヴィー・エンドの、アイヴィーは蔦でも、やっぱり薔薇。庭園に咲いていたから薔薇でいいよね)
とにかく、セルゲイ=エヴァンスがそこに立っていた。
色気が滴り落ちそうな、凄まじい美男だ。
(イラストから受けたイメージ通り……! すごい、すごいすごい!)
セルゲイがにっこりと微笑んだ。
「私がセルゲイ=エヴァンスです。ご足労いただき、ありがとう。どうぞ座ってください」
(私、推しと会話してる!)
推しに認知されたという、あまりの感動ですぐには答えられなかったが、彼が怪訝そうな視線を向ける前に、と言葉を絞り出す。
「お招きいただき、ありがとうございます。私が治療師のユーリです」
なるべく落ち着いている風を装い、丁寧に貴族令嬢の礼をした。さすがに以前私が侯爵令嬢だったことを知っているセルゲイに、無礼なことは出来なかった。礼をしてから私もソファに座った。
「ユーリ……? そうか……突然一人になられて、ご苦労されただろう」
クラウディア=サットンの名前で認識していたのだろう。
そういえば先程の執事もずっと私のことをサットン様と呼んでいた。
ソファに深く腰かけたセルゲイは痛ましいものをみるかのように私を見た。彼が同情してそう言ってくれているだろうことは伝わってきたものの。
(憐れまれている……推しに憐れまれることほど辛いことはない)
しゃんと背筋を伸ばして座ると、目の前のセルゲイがその美しい瞳をみはった。
「いいえ、幸いにも私は素晴らしい出会いがありましたので、大変ではありませんでした。フォスター先生ご夫妻には本当に助けていただきました」
にっこりと微笑んだ。セルゲイはしばらくじっと私の顔を見ていたが、やがて苦笑した。
「ごめん、申し訳なかった」
最推しに謝らせてしまい、私は慌てた。
「とんでもない、何も謝るようなことはおっしゃっていません。それで――ご依頼の件ですが、私は何をさせて頂いたらよろしいでしょうか? 今日は詳細をうかがえるとのことでしたよね」
「ふっ」
セルゲイが今度は笑った。
「こんな女性もいるんだな――おっと失礼。女性を揶揄したつもりはないのだ。どうやら貴女の前では私は失言ばかりするようだね」
私はにっこりと微笑んだ。セルゲイは私を貴族令嬢として扱ってくれている。
「私はただの治療師ですわ。どうぞお気を楽になさってください」
「貴女にそう言わせてしまって悪いな――でも、ありがとう」
セルゲイがその長い足を組んだ。そんな普通の仕草すらゆったりしているようにみえ、何をしても優雅な男性である。
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