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透の帰還

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 ピンポーン。



「はい?」



「柚希、僕だけど」



「あ・・・!!」



 三日後。



 合宿から帰った透が夕方、柚希の家のチャイムをならすとドタドタドタと言う足音が聞こえて直後にガチャリと玄関の扉が開け放たれる。



「お帰りなさい、透!!」



「ただいま、柚希・・・!!」



 そこには満面の笑みを浮かべた柚希が立っていた、この十日間は柚希にとって本当に長い時間だった、それこそ何年にも感じられる位にだ。



 一方の透も透で合宿中は柚希の事を考えていた、彼にとっても柚希は相当に大きな存在となっていたのだ。



 実際に柚希は可愛かった、いや“可愛くなった”と言っていい。



 外見は元々可愛らしかったがそれを“可愛い”ー外見だけじゃなくていじらしいとかしおらしいとか、そう言った仕草や性質も含めてーと言うレベルにまで押し上げたのは透であり透への思いだったのだがそのことにまだ、少年は気付いていなかった。



 自分が恋をしているからそう見えるだけなのかな、等と不埒な事を考えたりもしたがそれもあながち間違いでは無かった、なぜならば柚希が少女になるのは透の前でだけだからだ。



 他の人、例えば友人達相手であっても絶対にあんな態度は取らなかったが唯一、透が来たときだけはクラスメイト達の前でも表情が和らぎ、一人の乙女の姿をみせた。



「柚希、メッチャ会いたかったよ」



「・・・っ!!わたし、も❤❤❤」



 ついでにもう一つ言っておくと、自分が天然のドSでたらしであると言う事を、透は自覚していない。



 彼のこういう裏表のない素直な好意が一々柚希の心を刺激して余計に恋の炎を燃え上がらせるのだ。



「ねえ柚希」



「えっ!?あ・・・」



 もう二人に言葉はいらなかった、柚希が“可愛い”と思った時に透は抱きたくなるのであり、そしてそんな時は。



 まだ幼気な少年であるはずの透はちょっと大人な顔をするのだ、そしてそんな顔で、瞳で見つめられると柚希はもう、何も言えなくなってしまった。



 幸い、今日は両親が遅かった、まだお風呂に入ってはいなかったのだが柚希は透に誘われて自分の部屋へと入って行った。
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