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夫婦の絆と子供への思い
“女王位選抜試験” その7
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蒼太が編み出して愛妻の一人であるオリヴィアに伝えた必殺技の中に、“神魔断絶斬”と言うモノがある。
これは自身の持つ根幹生命力たる“波動エネルギー”の内でも“極小サイズにまで圧縮された11次元までの事象宇宙”をそれぞれ、右回転と左回転のタキオン波動粒子運動で表現したモノを“超時空力場”の中で一体化させた上に、そこに更に自然界に満ち溢れている精霊やエレメント達の醸し出す“自然エネルギー”を融合させ、それを極限まで高めた時に始めて顕現する神秘のパワーフォース、即ち“理力”を剣に纏わせた後で呼吸を合わせ、“居合抜き”の要領で敵に向かって打ち放つ事で発動、周囲に広がる時空間ごと対象を魂レベルで一刀両断する大技である。
この技は元々、メリアリアが完成させた“龍神の咆哮”、即ち“波動砲”の極意を参考に開発された秘剣であった、最初は一つの回転しか掛かっていなかった爆縮次元波動流を二つ同時に出現させてそれぞれに対の回転を加え、それを後に“一つの超時空力場”として合一させる事で多次元かつ多層構造で広がっている宇宙そのものを引き裂く力を発生させたモノだったのだ。
そう言う意味では波動砲は蒼太が提唱して原型を作り、それを更に完成版へと発展させたのがメリアリアである、と言う事も出来たのだが、この原理を利用している“神魔断絶斬”を更に自分に合う形で取り入れたのがメリアリアが密かに開発した“アビッソ・ヴィオラ・スピーネ”であった。
“神魔断絶斬”はその超越的な純粋波動爆力を自然エネルギーもろとも剣に纏わせてこの宇宙に顕現させる事から始まるモノの、この技は普段は折り畳まれている高次元世界を3次元に展開させる過程で生じる超高エネルギーで効果範囲内の敵を討ち滅ぼす事を根幹に置いているのに対して“アビッソ・ヴィオラ・スピーネ”は鞭そのものを媒体として術式を発動させるモノだ。
この時、一つ一つの茨の刺には“絶対熱の法力”と共に“極小化された11次元の事象宇宙”が宿っており、それを超速で敵に叩き付ける際に一気に解放、攻撃射程領域内でぶつかり合った縮退次元エネルギーを弾けさせては爆散させる事を極意とする。
その際に生じる“超時空爆発”の放つエネルギー波動は“神魔断絶斬”にも引けを取らないモノであり、紛れもなき終極奥義の一つに数える事が出来る代物であった。
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・あんな隠し球を持っていたなんてね」
それをメリアリアは“何かあった際の奥の手”として、女王位選抜試験が始まる直前に密かにリエラに伝授していたのであるモノの、しかしそれを彼女はまだ十全には使い熟せていなかった、にも関わらずこの威力である、あまりにも凄絶すぎる技だったのだ。
“アビッソ・ヴィオラ・スピーネ”の発動に伴う眩いばかりの閃光と、その破壊活動がもたらす多量の土埃が収まった時、果たして地面は大きく抉れ、周囲の建物は四散していた、その場にいた誰もがその超絶的な威力に沈黙を余儀なくされた中で、最初に口を開いたのが誰あろう、セリカであった。
「もし“あれ”を私と戦った時に、発動させていたならば・・・。もっと早くに勝負は着いていたでしょうね、なんでやらなかったの?」
「・・・・・」
その問いに対して“貴方に憎しみが無かったからよ”とメリアリアはポツリと呟いた。
「ちょっと突拍子の無い人だけど・・・。それでも貴女は人としてはまだ理解も出来るし許容も出来る、そんな人にこの技は使えないわ・・・」
“それに何より”とメリアリアが続けて言った、“あの場には蒼太が居たからね”とそう告げて。
「この人を巻き込みたく無かったの。勿論、アウロラの事もだけどね・・・?」
「・・・・・」
“つまらないわ?”とそれを聞いたセリカは踵を返して後ろを向くと、来た時と同じように静かに去って行った。
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「救急隊が、出て来たね・・・」
尚も現場を注視していると、蒼太の言葉通りに救急隊の面々がいそいそと活動し始めていた、全ての力を使い果たしてしまったのであろうリエラはその場にグッタリと座り込み、傍では翔太が彼女に自分のエネルギーを分け与えて疑似回復を行っているところである。
その周囲で倒れ伏している少年少女達には救急隊が寄り添い、必死の救護を行っていた、どうやら死人は出ていないようだが重傷者は何名かいるようで、その場から担架で運び出されていった。
「・・・これは決まったんじゃないかな」
蒼太が続けた。
「トーナメント戦を開催する必要は、もう無いんじゃないかな?あんな凄い技を持っている女の子を、誰も相手にしたくはないだろうし。第一隠しておいた実力が違いすぎる、頭一つ抜けているよ?リエラは・・・」
「・・・・・」
「・・・メリー、喜ばないのか?」
「・・・嬉しさ半分、悲しさ半分。かな?正直な感想としては」
夫からの声掛けに、困ったような笑顔を浮かべて愛妻淑女が応えた。
「正直に言うとね?蒼太。私はあの子に、リエラに女王位になって欲しくは無かったの。でもあの子はどうしてもなりたいって聞かなかった、だから。・・・“それだったら誰にも負けない位の強い女王になりなさい”って送り出してあげたのよ?」
「それであの技を教えたのか・・・」
「・・・うん」
メリアリアが静かに頷いた。
「でも私は間違っていたかも知れないわ?やっぱり強すぎる力と言うモノは、人を不幸にするんだわ。今日のこの光景を見て、私は確信出来たもの・・・」
「・・・でも、だけど一方で。君は翔太とリエラを守ってくれたのも事実だよ?アウロラもオリヴィアも見ただろうけれど、さっき技が発動される前に確認してみたら、リエラと翔太はかなり消耗した状態で数個の敵性チームから囲まれていた。集中攻撃を受けていたんだ、もしあの技が無かったら」
「・・・うん。それはまあ、そうなんだけど」
「相手側だってあこぎな事をしていたんだから、今回の場合はあんまり気にしない方が良いよ?況してやこう言う状況下なんだしさ、それに大丈夫だよ。あの子達ならばちゃんと優しさを以て厳しさを適応させてくれるよ、変な判断で悪戯にあの技を使ったりはしないだろう・・・」
「・・・・・」
蒼太の言葉を聞いたメリアリアは少しだけ気分が楽になった、正直に言えば彼の言う事は自分でも思わないでもない。
ただし。
「ねえ、でも・・・。蒼太、あなただって余程の事が無い限りかは“波動砲の対人使用”は許してはいないでしょう?勿論、使用するにあたって様々な制約があるのは解っているけど。それでもやっぱり“無意味に人を傷付けたくは無い”と思っているからでしょう?」
「・・・まあ、それは。ね?」
「私も一言、言っておくべきだった。勿論“使用する際には充分に気を付けなさい”って、注意はしたし。それに普段から“悪戯に人を傷付けてはいけない”とも伝えてはおいたけれど・・・。だけどこんな・・・」
「メリー・・・」
花嫁がそこまで話した時だった、蒼太が優しく彼女を抱き締めてくれたのだ。
「あ・・・」
「やっぱり君は優しくて、それでいてとっても可愛い女の子だよ・・・?」
「・・・・・」
「ねえメリー。君はリエラの師匠だろう?」
「・・・それは。そうだけど!!!」
「だったらリエラを信じてあげなきゃ。リエラはね?今までの戦いでも相手に余計な傷を与えたりはしていないし、それに後遺症を残さないようにも戦っている。ちゃんと君の教えを守っているんだ、そのリエラがあれを使ったのは余程の事だったと思うんだ。君だって見ていただろう?今回は相手が15人位はいて、しかもみんな寄って集ってリエラと翔太に襲い掛かろうとしていたんだ。リエラは君と同じ心を持っている、だからね?あの子が今のままで居る限りは、悪戯に人を苦しめたり残虐さの発露としてあの技を使ったりはしないだろう!!!」
「・・・蒼太」
「確かに自分の事を省みる時間って、大事だよ?それが無いと人は進化が出来ないし。それにただ前だけ見て走っていても、それだけだといつか大きな過ちを犯す事になりかねないからね・・・」
「・・・・・」
「だけどこれに関する限りは」
“君は間違ってないよ”と蒼太は言った、そして更に続けて“もう少し自分に優しくなりなよ?”、“自分自身のやった事に胸を張らなきゃ・・・!!!”と彼女に諭す。
「もし僕が言っている事が間違っていたのなら、責任を取るよ?僕も君と同じ世界に行くから。一緒に罰を受けるから、だから大丈夫だから・・・!!!」
そこまで言い切って優しく妻の頭を撫でるが、それを聞いたメリアリアは俯き加減で蒼太の前にまず、リエラの事を考える。
確かに蒼太の言う通りである、何もリエラは無抵抗な一般市民にこの技を使った訳では無くて、れっきとした戦闘の中で相手から自分と仲間を守るために已む無く使用したのであった、それすらも“いけないこと”として禁止してしまったのならば、横行する理不尽な暴力に人は対抗する力や手段を全く失ってしまう。
「・・・・・」
(リエラを、信じる。自分のやった事に胸を張る・・・!!!)
頭の中で夫から言われた言葉を反芻させていたメリアリアは次第に自分の中の蟠りが溶けて行くような気持ちになった。
「・・・そうだよね。もう少しリエラを信じてあげなきゃ、だよね?どうも有り難う蒼太、お陰で少しだけ気分が楽になったわ?」
“それに・・・”とメリアリアは青年の胸の中で続けて言った、“あの子に余計なお説教をしてしまう所だった”とそう告げて。
「弟子を襲った相手よりも、まずは弟子の事を考えなきゃ。とにかくあの子が無事で良かった、褒めてあげなきゃいけないわね?」
「・・・ま、まあ?褒めるまではやらなくても良いんじゃないかな。もう子供じゃ無いんだし、全部終わった後で“よくやった”とだけ言うとか」
“それに相手の子達を傷付けちゃったのは事実だしね・・・!!?”等とのたまいつつも、すっかりいつものペースを取り戻して自分に抱き着き、嬉しそうに身体を押し付けて来るメリアリアにやや苦笑しつつも蒼太が応えたが、この後で。
リエラはこの技を持っていた事とそれまでの戦績が抜群であった事、かてて加えてトーナメント戦での組み合わせが予定されていた相手が軒並み負傷して動けなくなってしまった事等、いくつかの要因が重なった為に“女王位選抜試験実行委員会”の委員全員の推薦によって“炎の女王位”を受け継ぐ事が決定された。
時にリエラ16歳の冬の日の出来事であり、そしてこれを機に翔太と彼女の運命は大きく動き出す事となった。
これは自身の持つ根幹生命力たる“波動エネルギー”の内でも“極小サイズにまで圧縮された11次元までの事象宇宙”をそれぞれ、右回転と左回転のタキオン波動粒子運動で表現したモノを“超時空力場”の中で一体化させた上に、そこに更に自然界に満ち溢れている精霊やエレメント達の醸し出す“自然エネルギー”を融合させ、それを極限まで高めた時に始めて顕現する神秘のパワーフォース、即ち“理力”を剣に纏わせた後で呼吸を合わせ、“居合抜き”の要領で敵に向かって打ち放つ事で発動、周囲に広がる時空間ごと対象を魂レベルで一刀両断する大技である。
この技は元々、メリアリアが完成させた“龍神の咆哮”、即ち“波動砲”の極意を参考に開発された秘剣であった、最初は一つの回転しか掛かっていなかった爆縮次元波動流を二つ同時に出現させてそれぞれに対の回転を加え、それを後に“一つの超時空力場”として合一させる事で多次元かつ多層構造で広がっている宇宙そのものを引き裂く力を発生させたモノだったのだ。
そう言う意味では波動砲は蒼太が提唱して原型を作り、それを更に完成版へと発展させたのがメリアリアである、と言う事も出来たのだが、この原理を利用している“神魔断絶斬”を更に自分に合う形で取り入れたのがメリアリアが密かに開発した“アビッソ・ヴィオラ・スピーネ”であった。
“神魔断絶斬”はその超越的な純粋波動爆力を自然エネルギーもろとも剣に纏わせてこの宇宙に顕現させる事から始まるモノの、この技は普段は折り畳まれている高次元世界を3次元に展開させる過程で生じる超高エネルギーで効果範囲内の敵を討ち滅ぼす事を根幹に置いているのに対して“アビッソ・ヴィオラ・スピーネ”は鞭そのものを媒体として術式を発動させるモノだ。
この時、一つ一つの茨の刺には“絶対熱の法力”と共に“極小化された11次元の事象宇宙”が宿っており、それを超速で敵に叩き付ける際に一気に解放、攻撃射程領域内でぶつかり合った縮退次元エネルギーを弾けさせては爆散させる事を極意とする。
その際に生じる“超時空爆発”の放つエネルギー波動は“神魔断絶斬”にも引けを取らないモノであり、紛れもなき終極奥義の一つに数える事が出来る代物であった。
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・あんな隠し球を持っていたなんてね」
それをメリアリアは“何かあった際の奥の手”として、女王位選抜試験が始まる直前に密かにリエラに伝授していたのであるモノの、しかしそれを彼女はまだ十全には使い熟せていなかった、にも関わらずこの威力である、あまりにも凄絶すぎる技だったのだ。
“アビッソ・ヴィオラ・スピーネ”の発動に伴う眩いばかりの閃光と、その破壊活動がもたらす多量の土埃が収まった時、果たして地面は大きく抉れ、周囲の建物は四散していた、その場にいた誰もがその超絶的な威力に沈黙を余儀なくされた中で、最初に口を開いたのが誰あろう、セリカであった。
「もし“あれ”を私と戦った時に、発動させていたならば・・・。もっと早くに勝負は着いていたでしょうね、なんでやらなかったの?」
「・・・・・」
その問いに対して“貴方に憎しみが無かったからよ”とメリアリアはポツリと呟いた。
「ちょっと突拍子の無い人だけど・・・。それでも貴女は人としてはまだ理解も出来るし許容も出来る、そんな人にこの技は使えないわ・・・」
“それに何より”とメリアリアが続けて言った、“あの場には蒼太が居たからね”とそう告げて。
「この人を巻き込みたく無かったの。勿論、アウロラの事もだけどね・・・?」
「・・・・・」
“つまらないわ?”とそれを聞いたセリカは踵を返して後ろを向くと、来た時と同じように静かに去って行った。
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「救急隊が、出て来たね・・・」
尚も現場を注視していると、蒼太の言葉通りに救急隊の面々がいそいそと活動し始めていた、全ての力を使い果たしてしまったのであろうリエラはその場にグッタリと座り込み、傍では翔太が彼女に自分のエネルギーを分け与えて疑似回復を行っているところである。
その周囲で倒れ伏している少年少女達には救急隊が寄り添い、必死の救護を行っていた、どうやら死人は出ていないようだが重傷者は何名かいるようで、その場から担架で運び出されていった。
「・・・これは決まったんじゃないかな」
蒼太が続けた。
「トーナメント戦を開催する必要は、もう無いんじゃないかな?あんな凄い技を持っている女の子を、誰も相手にしたくはないだろうし。第一隠しておいた実力が違いすぎる、頭一つ抜けているよ?リエラは・・・」
「・・・・・」
「・・・メリー、喜ばないのか?」
「・・・嬉しさ半分、悲しさ半分。かな?正直な感想としては」
夫からの声掛けに、困ったような笑顔を浮かべて愛妻淑女が応えた。
「正直に言うとね?蒼太。私はあの子に、リエラに女王位になって欲しくは無かったの。でもあの子はどうしてもなりたいって聞かなかった、だから。・・・“それだったら誰にも負けない位の強い女王になりなさい”って送り出してあげたのよ?」
「それであの技を教えたのか・・・」
「・・・うん」
メリアリアが静かに頷いた。
「でも私は間違っていたかも知れないわ?やっぱり強すぎる力と言うモノは、人を不幸にするんだわ。今日のこの光景を見て、私は確信出来たもの・・・」
「・・・でも、だけど一方で。君は翔太とリエラを守ってくれたのも事実だよ?アウロラもオリヴィアも見ただろうけれど、さっき技が発動される前に確認してみたら、リエラと翔太はかなり消耗した状態で数個の敵性チームから囲まれていた。集中攻撃を受けていたんだ、もしあの技が無かったら」
「・・・うん。それはまあ、そうなんだけど」
「相手側だってあこぎな事をしていたんだから、今回の場合はあんまり気にしない方が良いよ?況してやこう言う状況下なんだしさ、それに大丈夫だよ。あの子達ならばちゃんと優しさを以て厳しさを適応させてくれるよ、変な判断で悪戯にあの技を使ったりはしないだろう・・・」
「・・・・・」
蒼太の言葉を聞いたメリアリアは少しだけ気分が楽になった、正直に言えば彼の言う事は自分でも思わないでもない。
ただし。
「ねえ、でも・・・。蒼太、あなただって余程の事が無い限りかは“波動砲の対人使用”は許してはいないでしょう?勿論、使用するにあたって様々な制約があるのは解っているけど。それでもやっぱり“無意味に人を傷付けたくは無い”と思っているからでしょう?」
「・・・まあ、それは。ね?」
「私も一言、言っておくべきだった。勿論“使用する際には充分に気を付けなさい”って、注意はしたし。それに普段から“悪戯に人を傷付けてはいけない”とも伝えてはおいたけれど・・・。だけどこんな・・・」
「メリー・・・」
花嫁がそこまで話した時だった、蒼太が優しく彼女を抱き締めてくれたのだ。
「あ・・・」
「やっぱり君は優しくて、それでいてとっても可愛い女の子だよ・・・?」
「・・・・・」
「ねえメリー。君はリエラの師匠だろう?」
「・・・それは。そうだけど!!!」
「だったらリエラを信じてあげなきゃ。リエラはね?今までの戦いでも相手に余計な傷を与えたりはしていないし、それに後遺症を残さないようにも戦っている。ちゃんと君の教えを守っているんだ、そのリエラがあれを使ったのは余程の事だったと思うんだ。君だって見ていただろう?今回は相手が15人位はいて、しかもみんな寄って集ってリエラと翔太に襲い掛かろうとしていたんだ。リエラは君と同じ心を持っている、だからね?あの子が今のままで居る限りは、悪戯に人を苦しめたり残虐さの発露としてあの技を使ったりはしないだろう!!!」
「・・・蒼太」
「確かに自分の事を省みる時間って、大事だよ?それが無いと人は進化が出来ないし。それにただ前だけ見て走っていても、それだけだといつか大きな過ちを犯す事になりかねないからね・・・」
「・・・・・」
「だけどこれに関する限りは」
“君は間違ってないよ”と蒼太は言った、そして更に続けて“もう少し自分に優しくなりなよ?”、“自分自身のやった事に胸を張らなきゃ・・・!!!”と彼女に諭す。
「もし僕が言っている事が間違っていたのなら、責任を取るよ?僕も君と同じ世界に行くから。一緒に罰を受けるから、だから大丈夫だから・・・!!!」
そこまで言い切って優しく妻の頭を撫でるが、それを聞いたメリアリアは俯き加減で蒼太の前にまず、リエラの事を考える。
確かに蒼太の言う通りである、何もリエラは無抵抗な一般市民にこの技を使った訳では無くて、れっきとした戦闘の中で相手から自分と仲間を守るために已む無く使用したのであった、それすらも“いけないこと”として禁止してしまったのならば、横行する理不尽な暴力に人は対抗する力や手段を全く失ってしまう。
「・・・・・」
(リエラを、信じる。自分のやった事に胸を張る・・・!!!)
頭の中で夫から言われた言葉を反芻させていたメリアリアは次第に自分の中の蟠りが溶けて行くような気持ちになった。
「・・・そうだよね。もう少しリエラを信じてあげなきゃ、だよね?どうも有り難う蒼太、お陰で少しだけ気分が楽になったわ?」
“それに・・・”とメリアリアは青年の胸の中で続けて言った、“あの子に余計なお説教をしてしまう所だった”とそう告げて。
「弟子を襲った相手よりも、まずは弟子の事を考えなきゃ。とにかくあの子が無事で良かった、褒めてあげなきゃいけないわね?」
「・・・ま、まあ?褒めるまではやらなくても良いんじゃないかな。もう子供じゃ無いんだし、全部終わった後で“よくやった”とだけ言うとか」
“それに相手の子達を傷付けちゃったのは事実だしね・・・!!?”等とのたまいつつも、すっかりいつものペースを取り戻して自分に抱き着き、嬉しそうに身体を押し付けて来るメリアリアにやや苦笑しつつも蒼太が応えたが、この後で。
リエラはこの技を持っていた事とそれまでの戦績が抜群であった事、かてて加えてトーナメント戦での組み合わせが予定されていた相手が軒並み負傷して動けなくなってしまった事等、いくつかの要因が重なった為に“女王位選抜試験実行委員会”の委員全員の推薦によって“炎の女王位”を受け継ぐ事が決定された。
時にリエラ16歳の冬の日の出来事であり、そしてこれを機に翔太と彼女の運命は大きく動き出す事となった。
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