星降る国の恋と愛

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夫婦の絆と子供への思い

女の平和

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 アウロラが特性ボディーソープを使用していた事を突き止めたメリアリアであったが、そんな彼女でもまだ掴めていない真実があった。

 アウロラは自分の汗や愛液でボディーソープを作らせる際に、そこに更に媚薬成分のある薬草や薬物を大量に投入させ、蒼太が自分の匂いを嗅ぐと昂ぶってしまうように仕向けたのである。

 しかもこの媚薬成分は一般的には出回っていない、一握りの医師だけが知っている“医学的に裏付けされている本物”であり、彼女はそれを敢えて使用しても尚、蒼太の愛を手に入れようと画策していたのだ。

「何を考えているのだ?アウロラ。蒼太の私達に対する思いを掻き乱すような振る舞いを、断じて見過ごす訳にはいかない・・・!!!」

 “悠久の園”に到着した彼女を待っていたのは、先に着替えて待ち構えていたオリヴィアの怒声であった、当然、メリアリアもそれに続く。

「一体どう言う了見なのかしら?あなたは。私達から夫を奪うような真似をして・・・!!!」

「・・・私はどうしても蒼太さんの心が欲しいんです。貴女達だって本当は解っているでしょ?あの人を、蒼太さんを自分だけのモノにしたいと思った事が無かった訳では無いでしょうっ!!!」

 正直に言って、アウロラに後ろめたさがまるきり無かったか、と言えばそんな事は決して無かった、彼女だって本当はあこぎな手段を使わずに、自分の魅力で勝負をしようと考えていたのである。

 ・・・だけど。

「蒼太さんは凄く優しい人なんです、私にとっては光なんですっ!!!それこそ唯一無二と言って良い位の。こんなにも人を愛しく思った事は無いんです、解って下さいメリアリアさん、オリヴィアさんっ。私にはあの人しかいないのっっっ!!!!!」

「・・・・・」

「・・・・・」

 蒼太への募る思いが暴走してしまった青髪淑女は、耐えきる事が出来なくなってしまい、禁忌に手を染めてしまった、一方で。

 彼女の反応から“まだ自分達に対する真心はある”と感じ取ったメリアリアとオリヴィアは沈黙して暫くの間は様子を見る事に徹していたのだ。

「蒼太さんは、あの人は私の生き甲斐なんですっ。全てなんですっ!!!例え何を犠牲にしてでも守り抜かなければならない存在であり、なんとしてでも傷付けさせるわけにはいかない人なんですっっっ!!!!!」

「そんなこと・・・っ。それを言うなら私達だって・・・っっっ!!!!!」

「解るぞ、アウロラ・・・」

 どうして良いのかが解らなくなってしまったアウロラは、思わず自分の本心を吐露するが、するとそれに対して何事かを言い掛けたメリアリアの機先を制してオリヴィアが口を開いた。

「確かに私も同じだ、私だって出来れば蒼太の一番になりたい。蒼太に一番、自分を愛して欲しいしずっと側にいて欲しいと願っている。しかしな?アウロラ。蒼太は私達をそれぞれに、ちゃんと愛してくれているのだぞ?それに君だってかつて見ていただろう?メリアリアの放つ蒼太への愛の光り輝きを、そして君自身のそれも。手前味噌だが私のモノも、だ!!!」

「・・・・・」

「・・・・・」

「あの光を見た時に、私は思った。“ああ、この子達も私と同じなんだ”と、“蒼太に対してこれ以上無い程の強くて眩い思いを秘めているのだ”と。だから・・・!!!」

「・・・奇麗事です、そんなのは!!!」

 しかしここで、アウロラがムキになって叫んだ。

「皆さんだって、解っているのでしょう?本当の恋愛と言うモノは、もっとドロドロしていて醜くて。間違っても清くて美しい面だけでは無いのですっ!!!現に私は、私は・・・」

「・・・違うわ?アウロラ」

 するとそこまで話を黙って聞いていたメリアリアが今度こそ自分の思いを口にする。

「本当の恋ってね?とっても美しくて、清らかなモノなんだよ?それでいてとっても熱くって、なにより激しいモノなんだよ?その人の事を考えると他の事は勿論、自分の事さえもおざなりになってしまう位に一途で凄絶なモノなの・・・」

「そんなのは、恋では・・・」

「・・・アウロラ。私は今、貴女の気持ちがやっと解った。貴女は本当は美しくいたかったのでしょう?清らかな自分のままでいたかったのでしょう?変な手段を用いずに、自分の光り輝きだけであの人の事を照らして振り向いて欲しかった。違う?」

「・・・・・っっっ!!!!!」

「だけど月日が経つに連れてあの人への、蒼太への思いが限界を越えてしまった貴女はどうしても我慢が出来なくなって。とうとう薬を使う事を考え付いた、最初はちょっとした遊びのつもりだったんでしょうけど。だけどいざ実際に使ってみるともう、後戻りが出来なくなってしまった・・・」

「・・・・・」

「・・・なるほど」

「アウロラ、私も貴女の気持ちが解るわ?“大好きな人の一番になりたい”って言うのは、女の子ならば誰もがこいねがうモノだから。それに“愛する人を何としてでも守ってあげたい”って言う思いも、痛い位に良く解る。それは私だって同じだもの、でも出来たら抜け駆けはして欲しくは無かったかな・・・」

「・・・・・っっっ!!!!?ああ、うぅぅ」

「アウロラ、頑張ろう。今後ともお互いにライバルとして、戦友として。私も負けないからね?アウロラ・・・ッ!!!」

「うわああぁぁぁ~んっっっ!!!!!」

 そんなメリアリアからの暖かみのある言葉に、アウロラは思わずその場で泣き崩れてしまっていた、両手で顔を覆い隠して“ごめんなさい”、“ごめんなさい”と嗚咽を漏らしながら何度となく謝罪の言葉を口にする。

 そんなアウロラの肩に手を掛けて、優しく背中を擦ってあげるメリアリアは紛れもない聖母そのものであった。

「うっ、う・・・っ。ヒッグ、グス・・・ッ!!!」

「・・・・・」

「・・・・・」

(やれやれ・・・)

 “これで一件落着かな・・・?”と、漸くにして泣き止んだアウロラを見つめつつ、オリヴィアが胸の内で呟くがしかし。

(メリアリア、大したモノだ。先程の深い洞察と言い、優しくて暖かな言葉の掛け方と言い。まるで蒼太がこの場にいるかのような感覚を覚えた、私もウカウカとはして居られないな・・・!!!)

 内心で感嘆しつつもオリヴィアは颯爽と二人に近寄り、アウロラに“立てるか?”と問い質すと、青髪淑女は黙って頷いた。

 そんな彼女の手を取ってメリアリアと二人で“悠久の園”の中央部分まで連れて行ったオリヴィアは、いつものようにそこで“気分が落ち着く作用がある”という薔薇のハーブティーを淹れてあげた。

 “悠久の園”を守る“茨の聖女”の役目は、侵入者がいない時等は至って暇なモノで、ここでお茶をしつつクッキーを食べたり、お喋りに花を咲かせる位しかやる事が無かったのだ。

「メリアリアさん、オリヴィアさん。有り難う、やっぱり私・・・」

「今回の事は、蒼太には言わないでおいてあげる。だから貴女もこれ以上は気にしないでね?アウロラ・・・」

「そうだな、抜け駆けは無しで今後とも正々堂々と戦おうじゃないか。二人とも!!!」

 “ところで・・・”とメリアリアとオリヴィアが居住まいを正した。

「そのシャンプーやボディーソープは、どうやって作った?そして何時から使っているのだ?」

「・・・蒼太さんが。あの人が“3日間はお風呂に入るな”って言った時に閃いて、それで急いで作ってもらったんです」

「・・・じゃあ実際に使用したのは?」

「はい、あの・・・。ここ3ヶ月の間の事でした・・・」

 それを聞いていたメリアリアとオリヴィアは互いに顔を見合わせるが、この後。

 彼女達もまた、同じような製品を作り出す事に成功してより一層、蒼太を巡る闘いが激化して行ったのは言うまでも無い。
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