星降る国の恋と愛

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夫婦の絆と子供への思い

“悠久の園”事件 1

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 蒼太とメリアリアは元々、ガリア帝国の誇る魔法戦士育成機関“セラフィム”の2歳差の先輩後輩として出会い、それから関係を深めて仲の良い幼馴染となり、恋人となって最終的には夫婦となった。

 そんな彼等は今現在、蒼太が40歳、メリアリアが42歳となっていたがしかし、彼等の肉体年齢は24歳前後で大方固定されていた、これは“神の精神波動領域”を自らの身と心とに顕現させる奥義である“神人化”を彼等が獲得している為に引き起こされている現象であり、それによって全身を活性化させると同時に絶えず細胞の復元を熟している為に誘発されていた事柄であったのだ。

 もっともこれは蒼太の二番目と三番目の妻であるアウロラとオリヴィアについても同様であったが、一方でそんな蒼太達の“秘密の力”に気が付いていた大賢者がいた、ガリア帝国帝室を裏から支える“宮廷聖導師”の長を務める“アルヴィン・ノア”である。

 彼もまた“500年を生きている”等と噂されている老師であり、その法力と知識は卓越したモノがあったが、その彼が国家の中枢部に働き掛けて蒼太を“宮廷守護士”に、そしてメリアリア達三人を“茨の聖女”に任命させたのだ。

 宮廷聖導師直轄の部署であり、尚且つ近衛兵のエリート部隊たるこれらの役職には人格が高潔である事と実力が人並外れている事、そして“若さ”が重要であったが蒼太達は二十歳の頃に何度か打診を受けたモノの、ちょうど結婚をしたばかりの時期でもあり、また“宮廷守護士”等になると場合によっては休みも中々取れなくなる事があったために丁重に断りをいれていたのだ。

 所が。

 時の皇帝である“フィリップ七世”が蒼太達の存在と活躍を知り、またアルヴィン・ノアが再度の推挙を実施して来た為に感心を持って、“秘密の勅令”を発して半ば無理矢理に彼等を“宮廷守護士”と“茨の聖女”とに据え付けたのであった。

 ちなみに。

 この“宮廷守護士”と言うのは主にガリア帝国宮廷中枢の存在している“ルテティア城”にあって皇帝一家を守護する事が任務であり、また“茨の聖女”とはその更に内側にある“宮廷の花園”等の生活スペースの治安維持を任せられるのが通例となっていた、とは言えその辺りはそれほど厳格に定められていた訳では無くて、単に“男女で役割の名称が違う”程度の認識でしかなく、やることは一緒であったのだ。

「ノア博士にも、困ったモノね・・・」

 そんなある日の朝の事、城に一緒に出仕するようになってからメリアリアが蒼太に苦言を呈した。

「お陰で皇帝陛下から直々に御声が掛かる事になったわ?確かに凄く名誉な事なのだけれど・・・。だけど本当はあなたともっともっと共に過ごしていたいの、やりたい事がいっぱいあるの・・・っっっ❤❤❤❤❤」

「あはは、メリー。僕も同じだから・・・」

 いつにも増して熱烈な視線を自分に向けて来るメリアリアに多少、気圧されながらも蒼太は何とかそう応えるモノの、実はこの宮廷守護士への就任は蒼太にとってはある意味、“渡りに船”だった、彼はどんどん強さを増して来る愛妻達の恋慕の眼差しと求愛行動とにややお疲れ気味となってしまっており、“1人の時間が欲しいなぁ・・・”等と考える合間が増えて来ていたからである。

「それに、宮廷内部では一緒に仕事も出来るし・・・。近くで同じ時間を共有出来るからさ?考えようによっては僕が“ミラベル”にいた時よりも距離がグッと縮まったじゃないか・・・」

「・・・まあ確かにそうなのだけれど。だけどあなたは第7宮が勤務場所でしょ?私は“悠久の園”の中でのお仕事だから、いつもいつもは一緒にいられないの。もっとあなたの傍にいたいのっっっ!!!!!」

 蒼太の右腕にしがみ付きつつもメリアリアが不服そうにそう述べ立てるがそもそも、この“ルテティア城”は直径が7キロほどもある巨大な円形の城域と、全高が20メートルの頑丈な城壁を誇っていてルテティア市街はここを囲むように街割りが為されていた。

 第二~第七環状区画に区切られていた街は最外郭をこれまた強固で高いコンクリート製の壁によって守られており、本城と城下町とが総構えによって一体化した作りとなっていたのだ。

 ちなみに本城内部はどうなっていたのか、と言えばこちらは各庭園や建物等が螺旋状に配置されており、蒼太はその内でも“第7宮”と呼ばれている付け城の1つを守護する戦士であったのである。

 一方で。

 メリアリア達は、と言えばこちらは皇后や姫君達“女性皇族”の専用生活スペースの一つである中庭のバラ園、いわゆる“悠久の園”の治安と景観を守る事がその役割となっていて日夜勤めに励んでいた。

「ねえ蒼太。今日もみんなでお茶会するの、あなたも何とか出られないの・・・?」

「うう~ん、難しいなぁ・・・。何しろあそこは女性皇族専用スペースだから、基本的には男子禁制だしね?もし入った事が見付かったなら、タダじゃ済まなくなってしまうし。それにそうなると、君やアウロラ達は勿論の事だけど。他にもノア博士やお義父さん達にまでも迷惑が掛かってしまうからね・・・」

「・・・寂しいの、蒼太。悲しいわ?あ、でもっ!!!」

「・・・・・?」

「だったら。今日も私が行ってあげるね?第7宮はあなたの守護地域だから他の人は来ないし。2人でいっぱいいっぱい過ごせるねっっっ!!!!!?」

「あ、あははっ。そうだね・・・」

 内心で“参ったな・・・”等と思いながらも笑顔で答える蒼太であったがこれは何も昨日や今日始まった事では決して無くて大概、彼の側には常にメリアリアがくっ付いていた。

 元から過剰気味だったスキンシップは最近、つとにその激しさを増していて蒼太も胸の内で若干、引いてしまう時もあったがメリアリアは全くお構いなしに彼に抱き着いては甘い声で囁きつつも頬擦りをしたり、全身を摺り立てるようにして自身の恋意を直接、彼に訴えるようにして来ていたのである。

 それはもういっそ、蒼太に“壊れている”と言っても良い位であり、底無しの愛情と一途さとを発揮しては何処までも何処までも彼を求め、場合によってはまるで貪ろうとするかのように夫に口付けを強要したり、自分の顔を彼の逞しい胸板に押し当ててその匂いを嗅ぐような仕草も見られたのだが、もっともこれらはアウロラもオリヴィアも似たり寄ったりの状況であってだから、蒼太は中々に静かな刻間が持てないでいたのだ。

(珍しく誰も側にいない時は、皆で“遠隔透視魔法”を使って僕のことを監視してるし・・・。今では1週間に2日間、それも1時間にも満たない時間しか自分と対話する時間が無いんだ。これはキツいよ・・・!!!)

 そんな事を考えていた蒼太はだから、彼女達に悪いな、等とは思いながらもここ最近では愛妻達から逃げ出す事を覚えて一度ならずそれを実行していた、こうする事で辛うじて己との対話を充分に計り、また心の潤いをなんとか保たさせる事に成功していたのである。

「うふふふっ、うふふふふふっ!!!そ~うた・・・っっっ❤❤❤❤❤」

「うふふふふふふっ。蒼太さぁん・・・っっっ❤❤❤❤❤」

「ああ蒼太、愛しいよ・・・っっっ❤❤❤❤❤」

 そんな感じである意味では満ち足りた毎日を過ごしていた蒼太と愛妻達であったがその最中に。

 事件は起こったのであるモノの、事の発端となったのは若き男性皇孫の1人である“エリク・デュオン・ド・メロヴィング”が初恋の女性でお付きのメイドであった“リリアーヌ”と駆け落ちをしようと企てた事だった。

 これ自体はすぐさま両親である皇太子夫妻やフィリップ七世の知る所となり事無きを得たのだが、皇太子夫妻の意向でリリアーヌは暫くの間、“エリクには近付けない”と言う事で謹慎処分を言い渡されてしまったのだ。

 2人は真剣に愛し合っていたらしく、既に肉体関係までも持ってしまっていたのだが、こうなるとリリアーヌは毎日をエリクの事を思いながら過ごす事となり、遂には体調を崩してしまった、要するに“恋煩い”と言うモノを発現させてしまったのだ。

「聞きましたか?蒼太先輩。エリク様とリリアーヌの噂・・・」

「ああ聞いたよ、ドニ。何でもリリアーヌとか言う女の子は病気になってしまったんだってね・・・?」

「“恋煩い”ってヤツですよね?かぁ~っ、良いよなぁモテる男は。そこまで女の子に一途に思ってもらえたなら冥利に尽きるってもんだぜっ!!?」

 “宮廷守護士”になってから新しく知り合った弟分の“ドニ・ゼヴァル”と言う同僚と軽口を叩き合いながら自身の持ち場である第7宮へと辿り着いた蒼太であったが、神ならぬ身の上な彼にもまだまだ解らない事があった。

 それはリリアーヌの同性の友人にリエラ、サロメ、リュシーと言う三人のセイレーン勤務者がいた事であり、彼女達が密かに示し合わせてリリアーヌを宮廷に忍び込ませ、エリクに会わせるべく行動を起こした、と言う事実であったのだ。

 それだけではない、その内の1人、リエラは彼の一番の愛妻であるメリアリアがかつて、特に見込んで弟子に取った事もある、将来を有望視されていた女の子であったのである。
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