星降る国の恋と愛

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夫婦の絆と子供への思い

愛欲の交淫・アウロラ編(ピロートーク)

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「・・・いつも有り難う、蒼太さん」

「なんだよ、急に・・・」

 合計で3週間に渡る“愛の営み”が終わった後で。

 漸くにして結合を解き、自然体に戻れた蒼太とアウロラはそれまでの疲れが一気に溢れて来たのだろう、その場で仰向けになり3日間もの間は完全に熟睡してしまっていた。

 起きてからはトイレに入って歯を磨き、顔を洗ってまた無言の内にバスマットレスの中央に戻るが、そんな蒼太に対して青髪淑女が愛しそうに抱き着きながらも声を掛けて来る。

「私嬉しい、あなたとこんな風になれて・・・❤❤❤❤❤」

「一体急に、どうしたんだよ?アウロラ・・・」

 蒼太が驚きつつもビックリしていると、アウロラは感慨深そうな面持ちとなって語り始めた。

「私、あなたと出会っていなければこんな自分にはなれなかったと思う。あなたと結ばれなかったら、こんな幸せにはなれなかったと思う・・・!!!」

「・・・・・」

「出会ったばかりの頃の事、覚えてますか?蒼太さん・・・」

「ああ・・・」

 そんな花嫁からの言葉を受けて蒼太が頷いた、“勿論覚えているよ?”とそう告げて。

「僕と初めて会った時って、確か泣いていたよね?アウロラ・・・」

「も、もうっ。蒼太さんったら、意地悪です・・・っ!!!!!」

 そう答えて顔を膨らませるアウロラに対して“ごめんごめん”と笑いながら謝る蒼太であったが彼は続けて“でもね?”と言った。

「まさかあの時は、君がこんなにも芯が強くて情熱的な女の子だなんて・・・。全く思いもしなかったよ、凄く大人しそうで儚げに見えたからさ・・・」

「・・・元々の私は、そうだったんです」

 そんな夫の言葉を受けて、青髪淑女が呟いた。

「あの頃の私は、自分の意志を持てずにいたんです。いいえ、もっとハッキリと言うならば“自分の意思”とは何なのかが、全く解らなかったんです。そう言う事もあって自分に自信が持てなくて・・・。だからいつも周りに流されるままに生きて来ました」

 “だけど”と彼女は続けた、“それが一変したんです”とそう述べ立てて。

「あなたと出会ってから、私は初めて“自分”と言うモノを持ちました。“自分”と言う言葉の意味と言うか、“確かさ”と言うか・・・。そう言うのを感じて噛み締める事が出来たんですっ!!!」

「・・・・・」

「あなたと出会ってから、私は漸くにして“己”を知ったんです。それからは漸く活き活きと生きる事が出来るようになったのですわ・・・っ!!!」

「・・・アウロラ」

「あなたの事を思うと、自然と心が強くなれた。胸の内が暖かくてドキドキして来て、“ああ、私は恋をしているんだ”って自覚しました。凄く幸せだったんです!!!」

 “今だってそうですわ・・・❤❤❤❤❤”とアウロラは恥ずかしさと照れ臭さの為に顔を赤らめながらも自身の花婿に告げた。

「あなたは私の全てです、生きる理由の大本なんです。生き甲斐なんですっ!!!だからどうかその・・・っ。これからもよろしくお願い致します・・・っ❤❤❤❤❤」

「・・・ぷっ」

 “あははははは・・・っ!!!”と一方で、それを聞いた蒼太はついつい笑い出してしまった。

「・・・・・っ!!?そ、蒼太さん。私はっ!!!!!」

「あははははっ!!!い、いやいやアウロラ。違うんだ、そうじゃないんだよ・・・」

「・・・・・?」

 “真剣なんですっ!!!”と尚も自分の気持ちを彼に伝えようとする青髪淑女を抱き寄せながら、蒼太は答えた。

「僕もだよ、アウロラ。君と出会えて良かった、本当に良かったよ・・・!!!」

「・・・・・っ。そ、蒼太さんっ❤❤❤❤❤」

「・・・君も、だったんだね?アウロラ。君も僕だけの為に生まれて来てくれた女の子だったんだ」

「そ、蒼太さん・・・?」

「有り難う、アウロラ。僕、凄く嬉しいよ・・・!!!」

「・・・蒼太さんっ。はいっ、私もです。私も嬉しいっっっ❤❤❤❤❤」

 そう言って抱き合う2人であったがこの時、蒼太は漸く理解したのである、“メリーだけでは無かったのだ”と、“アウロラもまた自分に生涯を捧げてくれていたのだ”と。

(・・・アウロラは、この子は僕の為に生まれ変わってくれたんだ。1度死んでくれたんだ、そうじゃなければ人間に“自分を変える”等という真似はそうそう容易く出来ない筈だ)

 “それはそんなに生易しいモノではないんだ・・・!!!”と、無言の内に蒼太は悟ったのである。

(メリーは僕に生涯を捧げてくれようとしていた、その言葉に嘘は無い。あの子はそれだけ凄絶な愛情を、確かな恋心を僕に抱いてくれていた。それは“一生を捧げても構わない”と言う揺るぎない一途さだ、比類無き純朴さであり健気さの発露なのだ。しかし・・・)

 “アウロラもまたそうだったのだ”と蒼太は直感していた、“この子もまた僕の為に自分を殺してくれたんだ”と“生涯を捧げてくれたんだ”と。

(メリーは自分の立場よりも思いよりも、いつも僕の命と人生とを優先させてくれていた。いいやそれだけじゃない、“エルヴスヘイム”の時の事もアウロラと冒険した時の事も。“しょうがないわね”と言って許してくれた、普通ならば一生許せない筈の苦い思い出を乗り越えてくれたのだ。それはそうだろう、自分を差し置いて違う女の子達と冒険を共にしたのだから、先に死線を越える経験を果たしたのだから・・・!!!)

 そう考えて蒼太は過去へと意識を向けるが“エルヴスヘイム事件”の後で更に“バーズ・トワールの魔法館”へと潜入し、帰還を果たした事をメリアリアに打ち明けた時、彼女は確かに怒った。

 もういっそ“怒り狂った”と言っても良かったがそれはひとえに彼を愛して恋するが故の嫉妬と悔しさから来る“悲しみの裏返し”だったのだ。

 “本当は自分がそこにいたかった”、“蒼太と共に在りたかった”、“彼を支えてあげたかった”と言う思いの丈を彼女は憤慨と言う形で蒼太にぶつけて来たのである、しかし。

 蒼太はそれを甘んじて受け止めた、彼女に泣きながら頬を叩かれた事もあったがそれでも蒼太は黙って耐えて“ゴメンね?”と言った、だけどそれだけでは無かった、“僕だって本当は君と一緒にいたかった”と本心を告げた、“冒険なんて本当は嫌だったよ?”、“君が傍にいてくれたらって、何度も何度も思ったんだ!!!”とそれも伝えた。

 だけど。

「・・・じゃあ、なんでっ!!?なんでいつも勝手に行っちゃうのっ。どうして言ってくれなかったのっっっ!!!!!」

「・・・君に。あんな怖い思いをして欲しく無かったんだ、君にはいつも平和の中にいて欲しかった。安全な場所で笑っていて欲しかったんだ!!!」

 “君は僕が最後に帰る場所なんだ”、“君にまた会いたいって思ったから、あの時に僕は頑張れたんだ・・・!!!”とまだ10歳にも満たなかった彼はそれでも自分と必死に向き合って心を整理し、意地もプライドもかなぐり捨ててただただひたすら純真な己の真意を彼女に伝えたのである。

 それは“セラフィム”の授業や“セイレーン”の任務よりも難しいモノだった、人が一皮剥ける時と言うのは自分との闘いに勝った時であり、それはある意味では“死”であり“再生”だったのだ。

 もっとも最初の内はメリアリアはそれを聞いても“何よそれ!!?”、“都合が良い事を言わないで!!!”と突っぱねていたのだが結局は蒼太に対する思いの方が、彼女の中では遥かに勝った。

 それだけではない、蒼太にとって幸運だったのは、それからあまり間を置かずにメリアリアがセイレーンに入隊させられた事であった、実際に死と隣り合わせの危険極まりない現場に何度となく駆り出されている内に彼女も蒼太の気持ちが嫌という程に思い知らされ、結果としてのメリアリアもまた“蒼太にこんな思いをさせてはいけない”と言う気持ちを抱くに至ったのである。

(蒼太をセイレーンには入れさせない、何があっても絶対に・・・!!!)

 それが彼女の意思であったが本当は誰よりも何よりも蒼太にいて欲しかった、彼が傍にいてくれたならそれだけで彼女は強くなれた、勇気をもらえた、頼もしかった。

 “一緒に死線を越えたい”とも思った、“絆を深めたい”と密かなしかし、危険な欲望を抱いた事もある、だけど彼女はそれに負けなかった、自分のエゴよりも我欲よりも彼への純恋を、愛情を、優しさを優先させたのだ、まだ少女のみぎりにも関わらずメリアリアとはそう言う事が出来る女性だったのである。

 だから彼女は。

 蒼太がセイレーンに入隊して来て、自分が先達としてそこで密かに活動していた事を知った時に彼女を抱き締め、掛けてくれた言葉に“確かなる暖かさ”と“紛う事無き優しさの温もり”を感じて泣いてしまった。

 彼は言った、“君と一緒が良い”と、“こんな危険な場所に君を一人きりにしなくて本当に良かった”と。

「君と一緒にいたい、君だけがこんな危ない思いをして苦しんでいるのを知らないなんて嫌だよ。冒険なんて僕は本当は懲り懲りだけど、だけどそれでもメリーと一緒にいたい。僕だけ安全な場所にいるよりは、君と一緒に苦しんだ方が良い・・・!!!」

「蒼太・・・っ❤❤❤❤❤」

 “ごめんね?メリー”、“僕がバカだったよ・・・!!!”と自分をしっかりと抱擁しながら涙を流してそう告げて来た彼の、嘘偽りない真心に触れた瞬間メリアリアは救われ、また彼を許していた、それと同時に“何としてでもこの人と一緒にいたい”と思った、“この人と生きて行きたい”、“2人で生きなければいけない”と悟った、直感したのである。

 そうだ、メリアリアもまたその一瞬で自分と闘ったのであり、そして見事に勝利を収めたのだ。

 勿論、そこには“蒼太の誠意”も加わっていたのは事実であったがとにもかくにも彼等は最初の試練を突破して絆を深めたのであった。

 ところが。

(考えてみれば・・・。アウロラだってそうだったじゃないか、この子だってまだ少女の時分に“それ”をこなしてみせたのだ。自分と闘い、命を掛けて“それ”を乗り越えてみせたのだ。僕の妻達はなんて凄い女の子なんだろう・・・っ!!!)

 改めて蒼太は思うがアウロラだとて蒼太がメリアリアと付き合っていて、既にセックスまで済ませている、と知った際にも決して彼を責めなかった、折れなかった、諦めなかった。

 それどころかそれ以降もずっと彼の事を思い続け、命の危機を救ってさえくれたのである。

(メリーと言い、オリヴィアと言い、この子と言い。僕は満たされているんだな、本当に・・・!!!)

 妻達をもっと大事にしようとたった一人、内心で固く誓った月の夜だった。
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