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夫婦の絆と子供への思い
蒼太と花嫁達 10
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メリアリア・サーラ・デ・カッシーニ。
ガリア帝国を裏から支える魔法剣技特殊銃士隊“セイレーン”の誇る最高戦力“茨の女王”にして“炎の聖女”、そしてー。
“風の導き手”の異名を持つ“綾壁 蒼太”の最愛の妻。
その戦闘技術は夫である蒼太を上回り、特に機動力や法力操作能力でそれらは顕著である、と言えたが中でも最大の特徴が彼女のみが扱える天性の極炎煌たる“絶対熱の聖火”である。
これはまず、太陽エネルギーの源たる“紅炎”を創り出し、それをブラックホールの要領で中央に向かってどこまでもどこまでも対流させて、激しい渦を巻かせつつ極集約して行くのだがこの時、彼女の操る紅炎の速度は実に光速の90%以上にまで達する。
それを立体形の“多角六芒星魔法陣”と組み合わせて全宇宙の生命エネルギーの概念そのものを実体化させ、“紅炎光球”と融合させて火力を一気に最大化させるのであるモノの、この時に顕現する熱量は“14溝2000穣度”と言う、まさに桁外れのエネルギーであって、しかもこの領域レベルでは原子や素粒子その物が破壊されてしまう為、生命が生命として有り続ける事が不可能になってしまうのだ。
これだけでも充分に驚異的な力なのだが、それに加えて彼女は蒼太から“力の集約”の概念と技能を付与されその結果、自らに備わりし“次元波動エネルギー”を一点に凝縮してバーストセクションで解放する“波動砲”を会得して己のモノとし、それに更に“絶対熱の極意”を組み合わせる事により無敵の威力、効能を秘め宿したる“極炎砲”を編み出すに至っていた。
それだけではない、元来が天才的な感性と理解力とを有していた彼女はこれに一層の改良を加えて“連装崩壊魔法”とし、波動粒子の回転が左右対称のバースト流を生成させてはそれらを合一させる秘法を編み出してその結果、次元波動の相互作用による“超時空間砲撃”までをも可能としていたのである。
ただでさえ、柔軟性や高速機動等の身体能力では蒼太を上回る技能を誇っていた所へ持って来て、今や彼女は超長距離砲撃戦闘能力までも、彼を遥かに凌駕する実力を備えていたのだが、それでも。
それでも彼女は決して蒼太を見下す事無く変わらぬ愛を捧げ続けていた、何故かと言えば蒼太はそれを、つまりは彼女が強くなればなるほどそれを素直に、まるで自分の事のように喜んでくれたからである。
心の底から祝福してくれたからである。
蒼太は言った、“強くなっておくれよ?メリー”と。
「誰よりも何よりも力を付けて。それでずっとずっと強くて美しいままでいてくれよ?僕の憧れた女性のままでいてくれ・・・」
「蒼太・・・っ❤❤❤❤❤」
そう言って優しく彼女を抱き寄せては、頭を撫でてくれるのだがこの瞬間がメリアリアにとっては堪らない位に嬉しくて満たされて、それでいて彼が愛しくて恋しくて仕方が無くなってしまう一時であったのだ。
それだけではない、彼はメリアリアに関する事はなんでも自分事として捉え、真剣に共に考えては対処していってくれたのだがその最たるモノがメリアリアの実父である“ダーヴィデ伯爵”の救済であるモノの以前、ダーヴィデは外出先で交通事故に遭い、意識不明の重体に陥ってしまった事があった。
しかも外傷の深さよりも何よりも医療チームの手を煩わせたのが彼の(と言うよりもカッシーニ一族の)誇る特殊な血だ、当時ダーヴィデ伯爵の親族達は皆、揃いも揃って海外に仕事やバカンスに出払っており、その体に適合する血液が手に入らなかった為に手術しようにも輸血の準備が整えられず、ただ時間だけが過ぎ去っていった。
募る不安と焦りの中でいよいよ“このままでは覚悟を決めるしか無いかも知れない”、となった時に一報を聞いて仕事先から慌てて駆け付けた蒼太が自分の血液の提供を申し出た、彼は以前の健康診断で己の血液が岳父であるダーヴィデ伯爵のそれとマッチングしている事実を知っており、それで1も2も無く提言したのであった。
「し、しかし蒼太さん。ダーヴィデ伯爵はかなり多量の出血で、あなた1人だけからの輸血ではとても・・・」
「最低でも二人が三人から血液を提供してもらわないと。あなた1人だけではあなたに負担が掛かり過ぎる。下手をすればあなたもどうなるか・・・」
「・・・構いません!!!」
その話を聞いて少しの間考えた蒼太はしかし、結局はそう言って押し切った、彼は言った、“自分にはもう、この人しか父と呼べる人間がいないのだ”と、“この人を見捨ててしまったら自分は一生、後悔する事になる”と。
「それに・・・。この人は、ダーヴィデ伯爵は妻の、メリーの大切な人なんです。それを助けられなかったら僕は今後、妻にどんな顔をして接すれば良いんですかっ!!?」
「蒼太、でも・・・!!!」
最初は“危険だから”と言う理由で彼の決断をなかなか了承出来ずにいたメリアリアやその母親であるベアトリーチェは、それ以上は何も言えなくなってしまい、結局は蒼太に押し切られる形で事態の経緯を見守る事にした。
結果手術は成功してダーヴィデ伯爵はなんとか一命を取り留めたのだが、回復してから後、この話をメリアリア達から聞かされたダーヴィデは蒼太に厚く礼を述べた、すると。
「あなたには僕の血が混じりました、お義父さん。あなたは僕の本当の父になったのです・・・」
「蒼太・・・!!!」
そう言って蒼太はニッコリと微笑んでダーヴィデに相対していたが、メリアリアはそんな夫の姿に痛く感動した、彼は少しも偉ぶる事も無く、お世辞も述べずにただただ素直に直向きに自分と自分の家族に接してくれていたのである、そんな彼の純粋さと、命懸けの情熱とに彼女は心を動かされてはより一層、蒼太に傾倒していったのだ。
(蒼太は、凄い・・・)
メリアリアは本心から夫の事を愛すると同時に尊敬もしていた、“彼には自分には無い強さがある”と言う事を、彼女は誰よりも感じてよくよく知り尽くしていたからである。
「ねえ?蒼太」
「なにさ?メリー・・・」
ある時、メリアリアはちょっと気になったので思い切って蒼太に質問をして見た、“自分に負けて悔しくは無いのか?”と。
「私は、その・・・。多分、あなたよりもかなり強いと思うのだけど。あなたはそれを見て嫉妬したりはしないのかしら・・・?」
「う~ん・・・」
「その・・・。あなたには確かに色々な事を教えてもらったわ?“力の集約”とか“波動砲”とか。その結果私は、以前の数倍はパワーアップ出来たのだけど・・・。あなたはその、怒って無いのかな~、って思って・・・」
「・・・・・?」
“別に怒ってないよ?”と言うのがそれに対する蒼太からの答えであった、“どうして・・・?”と尚も追い縋る妻に対して青年はちょっと考える素振りをしながらニヤリと悪戯っぽく笑ってこう告げたのである、“だって君は僕の凄さを誰よりも何よりも理解している筈だろ?”と。
「・・・・・?それはそうだけど。でも」
「僕はね?メリー。ベッドの上で君に勝てればそれで良いのさ・・・!!!」
「・・・・・っ!!!」
最初は何の事なのか、要領を得ていない彼女であったがすぐに“んもぅっ、エッチ!!!”、“真面目に答えなさいよ!!!”と恥ずかしさと憤慨とで顔を真っ赤に染めるモノの、そんな愛妻淑女に、蒼太はだけど“あははははっ!!!”と屈託無く笑いながら尚も続けた。
「ゴメンゴメンて。だけどさメリー、君だってその方が嬉しいだろ?僕がへなちょこでひ弱より、逞しくて君をヒ~ヒ~言わせてる方が本当は良いだろうが!!?」
「・・・・・っ!!!そ、それは」
「良いんだよ、僕はそれで。君を充分に圧倒出来ているからね!!!」
それだけ言うと蒼太は不意に、メリアリアを黙って抱き寄せる。
「あ・・・」
「メリー、可愛いよ?とっても・・・」
「・・・もう、蒼太ったら。狡いわ?」
そう答えつつもメリアリアは自分自身も夫に抱き着き、瞳を閉じてその全身を彼の肉体に擦り寄せるがこの時に彼女は理解したのだ、蒼太の強さの源はまさにこの暖かさにこそあるのだ、と。
優しさこそが彼の強さの本質なのだ、と。
(この人は、きっと私がどんなになっても優しく受け止めて愛してくれる。今までもこの先も、ずっとずっと・・・)
それが彼女の実感でありそしてそれ以降、メリアリアは蒼太に対してますます心酔すると同時に確かなる愛情を抱いて行くに至っていたのだ。
(それに確かに私は戦闘能力では夫を上回っているけれど・・・。だけど根本的な生命力や精神力、それに絶倫さでは到底、及ばないわ?もしかしたなら潜在能力まで含めた全力を発揮した場合、蒼太は誰よりも何よりも強いのかも・・・)
己の全身と内心とでそんな事を感じ取り、それについてあれこれ思案するメリアリアであったが、一方で。
当の本人である蒼太はどう思っていたのか、と言うとこの時の彼は実は敵を打ち倒す技法よりも、自分や他人を救う術に付いての考察を深めている最中であった。
彼はずっと疑問に思っていたのである、“宇宙の本質は須く“愛”なのだ”と、にも関わらず力に寄って立つ今の世界の現状は、果たして如何なモノなのか、と。
(今の世界に蔓延している力とは、他者をその持てる可能性の光り輝きごと有無を言わさず打ちのめして消し去ってしまう“横暴さ”の事だ。つまりは“暴力”の事なんだ、だけど本来はそうで無かった筈だ・・・)
彼はよくよく考えていたのであるが、本来の力の有り様とは自分や他人の闇や傷跡、穢れを祓って浄化し、または癒して元の光に戻してやる純然不屈の精神的作用を言うのではないのか、と。
要するに救いに導いてあげる能力の発露を言うのではないのか、と。
それはもっと言い換えてしまえば“何度でも生き直せる強さ”、“立ち上がれる逞しさ”とも表現する事が出来るのであるが、いずれにしても。
(それこそが本来、僕たち大和民族がもっとも大切にして来た事では無かったか。もっとも得意として来た事では無かったか。一々誰かと競争したり、わざわざ自主的に敵を創り出してはそれを打ち倒して回るような、苛烈かつ強制的な破壊の為の力では無くて、共に高みへと昇華して満たされ、癒されて行く能力。それこそが)
“ヤマトの力だ”と、そう考え付いた蒼太はそれを追求する事に、全力を尽くしていたのである。
ガリア帝国を裏から支える魔法剣技特殊銃士隊“セイレーン”の誇る最高戦力“茨の女王”にして“炎の聖女”、そしてー。
“風の導き手”の異名を持つ“綾壁 蒼太”の最愛の妻。
その戦闘技術は夫である蒼太を上回り、特に機動力や法力操作能力でそれらは顕著である、と言えたが中でも最大の特徴が彼女のみが扱える天性の極炎煌たる“絶対熱の聖火”である。
これはまず、太陽エネルギーの源たる“紅炎”を創り出し、それをブラックホールの要領で中央に向かってどこまでもどこまでも対流させて、激しい渦を巻かせつつ極集約して行くのだがこの時、彼女の操る紅炎の速度は実に光速の90%以上にまで達する。
それを立体形の“多角六芒星魔法陣”と組み合わせて全宇宙の生命エネルギーの概念そのものを実体化させ、“紅炎光球”と融合させて火力を一気に最大化させるのであるモノの、この時に顕現する熱量は“14溝2000穣度”と言う、まさに桁外れのエネルギーであって、しかもこの領域レベルでは原子や素粒子その物が破壊されてしまう為、生命が生命として有り続ける事が不可能になってしまうのだ。
これだけでも充分に驚異的な力なのだが、それに加えて彼女は蒼太から“力の集約”の概念と技能を付与されその結果、自らに備わりし“次元波動エネルギー”を一点に凝縮してバーストセクションで解放する“波動砲”を会得して己のモノとし、それに更に“絶対熱の極意”を組み合わせる事により無敵の威力、効能を秘め宿したる“極炎砲”を編み出すに至っていた。
それだけではない、元来が天才的な感性と理解力とを有していた彼女はこれに一層の改良を加えて“連装崩壊魔法”とし、波動粒子の回転が左右対称のバースト流を生成させてはそれらを合一させる秘法を編み出してその結果、次元波動の相互作用による“超時空間砲撃”までをも可能としていたのである。
ただでさえ、柔軟性や高速機動等の身体能力では蒼太を上回る技能を誇っていた所へ持って来て、今や彼女は超長距離砲撃戦闘能力までも、彼を遥かに凌駕する実力を備えていたのだが、それでも。
それでも彼女は決して蒼太を見下す事無く変わらぬ愛を捧げ続けていた、何故かと言えば蒼太はそれを、つまりは彼女が強くなればなるほどそれを素直に、まるで自分の事のように喜んでくれたからである。
心の底から祝福してくれたからである。
蒼太は言った、“強くなっておくれよ?メリー”と。
「誰よりも何よりも力を付けて。それでずっとずっと強くて美しいままでいてくれよ?僕の憧れた女性のままでいてくれ・・・」
「蒼太・・・っ❤❤❤❤❤」
そう言って優しく彼女を抱き寄せては、頭を撫でてくれるのだがこの瞬間がメリアリアにとっては堪らない位に嬉しくて満たされて、それでいて彼が愛しくて恋しくて仕方が無くなってしまう一時であったのだ。
それだけではない、彼はメリアリアに関する事はなんでも自分事として捉え、真剣に共に考えては対処していってくれたのだがその最たるモノがメリアリアの実父である“ダーヴィデ伯爵”の救済であるモノの以前、ダーヴィデは外出先で交通事故に遭い、意識不明の重体に陥ってしまった事があった。
しかも外傷の深さよりも何よりも医療チームの手を煩わせたのが彼の(と言うよりもカッシーニ一族の)誇る特殊な血だ、当時ダーヴィデ伯爵の親族達は皆、揃いも揃って海外に仕事やバカンスに出払っており、その体に適合する血液が手に入らなかった為に手術しようにも輸血の準備が整えられず、ただ時間だけが過ぎ去っていった。
募る不安と焦りの中でいよいよ“このままでは覚悟を決めるしか無いかも知れない”、となった時に一報を聞いて仕事先から慌てて駆け付けた蒼太が自分の血液の提供を申し出た、彼は以前の健康診断で己の血液が岳父であるダーヴィデ伯爵のそれとマッチングしている事実を知っており、それで1も2も無く提言したのであった。
「し、しかし蒼太さん。ダーヴィデ伯爵はかなり多量の出血で、あなた1人だけからの輸血ではとても・・・」
「最低でも二人が三人から血液を提供してもらわないと。あなた1人だけではあなたに負担が掛かり過ぎる。下手をすればあなたもどうなるか・・・」
「・・・構いません!!!」
その話を聞いて少しの間考えた蒼太はしかし、結局はそう言って押し切った、彼は言った、“自分にはもう、この人しか父と呼べる人間がいないのだ”と、“この人を見捨ててしまったら自分は一生、後悔する事になる”と。
「それに・・・。この人は、ダーヴィデ伯爵は妻の、メリーの大切な人なんです。それを助けられなかったら僕は今後、妻にどんな顔をして接すれば良いんですかっ!!?」
「蒼太、でも・・・!!!」
最初は“危険だから”と言う理由で彼の決断をなかなか了承出来ずにいたメリアリアやその母親であるベアトリーチェは、それ以上は何も言えなくなってしまい、結局は蒼太に押し切られる形で事態の経緯を見守る事にした。
結果手術は成功してダーヴィデ伯爵はなんとか一命を取り留めたのだが、回復してから後、この話をメリアリア達から聞かされたダーヴィデは蒼太に厚く礼を述べた、すると。
「あなたには僕の血が混じりました、お義父さん。あなたは僕の本当の父になったのです・・・」
「蒼太・・・!!!」
そう言って蒼太はニッコリと微笑んでダーヴィデに相対していたが、メリアリアはそんな夫の姿に痛く感動した、彼は少しも偉ぶる事も無く、お世辞も述べずにただただ素直に直向きに自分と自分の家族に接してくれていたのである、そんな彼の純粋さと、命懸けの情熱とに彼女は心を動かされてはより一層、蒼太に傾倒していったのだ。
(蒼太は、凄い・・・)
メリアリアは本心から夫の事を愛すると同時に尊敬もしていた、“彼には自分には無い強さがある”と言う事を、彼女は誰よりも感じてよくよく知り尽くしていたからである。
「ねえ?蒼太」
「なにさ?メリー・・・」
ある時、メリアリアはちょっと気になったので思い切って蒼太に質問をして見た、“自分に負けて悔しくは無いのか?”と。
「私は、その・・・。多分、あなたよりもかなり強いと思うのだけど。あなたはそれを見て嫉妬したりはしないのかしら・・・?」
「う~ん・・・」
「その・・・。あなたには確かに色々な事を教えてもらったわ?“力の集約”とか“波動砲”とか。その結果私は、以前の数倍はパワーアップ出来たのだけど・・・。あなたはその、怒って無いのかな~、って思って・・・」
「・・・・・?」
“別に怒ってないよ?”と言うのがそれに対する蒼太からの答えであった、“どうして・・・?”と尚も追い縋る妻に対して青年はちょっと考える素振りをしながらニヤリと悪戯っぽく笑ってこう告げたのである、“だって君は僕の凄さを誰よりも何よりも理解している筈だろ?”と。
「・・・・・?それはそうだけど。でも」
「僕はね?メリー。ベッドの上で君に勝てればそれで良いのさ・・・!!!」
「・・・・・っ!!!」
最初は何の事なのか、要領を得ていない彼女であったがすぐに“んもぅっ、エッチ!!!”、“真面目に答えなさいよ!!!”と恥ずかしさと憤慨とで顔を真っ赤に染めるモノの、そんな愛妻淑女に、蒼太はだけど“あははははっ!!!”と屈託無く笑いながら尚も続けた。
「ゴメンゴメンて。だけどさメリー、君だってその方が嬉しいだろ?僕がへなちょこでひ弱より、逞しくて君をヒ~ヒ~言わせてる方が本当は良いだろうが!!?」
「・・・・・っ!!!そ、それは」
「良いんだよ、僕はそれで。君を充分に圧倒出来ているからね!!!」
それだけ言うと蒼太は不意に、メリアリアを黙って抱き寄せる。
「あ・・・」
「メリー、可愛いよ?とっても・・・」
「・・・もう、蒼太ったら。狡いわ?」
そう答えつつもメリアリアは自分自身も夫に抱き着き、瞳を閉じてその全身を彼の肉体に擦り寄せるがこの時に彼女は理解したのだ、蒼太の強さの源はまさにこの暖かさにこそあるのだ、と。
優しさこそが彼の強さの本質なのだ、と。
(この人は、きっと私がどんなになっても優しく受け止めて愛してくれる。今までもこの先も、ずっとずっと・・・)
それが彼女の実感でありそしてそれ以降、メリアリアは蒼太に対してますます心酔すると同時に確かなる愛情を抱いて行くに至っていたのだ。
(それに確かに私は戦闘能力では夫を上回っているけれど・・・。だけど根本的な生命力や精神力、それに絶倫さでは到底、及ばないわ?もしかしたなら潜在能力まで含めた全力を発揮した場合、蒼太は誰よりも何よりも強いのかも・・・)
己の全身と内心とでそんな事を感じ取り、それについてあれこれ思案するメリアリアであったが、一方で。
当の本人である蒼太はどう思っていたのか、と言うとこの時の彼は実は敵を打ち倒す技法よりも、自分や他人を救う術に付いての考察を深めている最中であった。
彼はずっと疑問に思っていたのである、“宇宙の本質は須く“愛”なのだ”と、にも関わらず力に寄って立つ今の世界の現状は、果たして如何なモノなのか、と。
(今の世界に蔓延している力とは、他者をその持てる可能性の光り輝きごと有無を言わさず打ちのめして消し去ってしまう“横暴さ”の事だ。つまりは“暴力”の事なんだ、だけど本来はそうで無かった筈だ・・・)
彼はよくよく考えていたのであるが、本来の力の有り様とは自分や他人の闇や傷跡、穢れを祓って浄化し、または癒して元の光に戻してやる純然不屈の精神的作用を言うのではないのか、と。
要するに救いに導いてあげる能力の発露を言うのではないのか、と。
それはもっと言い換えてしまえば“何度でも生き直せる強さ”、“立ち上がれる逞しさ”とも表現する事が出来るのであるが、いずれにしても。
(それこそが本来、僕たち大和民族がもっとも大切にして来た事では無かったか。もっとも得意として来た事では無かったか。一々誰かと競争したり、わざわざ自主的に敵を創り出してはそれを打ち倒して回るような、苛烈かつ強制的な破壊の為の力では無くて、共に高みへと昇華して満たされ、癒されて行く能力。それこそが)
“ヤマトの力だ”と、そう考え付いた蒼太はそれを追求する事に、全力を尽くしていたのである。
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