星降る国の恋と愛

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夫婦の絆と子供への思い

愛妻と雨とウィスキー 3

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「蒼太、蒼太よ・・・」

 戦いを終えて。

 3日目の夜のことだった、メリアリアと共に寝室で眠りに就いていた蒼太の夢枕に、再び鹿島の神が立ったのだ。

「先日はご苦労である、あれから天界は連日宴が催されていてな?飲めや歌えの大賑わいじゃわい!!!」

「それは良かったです、神様・・・!!!」

 優しい笑みを湛えつつそう述べ立てる健御雷神たけみかづちのかみに対して蒼太も嬉しくなり、素直に応じる。

「神々のお役に立てて、僕も誇らしいです。でも肝心な所は結局は、神様に頼ってしまいましたけどね?」

「何を言っておるんじゃ」

 それに対して鹿島の神は笑って言った。

「“星穹の闇衣”を打ち破ったのも、“オオボシカガセオ”を破砕したのも、みんなその方の機転と目利きがあってこそじゃわい。儂らではあの様な神威の使い方や、そもそも“神風迅雷”のような術儀は思い付かなかったじゃろうて・・・」

「有り難う御座います、神様。だけどアレだって天照大神やあなた方の御助力があったからこそ出来た事です、それが無ければ僕達だけでは力不足で手も足も出せませんでした・・・」

 と蒼太はまたもや本心を打ち明けたが神は呵々大笑するばかりでそれほど気にしている様には見受けられなかった。

「いやはや、しかし今回は本当に良い勉強になったよ。人間と言うのは確かに、諦めが悪いからこそ、足搔くからこそ様々な可能性に気付いてその実現に全力を尽くすモノなんじゃろうな・・・」

「・・・・・」

「所でな?蒼太よ。今日来たのは他でもない、皆で相談した結果、お主達に何か褒美を取らせようと思ってな?それでやって来たのじゃが。3つ程叶えてやる故に何が望みか言うてみい・・・」

「・・・神様。私の望みは幾つかありますが、まず一つ目はあなた方、八百万の神々の今後ますますの霊的進化と御開運。二つ目は僕とメリー達とが永遠に結ばれる事。三つ目は僕達を若返らせて欲しい、と言うモノです!!!」

 “・・・お願い出来ますでしょうか?”と恐る恐る聞き返す蒼太に対して鹿島の神は笑って答えた。

「一つ目の願いは、確かに承った。二つ目は既に叶っておるよ?蒼太。さて問題は三つ目なんじゃが・・・」

「・・・・・」

「正直に言うてな?人の寿命や運命を勝手に変更すると言うのは、そう簡単にはやってはならない事なんじゃ。人にはそれぞれに、その人生毎に学ぶべき指標、目的が設定されておるんじゃが場合によってはそれを阻害する事になってしまうからの・・・」

「・・・やっぱり、難しいですか?」

「まあでも。お主達の場合は特に問題は無いじゃろ。やってやれん事は無いが、暫し待て・・・」

 そう言うと健御雷神は瞳を閉じて少しの間瞑想し、何やら呪いの言葉を唱えた、そして。

「蒼太よ。いま調べて見たのじゃが三つ目の願いも、徐々に叶って来る事じゃろうて・・・」

「・・・徐々に叶って来るって。一体、どう言う事ですか?」

「お主達は“神人化”が出来るじゃろ?あれはやる度に全身や魂を活性化させる働きがあるんじゃ。故に“神人化”を繰り返せば繰り返す程に細胞が補強、新生されて肉体は若返って行く。今のお主や妻君達は大体、28~30歳前後の肉体年齢となっておるよ。要するに5歳~10歳位は若返っておるわけじゃな・・・」

「うおおおっ。マジかっ!!?」

 静かな口調で蒼太に説明を施すモノの、それを聞いた彼は思わずその場でガッツポーズをとってしまった。

「あの、神様。もう一つ教えていただきたいのですが、僕はあと何人位なら子供を作っても良いですか?」

「んん・・・?」

「ある霊能者の方に、聞かされた事があるんです。この地球上にあまりにも人が増え過ぎてしまった結果、天界では“純粋な人間”の魂が足りなくなってしまった、と。それで神々は仕方なく、動物達や爬虫類等の魂を人間の体に入れているのだ、と。そう言った存在の多くは低俗で陰湿で狂暴な人でなし共であり、故に凶悪な事件や事象等が彼方此方あちらこちらで引き起こされて来るのだ、と。それがもし事実であるのならば・・・」

「・・・そうか」

 それを聞いた鹿島の神は、“う~む・・・”と腕組みをしながら考え込んでしまった。

「お主の言葉は、事実なんじゃ。もう天界には余分な人間の魂が枯渇していてな?それで四つ足共の霊魂を、人の体に移しておるんじゃが・・・。そうじゃ、ちなみに言っておいてやろう。お主と妻君達、そしてお主達の子供らは皆、れっきとした人間の魂を持っておるよ、安心したか?」

「・・・はい、正直に言って」

「お主達が産んで良いのはあと、せいぜい2人か3人と言った所かの。それ以上は魂の余剰が無いし、第一妻君達の体に負担が掛かり過ぎる。いま妻君達は“神人化”を行った事による余波で肉体が回復し、若返っておるのにまた余計な消耗を強いる結果となるぞ?それはお主も本意ではなかろう・・・?」

「はい神様。有り難う御座います!!!」

 蒼太が礼を言うと、鹿島の神は安らかな笑みを浮かべて神界へと昇っていった。

「・・・・・っ。はっ!!!」

 そこで蒼太も目が覚めて、ガバッと起き上がると隣ではメリアリアが“すう、すう・・・”と健やかな寝息を立てていた。

 外は雨が降っているらしく、雨粒が厚めの強化ガラスで出来ていた窓に激しく打ち付けている。

「・・・・・」

(雨、か・・・)

 “被災地の人々は大丈夫なのかな・・・?”等と蒼太は市井に心を寄せるが世界は未だに、ニビルの残した大災害の爪痕からの復興で大わらわであった。

(そう言えば・・・。三日前はメリー達、僕がいなくなった事に気が付いて慌てて追って来てくれたんだよな・・・)

 その事を思い出して蒼太は今度は改めて過去へと意識を向けるモノの、あの後。

 “大甕星”を粉砕した後で、蒼太はメリアリア達に尋ねてみたのだ、“どうして自分がいなくなった事に気が付いたのか?”と、すると。

「だって・・・。それまで確かに感じられていたあなたの温もりが、急激に冷めて行ったんだもの。それで気が付いたのよ?」

「あなたと言う安らぎが、遠ざかって行ってしまうのを感じたんです。それで慌てて後を追い掛けて来たのですわ?」

「君が何処に居たとしても、大まかな距離や方角はちゃんと解るんだよ。これに懲りたら今後は勝手な行動は謹んでもらおうか!!!」

「・・・・・」

 メリアリア達はあっけらかんと口々にそう告げるモノの、それを聞いた蒼太は内心で驚愕すると同時に恐怖を感じる事となった。

 あの時確かにメリアリア達は熟睡していた筈である、にも関わらず3人は3人共に彼が己の元から立ち去っていった事を、自然状態下で無意識の内に感じ取っていたのだ、と言う事になる。

(信じられない。僕だって意識を集中しなければそんな事は解らないと言うのに、この子達は・・・!!!)

 “そう言えば”と蒼太は尚も思い返していた、鹿島の神と香取の神から言い渡されていた事があったのである。

 曰く。

 “彼女達を裏切るな?”、“彼女達の心も頭もお前の事でいっぱいだからな?”と。

「・・・あ、あははっ。あははははは!!!」

(お酒でも、飲もうかな・・・)

 蒼太がそう思い立って書斎へ赴こうとしていると・・・。

「ん、んん・・・。あなた・・・?」

「メリー・・・」

 “ごめんごめん”、“起こしちゃったかな・・・”と覚醒して来た愛妻淑女に声を掛けるとメリアリアは瞼を擦りながら“ふあぁぁ・・・”と大きな欠伸を一つ付いた。

「どうしたの?こんな夜更けに・・・」

「うん、いやあの・・・。ちょっと目が覚めちゃってね?それで書斎へ行って冷やしておいた甘口ワインか、ウィスキーでも飲もうかなって・・・」

「・・・そっか。明日も休みだもんね」

 そう言うとメリアリアはベッドから起き出し、スリッパを履いてスタスタと蒼太の元へと歩み寄る。

「私も、飲みたいわ?一緒に飲んでも良い・・・?」

「う、うん。勿論だよ、一緒に飲もうか・・・」

 甘えた声と雰囲気とで、ピッタリと体を寄せて来る花嫁をヒョイと抱き抱えつつも蒼太は書斎へと向けて歩を進めていった。
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