星降る国の恋と愛

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夫婦の絆と子供への思い

アヌンナキの末裔

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「所で蒼太どの。あなたはさっき“星を砕く”等と仰られていたが・・・?」

 暗黒惑星に付いての詳細な観測データを手渡しながら、ジョセフソンが蒼太に言葉を掛けた。

「一体、どうやる気ですかな?天文学者としても大いに興味がある所だが・・・」

「あはは・・・。申し訳ないのですがジョセフソン博士。それは秘密なのです、と言うよりは信じてもらえない、と言った方が良いかも知れませんけれど・・・」

「構いません、どうかお話し下さい」

 ちょっと困ったような顔付きで答える蒼太に対してジョセフソンはあくまで静かに、そして和やかな笑みを浮かべてそう告げる。

「私共としては、大いに興味があります。何せニビルはかつて私共の遠い先祖達が住んでいた星ですのでね・・・」

「・・・・・っ。えええっ!!?」

「なんですってっ!!?」

 そんなジョセフソン博士の言葉に蒼太達は俄に色めき立った。

「あっははは・・・。私共は実はシュメール人の末裔なのですよ、と言っても最早その血も殆どが失われてしまい、今では地球人と言っても差し支えない種族となっていますがね」

「・・・・・っ!!!ニビルの。じゃああなた方はアヌンナキの子孫なのか?」

「いえいえ。純粋なアヌンナキは、今ではもういません。彼等は今から一万年ほど昔に、当時住んでいたニビルからこの惑星に放逐されたのです」

 そう言ってジョセフソンは静かに歴史を語り始めた。

「アヌンナキは確かに、ニビルの現生人類でした。彼等は高い霊力と科学力を持っており、それらを活かしてこの太陽系全体に版図を拡大させようとしたのですが・・・。その途中で“マローナ”と言う星と戦争が起こり、大勢のアヌンナキが死に絶えました。ちなみに“マローナ”と言うのは今では“アステロイド・ベルト”となっていますがね?」

「・・・マローナはニビルによって打ち砕かれたのですか?」

「いいえ。マローナとニビルの戦争はマローナに優勢のまま推移していました、あのまま行けば確かに戦争はマローナ側の勝利で終わったでしょうが・・・。マローナにはある致命的な弱点があったのです」

「・・・・・」

「・・・・・?」

「マローナに住む人々はみな猜疑心が強く、冷酷で非情な心の持ち主だったのです。そのお互いのお互いに対する悪意の波動がマローナの自浄能力を上回った瞬間、悲劇は起こりました・・・」

 “マローナは爆発して宇宙から消滅してしまったのです”とジョセフソンは話を続けた。

「結果的にニビルは辛うじて戦争には勝ちましたが、惑星ニビルの意識体。・・・要するに“魂”とでも言うべきモノですが、“彼”はアヌンナキに愛想を尽かして当時接近中であったこの星に、僅かに生き残ったアヌンナキ達を追放したのでした」

「・・・惑星ニビルの意識体?」

大甕星おおみかぼし。つまりは“オオボシカガセオ”の事さ、多分な・・・。それでアヌンナキ達はどうしたのです?」

「アヌンナキ達は已む無く、この星に定住して現地人と交わりました。要するに“混血民族”を生み出したのですね・・・」

「それがあなた方、シュメール人と言う訳か・・・」

 蒼太の言葉に博士は瞑目しつつも頷いた。

「そうです、“シュメール”とは“混ざり合った”と言う意味があるのだそうです。私達シュメール人はアヌンナキより血肉を受け継ぎ、また高度な教育を授けられていましたから、当時の人類達から見ればズバ抜けた知性と肉体的強靱さ、そして霊力を持っていたのです」

「・・・それで?どうしてアヌンナキ達はいなくなってしまったの?」

「種の純潔性を保つために近親交配を繰り返したのです、その結果としてアヌンナキ達は子孫を残すことが出来なくなり自然消滅してしまいました。後に残ったのが私達シュメール人です、そう言う意味では今や私達こそが生粋のニビル星人だと言っても過言では無いでしょう・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「私達は人々の中に紛れ込み、“その時”を待つことにしました。いつの日にか再びニビルがやって来る、そうしたら皆で故郷に帰ろう、と。しかし・・・」

「ニビルは到底、人が住める星では無くなっていた、と・・・?」

 蒼太達の放った言葉に、ジョセフソンは一つ一つに頷いて答えていった。

「ニビルは最早、私達を受け入れる事は無いのでしょう。マローナとの戦いの最中、ニビル星そのものかなりのダメージを負ったと聞きました。“星の意思”はその事を忘れてはいないのでしょうね・・・」

「・・・・・」

「私共の歴史は、こんな所でしょうか?まあ、最早地球に留まる事しか出来ない、憐れな異星人の末裔ですよ。それはそれとして蒼太どの、あなた方は本気でニビルを潰すおつもりなのですか・・・?」

「・・・・・っ!!!ええ、まあ。そうですね」

「な、なんだかしんみりしちゃったけれど・・・。相手は世界中で手の着けられない“荒ぶる星神”として信仰されているんでしょ?今回の地球接近を許したなら、何をされるか解ったモノでは無いもの!!!」

「ジョセフソン博士のお話には、確かに人として同情すべき箇所も御座いますけれど・・・。でもだからと言って地球が、この世界が滅茶苦茶にされるのを黙って見過ごして良い訳が御座いませんわ!!?」

「人がいない、と言うのであればそれこそ好都合だ。今回こそは完膚無きまでに粉砕して後顧の憂いを断たなくてはな!!!」

「・・・・・」

 そんな蒼太達一行の話を聞いたジョセフソン博士は一瞬、寂しそうな面持ちとなったがすぐに冷静さを取り戻し、新たな予測データを蒼太達に託して言った。

「これは過去のデータから、今現在のニビルの位置を正確に割り出したモノです。こっちは公転周期と軌道を元に計算した未来予想図です。もし本当に“星砕き”をなさるのであればこの二つのデータをお持ち下さい。それとニビルは組成が火星に近い岩石惑星なのですが、比べ物にならない位に星全体の密度が高くてその分硬い惑星なのです。その事もお忘れ無きように・・・」

「・・・・・っ。有り難う御座います、ジョセフソン博士!!!」

「御免なさいジョセフソン博士。そしてどうも有り難う!!!」

「御協力感謝しますわ?何も出来ずに御免なさい・・・!!!」

「心から礼を言う、それと今回の事はお悔やみ申し上げる。済まない博士・・・!!!」

 4人は口々にそう告げてジョセフソン博士に別れを述べると、ガリア帝国の南方の国境地帯、アルヴの山々に囲まれし町“セントシャーレ”へと向けて旅立って行った。
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