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夫婦の絆と子供への思い
蒼太はエンブレムを切れるか? 4
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「ガリウス・ジョナタン・ド・メロヴィング、ガリア帝国皇子で第2帝位継承権保持者。今年で35歳、男性。身長195cm、体重107キロ。健康状態に特に問題は無いけれど・・・」
「・・・・・」
「ただ一つ、“ミオスタチン欠乏症”を煩っているみたいね・・・」
「ミオスタチン・・・?あの人体内や動物の体内に存在している、と言われている“筋肉増大抑制物質”の事ですか?」
蒼太の言葉に、電話口の向こう側でノエルが“うん、そう!!!”と頷いていた。
今現在、彼女は父方の故郷である“ルクセンブルク大公国”に戻っており、そこで“貴族院議員”を勤めていたのである。
自身も今年で35歳になるノエルは相変わらずの“ぶっ飛び系女子”的な生態系をしており、時折電話を掛けて来ては蒼太達を茶化して行くと言う、ちょっと困ったお姉さんと化していたのだ。
だがしかし。
「感謝しますよ、ノエルさん。何しろミラベルやセイレーンのコンピュータにアクセスしようとしても拒否されてしまうんだよ。・・・多分、上層部の差し金だろうけど」
「あっはっはっは~っ(^∇^)(^∇^)(^∇^)このノエルさんに任せなさい。信じる者は救われます!!!・・・ま、いただくモノはいただくけどね~?あっ、ソー君の場合は特別料金で通常の五倍は水増しされてるから~っ( ̄∇ ̄)( ̄∇ ̄)( ̄∇ ̄)」
「・・・・・」
“地獄に堕ちろや、クソノエル!!!”と悪態を付く蒼太に対してしかし、ノエルはちっとも動じない。
こんな事で一々動揺していてはノエルのキャラ等維持できないからであり、そう言う意味ではまさに“鋼の心”の持ち主であった彼女はしかし、なんだかんだ言っても蒼太にとっては信頼の置ける旧友であると同時に情報収集方面で非常に頼りになる仲間であった。
それというのも。
“ミラベル”には上層部から禁止されていても時折、義侠心や利己目的、はたまた“闇の仕事”等を受け負っている関係上“裏”で動く存在がいて、例えば今回の蒼太達のように捕縛や暗殺目的、はたまた脅迫等を行う為の独自調査を密かに実施する事があるのだがその際、セキュリティを突破してハイパー・シークレットゾーンに存在している超機密情報を持ち出してくれる助力者が必須となってくるのである。
それが蒼太にとってはノエルなのだが、彼は通常の任務以外にも極秘の“それら”も熟しており、その数は今や10回を超えようとしていた。
「あ、あと。なんだか心臓に特殊な術式を掛けてあるみたい~。何でも“寿命の半分を生命力に変換する魔法”らしいけど多分、全身が筋肉ムキムキになってしまっているから心臓に凄い負担が掛かっているのかもね~( ̄○ ̄)( ̄○ ̄)( ̄○ ̄)」
「・・・なるほど」
蒼太は頷くが通常、自然状態に於いては人や動物の体には自身のそれを“不必要に肥大化”させない作用があって、その一翼を担っているのが先述の“ミオスタチン”と言う物質であった。
その目的と言うのが体を不用意に肥大化、強大化させて心臓や内臓系に負担が掛かって来るのを避ける為のモノであったが“要するに”とその事を知っていた蒼太は思った、“敵を圧倒する力には優れてはいても自然の試練に耐え抜いて、今日を生き抜く力を失ってしまったのだな”と。
「ちなみにミオスタチン自体はソー君にもちゃんと存在している物質だよ~(≧∇≦)b(≧∇≦)b(≧∇≦)bただし恒常的にスポーツや武道をしている人の体にはミオスタチンがかなり減少する傾向があるみたいだけどね~・・・( ̄。 ̄;)( ̄。 ̄;)( ̄。 ̄;)」
「知ってる。筋肉を付けやすくする為の、自然の摂理だろう。つまり運動をしている人は徐々に筋肉の付く速度と比率が増して行き、逆にそうじゃない人は段々と衰えて行く、と言う訳だね?」
“それも日を追う毎に、加速度的にね!!!”と言う蒼太の言葉に“全く以てその通りです~(≧▽≦)(≧▽≦)(≧▽≦)”とノエルは相変わらずの調子で応えた。
「まあ、ソー君は鍛えているから大丈夫だと思うけど~。私もそろそろ運動しようかしら、最近お腹が弛んで来てるの~(・ω・)(・ω・)(・ω・)」
「・・・・・」
“あんたの場合は日頃の不摂生も原因だろうが”と言おうとして蒼太は止めた、これ以上ノエルと関わっていても疲れるだけだし、それにまだやらなければならない事が残っている、余計な時間は全く無かった。
「・・・ノエルさん、もう一つ調べて欲しい事がある。ガリウス・メロヴィングが扱う剣術に付いてなんだが、なんだか解るか?」
「うーんとねぇ、えーっとぉ・・・。あ、あったわ!!?“クローヴィス流剣術”って言うのを修めているみたいよぉ~っ(〃'▽'〃)(〃'▽'〃)(〃'▽'〃)」
「・・・・・」
(やはり、な・・・)
報告を聞くまでも無く、目星は付いていたのだが蒼太は敢えてノエルに確認を取らせた。
この“クローヴィス流剣術”と言うのはエウロペ連邦国家群に伝わっている“古流剣術”の一つであり、その始原は“フランク王国”を建国した、とされている“覇王シャルルマーニュ”の父、“クローヴィス王”に由来する。
八つの基本型からなるこの古流剣術は、蒼太達の扱う日本最古流の剣術一派“大津国流”と同じように、“剣対剣”や“剣対槍”等の接近戦に於いてその威力を最大に発揮するように組まれていた。
しかもこれらは一対多数でもかなり強力な剣術として機能するのだが、特に一対一の決闘のような状況下では“敵無し”とまで言われる程の凄まじさを秘めていたのだ。
それにしても。
(クローヴィス流とは、何度かやり合って来たけれど・・・。あれ程完成されている西洋の剣術と言うのは、クローヴィス流以外には“ランスロット流”しか存在しえない。もっともあっちは“一子相伝”だから既に途絶えた剣術だ、とされているけど。それにしても・・・!!!)
“縁があるな、クローヴィス流とは・・・”等と考えて蒼太は何だか、よくわからない愉快さを覚えて思わずクスリと笑ってしまうが現状、彼が“剣での勝負で”勝てなかった剣豪はこの世に二人しかいない。
一人は実父である“綾壁清十郎”であり、もう一人は蒼太の義理の父にして妻の一人であるオリヴィアの実父、“アルベール伯爵”だ。
ちなみにアルベール伯爵もまた“クローヴィス流の一派”を使うから、確かに彼とクローヴィス流剣術とには、何某かの因縁がある、としか思えなかった。
「ちょっとソー君、大丈夫~?このガリウスって人、あんまり評判良くないよ。関わらない方が良いんじゃないの~?」
「・・・そうしたいのは山々なんですがね。そうすると僕は、困っている親友を見捨てる事になってしまうんですよ。それに彼にもちょっとした“借り”があるので、無下には出来ないのです」
「うう~ん、そっかぁっ。ソー君って一見ドライに見えるけど結構、情に厚くて義理堅いモンね~っ(∩´∀`∩)(∩´∀`∩)(∩´∀`∩)」
「・・・どうですかね?単に厄介事を断り切れないだけの、意志薄弱な男かも知れませんよ?」
「そんな事無いわよぉ~。ソー君は実はとっても優しい人間だって事を、私は知っているからねぇ~っ(//∇//)(//∇//)(//∇//)何故なら私の半分も、優しさで出来てるからぁ~っ。そこの部分が同調するのよぉ~っ(*´▽`*)(*´▽`*)(*´▽`*)」
「・・・何を訳の解らん事を言っているんですか。もう切りますよ?どうも有り難う御座いました!!!」
「あっ。ちょっと待ってソー君!!!せっかくなんだからもうちょっとお話しようよ、ねえねえ~・・・っ!!?」
慌てて喚き立てるノエルを他所に、蒼太はややゲンナリした顔で“ピッ”と通話終了ボタンを押した。
「・・・・・。な、なあ蒼太?今のが本当に“プリンセス・ミネオラ”なのか?」
「はぁ・・・。まあ悪い人では無いんだけれどな?あまり関わりすぎると疲れる人だよ」
傍で会話に耳立てていたアンリが些か戸惑ったような表情を浮かべるモノの、それには特に構うこと無く蒼太は話を続けた。
「どうする?アンリ。ノエルさんがくれた情報に拠ればここの所、ガリウス・メロヴィングは宮殿には帰っていないそうだ。父親であるフィリップ・メロヴィング七世陛下や兄上であるルイ・メロヴィング殿下との折り合いが、極めて悪いらしくてな。アナ=マリア皇后陛下だけは未だにガリウスの身を案じているそうだが・・・」
「・・・・・」
「ただ一つ、言っておくがあれじゃあ捕縛は困難だと思うよ?あれだけの強さと激しさを持っている人が、そう大人しく捕まってくれるとは思えないからな・・・」
「う、うーん・・・!!!」
“親父の力を以てしても”とアンリが続けた、“皇族相手じゃ、どうにもならないしな・・・”と。
「それにしてもガリウス殿下は一体、何を考えて毎日を生きておられるのだろうな?先日のミランザ商会での一件も、あれじゃあすぐに人伝に伝わるぜ?」
「・・・・・」
そう述べ立てる親友の言葉に、蒼太はミランザ商会での一件を思い返していたのだが、あの後。
ガリウスによって叩き伏せられた剣士達をその場で凶器所持や殺人未遂、及び反逆罪の現行犯で逮捕した蒼太とアンリは引き続き、彼等の事情聴取をも担当する事となった。
「我々は、アルトワ子爵家の者だ・・・」
拘置所の取調室で男達が語り始めた所に拠ればアルトワ家の誇る5人姉妹の内、三女と五女がガリウスに手籠めにされた挙げ句、無理矢理に純潔を奪われた、と言うのだ。
それだけではない、“事件を表沙汰にされたくなければ10,000ユーロを用意しろ”等という脅迫めいた言葉を吐かれてアルトワ子爵は激昂し、ガリウスに対して決闘を申し込んだのだが返り討ちにされて殺されてしまったらしかった。
「・・・そんな事が!!!」
「アルトワ子爵は確か、“病のかどで他界された”と発表されていたが・・・?」
「そんなモノは嘘っぱちに決まっているだろう!!!」
蒼太達の言葉に男達が怒りを露わにする。
「子爵は、子爵は私達にも優しくして下さった。とても暖かみのある方だったんだ、その子爵を・・・!!!」
「・・・・・」
「・・・確か。子爵家自体は一人息子で長男の“ヴァランタン子爵”が継いでいるんだよね?よく存続が許されたな」
「・・・皇帝陛下が、裏で便宜を図って下さったらしい。後で聞いた話だがな!!!」
「・・・そっか」
「皇帝陛下、優しいな・・・」
「ふんっ。皇帝陛下は自分の家系に泥を塗るのがお嫌いなだけさ、流石に“自分の息子が嫁入り前の乙女を襲って度々強姦して回っている”等という噂が立ったら困るだろう?だから事件自体を無かった事にしたんだ。そうに決まってるよ!!!」
「・・・・・」
「皇帝陛下はっ。自分の事しか考えて無いっ!!!本当は冷たい男なんだっ。俺達の事なんか、これっぽちも・・・っ!!!!!」
「・・・もし本当にそうなら、アルトワ家自体を完全に断絶させた上で関係者は全員処刑。事件に対する箝口令を敷けばそれで事足りた筈だと思うが?」
「・・・・・」
「それは・・・」
「それをなさらなかったのは、皇帝陛下のせめてもの謝罪のお気持ちの現れなのだろう。・・・ガリウス殿下の父親としてのな?それにあのお方は優しい方だ。君達の苦しみと憤りが報われる日が、いつかきっと来ると思うよ?」
「・・・・・っ!!!」
「ウ、ウグゥ・・・ッ!!!」
その言葉を聞いた時に、剣士達は思わず泣き出してしまっていた、絶望してささくれだった心には、優しい言葉と言うのは本当に底の底まで染み渡るモノなのである。
それにしても。
「調べただけでガリウス殿下の仕業と思しき事件は、優に130件を超えている。ちなみにその4分の3が一般人の犠牲者だ、このままでは如何に皇帝陛下と言えども・・・」
「・・・アンリ」
そこまでアンリが話していた時だった、彼の手の中でスマートフォンが振動し始めたのだ。
先に蒼太が気付いてアンリを呼び止めたのだがその相手は“ヴァロワ公爵”と書かれている、即ち彼の実父、ヴァロワ大公の事であった。
「ちょっと失礼・・・。もしもし?どうしたんだよ、親父。今仕事中なんだけどな・・・。ええっ!!?本当かよ、それは・・・。皇太子殿下から来たって?」
「・・・・・?」
「それにしたって、ガリウス殿下を?ううーん、どうだろう・・・。出来るんだったら捕縛で、無理なら始末しても良いんだな?解った、蒼太にも伝えるよ・・・」
「・・・親父さん、なんだって?」
「蒼太、大変な事になったぞ?」
スマートフォンの通話終了ボタンを押したアンリがやや興奮気味の口調で告げた。
「つい今し方、皇太子殿下が自分の名の元に“ガリウス殿下を討て”との追討令を出したそうだ。ただし“内々に”な!!!」
「・・・要するに“消してくれ”って事か?」
「ああ・・・。どうだろう、蒼太。受けてくれるか?」
「・・・・・」
「あれ程の手練れを始末出来るのは、お前以外ではもう剣豪である“アルベール伯爵”しかいない。だけど仮にも伯爵家当主が動けば事が大袈裟になりすぎる!!!」
「・・・・・」
「なぁっ!!!頼むよ蒼太、俺も一緒に付き合うからさ?それに・・・」
「このまま奴らを放置していたら、いつか自分達の家族の元にもアイツらの魔手が伸びて来る。そう言いたいんだろ?お前は・・・!!!」
「・・・ああ!!!」
「・・・・・」
“解っているよ”と蒼太は言った、妻達と子供達の身の安全と命脈の全てが掛かっているのだ、・・・“これを受けない奴は男じゃない!!!”と。
「だがしかし・・・。気を付けろ、相手はバケモノだぞ!!?」
「・・・解っているよ、蒼太!!!」
そう言ってアンリはしかし、些か申し訳無さそうな顔をした、“お前がやってくれ”とその目が言っていた。
それを受けて、蒼太は。
再び人を斬り殺す覚悟を、己の中で決めたのである。
「・・・・・」
「ただ一つ、“ミオスタチン欠乏症”を煩っているみたいね・・・」
「ミオスタチン・・・?あの人体内や動物の体内に存在している、と言われている“筋肉増大抑制物質”の事ですか?」
蒼太の言葉に、電話口の向こう側でノエルが“うん、そう!!!”と頷いていた。
今現在、彼女は父方の故郷である“ルクセンブルク大公国”に戻っており、そこで“貴族院議員”を勤めていたのである。
自身も今年で35歳になるノエルは相変わらずの“ぶっ飛び系女子”的な生態系をしており、時折電話を掛けて来ては蒼太達を茶化して行くと言う、ちょっと困ったお姉さんと化していたのだ。
だがしかし。
「感謝しますよ、ノエルさん。何しろミラベルやセイレーンのコンピュータにアクセスしようとしても拒否されてしまうんだよ。・・・多分、上層部の差し金だろうけど」
「あっはっはっは~っ(^∇^)(^∇^)(^∇^)このノエルさんに任せなさい。信じる者は救われます!!!・・・ま、いただくモノはいただくけどね~?あっ、ソー君の場合は特別料金で通常の五倍は水増しされてるから~っ( ̄∇ ̄)( ̄∇ ̄)( ̄∇ ̄)」
「・・・・・」
“地獄に堕ちろや、クソノエル!!!”と悪態を付く蒼太に対してしかし、ノエルはちっとも動じない。
こんな事で一々動揺していてはノエルのキャラ等維持できないからであり、そう言う意味ではまさに“鋼の心”の持ち主であった彼女はしかし、なんだかんだ言っても蒼太にとっては信頼の置ける旧友であると同時に情報収集方面で非常に頼りになる仲間であった。
それというのも。
“ミラベル”には上層部から禁止されていても時折、義侠心や利己目的、はたまた“闇の仕事”等を受け負っている関係上“裏”で動く存在がいて、例えば今回の蒼太達のように捕縛や暗殺目的、はたまた脅迫等を行う為の独自調査を密かに実施する事があるのだがその際、セキュリティを突破してハイパー・シークレットゾーンに存在している超機密情報を持ち出してくれる助力者が必須となってくるのである。
それが蒼太にとってはノエルなのだが、彼は通常の任務以外にも極秘の“それら”も熟しており、その数は今や10回を超えようとしていた。
「あ、あと。なんだか心臓に特殊な術式を掛けてあるみたい~。何でも“寿命の半分を生命力に変換する魔法”らしいけど多分、全身が筋肉ムキムキになってしまっているから心臓に凄い負担が掛かっているのかもね~( ̄○ ̄)( ̄○ ̄)( ̄○ ̄)」
「・・・なるほど」
蒼太は頷くが通常、自然状態に於いては人や動物の体には自身のそれを“不必要に肥大化”させない作用があって、その一翼を担っているのが先述の“ミオスタチン”と言う物質であった。
その目的と言うのが体を不用意に肥大化、強大化させて心臓や内臓系に負担が掛かって来るのを避ける為のモノであったが“要するに”とその事を知っていた蒼太は思った、“敵を圧倒する力には優れてはいても自然の試練に耐え抜いて、今日を生き抜く力を失ってしまったのだな”と。
「ちなみにミオスタチン自体はソー君にもちゃんと存在している物質だよ~(≧∇≦)b(≧∇≦)b(≧∇≦)bただし恒常的にスポーツや武道をしている人の体にはミオスタチンがかなり減少する傾向があるみたいだけどね~・・・( ̄。 ̄;)( ̄。 ̄;)( ̄。 ̄;)」
「知ってる。筋肉を付けやすくする為の、自然の摂理だろう。つまり運動をしている人は徐々に筋肉の付く速度と比率が増して行き、逆にそうじゃない人は段々と衰えて行く、と言う訳だね?」
“それも日を追う毎に、加速度的にね!!!”と言う蒼太の言葉に“全く以てその通りです~(≧▽≦)(≧▽≦)(≧▽≦)”とノエルは相変わらずの調子で応えた。
「まあ、ソー君は鍛えているから大丈夫だと思うけど~。私もそろそろ運動しようかしら、最近お腹が弛んで来てるの~(・ω・)(・ω・)(・ω・)」
「・・・・・」
“あんたの場合は日頃の不摂生も原因だろうが”と言おうとして蒼太は止めた、これ以上ノエルと関わっていても疲れるだけだし、それにまだやらなければならない事が残っている、余計な時間は全く無かった。
「・・・ノエルさん、もう一つ調べて欲しい事がある。ガリウス・メロヴィングが扱う剣術に付いてなんだが、なんだか解るか?」
「うーんとねぇ、えーっとぉ・・・。あ、あったわ!!?“クローヴィス流剣術”って言うのを修めているみたいよぉ~っ(〃'▽'〃)(〃'▽'〃)(〃'▽'〃)」
「・・・・・」
(やはり、な・・・)
報告を聞くまでも無く、目星は付いていたのだが蒼太は敢えてノエルに確認を取らせた。
この“クローヴィス流剣術”と言うのはエウロペ連邦国家群に伝わっている“古流剣術”の一つであり、その始原は“フランク王国”を建国した、とされている“覇王シャルルマーニュ”の父、“クローヴィス王”に由来する。
八つの基本型からなるこの古流剣術は、蒼太達の扱う日本最古流の剣術一派“大津国流”と同じように、“剣対剣”や“剣対槍”等の接近戦に於いてその威力を最大に発揮するように組まれていた。
しかもこれらは一対多数でもかなり強力な剣術として機能するのだが、特に一対一の決闘のような状況下では“敵無し”とまで言われる程の凄まじさを秘めていたのだ。
それにしても。
(クローヴィス流とは、何度かやり合って来たけれど・・・。あれ程完成されている西洋の剣術と言うのは、クローヴィス流以外には“ランスロット流”しか存在しえない。もっともあっちは“一子相伝”だから既に途絶えた剣術だ、とされているけど。それにしても・・・!!!)
“縁があるな、クローヴィス流とは・・・”等と考えて蒼太は何だか、よくわからない愉快さを覚えて思わずクスリと笑ってしまうが現状、彼が“剣での勝負で”勝てなかった剣豪はこの世に二人しかいない。
一人は実父である“綾壁清十郎”であり、もう一人は蒼太の義理の父にして妻の一人であるオリヴィアの実父、“アルベール伯爵”だ。
ちなみにアルベール伯爵もまた“クローヴィス流の一派”を使うから、確かに彼とクローヴィス流剣術とには、何某かの因縁がある、としか思えなかった。
「ちょっとソー君、大丈夫~?このガリウスって人、あんまり評判良くないよ。関わらない方が良いんじゃないの~?」
「・・・そうしたいのは山々なんですがね。そうすると僕は、困っている親友を見捨てる事になってしまうんですよ。それに彼にもちょっとした“借り”があるので、無下には出来ないのです」
「うう~ん、そっかぁっ。ソー君って一見ドライに見えるけど結構、情に厚くて義理堅いモンね~っ(∩´∀`∩)(∩´∀`∩)(∩´∀`∩)」
「・・・どうですかね?単に厄介事を断り切れないだけの、意志薄弱な男かも知れませんよ?」
「そんな事無いわよぉ~。ソー君は実はとっても優しい人間だって事を、私は知っているからねぇ~っ(//∇//)(//∇//)(//∇//)何故なら私の半分も、優しさで出来てるからぁ~っ。そこの部分が同調するのよぉ~っ(*´▽`*)(*´▽`*)(*´▽`*)」
「・・・何を訳の解らん事を言っているんですか。もう切りますよ?どうも有り難う御座いました!!!」
「あっ。ちょっと待ってソー君!!!せっかくなんだからもうちょっとお話しようよ、ねえねえ~・・・っ!!?」
慌てて喚き立てるノエルを他所に、蒼太はややゲンナリした顔で“ピッ”と通話終了ボタンを押した。
「・・・・・。な、なあ蒼太?今のが本当に“プリンセス・ミネオラ”なのか?」
「はぁ・・・。まあ悪い人では無いんだけれどな?あまり関わりすぎると疲れる人だよ」
傍で会話に耳立てていたアンリが些か戸惑ったような表情を浮かべるモノの、それには特に構うこと無く蒼太は話を続けた。
「どうする?アンリ。ノエルさんがくれた情報に拠ればここの所、ガリウス・メロヴィングは宮殿には帰っていないそうだ。父親であるフィリップ・メロヴィング七世陛下や兄上であるルイ・メロヴィング殿下との折り合いが、極めて悪いらしくてな。アナ=マリア皇后陛下だけは未だにガリウスの身を案じているそうだが・・・」
「・・・・・」
「ただ一つ、言っておくがあれじゃあ捕縛は困難だと思うよ?あれだけの強さと激しさを持っている人が、そう大人しく捕まってくれるとは思えないからな・・・」
「う、うーん・・・!!!」
“親父の力を以てしても”とアンリが続けた、“皇族相手じゃ、どうにもならないしな・・・”と。
「それにしてもガリウス殿下は一体、何を考えて毎日を生きておられるのだろうな?先日のミランザ商会での一件も、あれじゃあすぐに人伝に伝わるぜ?」
「・・・・・」
そう述べ立てる親友の言葉に、蒼太はミランザ商会での一件を思い返していたのだが、あの後。
ガリウスによって叩き伏せられた剣士達をその場で凶器所持や殺人未遂、及び反逆罪の現行犯で逮捕した蒼太とアンリは引き続き、彼等の事情聴取をも担当する事となった。
「我々は、アルトワ子爵家の者だ・・・」
拘置所の取調室で男達が語り始めた所に拠ればアルトワ家の誇る5人姉妹の内、三女と五女がガリウスに手籠めにされた挙げ句、無理矢理に純潔を奪われた、と言うのだ。
それだけではない、“事件を表沙汰にされたくなければ10,000ユーロを用意しろ”等という脅迫めいた言葉を吐かれてアルトワ子爵は激昂し、ガリウスに対して決闘を申し込んだのだが返り討ちにされて殺されてしまったらしかった。
「・・・そんな事が!!!」
「アルトワ子爵は確か、“病のかどで他界された”と発表されていたが・・・?」
「そんなモノは嘘っぱちに決まっているだろう!!!」
蒼太達の言葉に男達が怒りを露わにする。
「子爵は、子爵は私達にも優しくして下さった。とても暖かみのある方だったんだ、その子爵を・・・!!!」
「・・・・・」
「・・・確か。子爵家自体は一人息子で長男の“ヴァランタン子爵”が継いでいるんだよね?よく存続が許されたな」
「・・・皇帝陛下が、裏で便宜を図って下さったらしい。後で聞いた話だがな!!!」
「・・・そっか」
「皇帝陛下、優しいな・・・」
「ふんっ。皇帝陛下は自分の家系に泥を塗るのがお嫌いなだけさ、流石に“自分の息子が嫁入り前の乙女を襲って度々強姦して回っている”等という噂が立ったら困るだろう?だから事件自体を無かった事にしたんだ。そうに決まってるよ!!!」
「・・・・・」
「皇帝陛下はっ。自分の事しか考えて無いっ!!!本当は冷たい男なんだっ。俺達の事なんか、これっぽちも・・・っ!!!!!」
「・・・もし本当にそうなら、アルトワ家自体を完全に断絶させた上で関係者は全員処刑。事件に対する箝口令を敷けばそれで事足りた筈だと思うが?」
「・・・・・」
「それは・・・」
「それをなさらなかったのは、皇帝陛下のせめてもの謝罪のお気持ちの現れなのだろう。・・・ガリウス殿下の父親としてのな?それにあのお方は優しい方だ。君達の苦しみと憤りが報われる日が、いつかきっと来ると思うよ?」
「・・・・・っ!!!」
「ウ、ウグゥ・・・ッ!!!」
その言葉を聞いた時に、剣士達は思わず泣き出してしまっていた、絶望してささくれだった心には、優しい言葉と言うのは本当に底の底まで染み渡るモノなのである。
それにしても。
「調べただけでガリウス殿下の仕業と思しき事件は、優に130件を超えている。ちなみにその4分の3が一般人の犠牲者だ、このままでは如何に皇帝陛下と言えども・・・」
「・・・アンリ」
そこまでアンリが話していた時だった、彼の手の中でスマートフォンが振動し始めたのだ。
先に蒼太が気付いてアンリを呼び止めたのだがその相手は“ヴァロワ公爵”と書かれている、即ち彼の実父、ヴァロワ大公の事であった。
「ちょっと失礼・・・。もしもし?どうしたんだよ、親父。今仕事中なんだけどな・・・。ええっ!!?本当かよ、それは・・・。皇太子殿下から来たって?」
「・・・・・?」
「それにしたって、ガリウス殿下を?ううーん、どうだろう・・・。出来るんだったら捕縛で、無理なら始末しても良いんだな?解った、蒼太にも伝えるよ・・・」
「・・・親父さん、なんだって?」
「蒼太、大変な事になったぞ?」
スマートフォンの通話終了ボタンを押したアンリがやや興奮気味の口調で告げた。
「つい今し方、皇太子殿下が自分の名の元に“ガリウス殿下を討て”との追討令を出したそうだ。ただし“内々に”な!!!」
「・・・要するに“消してくれ”って事か?」
「ああ・・・。どうだろう、蒼太。受けてくれるか?」
「・・・・・」
「あれ程の手練れを始末出来るのは、お前以外ではもう剣豪である“アルベール伯爵”しかいない。だけど仮にも伯爵家当主が動けば事が大袈裟になりすぎる!!!」
「・・・・・」
「なぁっ!!!頼むよ蒼太、俺も一緒に付き合うからさ?それに・・・」
「このまま奴らを放置していたら、いつか自分達の家族の元にもアイツらの魔手が伸びて来る。そう言いたいんだろ?お前は・・・!!!」
「・・・ああ!!!」
「・・・・・」
“解っているよ”と蒼太は言った、妻達と子供達の身の安全と命脈の全てが掛かっているのだ、・・・“これを受けない奴は男じゃない!!!”と。
「だがしかし・・・。気を付けろ、相手はバケモノだぞ!!?」
「・・・解っているよ、蒼太!!!」
そう言ってアンリはしかし、些か申し訳無さそうな顔をした、“お前がやってくれ”とその目が言っていた。
それを受けて、蒼太は。
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