星降る国の恋と愛

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夫婦の絆と子供への思い

蒼太はエンブレムを切れるか? 2

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「あったま来るよな?アイツらと来たら!!!」

「・・・・・」

 ミラベル本部から出て来たアンリは不快感を露わにする。

「“お前達が口を挟む用件では無い”、“あの事件の事は忘れろ”だってさ。頭ごなしに怒鳴りつけられたと思ったらこれだ、冗談じゃないぜ。全くよ・・・!!!」

 腹立ちが収まらないらしい親友の姿を“冗談じゃないのはこっちの方だ!!!”と思いながら蒼太は眺めていた、なんで自分までもが呼び出されて厳重注意を受けなくてはならないのか、全く理解に苦しむ世の中である。

「なあ蒼太。こうなったら俺達だけで・・・」

「却下だな」

 何事かを言い掛けるアンリに対して蒼太はしかし、その言葉を紡がせなかった。

「そもそも俺は気が乗らなかったんだ。この事件、降ろさせてもらうぜ?」

「お、おい。ちょっと待て、寂しい事を言うな!!!」

 そう告げて立ち去ろうとする蒼太を後ろからアンリが慌てて呼び止める。

「お前、いまちょうどフリーなんだろ?俺と組もうぜ?ミラベル上層部の言葉なんか、ほっときゃ良いんだよ!!!」

「・・・・・」

「昔は良く一緒に組んだじゃないか。今回もそのノリでさ?大丈夫だ、お前と俺とでやっていけるだろ!!!」

「・・・・・」

「もし事態がこのまま進めば、犠牲者はもっと増える事になる。そうなりゃ見て見ぬ振りをしたかどで、お前だって流石に良い気分で過ごす事は出来なくなる筈だぜ?」

「・・・・・」

「解った蒼太、正直に言う。実はな、俺はいま親父の命令で動いているんだ!!!」

「・・・・・?」

 その言葉に、蒼太の足がピタリと止まった。

「親父さんって事は、ヴァロワ大公の?」

「ああ、そうだ・・・」

 若干、訝し気な面持ちで親友に振り返る蒼太に対してアンリが真面目な顔で頷き、話を続けた。

「さっき、一人娘が強姦されたと言う“トゥールーズ男爵”の話をしただろう?あれはうちの親戚筋に当たる家系で我がヴァロワ大公家と同じく“ノルマンディー公”の血を引いているんだ。特にトゥールーズ男爵は小さな頃から親父と兄弟同然に育ったらしくてな?その一家とも仲良くしていたらしいんだ。それで今回の事件を受けた親父が激怒して俺に“何としてでも犯人を捜し出して一網打尽にしろ!!!”と言うお達しを出して来たんだよ!!!」

「・・・初めから言えよ、そう言う事は!!!」

 蒼太が語気を強めて言った。

「ヴァロワ大公直々のお達しなんだろ?なんでそれを先に言わないんだよ。って言うか、それを上層部にぶつければ良いじゃないか。親父さんの権勢を以てすれば、ミラベルの上層部なんて一も二もなく・・・」

「いいや、言ったんだよ俺は。だけどな!!?」

 “相手が悪過ぎる!!!”とそう言われたと、アンリは応えるモノのそれを聞いた蒼太はますます頭を悩ませた。

(ヴァロワ大公はガリア帝国では3本の指に入る大貴族の筈だ。その権勢を以てしても上層部を動かせなかった、となればこれは・・・!!!)

「・・・なあ蒼太。蒼太ってば!!!」

 “まさかそのエンブレムは本物なのか?”との物思いに耽る彼を、親友がうつつへと呼び戻す。

「なあ、頼むよ。もうお前しかいないんだ、何とか俺との友情に免じて。なっ!!?」

「・・・・・」

 自分に向かって手を合わせて来るアンリを尻目に蒼太は尚も考えるがもしこの申し出を断った場合、蒼太は一人の親友を失う事になりかねず、またそうなったらヴァロワ大公の彼に対する覚えの内も薄ら寒いモノとなる。

 それだけではない、怒り狂ったヴァロワ大公家からカッシーニ家やフォンティーヌ家、フェデラール家等花嫁達の実家やミラベル上層部等にどんな圧力を掛けられるか想像に難くなかった。

(まずいな・・・。ヴァロワ大公家とカッシーニ家やフォンティーヌ家、フェデラール家は様々な取り引きを行っているかどで緊密な交流がある上に、彼処あそこはミラベル上層部にもある程度以上に顔が利く。もしそこに、例えば“綾壁蒼太を放逐しろ!!!”等という圧力を掛けられでもしたら・・・!!!)

 メリアリア達は猛反発するだろうし、義父達もまた戦ってくれるだろうが、それでも被害や犠牲は相当なモノとなる。

 それだけではない、ミラベル上層部と社交界全体をも敵に回しかねない事態となる為に三家は事実上の廃爵処分となる可能性が極めて高く、蒼太としては何としてでも避けなければならない懸案であったのだ。

「・・・・・」

(正直に言って気が乗らないなぁ、如何にアンリの頼みとは言えども。余計な事件に自分から首を突っ込んでいって、却って自分自身やメリー達を危険な目に遭わせる事にはならないだろうか・・・)

「蒼太、この通りだ。頼む・・・」

「・・・・・」

 一抹の不安はあったが今後の事を考慮したのと、縋り付くような眼差しで尚も誠心誠意、頭を下げてくる親友を無下に出来ずに結局蒼太は“解ったよ・・・”と頷いて、引き受ける事にしたのだった。

「ただ、いつまでもいつまでも上層部の意向は無視出来ないよ?わざわざ“関わるな”と言う案件に関わるのだから、その辺りは意識しなきゃだし・・・。それに解決するための期限を決めて掛からないとな」

「ああ、その辺りの事は俺も考えているよ!!!」

 すると先程までとは打って変わって明るい笑顔を見せ始めたアンリがいつものような軽い口調で説明し始めた。

「親父からは“一ヶ月以内に”との条件を出されているんだが、日数はあと3週間以上は残ってる。それだけ張り込んでりゃ必ず奴等は“ミランザ商会”に顔を見せるはずだ、何せ彼処あそこは名声もある老舗で有名な商家だからな!!!」

 “ミラベル上層部には”とアンリが続けて言った、“親父から引き続き圧力を掛けてもらうよ!!!”とそう告げて。

「アイツら、どうも何かを隠してるようなんだけど。それでも親父の言葉なら一定の効果はあると思うし、ある程度なら俺とお前の行動も黙認してくれるだろう・・・!!!」

「・・・・・」

 そこまで説明するとアンリは“行こうぜ?”と言い放ち、蒼太を誘って自分専用の高級スポーツカーのある地下駐車場へと足を向けた。
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