星降る国の恋と愛

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神世への追憶編

南国のバカンス 28

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 今回は少しシリアス目なお話です。

 またこの物語は第二章の中盤に出て参ります“狂乱のレベッカ”及び“幻惑のエカテリーナ”、また第三章冒頭部分にあります“アンチ・クライスト・オーダーズ”、“人類恐竜化計画”等を御覧になられてから読まれますと、より理解が進むかも知れません(と言うよりは多少、読みやすくなるかも知れません)。
ーーーーーーーーーーーーーー
 楽しかった遊びとバカンスな日々はアッという間に過ぎ去って行き、いよいよ休暇期間はあと1週間を残すのみとなった、そんな折。

 蒼太達はエルフ王である“エルファサリア”から直々に王宮に呼び出されて下にも置かぬ歓待を受ける事となった、何しろ彼等はここ“エルヴスヘイム”を二度に渡って救ってくれた英雄の中の英雄である、そんな一行に“最後くらいは自分の元でゆっくりと寛いで欲しい”、“色々としたい話も沢山ある”との事で急遽予定を変更して宮廷へと馳せ参じた、と言う次第であった訳である。

 皆日に焼けて黒くなり、ココナッツオイルの良い香りが漂って来ていたモノの、そこは流石にエルフ王の前である、蒼太達は全員が襟を正して礼儀を欠く事無く謁見えと臨んでいった。

「蒼太、改めて礼を言わせてもらうよ?」

「陛下、勿体ないお言葉で御座います・・・」

 姿を見せたエルファサリアは必要以上に慇懃に振る舞う事はせずに、かと言って彼なりに気を遣ってくれているのだろう、終始和やかな表情で笑顔を絶やさぬままに一行に相対していたのだ。

「この風の王の聖剣“ナレク・アレスフィア”は何度となく私の命を救ってくれました。以前に陛下から下賜されたモノです・・・!!!」

「覚えているとも!!!」

 “役に立っているかね?”等と嬉しそうに受け答えをしていたエルファサリアであったが一通り、全員に声を掛け終わると玉座に戻って咳払いをする。

「さて・・・。本日皆に集まってもらったのは他でもない。実はそなた達が討滅してくれた黒雲の魔女“アウディミア”の事で新たな事実が判明したのでな、それをどうしても伝えておかなければならないと思った次第である・・・」

「・・・・・」

「アウディミアの・・・?」

 その名を聞いた瞬間、全員に多少の緊張が走った、確実に息の根を止めたとは言っても彼女との間に決着を着けたのはまだ日の浅い出来事である、特に最終決戦で矛を交えたメリアリア達は意外そうで怪訝そうな、それでいて苦虫をかみつぶしたような面持ちとなっていたのだ。

「アウディミアに付いては、ある程度の事はフォルジュナから聞かされて知っていたとは思う。あれは言わば我等エルフ王室に連なる者のなれの果ての姿であった」

「・・・・・」

「それだけならば如何という事は無かったのだがな。あろう事か奴はある邪神と手を組んだ。・・・もう存じておるだろうがその名を“ゾルデニール”と言う」

「知っています」

 エルファサリアの言葉に蒼太がすかさず反応した、“自分達もまた、ソイツを追っているのです”とそう続けて。

「ゾルデニールは時空を超えて様々な世界線に影響を及ぼしている大邪神です、それも極めて悪質な影響を。正直に申しましてコイツを討ち滅ぼさなければ世界に安寧が訪れる事はありません!!!」

「・・・そうだ」

 蒼太の言葉にエルファサリアがゆっくりと頷いて見せた。

「彼の正体に付いては諸説あるが、まだ判然としていないのが現状なのだ。だがな、その目的の一つが漸くにして今回、垣間見えて来たのだよ・・・」

「・・・・・。それとアウディミアとどのような関係があるのですか?」

「まあ、聞くが良い。白き風の導き手とその仲間達よ・・・!!!」

 そう言ってエルファサリアが語り始めるモノの元々、ゾルデニールは神々に対してかつて自分達を裁いて根絶やしにした事に対する復讐心と憤怒を抱き続けていたのであるが、そんな中で唯一彼が信仰していた神がいた、それが異神ガドラと呼ばれる高次元のエネルギー生命体である。

 “彼”は他の神々とは違って猜疑心が強い上にどちらかと言えばニヒルで皮肉屋であり、また他者の長所よりも短所を見抜く事に長けていた存在だった、そんな“彼”はある時、神々が他の天体からやってきた霊的人類と共同で“原生人間”を誕生させようとした際に一目見るなり“失敗作だ”との断を下したのである。

 “どうせコイツらは大した存在ではない”、“こんな下等な生命種達に宇宙の秘儀や真理等を理解出来よう筈が無いではないか”と並み居る神々や意識体達の前で捲し立てていったのだが、そんな訳であったから当然、彼は生み出された人間達を否定的疑惑の眼差しで以て見つめ続け、それどころか時折、悪鬼や魔物等を嗾(けしか)けさせたり、或いは自らそう言った連中を率先して纏め上げては積極的に迫害を加えていったりもしたのだ。

 彼等はそれを“人間達の数が増えすぎると困るから間引いているのだ”、とか“人間達を鍛えてやっているのだ”と平然とのたまっていた有様であったがそもそも論として元から“人”と言うモノに対してそれほど興味も無ければ愛情も湧かなかったガドラは人間を出来損ないの集団生命、もっと解りやすく言ってしまえば“ゴミ”としか思っていなかったのであって、間違っても彼等にも心があって日々、彼等なりに一生懸命に生きているのだ、と言う基本的な事柄に目を向けようとはしなかったのであるモノの、そんなガドラに。

 ある日、遂に天罰が下される時がやって来た、人間達の必死で懸命な祈りが神々の心を揺さ振らせ、決起させた、彼等は共同でガドラの力を奪って拘束し、その神霊を神界の果ての“滅亡の岩屋戸”と呼ばれる場所へと封印する事に成功したのである。

 当然、ガドラも彼の眷族や軍団も非常に激しく抵抗したが結局、地球の神々のみならず宇宙の深淵を司る超神までもが人間達の側に着いた事で形成は一気に人間側に傾き、協力者達も軒並み根絶やしにされてここに神界まで巻き込んだ争乱は一応の終結を見たのだ。

「これは後で判明したことなのだがな。そのガドラはどうやら人の発する憎悪や憎しみ、怒りや不安、恐怖に絶望と言った、所謂いわゆる“マイナスエネルギー”を吸収する事で己の力に変えていたらしいのだ。そう言った目的もあって人間達に敢えて非道な行為を繰り返していたらしいのだが・・・。その所業が余りにも目に余るようになっていったのでな、遂に裁きが下される結果となったらしい」

「・・・・・」

「話はここからだ。ガドラは封印はされたモノの未だに虎視眈々と復活の機会を窺っていてな、そしてそんなガドラに何とかして接触を試みようとしているのがゾルデニールと言う輩なのだ。奴は元々、この地球上に跋扈していた恐竜達が人間ばりの知性と肉体を持って派生して来た“レプティリアン”と言う種族の魂魄、・・・まあ要するに魔霊だがな?それが力を蓄えたなれの果てだ。その目的は・・・」

「宇宙の生み出した最高傑作にして神々の愛の結晶である人間達を霊的に堕落させ尽くすこと・・・!!!」

「・・・なんだ、蒼太よ。君は知っていたのか?」

「大概の事は憶測の域を出ませんが・・・。私も時空を幾つか渡り歩いて来ておりますので、そう言った類いの情報は多少なりとも持ってはいますよ・・・!!!」

 エルファサリアの言葉に蒼太が応じてメリアリアを、そして次いでノエルを見るが彼は以前、この事に付いて二人に説明を聞かせた事があったから、暗に“知っているよな?”と了解を求めたのである。

「そうか、しかしそれを知っているのならば話が早い。実はゾルデニールは神々の鼻を明かす目的もあって人間族の精神を自堕落な無法状態に持って行こうとしているのだが・・・。この事はガドラ復活にも大いに関係がある事なのだ、何しろ我々エルフもそうだが人間と言うのは特に、神々が自身の分け御霊までをもお与えになられて創造された種族なのだからな。つまり何が言いたいかと言うと人間族と言うのは表面的には千差万別あれども心の奥底では誰もが皆、愛や真心を知っている存在、と言う事になるのだよ。・・・例え上手く言葉に直せなくとも、な?それはこの宇宙で一番確かで大切なものなのだ。それが如何に悪鬼や魔物共の介入があったにせよ、霊的に堕落してただただ生存本能や生理的欲求の赴くままに生きるようになれば、そしてその結果として快楽や享楽にのみどっぷりと耽るようになればそれは間接的に“神々と言えども本能や快楽には勝てない”と言う事を証明する事になるし、それは=で“ガドラはやはり正しかった”と言う事をハッキリと宣言する事が出来る、と言う意味をも持って来る訳だ・・・!!!」

「この宇宙で一番、確かで大切なものである愛や真心。そしてそれらの完璧なる体現者である神々の分霊を持っている筈の人間が快楽や享楽に耽って己を忘れ、精神の根幹を為すモノを見失い果ててしまったとしたら、それは確かに=で“この宇宙で最も確かで大切なモノとは何だったのか”と言う議論にまで発展しかねない事態を引き起こす事になりますからね。それだけではありません、もし人が霊性さや愛を捨てて肉欲や本能のみに従って生きるようになってしまえば愛よりも更に強いモノがある、と言う事を事実として全生命体に突き付ける事にもなります。それに人間達は勿論、その創造主である神々も、はたまた宇宙そのものもまた完璧では無かった、と声を挙げる事も出来る、と言う訳ですか・・・」

「それだけではない。ゾルデニールはな、かつての自分達の名誉、立場を回復させたくて必死なのだ。自分達の存在や主張に正当性が無いと、必ずや宇宙の浄化能力が働いて自らがいずれ誰かに討伐されてしまう事を知っているのだよ」

 “そもそも論として”とエルファサリアは続けた、“彼等は人間並みの知性と思考能力、身体機能を有しはしたが如何せん精神面が狂暴で悪辣な恐竜のままだったんだ”とそう言って。

「彼等はどうやって毎日を生きていたか、知っているか?食べたい時に食べ、眠りたい時には眠り、遊びたい時には遊ぶ。それだけならば人畜無害だったから何てことは無かったのだが徐々に自身の中から湧き上がって来る生理欲求のままに放蕩三昧を繰り返すようになって行ったんだ、“もっと食べたい”、“もっと眠りたい”、“もっと遊びたい”。それに加えて“他者との交わり”にも熱中していった・・・」

「・・・つまり“もっとしたい”、“もっとやりたい”、“我慢が出来ない”となっていったんですね?」

「些か下品な言い回しになるがな?」

 エルファサリアは自嘲気味に笑うとまた話を続けていった。

「蒼太よ。あんまり公の場でこう言う事を言いたくは無いが私にも性欲と言うのはある、無論君にもあるだろう?しかしそれは本来ならば生理的機能に由来する、正常な一欲求に過ぎん・・・!!!」

「良く解りますよ、陛下」

 それを聞いた蒼太は此処ぞとばかりに捲し立てた。

「要するに“やりたい”と言う事なのでしょう?レプティリアン達もきっとそうだったのではないでしょうか、食べたい時には食べて、眠りたい時には寝て、やりたくなったらやる。でもね、私の場合は彼等とは根本的に違うんですよ・・・」

「・・・・・?」

「“やりたい”の前に“相手の事が好きだから”と言う言葉が付くんです・・・。それにちょっと興奮したとかそんなレベルではなくて、本気でやりたくなる位にまで気持ちや気分が昂ぶれる相手って、気持ちが乗る相手って実は限られているじゃないですか。・・・陛下だってそうでしょう?」

 “誰彼構わず、と言う訳では決して無いはずです”と改めてメリアリア達を見渡しながらそう告げる青年に対してエルファサリアは満足そうに微笑みながら応えた、“勿論だ”とそう告げて。

「私も、それは自分の事だから良く解るのだが彼等はどうやらそうでは無かったらしい。性的興奮をもよおしたのなら取り敢えずその場にいる相手と所構わず誰彼とも選ばず交わり続ける。そんな事を繰り返していたらしいのだがその内に段々と増大する本能的欲望に歯止めが効かなくなっていってな?“異性ならば何でも良い”と言ってとうとう他種族にまで手を出すようになっていったらしいのだ」

「・・・つまり“異種姦”を始めたんですね?それはとても罪深い事です。この宇宙に存在している全生命は全て“創造”や“根本創造神”を始めとする高次元の超神達によって創造が為されていますが彼等は生命を産み出す際にその存在にとって最適な、もっと言ってしまえば一番相応しい愛の形、バランスの取れた姿をイメージしてそれを実行するのだそうです。“異種姦”と言うのはそれを力尽くで無理矢理に乱す行為です、つまり宇宙から与えてもらえた最愛の顕現としての自己の形容や存在の有り様を全て否定して捨て去るようなモノなのです。だから絶対にやってはいけないんですよ」

「そうだ、まさにその通りだな。だがレプティリアン達はそれをやり始めた、つまりは禁忌に手を出してしまったのだ。そうやって生み出されたモノはキメラのようなバケモノだったそうだが情欲的本能に支配された彼等はそれらにすら手を出して行き、結果として地球上は真っ当な生命に交じって異様な生物が蠢く地獄と化してしまったのだ!!!」

 “それで”とエルファサリアは言った、“神々は決断を下した”と。

「清らかな地球環境を再生させる為に、宇宙の深淵を司る超神に祈りを捧げて“大禊ぎ”をする事としたのだ。勿論、その前にレプティリアン達には何度も警告を行ったのだそうだが彼等はただの一度たりともそれを真に受けて己を省みる事は無かったらしい・・・」

「・・・・・」

「そしていよいよ計画は実行に移された、他の天体から来ていた人類達の力も借りてな。正しい生き様を歩んでいた人々や動植物を出来る限りに船に乗せて地球を離れさせたらしい、その直後の事だ。君達が“ユカタン半島”と呼んでいる場所に巨大隕石が激突したのは・・・!!!」

「・・・生命の大量絶滅が起こったのですね?」

「そうだ。だがこれは神々にとっても他にもう、どうにもならなかった事柄だそうなのだ。とにもかくにもそれで一旦はレプティリアン達共々、彼等に端を発するキメラのようなバケモノ達も粉々に打ち砕かれて根絶やしにされ、時間は掛かったが地球は正常なる生命環境を回復させる事に成功した。だが・・・」

「レプティリアン達の肉体は滅んでも魂は残ってしまった、と言う訳ですか?」

「うん・・・」

 そこまで話すとエルファサリアは少し疲れたのか玉座の背もたれに体を預けて“フゥ・・・ッ!!!”と小さく息を付く。

「彼等は全く納得が行っていなかったそうだ。“なんで自分達が滅ぼされなければならなかったのか!!!”、“自分達は生物として完璧だった、正義を為していたのだ”とそうのたまってな。要するに自分達が取り返しの付かない程の過ちを犯してしまった、等とは毛ほども思っていなかったらしい・・・」

「・・・・・」

「その中でも特に、後に“ゾルデニール”となる霊魂は神々に対して反逆を、もっと言ってしまえば復讐を企てたのだそうだ。完璧なる愛の体現者である神々の分け御霊を持っている人間達を快楽漬けにして霊的に堕落させ、自分自身とは何者か、と言う事を完全に見失わせてみせてやろう、とな。後は君が言った通りだよ蒼太、本能のままに生きる方が愛を紡いで行くよりも遥かに正しく、絶対的なモノなのだと言う事を、全宇宙に知らしめる。これこそがゾルデニールの最終目標なのだが・・・」

 とそこまで話したエルファサリアが、不意に声を落として言った。

「これには続きがあったんだよ、蒼太。そして皆の者、心して聞くように。何しろゾルデニールはその為にアウディミアと結託したのだからね!!!」

 そこまで述べるとまた一息付いてから、エルファサリアは話を始めた。

「アウディミアは単なる女魔術師としてのみならず“超時空召喚術士”としても並外れた才能を有していた。これは要するに次元を超えて自分よりも遥かに高位な存在にまでアクセスする事が可能な能力者の事を、我が国ではそう呼び顕しているのだが・・・」

「・・・かつて神から聞いた事がある」

 するとそれを黙って聞いていた蒼太が口を開いた。

「通常、神々とは感謝しか無い存在でありその世界の扉を開くためには自身も“無償の感謝”を捧げられるようにならなくてはならない、と。しかし稀に怒りや憎しみ等のネガティブな感情が極まってその結果、闇の存在と交わってしまう能力者がいる、と。多分それがアウディミアだったのですね?」

「そうだ」

 エルファサリアが満足そうに頷いた。

「アウディミアは元々、ガドラを信仰していた。何故かと言えばそれは彼の者がこの世界に住まうエルフ族や人間達に対して、その本性や存在価値に付いての疑惑の眼差しを向けていたからに他ならない」

「・・・・・」

「アウディミアは“黒雲の魔女”となる前にエルヴスヘイムや人間族の世界を何度か旅して回っていたそうだがそこで両者の至らなさ、言葉は悪いが特に人間と言う生き物の卑劣さ、醜さ、残虐さを嫌という程見せ付けられたそうでな。彼女は“人間は不要な存在である”、いやそれどころかむしろ“いてはいけない存在なのだ”との判断を下してこの“エルヴスヘイム”に帰って来たらしい。それから神話を研究し始めてガドラの事を調べ上げ、自身の精神的拠り所としていたようだ。・・・その言動に色々と思う所があったのだろう」

「“人間は失敗作である”との異神の言葉は、ともすれば彼女のような“人間不要論者”達にとっては希望に映ったのでしょうね。奴からしてみれば“神が言っているのだから間違い無い”とそう思い込みたかったし、喧伝もしたかったのでしょうが・・・」

「そのガドラにアウディミアはかなり深く入れ込んでいたそうでな。ある時同じようにガドラを奉賛していたゾルデニールと同調した事で初めて互いの存在を認識したらしいのだ」

「それから交流が始まった、と・・・?」

「そうだ。と言ってもそこは疑い深くて狡猾な両者の事だから、互いに心を許すような事はせずにあくまで表面上は“同盟関係”を装って相手を利用していたらしい・・・」

「・・・・・」

「ただもっとも。そのアウディミアはある意味ではゾルデニール以上の闇を纏っていた、と言っても良かったのだ。彼女はまずは手始めにここ、“エルヴスヘイム”を陥落させて闇に包み込み、力を蓄えた上で人間世界にも打って出て、そこも暗黒に閉ざそうとしていた。やがてやって来る“裁きの時”をより完璧なる形で迎える為にな・・・」

「・・・“裁きの時”?」

「そうだ・・・!!!」

 そこまで話し終えた時にエルファサリアは神妙な面持ちとなって蒼太に告げた、“異神ガドラを復活させて超時空召喚し、この3次元世界に顕現させようとしていたのだよ”とそう続けて。

「ガドラを!!?正気か、アウディミアは!!!」

「そうだ。まさに狂気の沙汰以外の何ものでもない。そんな事をすればとんでも無い事になるであろう事は召喚術士ともなれば理解が及んでいたであろうに・・・」

「・・・・・」

「・・・ね、ねえあの。蒼太」

 すると“何という事なんだ・・・!!!”と言い捨てて驚愕と困惑の顔付きのままに俯いてしまった彼に対して愛妻であるメリアリアが横からソッと声を掛けて来た。

「どう言う、事なの?私達にも解るようにちゃんと説明して?」

「そうですよ、蒼太さん!!!」

「ガドラと言う異質な神をこの世に呼びだそうとしていた事までは理解できたが・・・。それは一体、どう言う事に繋がるのだ?」

 それに今度はアウロラとオリヴィアの両名も乗っかって来るモノの、そんな彼女達をチラリと一瞥した後で蒼太は難しい顔のまま話を始めた。

「ガドラと言うのが本来であれば大魔王クラスのバケモノが信仰していた存在だ、と言うのは解ったね?」

「・・・う、うん。話を聞いていて、何となく」

「ガドラは恐らく“天津神”の一柱なんだ、つまりは“天上の神々”の一員なんだよね。だとすると当然の事として9次元以上の存在だ、と言う事になるのだけれども・・・。そう言った高次元世界の存在にとっては時間と空間の在り方が僕達3次元世界の存在達とはまるで違っているんだよ」

「そうだ・・・」

 そんな彼の話を受け継ぐ形でエルファサリアが再び口を開いた。

「空間は超越的なモノとなって距離は意味を成さなくなり、また時間はその存在を中心とした球体状の領域内に過去、現在、未来が一緒くたになって存在しているのだ・・・。ありとあらゆる可能性の世界を内包したままの状態でな?それらが一気に顕現して来るとしたら、どうなるか」

「・・・少なくとも僕達の3次元世界は大混乱に陥るだろうね。いやそれどころか3次元的な時間の流れや空間連続体と言ったモノが、その概念諸共一気に崩壊してしまい、宇宙が宇宙として存在し続ける事が出来なくなってしまうかも知れないんだ。ガドラをこの世界に顕現させる、とはそう言う意味を持つ行為なんだよ」

「・・・・・っ。え、えっ!!?」

「そ、そんな・・・っ!!!」

「つまり、その・・・っ。ガドラの召喚を許した段階で此方の敗北は確定する、と言う訳か!!?」

「まず間違いなく、そうなるだろうね。“この宇宙全体が”とまではいかないだろうけれどもそれでも、ガドラの存在が影響を及ぼす事の出来る範囲にある世界は跡形も無くぶっ飛ぶ事になるだろう」

「・・・・・」

 蒼太の放ったその言葉に、その場にいた誰もが口をつぐんで沈黙してしまった、冗談では無かった、異神と呼ばれる存在に対して自分達は抗う事はおろか、戦う事すら出来ないなんて。

「・・・で、でもあの。それならばどうして私達やあなたの時は平気だったの?あなただって何度か“神人化”をしたりしていたし。それにこの前はあなたの力を借りたとは言え私達も“女神化”してアウディミアと戦う事が出来ていたわ!!?」

「・・・良く思い返して御覧よメリー。僕や君らが戦う時には常に周囲に“時空間断絶用結界”を張り巡らせていたし、それにそもそも決戦する場所が特殊な時空や異次元の中だったりしただろう?つまりは最初からこの世界の物理法則や有り様を超越した状態で僕達は戦闘を行っていたんだ、だから悪影響が無かったんだよ」

「・・・・・っ!!!」

「・・・そう言えば、確かに!!!」

「言われてみれば・・・!!!」

 メリアリアの発した問い掛けに青年が応えると、彼女と同じ疑問を抱いていたであろうアウロラとオリヴィアもそれぞれに納得した声を挙げた。

「それに僕の“神人化”はまだまだ完全なそれじゃない。“もっともっと上を目指せる”、“伸び代があるぞ”と神が仰っておられた。それに自分で言うのもなんだけれども今のままだと僕の“神威”は精々、8次元の表層までしか影響を及ぼす事が出来ないんだ。だけどガドラは違う、最低でも9次元以上の実力を持つ存在となると時空を超越した場所に揺蕩(たゆた)っているエネルギー生命体と言う事になるから殊の外始末が悪いんだよ・・・!!!」
ーーーーーーーーーーーーーー
 思った以上に長くなってしまったので一旦、ここで切ります。

 ちなみに(些か唐突で申し訳ありませんが)皆様方は結局“愛”とは何だと思われますか?

 実は“愛”とは“存在する事だ”とされているのです(それそのものが即ち“愛”なのだと)、では何故存在する事が愛なのでしょうか(以下“ポジティブな宇宙人”の人々や、とある霊的科学者から教えてもらった話に自分の考えを練り込んで理論化したモノです←信じるか信じないかはあなた次第です!!!)。

 実はこの宇宙の全ては“始原の超神”である“創造”によって創られたとされています(ちなみに“創造”が産まれる前には時間も空間も何も無く、ただ連綿とした“無”が広がっていたそうです←ある時唐突にその“無”から“有”である“創造”が産まれたと言うのです、これは無が無でいる事に堪えられずに“極反転現象”が起こった為では無いか、とも思われますがいずれにせよ“純粋にして完全なる無”が反転して産み出されて来た“創造”はそれ故に“純粋にして完全なる有”そのものだったそうです)、有の有たる“創造”は混じりっ気の無い光そのものでした、要するに“真心の化身”だったんですね(ちなみに“真心”とは雑念や妄想等の余計な不要物を全て刮ぎ落として行った結果、最後の最後で顕現する究極的にまで純化された思念エネルギーの結晶体、それそのモノに他なりません)。

 “創造”は早速、他の存在を創造する事に取り掛かりますがその際、“真心の化身”であった“創造”はそれを遺憾なく発揮して万物の生成に当たりました、即ち己の持つありったけの思念、願い、能力、エネルギーを余す事無く注ぎ込んで実体化させていったのです(ちなみに最初は自身の分身たる“根本創造神”を生み出されたそうです)、そして“根本創造神”は“創造神”を、“創造神”は“宇宙神”を、“宇宙神”は“銀河神霊”を、“銀河神霊”は“星座神霊”を、そして“星座神霊”は“各太陽系惑星神霊”をそれぞれ生み出して行きました(これらの神々やその眷族の方々が所謂(いわゆる)“天津神”と呼ばれる神々だとされています)。

 ちなみに、なのですが。

 この創造する、産み出すと言う作業は決して自分を偽ったり、誤魔化したりしていては良いモノが出来ないのです(それをやると後の物語や世界が凄く煩雑で適当なモノとなってしまいます)、それ故にまさに“一瞬の油断も隙も無く”、“滞る事無く心血を注いで”事に当たらなくてはならないのですがそれは本当に大変な苦労の連続でして自身の体力、意識力、精神力と言ったモノを極限まで消耗させては情熱を惜しみなく注ぎ込み、イメージを現実化させて行くのです(その存在に一番相応しい形容や有り様を想像して、それに命を吹き込んで行くのです)。

 そうやって自分自身の創造能力を120%フル活用させ、自分自身に誠意を尽くし切ってこそ、初めて本物が産み出されて行くのです(“創造”によって創り出された神々はだから、最初から“創造”の真心の顕現、誠実さの塊とでも言って良い存在でした←彼等は産まれながらにして“それら”を持ち合わせていたのです)。

 自分の身を削ってまで“生まれておいで?”、“ここにいて良いんだよ?”と言って他者を顕現させる行為はまさに“無償無上の奉仕”であり“完璧なる愛の体現”に他なりません、何故ならばそれは“何の見返りを求める事も恐れを抱く事も無く、どこまでもただただ一途に他者を思いやる、究極的なまでに純化された思念エネルギーの発露”それそのものであるからです(それは様々な誘惑やまやかしに打ち勝つのは勿論の事、時として自分の痛みすらモノともせずに、ただただひたすら目的の成就の為に邁進し続ける純粋なる意思そのものの働きであるとも言えます)。

 それこそが“愛”と呼ばれるモノであると私は思っているのです(要するに“人を愛する”とは=で“その人に対して真心を尽くす”と言う事であると思うのです)、そしてそんな愛が具現化した結果として生まれて来た“存在”はまさに愛そのものを体現している、と言う事が出来るし、だからこそ存在する事が即ち“愛”と同義語なのだと思うのです。

 ただ一方で私は“愛”とは=で“合い”でもあると思っているのです。

 何故ならば人が誰かと誠意を持って“愛し合う”事により二人の間で愛の光り輝きが無限にまで反復して増幅され、その強さを一層、増して行くからです(愛がより確かなモノになる、と言う事です)、そう言った意味でも“合い”なのでは無いかと思うのですけれども、皆様方はどう思われますか?

 また最後にもう一つだけ、愛を裏切ったり自身の卑劣さを誤魔化す為の、自己正当化の道具として利用したりするのは絶対にいけない事だと思います。

 これは以前聞かされた、とある夫婦の話なのですが彼等の内で妻の方が浮気をし、相手の男性との間に子供が出来てしまったそうです。

 ところがその奥さんは旦那さんに謝る所か平然と開き直り“自分が浮気をしていたこと”、“浮気相手との間に子供が出来てしまったこと”等を逆ギレしながら報告して(自分が先に旦那さんとの愛を破逆しておきながら)こうのたまったそうなのです、“自分の事を本当に愛しているのであれば、どんな私でも受け入れられる筈だ”と。

 そして子供を自分達夫婦の子供として認知して育てろ、等と凄い剣幕で迫って来たそうなのですが、私はこれは無いだろうと思います、だって自分がまず以て旦那さんとの愛を(即ち“合い”を、もっと言ってしまえば“縁”や“それまで培って来た関係性”、“真心”と言ったモノを全て)徹底的なまでに破壊して踏み躙っておきながら、その裏切った張本人に今度は確かな愛を求める、等とは何という恥知らずな人物なのでしょうか(まさに“不誠実もここに極まれり”と言った呈です)、そんな資格が本気で自分にあるとでも思っていたのでしょうか。

 私は当事者でも無ければ関係者でもありませんのでその後どうなったのかまでは解りませんが(知りたくもありませんが)多分、旦那さんは押し切られてしまったのではないか、と思います(“愛とは何か”と言う事はおろか“誠意を持って愛し合う事の大切さ”、そして何よりかによりまずもって“自分自身を愛してあげる”と言う事を解っていなかったのですね)、とても悲しくて残念な事で御座いました(皆様方もお気を付け下さいませ←こんな恥知らずな女性では無くて、是非本当に愛し合える人と巡り合って下さい、それも“愛”即ち“合い”です←“縁”と言い換えても良いかも知れませんね)。

 以上になります、物凄く駆け足で、ですけれども出来得る限り簡潔に説明をさせていただきましたが、そう言う事で御座います(ちなみに“自分を愛する”とは=で必ずしも“利己に走れ”と言っているわけではありません。どうかお考え違いなされませんようにお願い致します)。

 あと“愛とは何か”ですとか“神々に付いて”等と銘打って度々述べさせていただいておりますけれども、ハッキリと申し上げさせていただきまして私は別に怪しい宗教家でも無ければ特殊なスピリチュアルカウンセラーでもなんでもありません(些か凝り性な所がある、ただの奇人変人的一般小市民です)、お願いですから変な風に誤解をしないでいただきたいです。

 あと皆様方くれぐれも宗教にだけは絶対に手を出さないで下さいませ。あれは人間を霊的に堕落させる特効薬のようなモノらしく、神々がとてもお怒りになられるのだそうです。
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