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神世への追憶編

第二次エルヴスヘイム事件7(旅路の仲間とエルフの祈り)

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 エルフ族の聖集落である“アイリスベルグ”の中心的存在たる“長老の木”、その巨大で太い古木の内部は芯の部分を除いて空洞になっており、中央部分には青く輝く半透明な、不思議な螺旋階段が備え付けられていたモノの、まだ幼い頃に此処(ここ)に来た際に。

 蒼太にはエルヴスヘイムのありとあらゆる物が悉(ことごと)く巨大で新鮮で荘厳に見えていた、そしてそれらは大人になった今、目の前にしてみても決して見劣りするモノでも無ければ見慣れてしまうようなモノでも無かったのである。

 小さな時分は確かに、何もかもが大きく見えるのは仕方の無い事なのだろうと青年は考えるモノの、それらを差っ引いて見たとしてでも“長老の木”は尚も青々としていて圧倒的で、それでいて厳格であり優しかった、少年期に出会った当初と何一つ、変化等していなかったそこはまるで“お帰りなさい”とでも言うかのように彼を、そしてその一行を迎え入れてくれていたのだ。

 そしてそんな長老の木から放たれている、精妙なる波動に触れた瞬間。

 青年は昔日と同じような聖なる優しさ、暖かさに包まれていたモノの今回改めて感じられたのはそれだけでは決して無くて、この御神木の奥の奥、それこそ大幹の芯やこのエルヴスヘイムの大地に張り巡らされた根本から迸り出ずる想像を絶する程に清らかで強大なる生命エネルギーの息吹、まさにそれそのものであった。

「・・・・・っ。す、すっごい波動の奔流ね?この“長老の木”って!!!」

「本当ですわね、まるで実家の家宝である“蒼水星の青煌石”に触れ合った時と同じような感慨を受けます・・・!!!」

「何処までも透明なまでに澄み渡った生気の分厚くて巨大な奔流が根本から吹き上がって枝草へと伝わって行き、外界へと放出されて行くのを感じる。ただの古木では無いぞ?これは・・・!!!」

 そんな“長老の木”の持つ破格のパワーに流石の花嫁達も愕然となってしまい、また彼女達の父親にして蒼太の岳父でもあるダーヴィデ、エリオット、アルベールの三名も、そして普段は陽気でぶっ飛んでいる筈のノエルとレアンドロまでもが思わず押し黙ってただただ瞳を大きく見開き、辺りをキョロキョロと見渡しては、その猛然たる息吹の鼓動に圧倒されつつも自らの心に飛来して来る感嘆と感激とを吟味し続けていた。

「・・・サリナ。君達エルフ族は本当に皆が高邁で清らかな一族なんだね?これほど高くて潔癖なる光を受けながらそれに押し負ける事無く自らの力に変えて尚、美しく逞しく生き続けている」

 “僕の妻達がそうだったから、尚のこと良く解るよ・・・!!!”と蒼太が彼女達への正直な感想と賛辞を贈るとサリナも、そして彼女にお付きのエルフ達もちょっぴり顔を赤らめながら、しかしそれでも落ち着いた自負を覗かせながら答えた。

「褒めてくれてどうも有り難う。だけどそれは私達だけの力では無いのよ?この国が愛と正義に裏打ちされた“正しき夢”を見る事が出来る場所だからだわ。この大地に住まう誰も彼もがそれぞれに思う存分、自由と平和を謳歌している。それはエルフが誠意と真心と真摯さとを以て自分自身と真剣に向き合い、そして己が役割を、使命を本当に一生懸命に果たしているからこそ可能な事なのよ?」

「心底羨ましいよ、サリナ。ただし一応断っておくと僕達人間族にだってそう言う人は少なからずいるよ?例えば僕の妻達がそうだ、これは僕の愛している人達だから贔屓して言っている訳じゃない。現にこの子達の解き放つ、愛情と誠意と真心の奏でる光によって僕は何度となく助けられたし、また導かれても来たんだ。逆に言えばだからこそ、君達エルフ族の事もそうだと解るんだよ・・・!!!」

「・・・・・っ。ち、ちょっとあなた!!!」

「恥ずかしいですわ・・・!!!」

「あの時は私達は、ただただ必死になって蒼太の事を心配して。それで祈り続けただけだよ・・・!!!」

「いいや、本当に凄いんだよ?この子達は。サリナだって感じているだろう、メリー達がその身に宿している恐ろしい程に高次元的で暖かな光の力の迸りを・・・!!!」

 するとそんな蒼太の言葉に“確かに”と、サリナはある種の確信を持って頷いて見せた。

「本当に、メリアリア達からは只ならぬ力を感じるわ?それも私達“エルフ族”に限りなく近い力を・・・!!!」

 “全くもうっ!!!”とサリナは心底唸って言った、“一目見た時から只者では無いと思っていたのだけれど・・・。一体、貴方達は何者なわけ?”とやや悪戯っぽくそれでいて、興味深そうにそう告げて。

「・・・・・っ。お義父さん方!!!」

「うん?」

「む?」

「どうしたんだい?蒼太・・・」

 するとそんなサリナの言葉を聞いた蒼太が何故か花嫁達にではなく、その父親であるダーヴィデ達に顔を向けた。

「サリナに、あの事を教えてもよろしいでしょうか?」

「・・・・・っ。ふーむ成る程、“あの事”をな!!?」

「ううむ・・・。いや、まだだな。まだそれについて明かすのは早い!!!」

「先ずはフォルジュナと言う方にお会い申そう。もし述べるとすればその席で、だ!!!」

「・・・・・」

 そんな伯爵達の声に頷くと、蒼太はサリナに“ゴメン、今は言えないんだ”と伝え聞かせた、“フォルジュナ様にお会いして、その席で必要があったら明かすよ・・・!!!”とそう告げて。

「だからもう少し待ってて?悪いんだけれど・・・」

「・・・・・っ。ふーん、成る程。そっちも“訳あり”って事なのね?」

 するとサリナは肩に入れた力を抜き放ちつつ、“仕方が無いか!!?”と言う顔をする。

「解ったわ、蒼太。それにとにかく先ずは大婆様に御挨拶をしなくてはね?」

 そう言うが早いかサリナは自ら集団の一歩先を進むと同時に螺旋階段をゆっくりと昇り行きその先の大広間において一行が到着するのを待ち侘びるモノの、やがてそれが果たされたのを見届けると再びそれより上階に行くための螺旋階段へと足を運んで蒼太達を誘い続ける。

 ちなみに前に一度来た事がある蒼太はこの先に何があるのか、どうなっているのかを知っていたし、そこにそれ程興味は無かったモノのそれよりも何よりも彼を驚かせたのが此処に来てからヒシヒシと感じ続けている、フォルジュナ本人の波動であった、もしかしたならフォルジュナ自身は抑えているつもりなのかも知れないけれどもそれは“眩いばかりの緑色に輝く清らかな、それでいて極めて重厚なる旋風”を纏う、とでも言えば良いのか、兎にも角にも一般のエルフ達とは一線を画する程のエネルギー量と存在感とを放っていたのだ。

「・・・・・っ!!!」

(す、凄いっ。これがフォルジュナ様の波動か、何という重厚さと完成度の高さだろう。それに、これは・・・!!!)

 蒼太が気付くが何と“長老の木”の中心部分にまでフォルジュナの波動法力が同調して入り込み、互いにエネルギーを融通しあっているのがまざまざと見て取れた、そして混ざり合った二つのオーラ量子はやがて一つに統合されて“二つの存在”の間を循環し、それぞれが或いは天空へ、また或いは大地へと向けて放出され続けていたのである。

(成る程、つまりは“長老の木”とフォルジュナ様は表裏一体の関係なんだな?“長老の木”はその生命力をフォルジュナ様に分け与え、反対にフォルジュナ様は“長老の木”全体の波動や様子をチェックして調整する役割を担っている。と言う訳か・・・!!!)

 そこまで蒼太が考え付いたその直後、一行は最上階にある狭い通路に幾つもの部屋が並んでいる場所へと案内された、確かそこの三番目の扉がフォルジュナのいる部屋へと通じていた筈である、青年がそう記憶を蘇らせているとー。

 果たしてサリナは彼の思惑通りにその中から迷わず三番目の入り口の前で立ち止まり、ドアノブに手を掛けては此方(こちら)を見る。

「みんな、此処(ここ)に大婆様がいらっしゃるわ?くれぐれも粗相の無いようにしてね・・・?」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「解ったよ、サリナ・・・」

 その言葉に蒼太は花嫁達を始めとする、その場にいた全員を振り返って目で合図をすると彼等もまた頷いて返して来た、どうやらみんな準備は万端であるらしい。

「サリナ、僕達は平気だよ?早くフォルジュナ様に会わせてくれ・・・!!!」

「・・・・・っ!!!」

 それを聞いたサリナが静かに“コクン”と頷くと、先ずはコンコンと扉を片手でノックした、そしてー。

「大婆様、サリナです。蒼太達をお連れしました!!!」

 そう言った途端にー。

「お入りなさい・・・」

 少し高い声域の透き通った感じのする、しかし落ち着き払った若々しい女性の声が響き渡って来て、それが蒼太達の耳を擽(くすぐ)った。

「・・・・・っ!!?え、えっ?」

「今の声が、フォルジュナ様・・・?随分と若々しいお声をなされておりましたけれども・・・!!!」

「“大婆様”等と言うモノだから、てっきりお年を召しているのかと・・・!!!」

 感激と意外さのあまりに口々に騒ぎ立てる花嫁達に対して蒼太は“しっ”と人差し指を口に立てて“静かに!!!”とジェスチャーで合図を送る、そしてー。

 もう一度だけ、サリナを見やると彼女もまた頷きつつ“入ります!!!”と返答を行ってそのまま扉をガチャリと開けた、するとー。

 その先には黄金色に輝く不思議な空間が広がっていた、室内は思っていた以上に広くて天井の中央部分が天窓になっておりそこからは“長老の木”の豊かな枝葉がハッキリと見渡す事が出来たのであるモノの、そんな広間の最奥部分にー。

 台座になっている場所があってそこに左右対称(シンメトリー)で鼻筋の通っている、整った美しい顔立ちをした一人の麗しいエルフが腰掛けていた、年は30代半ば位か全身からは凜とした気高さが漂っており、切れ長な瞳は濃い群青色で長くてサラサラな煌めくプラチナブロンドの髪の毛は、ちょうどメリアリアを思わせる。

「ようこそおいで下さいました。私(わたくし)はここ“アイリスベルグ”、延いては“長老の木”を預かるフォルジュナ、“ファールディア・エズワイス・ジュセリアーナ”と申します・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「フォルジュナ様・・・!!!」

 その神々しさに、皆が思わず跪いて頭を垂れる中、蒼太だけは懐かしさと親密さから立ったままで思わず声を掛けてしまう。

「久し振りです、蒼太。と言ってもたかだか十数年前の事で、私(わたくし)達にとってはつい昨日の出来事の様に感じますけれどもあなた方にとっては相当に、長い年月だったのでしょう?」

「長かったです、本当に。色々な事がありました、そしてごめんなさい。僕はあの時は、礼儀も何にも知らない子供でしかありませんでした・・・!!!」

 それを聞いたフォルジュナはニッコリと微笑んで彼に返した。

「良いのですよ?蒼太。と言うよりもあなたは詫びる事等何一つとして致してはおりません。詫びなければならないのはむしろ私(わたくし)達の方です、あなたの事を唐突に呼び付けてしまったり、大変な事をお願いしたりして本当に申し訳ありませんでした。ここに謝罪致します・・・」

「フォルジュナ様、とんでもない。むしろ僕は・・・!!!」

「それと同時に改めて、有り難う御座いました。あなたの働きのお陰でここ、エルヴスヘイムは闇に飲まれずに済んだのです。全エルフ達に代わって御礼を申します・・・」

 そう言って台座に座ったままとは言えども頭(こうべ)を垂れて来るフォルジュナに対して一呼吸、置いて落ち着いた蒼太は自身も改めて彼女へと向き直る。

「フォルジュナ様、貴女は素晴らしい方です。本当に高次元的な存在なのですね?今の僕ならばそれがハッキリと解ります。貴女はこの“長老の木”そのものであり、また“長老の木”は貴女そのものなのだ、と言う事が・・・!!!」

「・・・・・っ!!!」

「・・・・・っ!!?」

 するとそれを聞いたサリナ達、お付きのエルフ族の間にざわめきが起こり、続いてある種の緊張が走る。

 それだけで明らかに彼女達が動揺した事が見て取れたモノの蒼太は別段、慌てる素振りを見せずに平然とフォルジュナに相対していた。

「・・・流石ですね、蒼太。良く気が付きました」

「フォルジュナ様、本当は力を抑えてらっしゃるのでしょう?何となくですけれども、貴女に意識を向けると足下に広がる非常に高貴で重厚なる力の波動を感じます・・・!!!」

「・・・・・」

 するとフォルジュナはそれにはうんともすんとも答える事無くただただ黙って目を瞑り、何事か思案している様子であった、実はこの時、彼女は蒼太に感心していたのである、自分の本質を感じ取り、尚且つ物怖じもせずにそれを言ってのける感性と勇気と知恵と、そしてその的確さとに。

(何とこの子は鋭くて、何と賢い子なのだろう。私(わたくし)の力の源を瞬時に見極めて見せたばかりか、その膨大さまで言い当てるとは・・・!!!)

 フォルジュナはここに来てやはり、サリナの言う通りで“この青年達が今一度、このエルヴスヘイムの地に招かれたのは天啓なのかも知れぬ”と感じ始めていた、無論、蒼太達をこの場に召喚させしめたのは、術を使ったのはサリナにしてもあくまでもフォルジュナの意思であったが正直な話、最初は彼女は人間族を再びこの地に招き入れる事にはそれ程乗り気では無かったのである。

 それは別段、蒼太が気に入らなかったからでは決して無くて、要するに“自分達の問題を他種族の力を借りて解決”する事に対して多大なる抵抗があったからなのだが、あまり他力ばかりを宛てにすれば思わぬ所で大きなしっぺ返しが来る事を、エルフとして13000歳生き続けて来たフォルジュナは嫌と言う程思い知っており、それを懸念したのであった。

 それに。

(この前にやって来た“蒼太”と言う少年に、私達は何一つとしてしてあげる事が出来なかった。大事な場面は結局は神の御加護を得たあの子が、それでも全て独力で切り開いて来たに過ぎない。あの時の申し訳なさと罪悪感は決して忘れまい・・・!!!)

 それがあったからであるモノの今、その蒼太本人を目の前にして自分が隠している真実を突かれた瞬間、“やってみても良いかも知れない・・・!!!”と言う思いが、まざまざと彼女の胸の内に芽生え始めていた、“彼等にもう一度だけ、この世界の命運を預けて託して、賭けてみようではないか”と言う、ある種の勝負師的な心根も併せ持っていたフォルジュナは自分が受けた“お告げ”の内容も相俟って、この目の前にまで罷り越して来た人間族にいつの間にか段々と、全てを委ねる心持ちになっていたのだ。

「・・・良く、気付きましたね?蒼太。どうやら本当に、随分と力を付けたのですね。見違える様に立派になりました」

「・・・・・」

「実を言いますと最初はね?蒼太。私(わたくし)は今回の件について、あまり乗り気ではなかったのですよ?別にあなたの、いいえ“あなた方”の事について思う所があったからではありません。その逆です蒼太、前にあなたがやって来た時、私(わたくし)達は出来得る限りの送り物と助言を与えてあなたを送り出しました。ですが私(わたくし)達がやれた事はそれだけで後は何一つとして手出しが出来ませんでした、本当に申し訳無く思っています・・・!!!」

「そんな、フォルジュナ様。自分は・・・!!!」

「それだけではありません」

 そう言って自らの言葉に対して何事か反応し掛けた青年を制するように、フォルジュナは気持ちを吐露し続けていった。

「蒼太。助けを請うておいてなんなのですが、実はあなたにもまだ言っていない事があります。それは“カルマ”と“因果応報”と言うモノです。ちなみに“カルマ”とは言わずとも知れた“自身の罪咎”に端を発する人生的重荷のことで、これに対して“因果応報”とは“やった事はやり返される”と言う宇宙の真理を指し示します。この二点を考慮した場合、正直に申し上げてあまり他種族の力を借りて問題を解決する事は望ましい事では無いのです。何故ならばそれをやってしまいますと、その時は無事に済んでも後で“もっと巨大な災い”、或いは“難しい試練”に遭遇しかねないのです。自分達の力で問題をクリアーした訳では無いのでその分の“カルマ”が上乗せされて来てしまうのですね、私はそれを懸念しておりました・・・」

 “ですが”とフォルジュナは続けた、“今のあなたを見ている内に私も確信が持てました”とそう言って。

「あなたが、いいえ“あなた方”が今一度此処に来たのも何かの縁。まさに天のお導きの為せる業なのでしょう、今ではまざまざとそう感じ取っております。どうか勇者よアウディミアを虚空の彼方へと葬り去ってこの地に、人々に、そして地球に再びの安らぎを・・・!!!」

「私からもお願いするわ?蒼太・・・!!!」

 するとそれまでやや緊張した面持ちで事態の推移を見守り続けて来たサリナが、その空気を破って一新させるかのように口を開いて嘆願して来た。

「正直に言って、私もあなたがこのタイミングで私達の“エルヴスヘイム”に繋がったのは運命だったと思っているの。本当に“天のお導き”だとね、だからこそ。だからこそ何とかお願いします。伝説の白き風の導き手の蒼太よ、今一度我等に力を貸して欲しいの!!!」

「・・・・・」

「蒼太よ、どうかお願いします。私(わたくし)達を助けて下さい!!!」

「蒼太っ!!!」

「蒼太様っ!!!」

「何卒よろしくお願い致しますっ!!!」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・頭を、お上げ下さい。フォルジュナ様、そしてサリナや皆さん方も!!!」

 するとそれまで沈黙していた蒼太が此処で始めて口を開いた。

「僕で良ければ、いいえ“僕達”で良ければ幾らでも力になります・・・。ね?メリー、アウロラ、オリヴィア!!!」

「ええっ!!!」

「はいです!!!」

「待ち侘びていたぞ、その言葉を!!!」

 そう言って青年から声を掛けられた三人の美女達がその場でスクッと立ち上がり、フォルジュナへと視線を向ける、蒼太の妻達であるメリアリア、アウロラ、オリヴィアだ。

「お任せ下さい、フォルジュナ様。必ず希望の光を成就させて見せます!!!」

「私(わたくし)達の全力を以て、使命を果たして参りますわ!!!」

「騎士としての矜持に賭けて、必ずや貴女の御期待に添うことをお約束致します!!!」

「見事だ、流石は私達の娘達とその婿だけの事はある!!!」

「私達の目は間違ってはいなかった。無論、娘達の感性と愛情もね!!!」

「その言葉を待っていたぞ?婿殿、そして娘達よ!!!」

 彼女達がフォルジュナへとそう宣誓するのを聞いて更には、岳父であるダーヴィデ達迄もが起立して存在感と己の意思とを顕わにする。

「私達も、出来るだけの事はしよう。こう見えても昔は退魔士として慣らしたモノだ!!!」

「呪術ならば私に任せたまえ、簡単な占い等も出来るぞ!!?」

「私は剣で婿殿の役に立とうではないか。我が家に伝わる古流剣術の冴えを見せてやるとしようか!!!」

「あははは・・・」

 そう言っていきり立つ義父達相手に取り敢えず笑って対応する蒼太であったが彼等の波動や動き、そして立ち振る舞いや気迫を鑑みるに一応、戦力として見做して良さそうである、今は一人でも多くの人手が欲しい時でもあり旅路を共にするのにしくはない。

 問題は。

「ち、ちょっとソー君。ソー君たら!!!」

「僕達の事も忘れずに紹介してくれ!!!」

 そう、この二人組であった、即ちノエルとレアンドロのペアであったのだが彼等の処遇に付いて本格的に検討しなくてはならなかったのだ。

「フォルジュナ様・・・」

 蒼太が改めてエルフ達の長に話し掛けた。

「差し当たって今度は僕達からお願いがあるのですが・・・。この世界に一緒に連れて来られたカッシーニ邸やお付きのメイドの皆さん、そしてここにいるノエルさん達をエルフの皆様方で預かっていただきたいのです。・・・何とかお願い出来ませんか?」

「えええ~っ∑(OωO; )∑(OωO; )∑(OωO; )」

「そ、蒼太。君は・・・っ!!!」

「彼等の気持ちは、僕達にも良く解るのです。しかし“アウディミア征伐”の旅路は危険と困難に満ち溢れています、一般人を連れて行く訳には行かないのです・・・!!!」

「フォルジュナ様、お願いしますっ。この二人を守って欲しいのっ!!!」

「ノエルさん達の身柄を此方(こちら)で保護してあげて下さい!!!」

「何とかお願い出来ませんでしょうか、フォルジュナ様!!!」

「・・・・・」

 何事か言い掛けたノエルとレアンドロを制しつつ、蒼太がそのまま言葉を続けると再び花嫁達までもが彼に援護射撃を繰り出して行った、戦闘の厳しさ、苦しさを知っている彼等からしてみれば、何の能力も持たない一般人はモンスター達との戦いの場に於いては腹ぺこなライオンの前に放り出された肉塊に等しいモノでありやはり、なるべくならば連れて歩きたくは無い、と言うのが本音であったのだ。

「ノエルさん、レアンドロ。解ってくれよ二人とも、アウディミア征伐の旅路に連れて行ったら君達は確実に戦闘に巻き込まれる事になる。何の力も無い君達はモンスター達の格好の餌食(えじき)になるだけだ、それを本当に解っているのか?」

「ぐ、ぐぬぬぬ・・・っ(-_-#)(-_-#)(-_-#)」

「そ、それは・・・っ!!!」

「実際に殺す気満々で向かって来る相手から剣や斧を向けられる時の恐怖を知っているか?切られた時の痛みや苦しみを君達は味わった事があるのか?多分無いだろう、そんなこと。君達がこれから赴こうとしているのはそんな世界なんだぞ!!?」

「ノエル、レアンドロもお願いだから聞き分けてちょうだい。貴方達まで危険に晒させる訳には行かないの!!!」

「お二人のお気持ちは、私達にだって解りますけれど。でもだからと言ってとてもの事、連れて歩く訳には参りませんわ!!!」

「それにプリンセス方にももっと別の御役目と立場とがお有りになる筈です。それらをどうか弁えていただきたい!!!」

「ム、ムムムッ。ムキィ~ッp(`Д´)qp(`Д´)qp(`Д´)q」

「ううう~・・・っ!!!」

「・・・・・」

 “申し訳無いのですが・・・”と、それまで彼等の話を黙って聞いていたフォルジュナが、蒼太達に申し述べて来た、“この二人を保護する事は出来ません・・・!!!”とそう言って。

「ええ・・・っ!!?」

「そんな・・・っ!!!」

「嘘でしょうっ!!?」

「フォルジュナ様・・・っ!!!」

「私(わたくし)には見えるのです、彼等二人があなた方の冒険の旅路に必ずや必要となる姿が。道中は勿論、大変なことになるでしょうがどうか一緒に連れて行ってあげて下さい・・・」

 フォルジュナはそう言うと、蒼太達が何事か告げる前に更に続けてこう述べた、“もしこの二人に何かあったならその時の責任は私(わたくし)が取りますから・・・!!!”と。

「だからお願いします、この二人にも冒険の旅路を共にする許可を。これは私(わたくし)からのたっての願いでもあります・・・!!!」

「ううーん・・・!!!」

「あ、あなた・・・?」

「蒼太さん・・・?」

「蒼太・・・?」

「ソー君!!!」

 するとそんなフォルジュナからの請願に、思わず腕組みをして唸り声を挙げ、押し黙ってしまう蒼太の元へとノエルが縋り付いて来る。

「お願いよ~、ソー君。私なんでもする~っ(≧Д≦)(≧Д≦)(≧Д≦)って言うかこのままじゃノエル、死んでも死にきれないわぁ~っ。化けて出てやるんだからぁ~っ(>o<)(>o<)(>o<)」

「頼むよ蒼太、なるべく迷惑は掛けない様にするから・・・」

 それまでの自分達の必死な言葉が利いたのか、微妙に態度と言い回しを変えて懇願して来るノエルとレアンドロをジッと見ていた蒼太であったがやがて“はあぁ~っ!!!”と溜息交じりに“解った、解ったよ!!!”と頷いて見せた。

「一緒に、連れて行く事にする・・・!!!」

「ええぇー・・・っ!!?」

「嘘でしょう・・・!!?」

「そ、蒼太。君は・・・っ!!!」

「いやっほーいっ!!!」

 そんな夫の言葉に改めて驚愕の表情を浮かべる三人の花嫁達とは対照的に、ノエルはまるで我が世の春が来たかのような心地となってその場で飛び跳ねて見せた。

「キャーッ、キャーッ!!!これから“冒険の旅路”が始まるのねぇ~っヾ(≧∇≦)ヾ(≧∇≦)ヾ(≧∇≦)冒険王ノエル様の記念すべき第一歩目が此処からスタートするんだわぁ~っ\(^o^)/\(^o^)/\(^o^)/」

「なんだよ、“冒険王”って・・・っ!!!」

「ち、ちょっと。あなた・・・!!!」

「良いんですか?蒼太さん・・・!!!」

「残ってもらった方が、良いんじゃ無いのか?蒼太・・・!!!」

 “まったくもう・・・!!!”とぶつくさ言いつつ、それでもどうにも不安とある種の疑惑の目をノエルへと向ける青年に対して花嫁達が尚も詰め寄るが、彼女達とて先程のフォルジュナの言葉を無視する訳には行かなかったのであり、どうしたモノかと思案に暮れていたのだ。

「やむを得ないよ、みんな。ここは連れて行くしかない、何故ならばフォルジュナ様はさっき“この二人は此処(ここ)では保護できない”とハッキリと仰(おっしゃ)った。と言う事はもう、この二人に何があっても“アイリスベルグ”のエルフ達は助けたり、守ったりはしてくれないだろう。そう言う事なんだろう?サリナ・・・」

「ええ・・・」

 青年が妻達を説得する傍らで、確認のために自身へと向けて放ったその言葉にサリナが申し訳なさそうに頷いて答えるモノの彼女に言わせればここ“アイリスベルグ”でのフォルジュナの意思と判断と言うのは殆ど絶対と言って良く、余程の事が無い限りかは拒絶する訳にはいかなかった。

「本当に申し訳無いんだけれど・・・。それでも大婆様が“保護しない”と仰(おっしゃ)られた以上は私達はどうする事も出来ないわ!!!」

「・・・・・」

「うう~ん・・・っ!!!」

「そ、そんな・・・っ!!!」

「何という、事だろうか・・・っ!!!」

 その言葉に再び愕然となる花嫁達に“だからどうしようもないんだよ”、“みんなお願いだから解っておくれよ・・・!!!”と自身も申し訳なさとやるせなさとを彼女達に抱きつつも必死に説得を行い続ける夫の姿に最初はそれでも頑(かたく)なだったメリアリア達の態度と心情にも漸く変化が現れて来た。

「う、うーん・・・。まあ、あなたがそこまで言うんだったら・・・!!!」

「それなら私(わたくし)達も何とかやってみせますわ、どうしようもありませんモノね・・・!!!」

「ここ一番と言う時に活躍出来ないのであれば、私達の方が何のためにここにいるのか。解らないと言うモノだからな!!!」

 口々にそう言って頷き合うメリアリア達を見て蒼太も漸く心が晴れたと言うべきか、決心を付ける事が出来た、“必ずやメリアリア達を守る”と言うだけでなく“いいや、ノエルさん達もお義父さん達も絶対に守り抜くんだ!!!”と己の心に宣誓を新たにする。

「解りました、フォルジュナ様。ノエルさん達は連れて行きます。そして必ずここに連れて帰って来ます!!!」

「この人が、夫がその気になっているんだもの。妻である私達もしっかりしなくちゃどうしようもないわ!!?」

「必ずやプリンセスとプリンスを御守り申し上げて見せますわ!!?」

「まさに私達の覚悟と腕とが試される、と言う訳だな?段々心が昂ぶって来たぞ!!?」

「みんな・・・っ!!!」

 “有り難う・・・っ!!!”と花嫁達に礼を述べると蒼太は彼女達を一人ずつ抱き締めては口付けをして、その可愛らしい頭部を優しく手で撫で上げて行った。

「あん・・・っ!!!も、もうあなたったら・・・っ❤❤❤」

「は、恥ずかしいです。蒼太さん・・・っ❤❤❤」

「て、照れると言うか。中々に慣れないモノだな、こう言うのは・・・っ❤❤❤」

 そう言って顔を赤らめそれでも嬉しそうなそれでいて、ホウッとした様な笑みを浮かべて己を見詰める妻達に対して自身もまた笑顔で応えると、今度は蒼太はノエル達へと向き直った。

「フォルジュナ様のお言葉だから連れては行くし、そう決めたからにはちゃんと守るけど・・・。ただし本当に危険な旅路になるよ?覚悟は良いね?」

「うんうん、任せて?全然オッケーッ(≧▽≦)(≧▽≦)(≧▽≦)」

「僕達ならば大丈夫だ、ちゃんと覚悟も出来てるよ!!!」

「・・・・・」

 “本当かよ・・・?”と思いつつも、取り敢えず旅路のメンバーの決まった蒼太は再びフォルジュナへと向き直り、そして今度は改めて自分の妻達や家族達、そしてノエル達を彼女達エルフ族へと紹介していった。
ーーーーーーーーーーーーーー
 そもそも論として。

 自然な成り行きでそうなったとは言えども、どうして蒼太君は“エルヴスヘイム”を再度救う決意をしたのでしょうか、そして何故、トラブルや障害が巻き起こるであろう危険な旅路に最愛の妻達を同伴させたのでしょうか。

 それは妻達に対して“いよいよとなったら一緒に死んでくれ”、“ただし絶対に君達の事は守り助ける”と言う決意をしていると共に、それを本人達にも伝えてあるからです。

 これは第三章の終盤であります“暗闇の戦闘”にてちゃんと書かれている事なのですが、この回で蒼太君はハッキリと妻達から“どうしていつも自分だけ危険な目に遭おうとするの?”、“どうして何かあったら一緒に死のうと言ってくれないの?”と懇願されます、“私達のあなたへの思いが、覚悟がその程度のモノだとでも思っているのか?”と(メリアリアちゃん達も蒼太君の自分達に対する愛情と真心は嬉しいし、とっても有り難いのですがその所為(せい)で最愛の夫である彼が危険な目に遭うのは流石に忍びないと言いますか、本心から言って嫌なのです。だから彼にその事を伝えたのです)。

 それを受けて漸くの事、彼も少しだけ目を見開いては彼女達の気持ちを汲んで行動を共にするようにしている訳です(決して分別なく妻達を危険に晒している訳ではありません)、また“エルヴスヘイムでの冒険”に関してですがこれは彼が(と言うより“彼等”が)“休暇が欲しかったから”と言うのもありますがやはり、“苦しんでいる人々をそのままにはしておけない!!!”と言う蒼太君の義侠心から出た行動です(そこにメリアリアちゃん達が乗っかって来た訳です、元々彼女達もまた、正義感と人情味に厚い子達であった事に加えて自分達も“エルフの世界”に行ってみたい、と言う思惑もあって、それで夫からの提案とその意思とを躊躇うことなく受け入れた、と言う次第です←彼女達もまた、蒼太君の事を深く愛すると同時に信頼して命を預けているので)。

 そう言う事で御座います。

               敬具。

         ハイパーキャノン。
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