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神世への追憶編
第二次エルヴスヘイム事件5(伝道師サリナと黒雲の魔女)
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第二次エルヴスヘイム事件4の“光の波動真空呪文”発動のシーンを根本から加筆修正しました(読み返してみたら“エルヴスヘイム事件8”のそれと殆ど同じ描写になってしまっていたので・・・)。
大変申し訳御座いません、以後気を付けます。
敬具。
ハイパーキャノン。
ーーーーーーーーーーーーーー
”アイリスベルグ“は王都にも近くて数ある世界の中でも比較的、平和で安寧の満ち溢れているここ、“エルヴスヘイム”に於いても特に安全で高潔な場所に位置していた、そこに多数、群生している樹齢数百年にも昇る古くて頑強なる霊樹達の中央部分には一際巨大で神聖なる大木、“長老の木”が大地に根を張り出して生い茂っておりサリナを始めとするエルフ達は皆、それら木々の幹や連枝(れんり)等を利用しては家々を建てて通路を作り、そこで森と世界と神々に感謝の祈りを捧げながら毎日の生活を営み続けていたのである。
昼間は重なり合った小枝と葉茎の間から差し込んでくる太陽光が彼女達を煌々と照り付け、夜は夜で黄金色や蒼白色の“灯火の法力”がランタンの中で輝いてはエルフ達に光をもたらし続けてくれていたのだが、そんなアイリスベルグへの道程(みちのり)を蒼太達一行は特に苦痛を感じる事無く着々と踏破して行った。
途中、予想を超える魔物の群れの襲撃に遭ったモノの蒼太の活躍でこれを撃退し、その後は特に襲い掛かって来るモンスターもおらずに彼等一団は遂に大平原を突破しては森への入り口へと到達する事が出来たのだ。
「・・・それじゃあ、つまり。エルヴスヘイムの魔物って言うのは本当に初歩的な存在ばかりなのね?」
「そうさ?魔物化した吸血コウモリやお化けミミズ、後はスライムやゴブリンの幼体なんかが単体でか、それか或いは群れを為して襲い掛かって来る程度で基本的にはそんなにヤバい奴らは居ないんだよ。だから駆け出しの冒険者達が手始めに修業を積むのには一番、都合が良い世界なんだ・・・!!!」
「改めて聞いておいて良かったですわ?それなら確かにさほどの警戒は必要無さそうですわね。勿論、だからと言って油断をしたりはしませんけれども・・・!!!」
「しかし以前、君が来た際に相手にしたのは巨大なトロールや屈強なオーク。そして凶暴化した成体ゴブリン達の群れだったと聞き及んでいたのだけれど・・・?」
「ああ、それは“カインとメイル”の二人組によって狭間の世界である“トワイライトゾーン”が開かれてしまっていたからだよ。奴等はそこから大量の魔物共をこの地に侵入させては彼方此方(あちらこちら)を荒らし回っていたのさ・・・!!!」
“そう言う意味では”と蒼太は続けた、“やはり先程襲撃して来たガーゴイル達もこの世界的に見たならかなり異質な存在だったんだ”とそう言って。
「このエルヴスヘイムは神聖とまでは行かないけれども、それでもそれなりに次元が高くて暖かな精神性に溢れる世界線なんだよ。だから本来ならば人やエルフに対してアソコまでハッキリとした敵意、害意を抱いている輩はそう易々とは入って来れない筈なのさ。それが出現した、と言う事は恐らく、何者かによってこの国の外から強制的に召喚された挙げ句に、ソイツに無理矢理使役されていた可能性が高い」
そこまで告げると蒼太は“まあ、詳しい話は”と彼女達に更に語った、“フォルジュナ様がして下さるだろう”とそう言って、視線を目の前に広がる大森林へと移して行く。
懐かしい森である、以前、自分がやって来た時と殆ど寸分も違わぬ光景と優しい生命の温もりとに溢れており、穏やかで静やかな雰囲気の波長がそこかしこから放出されていた。
ただ一点、違ったのは。
(ここはやはり、“セファタの街”に行く際に通って来た道の途中部分。“長老の木”にかなり近い場所だ、だけど変だな。前に通った時にはこの場所にこんな大平原は存在していなかった筈だけれども・・・)
そう言って一人ごちては青年が首を傾げているとー。
「へえぇっ。ここが“アイリスベルグの森”なのねぇ~っ(〃'▽'〃)(〃'▽'〃)(〃'▽'〃)とっても厳かな雰囲気のある所よねぇ~っ((((*゜▽゜*))))((((*゜▽゜*))))((((*゜▽゜*))))」
「何だか不思議な感じがするよね?“静かなる暖かさ”とでも言えば良いのかな、そんな気配を感じるよ・・・!!!」
「・・・・・」
(ふうん・・・)
“色々な生き物達が暮らしているみたいだね?”と、彼のすぐ後ろに立って感想を述べるノエルとレアンドロの二人組に対して、蒼太は胸の内で“はっちゃけた所もあるけれど、やっぱりこの二人は鈍くは無いんだな・・・!!!”と評価を改めていた、この“アイリスベルグの森”に満ち満ちる聖気を正しく感じ取る事の出来る感性と心を持っているのであれば、まあ今後も旅に同伴させておいてもそれほど問題では無いだろうが、さて。
(それにしても・・・。サリナは一体、どう言うつもりでお義父さん達まで巻き込んだのだろうか。こっちの準備が整い切るまで待ちきれなかったのだろうか、それとも別の思惑が・・・?)
「・・・なた、あなた!!!」
「あ・・・っ!!?」
そんな事を考えつつも思わず物思いに耽ろうとしていた夫を、メリアリアが優しく呼び止める。
「行きましょ?あなた。もう直ぐでその“フォルジュナ”って人に会えるんでしょう?そしたら色々と説明してもらえるわよ、きっと!!!」
「そうですよ」
するとそんな愛妻淑女(メリアリア)の言葉にアウロラやオリヴィアも続いた。
「蒼太さんのこれまでの話の内容から推測するに、多分その“フォルジュナ様”と言う方が全ての情報をお持ちになられているのだと思われます。此処(ここ)はまず、直接に会ってお話を伺いましょうよ」
「そうだ、その為に我々はここまで来たのだからな?先ずはエルフの長老にお会いして事の成り行きを説明してもらわない事には、解らない事だらけだからな!!!」
「みんな・・・っ。うん、そうだね!!!」
花嫁達からのそうした声に耳を傾けていた蒼太は“それもそうだ”と頷くと自身が先頭に立ったまま、聖集落“アイリスベルグ”へと通じる森の中の小道を切り開きながら奥へ奥へと分け入っていった、どうやらあまり手入れはされていないらしくて草花や低木樹が方々に生い茂っており、それらが道を隠してしまっていたり、塞いでしまっている場所すら存在していた。
また数百年もの年月を重ねた木々の根本は地面の上まで大きく逞しく隆起していてそれが小道全体にまで迫り出していた箇所も幾つかあり、蒼太はしかし手にした聖剣“ナレク・アレスフィア”でそれらを一つ一つ、取り除いたり、また或いは迂回したりしながらも、少しずつ少しずつ“聖集落”へと向けて皆を導き続けていったのだ。
しかし。
「ふうふう・・・っ!!!」
「はあ、はあ・・・っ!!!」
「はっ、は・・・っ!!!」
何処までも何処までも続いているかの様に思われた細くて険しいその道程に、遂にメリアリア達も息を切らし始めていた、何しろ森の中の大木の間を縫うようにして続く道である、当然平坦な土地が続くわけでも無くて急勾配の坂道やちょっとした崖になっている所を昇ったり、凹凸のある場所を踏破して行かなければならないのであった。
ちなみに。
彼女達でさえこれなのだからメイド軍団はもっと大変だった、時にはまだまだ余裕のあった蒼太が手を差し伸べたり、または背中におぶったりして木々の梢や張り出して来ていた根本を回避し、地を歩かせては一歩一歩ずつ前進を促して行くモノの、そんな中にあって。
「なんだみんな、もうバテたのか?」
「この位の道程(みちのり)ならば、若い頃にハイキングで良く歩き潰して来たモノだ!!!」
「最近の若者は体力が無くていかんな、婿殿を見習いたまえ!!!」
意外な事にと言うべきか、ダーヴィデ達義父連中もまた、蒼太と同じ様に息一つ切らさずに颯爽と動き回っては自身の妻達やメイド達に肩を貸したり、エスコートしたりして皆を支援し続けて行ったが彼等は彼等で反対に、自分達の娘婿の強靱さに内心で脱帽すると同時に賞賛の声を挙げていたのである、それというのも。
彼等は流石に“裏貴族”出身なだけあって、若い頃は密かに、かつての蒼太の様にフリーの退魔士、或いは呪術師として活動していた時期もあったのであってその為に、長じてからも普段の鍛錬と言うのは欠かさずに重ねて来たのであった、だからこそ。
その成果である体力や精神力の差がこう言う時に如実に現れて来るモノである事もよくよく思い知っていたのであって、その事でだから、自分達の娘婿にそれらの桁外れている事を認めて“大したモノだ”と舌を巻いていたのであった。
先程からの皆に対する気配りと言い、あの凄まじい迄の法力と言い、そして落ち着いて居ながらもしかし、敵に対しては勇敢に立ち向かって行く度胸と言い、なるほどこれならば、自分達の娘達が心の底から見惚れたのも頷ける、と言うモノであったし、それに何より正直に言って、その人柄や力量を改めて目の当たりにして確認する事が出来たので、ホッとしていた、と言うのが実情であったのだ。
一方で。
そんな義父達の思惑等露知らず、蒼太は蒼太で一路“アイリスベルグ”への道程(みちのり)を急いでいた、以前来た時は子供の足と未熟な能力、そして何よりこの大森林の只中をまともに歩き回った事も手伝って森を抜けるまで3日も掛かってしまったのだが今回ばかりは話は別だ、先程の大平原で見た限りでは“長老の木”は相当、近くに鎮座していたし、それに何より此処(ここ)にまでその気配が漂って来ている、もうそう遠い距離では無いだろう事が窺えるが、さて。
「・・・・・」
(呼ばれて、いるのか?じゃあやっぱり。さっき通り抜けて来たのは噂に聞いていた、“幻の揺蕩う新緑地”だったのだろうか・・・!!!)
蒼太は改めてそう感じるモノのそうで無ければとてもの事、この旅路や現象の説明が付かず、どうやらこの辺りはやはり、自分が向かった“セファタの街”への街道よりもかなり森の中心部に近い、最奥地にある事が予想出来た。
「みんな頑張って。もう少しで到着するよ?」
「はあはあ・・・っ。う、うん。頑張る!!!」
「はあっ、はあぁ・・・っ。も、もう少しですものね!!!」
「はあはあ・・・っ。ま、まだまだ余裕だよ、私達はね!!!」
そう言う花嫁達にはまだ、自分の声掛けに応える元気が残されている様子であったが後に続くメイド団にはもはやそれも無いらしく、皆俯き加減で下を向いたまま、黙って黙々と歩き続けて来ている、正直に言ってこれ以上の旅路は彼女達にはキツかろう事が容易に想像が付いたのであった。
だがしかし。
(正直、休憩を取ってあげたいのはやまやまだけど・・・。まだいつ何時、魔物の集団が襲い掛かって来ないとも限らない。だから現状ではなるべく早くに“アイリスベルグ”へと逃げ込んでしまうのが得策だろう、そこでゆっくり休憩を取った方が安全だろうな・・・!!!)
そう思い至って蒼太はだから、あくまで皆を激励しつつも一路“エルフの里”への旅路を急ぎ続けていたのだった。
「みんなゴメンね、休憩を取ってあげられなくて。本当に申し訳無いんだけれども、また魔物共に襲われるかも知れない危険性があるんだ。だからここではまだ休ませてあげられない、だけどもう、目的の場所までは距離はそんなに無い筈だからね?みんな後少しだから頑張って・・・!!!」
「はあはあ・・・っ。も、もう少しで・・・!!!」
「はあっ、はあっ。はあぁ・・・っ!!!エ、エルフ達に会える・・・!!!」
「はあはあ・・・っ。な、何としても、それまでは・・・っ!!!」
「無理はしなくて良いからね?もし気分が悪くなる様だったなら遠慮なく言って欲しいし・・・。ただ以前はこの森を抜け切るまでに3日は掛かっていたのだけれども多分、今回僕達が召喚されたのは森の奥地に数カ所点在している、とされている異次元世界との結節点。“幻の揺蕩う新緑地”と言う場所だったのだろう、サリナはちゃんと考えて僕達を運んでくれたみたいだね・・・!!!」
「はあはあ・・・っ。ま、“幻の揺蕩う新緑地”・・・?」
「以前ここに呼び出されて来た時に、旅の途中で仲間達から聞かされた事があったんだ。“アイリスベルグ”の森の奥深くにはそう言った、色々な世界と繋がっている“境界線”となっている土地があって、そこをそう呼んでいるらしいんだよ。サリナはそこへ僕達を誘ったんだ・・・!!!」
“だから”と蒼太が尚も続けて言った、“ここは長老の木の間近な場所の筈なんだ”とそう告げて。
「もう“長老の木”の気配が漂い始めている。これがして来た、と言う事は恐らく後10分も歩けば“アイリスベルグ”に到着するよ?そうしたら皆で思いっ切り休もう、冷たくて美味しいお水も飲めるしね。そこまでの我慢だ!!!」
「はあはあ・・・っ。う、うん。解ってるわ・・・!!!」
「はあっ、はあっ。はあぁ・・・っ!!!わ、私達ならば大丈夫です・・・!!!」
「はあはあ・・・っ。そ、そうだぞ?蒼太。私達はこれ位でへばったりはしないからな・・・!!!」
「・・・・・っ。解った、だけど本当に無理になったなら迷わず言ってね?お義父さん達は大丈夫ですか?」
「ああっ。私達ならば心配は要らないよ・・・!!!」
「あと10分で到着か、待ち遠しいモノだな・・・!!!」
「一番最初が肝心だからな。礼儀を失わない様にせねば・・・!!!」
そう応える伯爵連中はまだまだ余裕がありそうであり、また花嫁達も何とか付いて来られている、メイド達はかなり疲労困憊の様だがこの分であれば多分、大丈夫であろう。
そこまで見立てた蒼太が更にもう一歩、前に向かって歩み出そうとした瞬間だった。
懐かしくも優しい気配が漂い始めて来て思わず彼の足が止まるがそれは間違いなく、蒼太の知っている人物のモノだった、忘れもしないサリナのそれだ。
「・・・・・っ!!?」
(迎えに来て、くれたのかな・・・?)
蒼太がそんな事を考えていると、その直後に。
少し向こうの木陰から此方(こちら)へと向けて歩み寄ってくる数人分の波動と足音が響き始めて来て、思わず全員がその方向を向いて身構えるが、果たしてー。
「蒼太?蒼太なの・・・っ!!?」
「サリナ・・・!!!」
そこには所々にプロテクターの様なモノが付いている、緑色に輝く服を着て背中に銀色の弓矢を背負った長身美形で耳の長い金髪蒼眼の女性が5名程立っていた。
その中央部分にいた人物と、蒼太は面識があった事から思い切って“彼女”へと向けて呼び掛けを行ってみたのであるモノの、すると“彼女”、即ちサリナは成長した蒼太をキチンと本物だと見分けてくれて、言葉を返して来てくれたのである。
「蒼太!!?凄い、本当に久し振りね。って言うか滅茶苦茶イイ男になってるじゃないの、驚いちゃった!!!」
「あはは・・・っ。褒めすぎだよサリナ・・・!!!」
そう言って暫しの間、挨拶を交わしつつも雑談に花を咲かせる二人であったがやがて蒼太が自身の直ぐ傍らにいた花嫁達に目配せをして彼女達を前面へと呼び出して行く。
「サリナ、僕の奥さん達だよ?右からアウロラ、メリアリア、そしてオリヴィアだ。以前来た時に少しだけだけど話した事があっただろう?」
「あらっ!!?」
そう言って紹介された三人の花嫁達に対してサリナは整ってはいるモノの屈託の無い笑顔を向けて、慇懃に会釈する。
「よろしくね?アウロラ、メリアリア、オリヴィア。私はサリナ、サリアルジュナ・エスメル・メラニー。サリナって呼んで!!?」
「・・・・・っ!!?え、ええっ。よろしくねサリナ。私の名前はメリアリア、メリアリア・サーラ・アヤカベ・デ・カッシーニよ!!!」
「初めまして、サリナさん。私はアウロラ・オレリア・アヤカベ・ド・フォンティーヌと申します・・・!!!」
「オリヴィア・イネス・アヤカベ・ド・フェデラールだ。以後お見知り置きを・・・!!!」
それに対して三人もまた礼儀を尽くして返答を行うモノの、先ずは自分の花嫁を紹介し終えた蒼太は続けて召喚に巻き込まれる形で一緒にこの世界へと飛ばされて来てしまっていたノエルやレアンドロ、そして自身の義父義母達の紹介を行って、彼等をサリナに引き合わせて行く。
「お初にお目に掛かる、私はメリアリアと蒼太の父親でダーヴィデと申します。此方は妻のベアトリーチェ。どうかよしなに・・・!!!」
「同じく、アウロラと蒼太君の父親でエリオットと申します。此方は私の妻でシャルロット伯爵夫人。どうぞお見知り置き下さい!!!」
「同じく、婿殿とオリヴィアの父親でアルベールと申す者。こっちは我が妻のアリーヌと申します、以後末永くお願い致したい!!!」
「あはは・・・っ。皆凄いわね、錚々たる顔触れだわ!!?」
サリナは心の底から喜んでくれている様子であり、そしてそれはメリアリア達もまた同様であった、それはそうだろう、伝説のエルフ達との邂逅を果たせたのみならず、彼女達と誼を結ぶ事が出来たのだから。
しかも、である、サリナは些かも人間に対して害意や偏見を抱いておらずに、キチンと心の籠もった対応をしてくれるのである、その点も良い意味で彼女達の関心を買っていたのだ。
ところで。
「サリナ、早速だけれども教えてくれ。一体、エルヴスヘイムに何が起きているんだ?」
「蒼太・・・」
すると蒼太の発したその言葉に、俄(にわか)にサリナの笑顔が掻き消えて、暗く沈んだ表情へと変貌を遂げてしまう。
どうやらただならぬ出来事が起こっている様だと感じた蒼太はつい、今し方自分達の体験した戦闘に付いて語って聞かせる事にした。
「一見すると、今までのエルヴスヘイムと変わりは無さそうなんだけれども・・・。実はここに来るまでの間にモンスター達の襲撃を受けたんだ」
「・・・・・っ。うん、知ってる。大婆様の“透視術”でずっと皆の事は見ていたから!!!」
「それだけじゃあ無い、“ガーゴイル”の集団に襲われる前に、僕はもっとハッキリとした邪悪な者の波動を感じた。それもかつてのカインやメイル達のよりも遥かに醜悪で残虐で強力なヤツを、ね?一体、あれらはなんなんだい?」
「・・・・・っ、そこまで気付いてくれていたなんて。本当に成長したのね蒼太、ビックリしちゃったわ!!!」
“そこまで気付いていたのならば、話はうんと早くなるわ?”と最終的にはそう結んで顔を上げたサリナの面構えからは悲壮感よりももっと何か、切羽詰まった様な危機感を感じるモノの、蒼太がそんな事を考えているとー。
「詳しい話は“長老の木”の“中央の間”において、フォルジュナ様から為されると思うのだけれども・・・。この国は今、大変な事態に陥ってしまっているのよ?あなたの感じた“邪悪なる者”の仕業によってね・・・」
「・・・・・」
「・・・・・?」
「邪悪なる者・・・?」
サリナが意を決した様に口を開くが蒼太がそれに応える代わりに花嫁達が“何事だろう?”と言った表情で言葉を発し、固唾を呑んで見守っているとー。
漸くサリナが続けて言った、“黒雲の魔女の所為なのよ!!?”とそう告げて。
「・・・・・っ。“黒雲の魔女”?」
「そうよ?黒雲の魔女“アウディミア”。それが今、このエルヴスヘイムの大地を海を、そして空を不安と恐怖と混沌とに陥れている存在の名前なの!!!」
大変申し訳御座いません、以後気を付けます。
敬具。
ハイパーキャノン。
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”アイリスベルグ“は王都にも近くて数ある世界の中でも比較的、平和で安寧の満ち溢れているここ、“エルヴスヘイム”に於いても特に安全で高潔な場所に位置していた、そこに多数、群生している樹齢数百年にも昇る古くて頑強なる霊樹達の中央部分には一際巨大で神聖なる大木、“長老の木”が大地に根を張り出して生い茂っておりサリナを始めとするエルフ達は皆、それら木々の幹や連枝(れんり)等を利用しては家々を建てて通路を作り、そこで森と世界と神々に感謝の祈りを捧げながら毎日の生活を営み続けていたのである。
昼間は重なり合った小枝と葉茎の間から差し込んでくる太陽光が彼女達を煌々と照り付け、夜は夜で黄金色や蒼白色の“灯火の法力”がランタンの中で輝いてはエルフ達に光をもたらし続けてくれていたのだが、そんなアイリスベルグへの道程(みちのり)を蒼太達一行は特に苦痛を感じる事無く着々と踏破して行った。
途中、予想を超える魔物の群れの襲撃に遭ったモノの蒼太の活躍でこれを撃退し、その後は特に襲い掛かって来るモンスターもおらずに彼等一団は遂に大平原を突破しては森への入り口へと到達する事が出来たのだ。
「・・・それじゃあ、つまり。エルヴスヘイムの魔物って言うのは本当に初歩的な存在ばかりなのね?」
「そうさ?魔物化した吸血コウモリやお化けミミズ、後はスライムやゴブリンの幼体なんかが単体でか、それか或いは群れを為して襲い掛かって来る程度で基本的にはそんなにヤバい奴らは居ないんだよ。だから駆け出しの冒険者達が手始めに修業を積むのには一番、都合が良い世界なんだ・・・!!!」
「改めて聞いておいて良かったですわ?それなら確かにさほどの警戒は必要無さそうですわね。勿論、だからと言って油断をしたりはしませんけれども・・・!!!」
「しかし以前、君が来た際に相手にしたのは巨大なトロールや屈強なオーク。そして凶暴化した成体ゴブリン達の群れだったと聞き及んでいたのだけれど・・・?」
「ああ、それは“カインとメイル”の二人組によって狭間の世界である“トワイライトゾーン”が開かれてしまっていたからだよ。奴等はそこから大量の魔物共をこの地に侵入させては彼方此方(あちらこちら)を荒らし回っていたのさ・・・!!!」
“そう言う意味では”と蒼太は続けた、“やはり先程襲撃して来たガーゴイル達もこの世界的に見たならかなり異質な存在だったんだ”とそう言って。
「このエルヴスヘイムは神聖とまでは行かないけれども、それでもそれなりに次元が高くて暖かな精神性に溢れる世界線なんだよ。だから本来ならば人やエルフに対してアソコまでハッキリとした敵意、害意を抱いている輩はそう易々とは入って来れない筈なのさ。それが出現した、と言う事は恐らく、何者かによってこの国の外から強制的に召喚された挙げ句に、ソイツに無理矢理使役されていた可能性が高い」
そこまで告げると蒼太は“まあ、詳しい話は”と彼女達に更に語った、“フォルジュナ様がして下さるだろう”とそう言って、視線を目の前に広がる大森林へと移して行く。
懐かしい森である、以前、自分がやって来た時と殆ど寸分も違わぬ光景と優しい生命の温もりとに溢れており、穏やかで静やかな雰囲気の波長がそこかしこから放出されていた。
ただ一点、違ったのは。
(ここはやはり、“セファタの街”に行く際に通って来た道の途中部分。“長老の木”にかなり近い場所だ、だけど変だな。前に通った時にはこの場所にこんな大平原は存在していなかった筈だけれども・・・)
そう言って一人ごちては青年が首を傾げているとー。
「へえぇっ。ここが“アイリスベルグの森”なのねぇ~っ(〃'▽'〃)(〃'▽'〃)(〃'▽'〃)とっても厳かな雰囲気のある所よねぇ~っ((((*゜▽゜*))))((((*゜▽゜*))))((((*゜▽゜*))))」
「何だか不思議な感じがするよね?“静かなる暖かさ”とでも言えば良いのかな、そんな気配を感じるよ・・・!!!」
「・・・・・」
(ふうん・・・)
“色々な生き物達が暮らしているみたいだね?”と、彼のすぐ後ろに立って感想を述べるノエルとレアンドロの二人組に対して、蒼太は胸の内で“はっちゃけた所もあるけれど、やっぱりこの二人は鈍くは無いんだな・・・!!!”と評価を改めていた、この“アイリスベルグの森”に満ち満ちる聖気を正しく感じ取る事の出来る感性と心を持っているのであれば、まあ今後も旅に同伴させておいてもそれほど問題では無いだろうが、さて。
(それにしても・・・。サリナは一体、どう言うつもりでお義父さん達まで巻き込んだのだろうか。こっちの準備が整い切るまで待ちきれなかったのだろうか、それとも別の思惑が・・・?)
「・・・なた、あなた!!!」
「あ・・・っ!!?」
そんな事を考えつつも思わず物思いに耽ろうとしていた夫を、メリアリアが優しく呼び止める。
「行きましょ?あなた。もう直ぐでその“フォルジュナ”って人に会えるんでしょう?そしたら色々と説明してもらえるわよ、きっと!!!」
「そうですよ」
するとそんな愛妻淑女(メリアリア)の言葉にアウロラやオリヴィアも続いた。
「蒼太さんのこれまでの話の内容から推測するに、多分その“フォルジュナ様”と言う方が全ての情報をお持ちになられているのだと思われます。此処(ここ)はまず、直接に会ってお話を伺いましょうよ」
「そうだ、その為に我々はここまで来たのだからな?先ずはエルフの長老にお会いして事の成り行きを説明してもらわない事には、解らない事だらけだからな!!!」
「みんな・・・っ。うん、そうだね!!!」
花嫁達からのそうした声に耳を傾けていた蒼太は“それもそうだ”と頷くと自身が先頭に立ったまま、聖集落“アイリスベルグ”へと通じる森の中の小道を切り開きながら奥へ奥へと分け入っていった、どうやらあまり手入れはされていないらしくて草花や低木樹が方々に生い茂っており、それらが道を隠してしまっていたり、塞いでしまっている場所すら存在していた。
また数百年もの年月を重ねた木々の根本は地面の上まで大きく逞しく隆起していてそれが小道全体にまで迫り出していた箇所も幾つかあり、蒼太はしかし手にした聖剣“ナレク・アレスフィア”でそれらを一つ一つ、取り除いたり、また或いは迂回したりしながらも、少しずつ少しずつ“聖集落”へと向けて皆を導き続けていったのだ。
しかし。
「ふうふう・・・っ!!!」
「はあ、はあ・・・っ!!!」
「はっ、は・・・っ!!!」
何処までも何処までも続いているかの様に思われた細くて険しいその道程に、遂にメリアリア達も息を切らし始めていた、何しろ森の中の大木の間を縫うようにして続く道である、当然平坦な土地が続くわけでも無くて急勾配の坂道やちょっとした崖になっている所を昇ったり、凹凸のある場所を踏破して行かなければならないのであった。
ちなみに。
彼女達でさえこれなのだからメイド軍団はもっと大変だった、時にはまだまだ余裕のあった蒼太が手を差し伸べたり、または背中におぶったりして木々の梢や張り出して来ていた根本を回避し、地を歩かせては一歩一歩ずつ前進を促して行くモノの、そんな中にあって。
「なんだみんな、もうバテたのか?」
「この位の道程(みちのり)ならば、若い頃にハイキングで良く歩き潰して来たモノだ!!!」
「最近の若者は体力が無くていかんな、婿殿を見習いたまえ!!!」
意外な事にと言うべきか、ダーヴィデ達義父連中もまた、蒼太と同じ様に息一つ切らさずに颯爽と動き回っては自身の妻達やメイド達に肩を貸したり、エスコートしたりして皆を支援し続けて行ったが彼等は彼等で反対に、自分達の娘婿の強靱さに内心で脱帽すると同時に賞賛の声を挙げていたのである、それというのも。
彼等は流石に“裏貴族”出身なだけあって、若い頃は密かに、かつての蒼太の様にフリーの退魔士、或いは呪術師として活動していた時期もあったのであってその為に、長じてからも普段の鍛錬と言うのは欠かさずに重ねて来たのであった、だからこそ。
その成果である体力や精神力の差がこう言う時に如実に現れて来るモノである事もよくよく思い知っていたのであって、その事でだから、自分達の娘婿にそれらの桁外れている事を認めて“大したモノだ”と舌を巻いていたのであった。
先程からの皆に対する気配りと言い、あの凄まじい迄の法力と言い、そして落ち着いて居ながらもしかし、敵に対しては勇敢に立ち向かって行く度胸と言い、なるほどこれならば、自分達の娘達が心の底から見惚れたのも頷ける、と言うモノであったし、それに何より正直に言って、その人柄や力量を改めて目の当たりにして確認する事が出来たので、ホッとしていた、と言うのが実情であったのだ。
一方で。
そんな義父達の思惑等露知らず、蒼太は蒼太で一路“アイリスベルグ”への道程(みちのり)を急いでいた、以前来た時は子供の足と未熟な能力、そして何よりこの大森林の只中をまともに歩き回った事も手伝って森を抜けるまで3日も掛かってしまったのだが今回ばかりは話は別だ、先程の大平原で見た限りでは“長老の木”は相当、近くに鎮座していたし、それに何より此処(ここ)にまでその気配が漂って来ている、もうそう遠い距離では無いだろう事が窺えるが、さて。
「・・・・・」
(呼ばれて、いるのか?じゃあやっぱり。さっき通り抜けて来たのは噂に聞いていた、“幻の揺蕩う新緑地”だったのだろうか・・・!!!)
蒼太は改めてそう感じるモノのそうで無ければとてもの事、この旅路や現象の説明が付かず、どうやらこの辺りはやはり、自分が向かった“セファタの街”への街道よりもかなり森の中心部に近い、最奥地にある事が予想出来た。
「みんな頑張って。もう少しで到着するよ?」
「はあはあ・・・っ。う、うん。頑張る!!!」
「はあっ、はあぁ・・・っ。も、もう少しですものね!!!」
「はあはあ・・・っ。ま、まだまだ余裕だよ、私達はね!!!」
そう言う花嫁達にはまだ、自分の声掛けに応える元気が残されている様子であったが後に続くメイド団にはもはやそれも無いらしく、皆俯き加減で下を向いたまま、黙って黙々と歩き続けて来ている、正直に言ってこれ以上の旅路は彼女達にはキツかろう事が容易に想像が付いたのであった。
だがしかし。
(正直、休憩を取ってあげたいのはやまやまだけど・・・。まだいつ何時、魔物の集団が襲い掛かって来ないとも限らない。だから現状ではなるべく早くに“アイリスベルグ”へと逃げ込んでしまうのが得策だろう、そこでゆっくり休憩を取った方が安全だろうな・・・!!!)
そう思い至って蒼太はだから、あくまで皆を激励しつつも一路“エルフの里”への旅路を急ぎ続けていたのだった。
「みんなゴメンね、休憩を取ってあげられなくて。本当に申し訳無いんだけれども、また魔物共に襲われるかも知れない危険性があるんだ。だからここではまだ休ませてあげられない、だけどもう、目的の場所までは距離はそんなに無い筈だからね?みんな後少しだから頑張って・・・!!!」
「はあはあ・・・っ。も、もう少しで・・・!!!」
「はあっ、はあっ。はあぁ・・・っ!!!エ、エルフ達に会える・・・!!!」
「はあはあ・・・っ。な、何としても、それまでは・・・っ!!!」
「無理はしなくて良いからね?もし気分が悪くなる様だったなら遠慮なく言って欲しいし・・・。ただ以前はこの森を抜け切るまでに3日は掛かっていたのだけれども多分、今回僕達が召喚されたのは森の奥地に数カ所点在している、とされている異次元世界との結節点。“幻の揺蕩う新緑地”と言う場所だったのだろう、サリナはちゃんと考えて僕達を運んでくれたみたいだね・・・!!!」
「はあはあ・・・っ。ま、“幻の揺蕩う新緑地”・・・?」
「以前ここに呼び出されて来た時に、旅の途中で仲間達から聞かされた事があったんだ。“アイリスベルグ”の森の奥深くにはそう言った、色々な世界と繋がっている“境界線”となっている土地があって、そこをそう呼んでいるらしいんだよ。サリナはそこへ僕達を誘ったんだ・・・!!!」
“だから”と蒼太が尚も続けて言った、“ここは長老の木の間近な場所の筈なんだ”とそう告げて。
「もう“長老の木”の気配が漂い始めている。これがして来た、と言う事は恐らく後10分も歩けば“アイリスベルグ”に到着するよ?そうしたら皆で思いっ切り休もう、冷たくて美味しいお水も飲めるしね。そこまでの我慢だ!!!」
「はあはあ・・・っ。う、うん。解ってるわ・・・!!!」
「はあっ、はあっ。はあぁ・・・っ!!!わ、私達ならば大丈夫です・・・!!!」
「はあはあ・・・っ。そ、そうだぞ?蒼太。私達はこれ位でへばったりはしないからな・・・!!!」
「・・・・・っ。解った、だけど本当に無理になったなら迷わず言ってね?お義父さん達は大丈夫ですか?」
「ああっ。私達ならば心配は要らないよ・・・!!!」
「あと10分で到着か、待ち遠しいモノだな・・・!!!」
「一番最初が肝心だからな。礼儀を失わない様にせねば・・・!!!」
そう応える伯爵連中はまだまだ余裕がありそうであり、また花嫁達も何とか付いて来られている、メイド達はかなり疲労困憊の様だがこの分であれば多分、大丈夫であろう。
そこまで見立てた蒼太が更にもう一歩、前に向かって歩み出そうとした瞬間だった。
懐かしくも優しい気配が漂い始めて来て思わず彼の足が止まるがそれは間違いなく、蒼太の知っている人物のモノだった、忘れもしないサリナのそれだ。
「・・・・・っ!!?」
(迎えに来て、くれたのかな・・・?)
蒼太がそんな事を考えていると、その直後に。
少し向こうの木陰から此方(こちら)へと向けて歩み寄ってくる数人分の波動と足音が響き始めて来て、思わず全員がその方向を向いて身構えるが、果たしてー。
「蒼太?蒼太なの・・・っ!!?」
「サリナ・・・!!!」
そこには所々にプロテクターの様なモノが付いている、緑色に輝く服を着て背中に銀色の弓矢を背負った長身美形で耳の長い金髪蒼眼の女性が5名程立っていた。
その中央部分にいた人物と、蒼太は面識があった事から思い切って“彼女”へと向けて呼び掛けを行ってみたのであるモノの、すると“彼女”、即ちサリナは成長した蒼太をキチンと本物だと見分けてくれて、言葉を返して来てくれたのである。
「蒼太!!?凄い、本当に久し振りね。って言うか滅茶苦茶イイ男になってるじゃないの、驚いちゃった!!!」
「あはは・・・っ。褒めすぎだよサリナ・・・!!!」
そう言って暫しの間、挨拶を交わしつつも雑談に花を咲かせる二人であったがやがて蒼太が自身の直ぐ傍らにいた花嫁達に目配せをして彼女達を前面へと呼び出して行く。
「サリナ、僕の奥さん達だよ?右からアウロラ、メリアリア、そしてオリヴィアだ。以前来た時に少しだけだけど話した事があっただろう?」
「あらっ!!?」
そう言って紹介された三人の花嫁達に対してサリナは整ってはいるモノの屈託の無い笑顔を向けて、慇懃に会釈する。
「よろしくね?アウロラ、メリアリア、オリヴィア。私はサリナ、サリアルジュナ・エスメル・メラニー。サリナって呼んで!!?」
「・・・・・っ!!?え、ええっ。よろしくねサリナ。私の名前はメリアリア、メリアリア・サーラ・アヤカベ・デ・カッシーニよ!!!」
「初めまして、サリナさん。私はアウロラ・オレリア・アヤカベ・ド・フォンティーヌと申します・・・!!!」
「オリヴィア・イネス・アヤカベ・ド・フェデラールだ。以後お見知り置きを・・・!!!」
それに対して三人もまた礼儀を尽くして返答を行うモノの、先ずは自分の花嫁を紹介し終えた蒼太は続けて召喚に巻き込まれる形で一緒にこの世界へと飛ばされて来てしまっていたノエルやレアンドロ、そして自身の義父義母達の紹介を行って、彼等をサリナに引き合わせて行く。
「お初にお目に掛かる、私はメリアリアと蒼太の父親でダーヴィデと申します。此方は妻のベアトリーチェ。どうかよしなに・・・!!!」
「同じく、アウロラと蒼太君の父親でエリオットと申します。此方は私の妻でシャルロット伯爵夫人。どうぞお見知り置き下さい!!!」
「同じく、婿殿とオリヴィアの父親でアルベールと申す者。こっちは我が妻のアリーヌと申します、以後末永くお願い致したい!!!」
「あはは・・・っ。皆凄いわね、錚々たる顔触れだわ!!?」
サリナは心の底から喜んでくれている様子であり、そしてそれはメリアリア達もまた同様であった、それはそうだろう、伝説のエルフ達との邂逅を果たせたのみならず、彼女達と誼を結ぶ事が出来たのだから。
しかも、である、サリナは些かも人間に対して害意や偏見を抱いておらずに、キチンと心の籠もった対応をしてくれるのである、その点も良い意味で彼女達の関心を買っていたのだ。
ところで。
「サリナ、早速だけれども教えてくれ。一体、エルヴスヘイムに何が起きているんだ?」
「蒼太・・・」
すると蒼太の発したその言葉に、俄(にわか)にサリナの笑顔が掻き消えて、暗く沈んだ表情へと変貌を遂げてしまう。
どうやらただならぬ出来事が起こっている様だと感じた蒼太はつい、今し方自分達の体験した戦闘に付いて語って聞かせる事にした。
「一見すると、今までのエルヴスヘイムと変わりは無さそうなんだけれども・・・。実はここに来るまでの間にモンスター達の襲撃を受けたんだ」
「・・・・・っ。うん、知ってる。大婆様の“透視術”でずっと皆の事は見ていたから!!!」
「それだけじゃあ無い、“ガーゴイル”の集団に襲われる前に、僕はもっとハッキリとした邪悪な者の波動を感じた。それもかつてのカインやメイル達のよりも遥かに醜悪で残虐で強力なヤツを、ね?一体、あれらはなんなんだい?」
「・・・・・っ、そこまで気付いてくれていたなんて。本当に成長したのね蒼太、ビックリしちゃったわ!!!」
“そこまで気付いていたのならば、話はうんと早くなるわ?”と最終的にはそう結んで顔を上げたサリナの面構えからは悲壮感よりももっと何か、切羽詰まった様な危機感を感じるモノの、蒼太がそんな事を考えているとー。
「詳しい話は“長老の木”の“中央の間”において、フォルジュナ様から為されると思うのだけれども・・・。この国は今、大変な事態に陥ってしまっているのよ?あなたの感じた“邪悪なる者”の仕業によってね・・・」
「・・・・・」
「・・・・・?」
「邪悪なる者・・・?」
サリナが意を決した様に口を開くが蒼太がそれに応える代わりに花嫁達が“何事だろう?”と言った表情で言葉を発し、固唾を呑んで見守っているとー。
漸くサリナが続けて言った、“黒雲の魔女の所為なのよ!!?”とそう告げて。
「・・・・・っ。“黒雲の魔女”?」
「そうよ?黒雲の魔女“アウディミア”。それが今、このエルヴスヘイムの大地を海を、そして空を不安と恐怖と混沌とに陥れている存在の名前なの!!!」
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