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神世への追憶編

第二次エルヴスヘイム事件プロローグ

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 読者の皆様方こんにちは、ハイパーキャノンと申します。

 いつもいつも小説を読んで下さりまして誠に、誠に有り難う御座います。

 そして本当に申し訳御座いません、前回の時に“多分、これで最後です”等とのたまっておきながら結局は今回の事と相成りました、どうか御勘弁下さい、そして何卒最後までお付き合い下さいませ、どうかよろしくお願い申し上げます。

 さて、皆様方におかれましては既にご承知の事だとは思われますが、実は私と皆様方の物語であります“メサイアの灯火”の主要キャラクターの内、“蒼太君”と“メリアリアちゃん”及び“アウロラちゃん”、“オリヴィアちゃん”にはその大元となったモデルが御座います。

 今更言うまでもなく、DQ5の主人公(リュカ/アベル)とビアンカ、フローラ、デボラですがではどうして、なんで私が彼等を参考にしたのか、と言う事に付いては今回は細かい事はとやかく申しますまい(それにモデルにした、とは言っても物語や世界観、そしてキャラクター性そのものにつきましてはあくまでも私のオリジナルであります事をこの場をお借り致しまして再度、お断りさせていただきます)。

 ですがこれにはれっきとした理由は御座います(それを御説明させていただきます)、さて(これは特に主ビア派、ビアンカ派の方々にお伝えさせていただきたいのですが)、どうして私が彼等をモデルにキャラクターデザインを行ったのか、と言う事に付いてなのですが、それには当然それ相応の理由があったからです(これからする話は判りやすく纏めてありますが大部分が真実です)。

 まず一つ目は私が主ビア派であり“DQ5が好きだから“であり、またもう一つの方はこれは、突き詰めて行けば“信じて下さる方だけ信じて下されば良いお話”なのですが、実は私はかつては所謂(いわゆる)“戦国時代”に興味を持っておりました、それは果てしなく続く駆け引きと殺し合い、嘘と戦乱、奪い合い騙し合いの絶えない世界で御座いまして到底、そこに最終的な救い等は無かったのであります(しかし当時の自分はそうとは気付かず、寧ろそう言った書籍や漫画を面白半分に読み耽ったり、ゲームも随分とやり込んだりしたモノです)。

 ですがある時、ふとした事からそんな戦国時代に嫌気が差して、それで救いを求めて近くの神社にお参りに行きました(そしてそこの主祭神である“八幡神”に祈ったのです、“私は今、あることで苦しんでいます”と。“どうか私を救って下さい”、“神様どうか、私に修行を付けて下さい!!!”と)。

 その結果として私は長い苦労の末に(本当に何度となく泣き喚いて七転八倒し、恥を掻きつつ頭を抱える様な日々の果てに)、“メサイアの灯火、追憶編6”に書いてあります通り、水子霊の浄霊やその他諸々の祈りを通して“誠意を尽くすとはどう言う事か”、そしてその大切さを学んだのです(神々様が教え導いて下さったんでしょうね、今思い返してみれば)。

 それはそれまで自分の中にあった“人の心は弱いモノ”、或いは“限りあるモノ”、“人は自分自身をまず愛するモノであり、そしてそれらがぶつかり合った場合、戦いが起こるのはしょうがない事なのだ”と言う自分自身の考えを一八〇度変えてしまうモノでした(本当に目が覚める思いがしました)。

 それだけではありません、当時私が懇意にしていたあるグループ(今では到底、信じられないかも知れませんが所謂(いわゆる)正真正銘の“ポジティブな宇宙人”、要するに地球人類に肯定的な宇宙人、或いは“光の宇宙人”とでも訳していただきたいのですが、そう言った人々とコンタクトを取っていたグループがあったのです)から、とある話を聞かされました。

 それは“恋をしなさい”と言うモノでした、そのグループ曰く(もっと言ってしまえばそのグループに啓示を与えていた“宇宙人”曰く)、“例えそれが空想上のキャラクターであっても良いからとにかく本気の恋をしなさい”との事だったのです。

 それについての理由は後で教えてもらいました、“恋”とは、それも特に“誰にも言えない片思いの秘めたる恋”とは“見返りを求めない、この地球上で最も純化された愛情に近いモノであるから”との事でした(そう言う気持ちを抱いた状態にある時は、特にその人の波動が“上がりやすい”との事でした)。

 だから私はDQ5のビアンカと主人公に狙いを定め、彼等の関係性、キャラクター性を取り入れつつも物語を展開させていったのです(元々から私はあの世界共々に、彼等の事が大好きだったからです)。

 そしてその途中で(私の相談役でもある、とある霊能力者からの助言もあり)他の二人の花嫁であるフローラとデボラの事も取り入れつつ、更に話を進めてまいった訳なのでありますがここで特に(正直に申し上げさせていただきまして非常に怖いのですが)、“幼馴染派”の皆様方にはどうしても、ある“お断り”を入れさせていただかなければなりません。

 それは何か、と申しますと“私はビアンカが幼馴染だったから好きになった訳では無い”と言う事です。

 先の“読者の皆様方へ 7”でも書かせていただきましたがあんなにも一途でいじらしくて純朴で、そして可愛らしい子(ついでに言うならば“不器用で一生懸命な女の子”)はいないのです、そしてそれが“幼馴染だったから尚のこと良かった”のです(言わば“幼馴染だった事によって”、彼女の良い面がより一層“引き立った”のです)。

 勿論、他にも外見だとかシナリオ上の演出(あの世界的に言うならば“運命”)だとか色々と付加価値は付くでしょうけれども一番は間違い無く“それら”です。

 お解り頂けますでしょうか?彼女(ビアンカ)の場合、“幼馴染だから何でもかんでも尊い”のでは無いのです、寧ろあんなに可愛くて一途でピュアな子が“幼馴染だったからこそ尚のこと良かった”のです、その良さが一層、際立ったのです(解りますか?この言い方の違いと言うモノが)。

 ビアンカはビジュアルや性格性質、それに加えて特性やら運命やら、そして何よりかにより主人公に対する一途さやら想像を絶する程に深い思いやら真心やら、そう言ったモノを全て兼ね備えていたヒロインだったのです(だから未だ以てファンが大勢いるのです)、それを私はメリアリアちゃんにバックアップさせて受け継がさせました、結果は御覧の通りです(お陰様で皆様方に御支持をいただき、私みたいな小説家の端くれの様な作家に過ぎない人間の作品でも、総合評価ポイントが実に2000ポイント以上を数えるに至りました←勿論、これは私の実力と言うよりは目に見える方々、また或いは目に見えない存在の方々両方による、つまり“ありとあらゆる皆様方”の御加護、御支持、御恩情あっての事だとは思いますが)。

 そして私はこれをもう一人のヒロインであります“アウロラちゃん”にも受け継がさせました(此方の方はフローラがもし、幼馴染だったならどうだったのか、と言う事を余さず書き出したつもりです)、私は勿論、ビアンカ派です(なのでどうしても、ビアンカ中心にはなってしまいます、何故ならばあの娘の事で書きたい事がまだまだいっぱいありますから。ですけれども一方で)万が一、フローラ派の人に見られても恥ずかしくない様に自分なりに精一杯、頑張って描いたつもりではあります←ちなみにこの辺りのお話は“アウロラ・フォンティーヌ編各話”や“花嫁達の覚醒”、“VSレプティリアン戦(デュマ編)”等を読んで頂くとお解りいただけるかと思います(勿論、賛否両論は様々にあるとは思われますが)。

 なので皆様方におかれましても御意見、お叱り、お褒めの言葉等御座いましたらどうか溜め込む事無く素直に感想欄にて吐き出して頂き、私に届けて下さいますよう、伏してお願い申し上げます(その方が私としても小説を完成させる上で参考になる、と言いますか勉強になりますので)。

 どうかよろしくお願い申し上げます(最後になりますが“自分を救えるのは結局は自分でしかない”と言う事です、そして“いつか解ってくれるだろう”では無くて時には“解らせてやるんだ!!!”と言う強い意志が無ければ人には伝わらない事もある、と言う事です)、だから色々と教えて下さい、どうかよろしくお願い申し上げます。

                  敬具。

            ハイパーキャノン。
ーーーーーーーーーーーーーー
 結婚式から凡そ三ヶ月、殆ど休み無く働かされて蒼太達も些か疲弊していた、この所彼等に与えられるのは土、日、月の3日間の休暇のみ、それも隔週であってつまりはキチンとした“週休二日制”も守られてはいなかったのである。

「ポールさん、誠に言いにくい事なのですが・・・。何とか纏まった休みを下さいませんか?僕達はまだ、“新婚旅行”にも行けてはいないんですよ?」

「すまん、解ってはいるのだが今はどうにもならなくてね・・・」

 堪りかねて何度か行った直談判は悉く失敗に終わってしまい、蒼太もホトホト困り果てていた折りに、彼の元へと一条の救いの光が差し込むに至ったのであった、その救いと言うのはー。

「ソウタ・アヤカベ。メリアリア・サーラ・アヤカベ・デ・カッシーニ。アウロア・オレリア・アヤカベ・ド・フォンティーヌ。そしてオリヴィア・イネス・アヤカベ・ド・フェデラール!!!」

 日を改めて招集された四人を前にしてポール以下上層部の面々が厳めしい面構えの元、重々しく、そしてついでに言うならば勿体振って告げるに至った、“君達には四十日間の休暇を与える”と。

「正直に言ってこれは、間違い無く破格の事だ・・・」

「如何に優れた戦績を挙げ続けて来たとは言えども、本来ならば過ぎたる事なのだよ・・・?」

「君達が抜ける穴は拭いきれない程に大きくて深いモノとなる。それは解っているのだろうね・・・?」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「勿論、承知しているつもりです。ポールさん、そして“カーディナル卿”・・・」

 そう言われて、何と返答しようか窮している花嫁達に成り代わって蒼太が臆する事無く、静かな声色でしかし、堂々と答えたモノの、彼としてみればメリアリア達に圧力が及ぶ前に回答を行って上層部の持ち合わせたる注意不満を全て自分自身に集めたつもりであったのだ。

 しかし。

「蒼太君。君はこの度“英雄認定”を帝室及び国家からなされた。それはこの上ない大変な名誉なのだよ?解っているのか!!!」

「その身分を取得して後、颯爽と花嫁を3人も娶るとはどうにも解せぬタイミングの良さだ。まるで待ってましたと言わんばかりにな・・・?」

「蒼太君。君が決して遊び半分で任務を熟して来たのでは無い事は、解っているのだがね・・・。どうにも話が上手すぎる様でな・・・!!!」

「・・・・・」

 それは果たして、完全な裏目と出た、どうやら目の前にいる、ポールを始めとする“カーディナル卿”連中はこの度の蒼太以下、花嫁達の処遇に些か鼻持ちならないモノを覚えているらしかった、それは無理の無い事であっただろう、何しろそれ程までに彼等にとって、今の蒼太達と言うのは“特記戦力”に他ならないモノであり、何があっても絶対に、おいそれとは手放したくない手駒であったのだから。

 しかし。

「“アルヴィン・ノア”博士以下、名だたるハイ・ウィザードの方々から帝室に提言があったようなのだ。・・・君達には休養の刻が必要なのだとな」

「これは“今上皇帝陛下”直々のお達しでもある、“是が非でも彼等に休暇を与えてやれ”とな。なればこそ我々とても中々無下には出来ないのだがな・・・?」

「もし君達が、自主的に断りを入れるのならば話は別だ。皇帝陛下も無理強いはすまいとは思うが・・・」

  そこまで聞いたとき、蒼太達にも今回の急な招集の意味が解った、要するにハイ・ウィザードや皇帝陛下の温情を、蒼太達が自身で断った呈にしたいのだ、ポール達は。

(冗談じゃ無いぞ?今回の話、せっかくサリナやシルリマリル陛下までが動いてくれて漸く実現出来た事なんだ。第一これを棒に振る事があったなら僕達はもう、ハイ・ウィザードや皇帝陛下からの覚えが最悪のそれになる。それに何よりかによりも、僕達は誰も彼もが皆、本当に草臥(くたび)れているんだ、これ以上任務なんて出来っこない!!!)

「どうかね?我々としても優秀な隊員である君達をむざむざ手放したくはない。どうだろう?今回の件、君達から“休暇を返上する”と言ってくれれば・・・」

「・・・・・っ!!?」

「・・・・・っ!!!」

「なにを・・・っ!!!」

「お言葉ですが!!!」

 と、そこまで“カーディナル卿”達が話を進めて言った時に、いきり立って何事かを叫ぼうとした花嫁達の機先を制して蒼太が答えた。

「誠に以て申し訳ないのですが。我々四人は誰も彼も皆、著しく消耗し尽くしております。この疲れを癒すために最低でも一ヶ月から四十日間程度の休暇は必要不可欠です!!!」

 “加えて”と蒼太は続けた、実はハイ・ウィザードの方々に泣き付いたのは私自身であります“と。

「何故ならばそれ程までに我々は疲弊しておりまして、もはや下手な遠慮や謙遜等はしている余裕等は無かったのです。そこで本来ならば越権行為ではありますけれども私自らハイ・ウィザードの方々に泣き付いた、と言う訳です・・・」

「アルヴィン・ノア博士に・・・?」

「信じられん。こう言ったら何だが、あの御仁はそんな下等隊員の日常事に首を突っ込む気色等はお持ちで無いと思っていたが・・・」

「一体、どう言う魔法を使ったのかね?些か言い方が悪いが君達ごときがアルヴィン・ノア博士を動かすとは、ただ事では無いぞ・・・?」

 口々にそう言って“戸惑いを隠せない”と言う表情を見せるポール達“カーディナル卿”連中に対して蒼太は俯き加減となったままで少しだけニンマリと微笑むモノの、事の発端は今から1週間前にまで遡る。

 当時“ヴェルノ村”から帰還して来たばかりだった蒼太は花嫁達共々“カッシーニ邸”にお世話になっており、彼専用に与えられた部屋に籠もってその日も夜、寝る前に自身の愛刀にして聖剣である“ナレク・アレスフィア”に祈りを捧げていた。

 この聖剣には“魔を払い、幸運を呼び込む力がある”とされていた為に、日本からガリア帝国に帰還して来てからと言うもの蒼太は特に困った事があるとまず、自身の愛刀に祈りを捧げる様にしていたのであるモノのその時も日に日に消耗して疲弊して行く自身と妻達の事を思いつつ、刃を磨いては己の思いを向けていったのであったのだ。

 ちなみに、この剣にそうした効能がある事を幼き日の蒼太に教えてくれた人物こそが誰あろう、“アルヴィン・ノア”その人であり、以来彼は暇な時や心が昂ぶって眠れない時等は片時も離さずにこの剣を握り締め、鞘から刀身を抜いて見つめたり、手入れをする傍らで刀との対話を欠かさぬ様にしていたのであったが、そんな折り。

「・・・・・っ。君は!!?」

 中々寝付けないでいたある夜、蒼太が何時もの様に“ナレク・アレスフィア”に祈りを捧げていると程なくして刀身が淡く輝き出し、青白い光が周囲に拡散して行った。

 そしてー。

 やがてそれが落ち着くと部屋の片隅には一体の人方の光が揺らめいていたのであるモノの、それを見て“彼女”の気配を感じた瞬間、蒼太は昔を思い出しては殆ど反射的にその“揺らめく光の人型”に向かって話し掛けていた。

「サリナ・・・?ひょっとして君、サリナなのか!!?」

「誰?私を呼ぶのは、一体・・・!!!」

「僕だよサリナ、覚えてない?ほら。エルフの王様が急病に掛かってしまって君が“ジガンの妙薬”を探し求めている時に、コンタクトを取った子供がいただろう?あの時の子供が僕だよ!!!」

「・・・・・っ。て事はあなた、まさか蒼太なの!!?」

 “なんて事でしょう!!!”とサリナは叫んだ、“まさかこのタイミングで再び蒼太から連絡が入るなんて!!!”とそう言って。

「ああ、神様!!!やはりあなたは我が“エルヴスヘイム”をお見捨てにはならなかった・・・!!!」

「・・・・・っ。え、えっ?」

「蒼太!!!」

 とその人型の光が、戸惑う蒼太にズイィッと躙(にじ)り寄って来た。

「嬉しいわ、また会えて。あの時は本当に有り難う、こっちでは本当に貴男(あなた)の話題で持ち切りだったのよ?」

「そんな大それた事は、していないけれど・・・。だけど皆に喜んでもらえたのならば、良かったよ・・・。ところで」

 と蒼太が一呼吸、置いてから尋ねた。

「この、タイミング・・・?って、もしかしてまた何か“エルヴスヘイム”で起きてしまったのかい?」

「ええ、そうなのよ。とんでもない事が起きてしまったの!!!」

 サリナが緊迫した口調で叫び縋って来た。

「詳しい話は、此方(こちら)でするわ。とにかく急いで来て欲しいの!!!」

「ち、ちょっと待って!!!」

 とその言葉に流石に蒼太が待ったを掛けた、今回は前回とは違って突然消えて戻ってくる、等という騒ぎを起こす訳には行かず、それ相応の準備が必要になる。

「何とかしてあげたいのは、山々なんだけれども・・・。僕はもう子供じゃ無いんだ、結婚もしてるし社会的な立場もある。そんなおいそれとは行けないよ・・・」

「それは、まあ・・・。そうかも知れないけれども・・・。って言うか、ちょっと待って。貴男(あなた)結婚してたの?」

「そりゃ、だって・・・。あれから十数年も経っているんだもの。それに当時から好きな子や気になる人が居たしね、その子達と結ばれたんだよ!!!」

「たかだか十年ちょっとで結婚まで漕ぎ着けるなんて・・・。私なんかまだ、素敵な彼氏(ステディ)だっていないって言うのに・・・!!!」

「ま、まあそれもあるんだけれども・・・。もう一つの問題があって、正直に言ってこっちの方が深刻なんだ。それは今の仕事に関する事なんだけれども、休みが全く取れない状況なんだよ。このままじゃとてもの事、身動きなんて取れたもんじゃ無いよ・・・」

「うう~ん・・・」

 そんな蒼太の言葉に最初は嫉妬心と言うかある種の焦燥を覚えて歯軋りしていたサリナであったがすぐに何やら考え込むポーズをして頭を働かせ始めた、彼女なりに真剣に思案をているのであろう事は“ああでも無いこうでも無い”とブツブツ呟いている事からとても良く解ると言うモノだった。

「・・・ねえ蒼太」

 やがて顔を上げた彼女が導き出した答え、それこそが“上役に直談判する”と言うものであったのであるがしかし、そんな事は蒼太がとっくにやっている事であり効果は全く望めなかったのである。

「うう~ん、ダメかあぁ・・・!!!じゃ、じゃあさじゃあさ。もっと上の人に言ってみたら?」

「それが出来れば苦労は無いよ。いやもっとハッキリ言えば、面会の手続きを取れば会ってはくれるとは思うよ?だけれども此方(こちら)の話を聞いた上で、果たして動いてくれるかどうかは・・・」

 とそこまで言い進めた時に、蒼太の頭にある閃きが走った、以前に彼が“エルヴスヘイム”へと召喚されて帰還して来た当時、確か“エルフの世界が実在するかしないか”、“するとしたならどうすればそこへ行けるのか”と言う議論が王宮付きの学者やハイ・ウィザード達の間でかなり白熱して行われたのであり、膨大な量の議事録やら報告書やらが纏められた挙げ句に“帝室機密文書保管庫”の中に厳重に保管された筈だったのだ。

「彼等はエルフ達の世界について、並々ならぬ関心を持っているみたいなんだ。決して外部には漏らさない様にしているみたいなんだけどね?だからその。今回も僕が召喚される事に対するお断りを記した“エルフ王の手紙”みたいなモノがあれば、或いは何とかなるかも知れないけれども・・・」

「シルリマリル陛下の・・・!!!」

 それを聞いたサリナが今度は再び考え込む動作をして沈黙してしまうが、やがて顔を上げて蒼太に答えた。

「・・・いいわ」

「・・・・・?」

「私、王様に会ってくる!!!」

「・・・・・っ。え、えっ?ちょっと!!!」

「遅くとも其方の世界の時間で2、3日後にはお届け出来ると思うわ?だからそれまで待ってて!!!」

「お、おい。ちょっと!!!」

 “マジか!!?”と叫んで蒼太がサリナ(の光の人型)に詰め寄ろうとした次の瞬間、それが忽ちの内に掻き消えたかと思うと“ナレク・アレスフィア”の輝きも収まってしまっていた。

「・・・・・っ。はあぁ~っ!!!」

 “コンコン”と、蒼太が“参ったな・・・”と思いつつも溜息を付いていると、知っている女性達の気配が近付いてくるのを感じ取ったその直後にドアがノックされ、程なくして“ガチャリ・・・”と両開きになっている重厚なドアが開け放たれるが、するとそこには彼の愛妻であるメリアリアとアウロラ、オリヴィアが立っていた。

「あなた、どうかしたの?不思議な気配を感じて見に来たのだけれども・・・」

「何やら変わった気配でしたわね。まるで精霊でも来ていたかのような・・・」

「風の様な、花の様な不思議な感覚を覚える気配だったけれども・・・。何か心当たりは無い?」

「・・・・・っ。みんな」

 不思議そうな面持ちで口々にそう尋ねて来る花嫁達に対して蒼太が言った、“もしかしたならエルフ達の世界に行くことになるかも知れないよ?”と。

「前に話した事があったよね?僕がエルフ達の世界である“エルヴスヘイム”に召喚されて、向こうの仲間達と共に様々な冒険をして来た事を・・・」

「ええ。何度か聞いた事があったわ?」

「確かまだ子供の頃のお話でしたわよね?」

「当時はハイ・ウィザードや学者、そして私達“裏貴族”等限られた社交場を湧かせた話題だったらしいわね・・・。でもそれがどうかしたの?」

「・・・今さっき、その仲間達の内の一人から再度の“救援要請”があった」

 蒼太が視線を床に落としたまま語り続ける。

「彼女はサリナと言うんだけれども。どうやら“エルヴスヘイム”でまた何か起きたらしいんだ、それで助けに行かなくちゃ行けないんだけれども。その為には“セイレーン”の任務を休まなければならない・・・」

「・・・お休みが、もらえるの?」

「一応、先日の“ヴェルノ村”での一件の際に、なんだかんだ言って漸く、1週間程の休みをもぎ取りましたけれども・・・。あれは蒼太さんの起こした“奇跡”の“経過観察”も含めてのモノでしたからね・・・」

「一応、私達は大丈夫だけれども・・・。蒼太は大丈夫なの?疲れが溜まってるんじゃ・・・」

 心配そうな面持ちで覗き込んで来る三人達に“僕も平気さ!!!”と元気よく応じる蒼太であったが内心ではヒヤヒヤしていた、確かにこの前は何とか運良く休めたモノの、今後もこんな状態が続けば身が持たない事は疑いの余地が全く無かった、裏社会はそれ程甘い所では無かったし、それに第一セイレーンの置かれている状況は依然として厳しいモノがあったからである。

「ただ“今現在は”問題が無かったとしても、これから先もこんな状況が続くと些か困る事になるんだよね?ポールさんも人使いが荒すぎるよなぁ。まあ“人員不足”は事実なんだろうけれども・・・」

「“ヴェルノ村”でやっと1週間のお休みが取れたのは助かったけれども・・・。確かにこれから先もこれじゃあ私達いつか、立ちゆかなくなってしまうわよ?」

「確かに休み無しで働かされれば私達(わたくしたち)もいつかは限界を迎えてしまいます。特に人の身では無尽蔵に力や能力を発揮できる訳では無いですし・・・」

「もう少しローテーションの具合や此方の都合を考えてくれないと困るのは事実なんだよなぁ・・・」

 “だけど”とそんな己の言葉を受けて深刻な顔色を晒す愛妻達に、蒼太がやや表情を和らげて告げた、“何とかなるかも知れないよ?”とそう続けて。

「皆も聞き及んでいるかも知れないけれども・・・。宮廷のハイ・ウィザードや学者連中は“エルフの世界”に付いての情報を知りたがっている、“エルヴスヘイム”に興味があるんだ。だからサリナにちょっとお願いをしてみたんだ、そしたらある人から手紙を書いてもらう約束を取り付けたんだよ?」

「・・・・・?」

「・・・・・」

「・・・・・っ。ある人って?」

「エルフの王様である、“エルファサリア・セラフィニ・シルリマリル七世陛下”さ。彼からガリア帝国のハイウィザード達や帝室宛てに手紙を書いてもらうのさ?そうすればハイウィザード達や皇帝陛下も、それを無下には出来ないだろうし・・・」

「凄いわ!!!」

 するとそれを聞いたメリアリアがパアァッと顔色を喜色を浮かべつつも答えた。

「エルフ達の世界に行けるかもだなんて、ワクワクしちゃうわ?それにあなたったらいっぱしの外交官みたいな事も出来るのねっ!!?」

「蒼太さん、流石ですっ。今から凄く楽しみですわっ!!!」

「エルフ達の世界か。話を聞くだに一度は行ってみたいと思っていたのだが・・・!!!」

 それにアウロラとオリヴィアも続くが彼女達もまた興奮しているらしく、頬を赤らめると同時に瞳をキラキラと輝かせて、まるで少女の様な純朴さを見せる。

「だけどその・・・。一応断っておくけれどもエルヴスヘイムに着いたら僕達は事件に巻き込まれる事となる、それは覚悟してもらいたい。それに向こうには魔物がいる。勿論、此方の世界にもいるにはいるけど、大抵は皆単発で出て来るだろ?エルヴスヘイムのはそうじゃないんだ、大型オークやトロル達、それに成体ゴブリンなんかが大集団で一気に襲い掛かって来るんだよ。それも殺す気満々でね」

 “メリー達は経験しただろ?”と蒼太が告げるとメリアリアとアウロラがそれぞれに“ええっ!!!”、“はいっ!!!”と答えて頷くモノの、今や彼女達にはだからそう言ったモンスター達の放つ“貪欲なる殺気”、“底知れぬ悪意”に対する抵抗力、所謂(いわゆる)“免疫”があってだから、それに直ちに飲み込まれてしまう心配は無かったモノの、問題はオリヴィアである。

 彼女は確かに百戦錬磨の強者であり、また比類無き剣の使い手ではあったモノのまだ異世界空間に於ける、本格的な“対モンスター戦”を経験した事が無いため、下手をするならば遅れを取ってしまう恐れすらあったのだ。

 ただし。

(まあ、もっとも。僕達が“あれ”を体験したのはあくまでも心も体も未熟だった幼年期の事だったからなぁ。だから余計にモンスター達の殺気や害意が精神的に深く突き刺さってしまったのだろうけれども、流石にそれらが完成された大人であれば話は別だろう。特にオリヴィアはフィジカル的にもメンタル的にも鋼の強さを持っているから、問題は無いか・・・)

「なに、私なら心配ないよ」

 するとそんな“夫”の心情を見透かしたかの様にオリヴィアが答えた。

「自慢では無いが、私も戦士としては場数を踏んでいるし“対モンスター戦”も何度か経験している、遅れを取る事はないよ・・・」

「うん・・・」

 “そうだね”と蒼太は本心ではまだちょっと心配であったがその場でのこれ以上の追求は避けた、それをやる、と言うことはなんだか皆の前でオリヴィアの悪い面や至らぬ面を指摘し続ける事と同義語な気がして些か滅入ってしまったのだ。

(まあ、何かあったら僕らがフォローに入れば良いか。ただオリヴィアもあれで中々に乙女な所があるから、心配っちゃ心配なんだよね。だけど・・・)

 “その時は僕が守ろう”、“勿論、オリヴィアだけで無く皆の事もね!!!”とそこまで考え至った時に、蒼太はある事を思い付いた。

 そのある事とは。

「サリナは此方の世界で2日~3日の間には、“王の手紙”を用意すると言って来た。皆も準備を怠らない様に。ああ、後それと。言い忘れていたけれども事件が解決した後も、僕は向こうの世界には暫くの間、滞在しようと思っているんだ。勿論、君達も一緒にね・・・」

「・・・・・?」

「・・・・・」

「・・・どう言う、事だ?」

 蒼太が続けて発した言葉に花嫁達が互いに顔を見合わせるが、続いて蒼太からもたらされた説明に、彼女達は皆、狂喜乱舞する事となった、即ち。

 “エルヴスヘイムと現実世界では時間の在り方が違う事”、“向こうでの1週間が此方での1日に相当する事”、そしてー。

 “それを利用して此方の世界では行えなかった新婚旅行を満喫するつもりである事”、それであった。
ーーーーーーーーーーーーーー
 来る9月8日、イギリス連合王国国家元首であります“エリザベス2世女王陛下”が薨去されました(今年は本当に凄い年ですね、振り返ってみますと良く解ります)。

 生前は実に70年にも渡って在位し続け、イギリスの人々の希望であり続けましたが私としては、その死する瞬間の現象に、些か(と言うよりもどうにも)“?”が纏わり付いて離れ無いのです。

 それと申しますのがエリザベス女王陛下が亡くなられた際に、その住居であった“ヴァッキンガム宮殿上空”や当時、陛下が滞在されていた城の上空に“虹”が出現したことなのです。

(皆様方はあまり御存知無いかも知れませんが)この虹と言うのは実は“大いなる祝福”以外にも古代に於いては“蛇の象徴”とされており、“不吉な事が起こる前触れ”とも捉えられていたのです。

 その虹が女王陛下が薨去された瞬間に、女王と馴染みの深い場所二つの空に同時に現れた、これが何を物語っているのかは、まだ私には解りません(正直に申しましてこんな時にかなり不謹慎な発言ですが、エリザベス女王が死去した事を大空が祝福しているのか、はたまた女王が亡くなられた事で何か良からぬ事が起きようとしているのか、或いは古代よりの謂れの通りに何某かの爬虫類的象徴の発現発露なのか、そのいずれなのか理解が及ばない、と言う事です)。

 皆様方はどう思われますか?(もうこれ以上の蘊蓄(うんちく)を垂れるのは、些か以上に故人を侮辱すると申しますか、その亡骸に鞭打つ様な真似をするに至ってしまいかねない為に今回は致しますまい、ましてや相手は王族なのですから)

 ただどうしても気になったので、この場を借りてお伝えさせていただきました、皆様方に於かれましてもどうかお気を付けなされますように。

               敬具。

         ハイパーキャノン。
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