星降る国の恋と愛

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ガリア帝国編

英雄認定審査会

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 今回の話はちょっと短めです(申し訳御座いません、前の話と最終回との繋ぎの様なモノですので)。
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「・・・そうか、遂に“デュマ”を倒したか!!!」

 受信機を耳に当てつつ報告を聞いていた男、ポールがやや興奮気味に言い放った、手には自然と力が籠もり、年柄に相応しくなく頬が紅潮して血気に逸っている事が解る。

「ご苦労だった、君達は直ちに帰還したまえ。実はあの後、君達が捕らえてくれたハウシェプストの連中から新たな情報が得られてな?なんとバチカンのサンピエトロ寺院の地下に完全型の“5Gネットワークシステム”共々“AIエンペラー”の完成形がある筈なのだが・・・。それは此方で調査して奪取する事にするよ、とにかくよくやってくれた!!!」

 受信機越しに相手方、即ち蒼太達にそう伝えるとポールは改めて帰還命令を発して通信を切った、ここから先は大仕事である、何しろ誰にも知られない様にしてバチカンから“完成形AIエンペラー”共々“完全型5Gネットワークシステム”をここ、ガリア帝国に運び込まなくてはならないのであるから、予断は決して許されない。

「β(ベータ)とγ(ガンマ)へ。此方Ω(オメガ)だ、君達はそこに留まってα(アルファ)の離脱後直ちにサンピエトロ寺院の地下に赴いて“完成形AIエンペラー”及び“完全型5Gネットワークシステム”を奪取せよ、それらを何としても極秘裏に本部に持ち帰るのだ。絶対に他所のエージェント達には奪われるな?解っているとは思うがこれは千載一遇のチャンスなのだ。勿論、増援は回す。それに必要な手筈は全て早急に整える、それまでその二つを何としても死守しろ、他の任務はこの際、後回しにしても良い!!二組合わせて16名程いる筈だ、急場しのぎには、それで充分だろう?後は此方から改めて指示を出す、それでは諸君の健闘を祈る!!!」

 そう言うとポールは通信を切った、正直に言って“やった”と思った、いいや、もう少し正確に言えば“よくやってくれた”と心の底から思っていた、メイヨール・デュマを倒すのは一種の賭けだった、否、そもそもがバチカンに奴が居る、と言う確証がある訳では無かったモノの、しかし彼には確信があった。

 そうだ、ポールはデュマの動きを戦略的に先読みしたのだ、そして賭けに出てそれに勝った、しかも“完成形AIエンペラー”と“完全型5Gネットワークシステム”と言うおまけまで付いてきたのである、今回の戦果に付いて言うべき事など何一つとして無かったのだ。

(望外の成果だ、ハウシェプストの野望を打ち砕き、しかも合衆国(ステイツ)の最新科学兵器までをもこの手に収める事が出来たとはな!!!)

 ポールの興奮は最高潮に達していた、今回の件で一番、動いてくれたのは蒼太達である、それは紛れもない事実であったがそんな彼等の後ろ盾になり、かつバチカン行きを指示したのは他ならぬ自分なのだ、この功績は将来的に見た場合、計り知れないモノとなろう。

(“ソウタ・アヤカベ”か、彼は実によくやってくれた。いいや“彼等”と言い換えた方が良いかも知れないけれどもとにかく良くやってくれたよ・・・。しかし!!!)

 ポールは思う、もう今回の件でこれ以上、彼等を活躍させてやる必要は無い、後は自分が旨味を掠め取れば良いのである。

 それに。

(彼等にはまだまだ今後も“手駒”として活働いてもらわなくてはならないからな、今は大事にしてやろう。とにかくこれ以上、余計な任務を与えて傷物にしたくないし。それにそんな事をすれば、“伯爵家”からの覚えが悪くなる。それは望む所ではない・・・!!!)

 と、ポールは蒼太自身は勿論の事だがそれより何より、彼と一緒に行動しているメリアリア達を意識して“政治的判断”を下していた、要するに彼女達の実家に“忖度”を加えたのであった。

(とにかく、とにかくだ。蒼太君達の行動の支持に今回の最新兵器の奪取が加われば、今後のミラベル内部に於ける私の発言権も増す事だろう。そうすれば悲願の“万能型量子コンピューター”の開発も早まる、と言うものだ・・・!!!)

 そう考えて密かに笑うポールであったが、彼もまた自分の運命全てを知り尽くしている訳では決して無かった、無かったがしかし、彼は政治闘争の場に於いてはまだ良心的な男であった、今回の件での蒼太達の働きぶりを中央に正直に報告して(勿論、自分の功績を大幅にアップさせる為に出来る限りで話を盛ったが)彼にある“運命の道”を指し示すと同時にその扉を押し開いてやったのである。

 それは。

「綾壁蒼太を“英雄”として認定する!!!」

 そうしたガリア帝国政府と帝室からの発表だったがバチカンから帰還した蒼太達は直ちに本部に招集されて上層部達から賞賛の言葉と同時に昇給と、また1週間程の休みを得た後に、それを利用してそれぞれの花嫁達の実家に挨拶回りに訪れていた、そこで。

 “ヴァロワ家及びフォンティーヌ家壊滅作戦を阻止した事”、“秘密結社ハウシェプスト協会の存在を明るみに出して幹部を撃滅した事”、そしてー。

 今回の“デュマを倒してハウシェプストの野望を打ち砕き、尚且つ敵性陣営最新兵器の奪取に一役買った事”等が大いに評価され、中央に於いて蒼太に何らかの褒美を取らせよう、と言う流れが起きている事を知ったのであるモノの、ことここに至って蒼太はこの機会を最大限に活かす事とした、即ち。

 ダーヴィデ達三伯爵に“自分を英雄認定してもらう為の認定審査会を開いて欲しい”旨を、花嫁達共々懇願してみせたのであり、そのたっての要請を受けたダーヴィデ達からの呼び掛けによって実に、148年振りに“国家英雄認定審査会”が開かれる見通しとなったのである。

 当初は裏方組織であるセイレーンに所属している、と言う事もあって不満を呈する輩もいたモノの、結局はいつかこの日が来る事を予測して密かにダーヴィデ達が事前に各貴族達に根回しをしてくれていた事と、突如として会議に乱入して来たハイ・ウィザード達の長である“アルヴィン・ノア”の説得が功を奏して結果はギリギリ合格ラインに達した為に、蒼太は晴れてガリア帝国及びガリア帝室より“英雄認定”を勝ち取る事が出来たのだった。

「やったな、蒼太!!!」

「良かったね、蒼太君!!!」

「御目出度う、婿殿!!!」

 ダーヴィデ達三伯爵から会議の推移を聞いた蒼太は心から満面の笑みを浮かべて喜んだ、これでいい、これで漸く晴れてメリアリア達と正式に結ばれる事が出来る。

 後は。

 式の日取りと場所さえ決まれば良かった、それさえ決まれば後はもう、何も考える事は無い、式の費用は全額、三伯爵家が出してくれる事になっていたし、段取りもそれぞれの家の格式に合わせて執り行われる事となった、そんなある日。

 蒼太は花嫁達を引き連れて、久方振りの両親の墓参りに出掛けていた、目的は勿論、デュマを倒した事を報告する為とメリアリア達を花嫁として迎え入れる事になった、と言う話を父母に語って聞かせる為である。

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

 祈りを終えたその後で立ち上がると、四人はお互いに見つめ合って微笑み合った、“何ていったの?御義父様(おとうさま)と御義母様(おかあさま)に・・・”と尋ねて来るメリアリアに対して蒼太は応えた、“産んでくれて有り難うって言ったんだよ”、とそう告げて。

「父さんと母さんの息子で、幸せだったって。そう言ったんだ・・・!!!」

「・・・・・っ。そっか!!!」

「御義父様(おとうさま)と御義母様(おかあさま)は何て言ってらっしゃったの?」

「うん・・・。笑ってくれていた、と思う!!!」

「私は、その大丈夫だろうか。お二人に受け入れてもらえると有り難いのだが・・・っ!!!」

「あはは、大丈夫だよ。そんなに心配しなくても・・・!!!」

 メリアリアの質問に答えた後に続いて言葉を発したアウロラに応じると、最後に蒼太は心配そうな面持ちで尋ねて来るオリヴィアに笑って返した。

「二人とも、嬉しがっていたと思うよ?胸の奥が熱くなったし。何よりも喜びでいっぱいになっていたから・・・!!!」

「・・・・・っ。そ、そうかっ!!!」

「そうよ?オリヴィア。御義父様(おとうさま)も御義母様(おかあさま)もきっと微笑んでくれていると思うわ!!!」

「優しい、人達でしたからね。御義父様(おとうさま)達は・・・!!!」

「・・・・・」

 そんな二人の話を聞いていた蒼太はふと両親達の気配を感じた、今は亡き父母が自分を祝福してくれているんだと感じた蒼太はもう一度、両親の墓に視線を落としてクスリと微笑むともう一度、深々と頭を下げてこう言った、“父さん、母さん。僕達は4人で幸せになります!!!”とそう言って。

 “どんな時も4人で手を取り合って生きて行きます”とそう言って。

 すると。

 その言葉に、メリアリアもアウロラも、そしてオリヴィアもまた、それぞれに頭を下げて瞳を瞑るが一頻り、黙祷が済むとその後で。

「家まで競争!!!」

 そう言って蒼太がクルリと墓に背を向けて1人だけサッサと走り出して行った。

「あっ、ずるい!!!」

「そんなのダメですっ!!!」

「こら、まてっ。蒼太!!!」

 それに釣られる形で三人の花嫁達もまた、自身の最愛の花婿の後を追い掛けるモノの、口々に“待ちなさい!!!”、“蒼太さん!!!”、“待たないか、こら!!!”と叫ぶメリアリア達の表情は皆、これ以上無い位にまで眩しく微笑んでいた。

 そんな彼等の頬を、周囲を温かくて穏やかな風が、祝福してくれているかの様に優しく撫でて通り過ぎて行った。
ーーーーーーーーーーーーーー
 読者の皆様方こんばんは、ハイパーキャノンと申します。

 いつもいつも小説を読んで下さいまして誠に誠に有り難う御座います、皆様方のお陰をもちましてこの物語も漸くにしてここまで来る事が出来ました、大変感謝しております。

 次の話が“本編に於ける最終回”になります(これ以降の話は“エンディング後の世界の話”とでも言うべきモノになります)、2年越しの長期連載となりましたがここまで書き進めて来る事が出来たのは勿論、自分自身が頑張ったからではありますが、偏に神々様を始めとして目に見えない存在の方々の暖かな御守護と御導き、御助力あってのモノです。

 そして、もう一つ。

 忘れてはならないのが言わずもがな、あなた方読者の皆様方の御声援、御愛読の賜物であったと言う事実です(特に評価ポイントやブックマーク、そして感想等頂いたこと、大変感謝しております。苦しい時や大変な時等に、本当に励みになりました)、この場をお借り致しまして改めて感謝御礼申し上げます、本当に有り難う御座いました。

 ちなみに前回の話でデュマは蒼太君に完全敗北した挙げ句に彼によって消滅させられてしまいました、なので奴自身はもう出て来る事はありませんがまだ、その後ろには“邪神ゾルデニール”と巫女である“キング・カイザーリン”が控えています(彼等を倒さない限り、真の平和は訪れません。なので蒼太君達にはもう少しの間頑張ってもらわなくてはなりません)。

 読者の皆様方に於かれましてもどうかもう暫くの間お付き合いしていただきたく、ここに伏してお願い申し上げる次第です、どうかよろしくお願い申し上げます。

 また“pixiv様”の方に投稿させていただきました四つの“主ビアの純愛R-18小説”の方も予想を上回る程に沢山の方々に御覧いただき、そればかりか評価、ブックマークもしていただきまして感謝に絶えない次第です、此方も本当に本当に有り難う御座いました(皆様方に少しでも楽しんでいただけたのならば、こんなに幸せな事はありません。今後ともどうかよろしくお願い申し上げます)。

                  敬具。

            ハイパーキャノン。

          追伸です。

 今回のお話は“花嫁達の輪舞曲(ロンド)”を御覧になられるとより理解が深まるかも知れません(審査会に付いてのちょっとした説明が為されておりますので)。
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