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ガリア帝国編
暗闇の戦闘
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カフェバー、“ル・ジャルダン・ティエリー”の裏口から下層に至る階段を降りて地下2階へと潜った蒼太館を待っていたモノ、それは。
先に潜入を果たして一時退避の途に就いていた“バーナード”達“プラム”の隊員達であった、真っ暗闇の迷宮から何とかここまで帰還を果たして来た彼等は蒼太達にこの先にある“秘密の通用口”の存在を教えるためにここで待機していてくれたのである。
「蒼太君、この先は難儀な道だぞ?正直に言って私達は暗闇専用の装備を持ってきてから再度チャレンジした方が良いと思うのだが・・・!!!」
「そうだ、このままでは二次損害が出るかも知れない。いくら無茶振りを強要する上層部だって流石にそれは嫌だろう!!!」
「我々と共に退避しよう、事情を話せばポールさん達ならばきっと解ってくれる筈だ!!!」
「どうも有り難う御座います、エメリックさん。そして他の方々も、だけど急がなくては・・・!!!」
「どっちみち、このまま“ラウル”が捕らわれたままでいるのは良くないわ?早く助けてあげたいし、それに彼が口を割らされる様な事にでもなれば、私達の日常生活が成り立たなくなってしまうもの!!!」
「そうです、この場は絶対に退く訳には参りませんわ!!?」
「お心遣い、誠に痛み入ります。しかし今は断固として進まなければならない局面なのです!!!」
「・・・・・」
「・・・・・」
「まあ確かに、な・・・?」
「“ラウル”が取り調べを受ける前に何としても奪還しなければなりません。相手は非道な狂信者達です、下手をすれば拷問紛いの事も実施するかも知れません!!!」
「急がないと。もし“ラウル”さんの身に何か起きてからでは遅いもの!!!」
「それに今ならば相手も油断しているかも知れませんわ?だってつい今し方捕まえたばかりの対象を、私達(わたくしたち)がこれ程早くに奪い返しに来る等とは思ってもいないでしょうからね・・・!!!」
「敵の虚を突く、と言う意味に於いても今が最良のタイミングと言う訳だな?」
「・・・・・」
「・・・・・」
「うーん、そうか・・・!!!」
青年達“セイレーン”の面々からからそこまで言葉が放たれるに及んでエメリック達“潜入組”も大きく頷かざるを得なかった、確かに蒼太達の言っている事は理解できる内容のモノだった為である。
「蒼太君、充分に気を付けてくれ。我々も周囲には極力、神経を研ぎ澄ませながら進んでいたんだ。・・・勿論、己の気配は消した上でな?」
「しかし結局は何も感じられなかったし、人や他の存在を察知する事は出来なかった。・・・この通路の向こう側に広がっている、“暗闇の空間”に入ってからは特にそうだったんだが」
「相手はどうやってか知らないが、此方の動きをよく掴んでいる様子だからな。・・・本当はこう言った場所や相手専用の装備、準備を調えてから突入を果たしたかったのだが!!!」
「その言葉だけで充分ですよ、了解しました。気を引き締めて任務に当たる事と致します!!!」
「有り難う御座います、エメリックさん。そして他の方々も!!!」
「恐縮ですわ!!!」
「お心遣い、痛み入る!!!」
それだけ言うと四人は密集隊形を取りつつ、奥にある“秘密の通用口”から更に地下へと降りて行った、果たしてそこは本当に真っ暗闇の、一言で言えば“虚無”だった、いや確かに内部は彼方此方に通路が折り曲げられていたり、分かたれたりして複雑な迷路の様な構造になってはいたモノの、自分達以外の何の生物の痕跡も感じられない、まるで丁度無人の“伽藍堂”の真っ只中に入ってしまったのと同じ印象を受けるのである。
それだけではない、この暗闇の空間に至った瞬間から頭に何やら被り物を被らされた様な感覚が襲い掛かって来るモノの、その結果として蒼太達は先程まではあれ程ハッキリと感じていた、足下(そっか)で蠢く人々の気配が一切合切、解らなくなってしまっていたのだ。
(なんだ?これは・・・。まるで感覚のセンサーが封殺されているみたいだ、自分達の居る位置が上手く掴めないし集中力が掻き乱される・・・!!!)
青年が戸惑うモノのこれが通常ならば、例え真っ暗闇の中だとしても、或いは目を閉じたままで移動する事を余儀なくされた場合であっても蒼太は周囲の状況が手に取る様に理解できるし、戦闘だって熟(こな)す事が可能だった訳なのであるがこの状況では話しは別だ、今現在の彼は自分の周囲はおろか、空間内に於ける立ち位置さえも満足に把握する事が出来なくなってしまっていたのだ。
「・・・・・」
「・・・ねえ、ちょっと。あなた!!?」
「蒼太さん、おかしいです。私の方向感覚が狂わされているみたいで・・・!!!」
「自分の居場所が、上手く掴めん。なんだか目を閉じたままで思いっ切りグルグルと回転させられ、その後で放り出されたみたいだ・・・!!!」
それはどうやら“花嫁達”もまた同様だったらしくて、現に彼女達も三者三様の驚きと戸惑いの言葉を口にするモノの、そんな愛妻達と共に、この“地下通路そのもの”に疑問を抱きながらも暗闇の中で壁に手を付きつつも一歩一歩、足を進めていた蒼太であったが、ある程度まで来た時に“マジック・ラビリンスか・・・!!!”と何事かを思い付いた様に口にした。
「・・・・・っ。あなた?」
「蒼太さん・・・!!?」
「どうしたのだ?急に立ち止まって・・・!!!」
そんな“夫”の態度に怪訝そうな表情を浮かべつつも花嫁達が尋ねるモノの、果たして蒼太の言った通りでこの地下通路は“方位気学”を応用した魔術の一種でありそれ自体が巨大な“隠形術”の役割を果たしている“魔力迷宮”に他ならなかった。
この世界には稀にそう言った“魔法建築”、所謂(いわゆる)一種の“奇門遁甲術”に精通している建築士が居て、例えば南東の方角に高い塔を建てると火炎魔法の威力がアップするとか、はたまた或いは北東の方角の土中に呪(まじな)いを込めた黄金の玉を封入すると運気が良くなる、と言った様な塩梅で、己の感性を頼りにしつつもある一定の“波動法則”と“運命学”に基づいたデータを用いて巨大な“呪物構築”を行うのである。
今現在、蒼太達が進んで来たラビリンスも正にそれそのものであって、万が一にも外敵が侵入してきた際には相手の視覚や方向感覚は勿論、第六感までをも含む人体の霊的センサーを封殺して彼の者を虜にするために設けられていた、呪術的な罠だったのだ。
「道理で・・・。地上にいる時はハッキリと感じた人々の気配がピタリと解らなくなってしまった訳だよね?」
「どうするの?あなた。やっぱり一旦、帰りましょうか・・・!!!」
「このままでは“ラウル”さんを救出する事はおろか、私達自身も捕虜となってしまうかも知れませんし・・・!!!」
「方向感覚を狂わされている上に、満足に戦う事も出来ない。と来てはな・・・!!!」
花嫁達の言葉に思案を巡らせる青年だったが、やはりこのまま突き進まざるを得ない、と言う結論に達していた、この様な“罠”が張り巡らされているのならばその先にある秘密はそうまでして守らなければならない価値がある、と言う事であり、ここまで進んで来た事は決して無駄足にはならない筈である、前進するにしくは無い。
それに。
(“ラウル”の身が心配だ・・・!!!)
決して焦ってはいけないと自分自身に言い聞かせつつも蒼太はそれでも心が逸るのを感じずにはいられなかった、現在“ラウル”は恐らく、非道な取り調べを受けている真っ最中なのかも知れずに早期の奪還が望まれるが、さて。
「みんな、ちょっと待ってて!!!」
“いけない、いけない”と蒼太は頭(かぶり)を振りつつも一度、自分自身を静止させるとメリアリア達にそう告げるや否や、その場で肺はおろか胃袋までをも使用する大きな呼吸を何度もゆっくりと行って己の丹田に気と意識とを集中させて行き、自身の内側深くに眠る神の領域へと意識のレベルを合わせて行く、そこから。
極めて強烈な光の波動を発生させるとそれを改めて自分の血管や経絡、神経と言った呼吸循環器系や感覚伝達系へと向けて一気に放出させて行き、煌々と輝くそのエネルギーを体の隅々にまで行き渡らせていった、すると。
「・・・・・!!!」
まずはそれまで緊張状態が続いていた事により不要なまでに力みがちだった気道関係と神経パルスとが落ち着きを取り戻し、心臓の鼓動が穏やかなモノへとなって行く。
それは遂には脈拍にまでも作用して脳波を著しいまでに活性化して行った、特に意識レベルが“Θ波”の活動領域にまで振動数を引き上げられた事で己自身の“神の部分”とより強固に直結した彼はそのオーラで呪術の魔力を打ち破って感覚を正常な状態へと回復させ、結果として周囲の状況がそれまで通りに、手に取る様に解るようになっていったのである。
「ふううぅぅぅ・・・っ!!!まずはこれでよし、と。あとはメリー、アウロラ、オリヴィア!!!」
そう言うと蒼太は次にメリアリア達に声を掛けた、彼女達にもこの呼吸法を実践させて、霊的なバランスセンサーを全て元に戻した上でフル稼働させなければならないからであったのだ。
「大丈夫、僕がサポートするから。君達ならすぐ出来る様になるよ、やってごらん?」
「う、うん。解った・・・っ!!!」
「下腹部全体を収縮させるようにするのですね?」
「この前やった、“オーバードライヴ”のやり方に近いモノがあるな・・・!!!」
そんな事を言い合いつつも三人は直ぐさま、この瞑想法をマスターしてしまいその出来栄えは青年のそれと殆ど大差ないモノであった。
「・・・・・っ!!?」
(驚いた・・・っ!!!)
蒼太は素直にそう思った、自分はこれをマスターするまで“鹿島の神”の指導の元で一ヶ月は掛かった、と言うのにこの子達は。
(幾ら下地があった、とは言えどもこの土壇場でこれだけの、自分の中に眠りし神との“一体化”を顕現出来得るなんて。これが“天才”と言うモノか・・・!!!)
「ふううぅぅぅ・・・っ!!!」
「終わりました、蒼太さんっ!!!」
「これは助かる、位置感覚が本当にハッキリとして来るな・・・っ!!!」
驚き戸惑う蒼太を他所に、三人がキャッキャッと燥(はしゃ)いでいるとー。
「・・・・・っ!!?」
「・・・・・っ!!!」
「そ、蒼太さんっ!!!」
「お客人のお出ましか・・・?」
四人が前方に何者かの気配を感じて暗闇の中で武器を取って身構えるが、それは本当に自分達まで後二十メートル程の距離にまで接近して来ており、如何に漆黒の空間の中にいた、とは言えどもなんで今まで気が付かなかったのか、自分で自分に疑問が生じる程である。
「目は瞑っておいた方が良いな・・・!!!」
「ええ、そうね。なまじ目を開けているとつい、目で見よう目で見ようとしてしまうモノだから・・・!!!」
「感覚で感じて戦った方が、より正確に相手の行動を見抜けますしね・・・!!!」
「やっこさん、数は十人前後と言ったところか、随分と甘く見られたモノだな・・・っ!!!」
四人はそう言い合うと。
次の瞬間蒼太、メリアリア、オリヴィアの三人が目を閉じたままでハウシェプスト協会の手勢を相手に疾走して行き、直後にそこかしこで戦闘が勃発した、蒼太は手にした聖剣“ナレク・アレスフィア”で、メリアリアは“聖なる茨の鞭”で、そしてオリヴィアは家宝でありずっと幾多の戦場を共にして来た両手持ちの片刃長剣“エル・パシオス”で次々と相手に踊り掛かって行くモノの、一方で。
その後方では“青き星の祈り姫”ことアウロラが直ちにスピードアップと防御能力向上と、そして攻撃力増大の補助魔法を重ね掛けしては三人の下支えに入って行った、果たして蒼太やメリアリアが予想した通りで相手は確かにある程度以上の鍛錬を積んでいる様子であり、流石にそんじょそこらの一般的な雑魚番兵とは訳が違っていたのだ。
恐らくは“カインの子供達”を除けば選りすぐりの精鋭部隊なのであろう彼等は動きも俊敏で力もそれなりに強く、現に蒼太もメリアリアもオリヴィアも、相手方が繰り出して来るナイフやレイピアによる横凪の切り払いや刺突、或いは徒手空拳を寸での所で躱しつつ、そのまま反撃に移ってカウンターで撃退する、と言う事を何度となく繰り返し続けていたのである。
暗闇の中にも関わらず短剣の刃が冷たく光り、鼻先を掠めたそれらが蒼太達の頭髪を数本、短く切り裂いては宙を舞わせた時もあった。
しかし。
「・・・・・っ!!?」
「!?!?!?!?!?」
「ぐっはああぁぁぁ・・・っ!!!」
それでもやはり、幾多の厳しい戦場と試練とを踏破して来ただけあってこの時の蒼太達の力量と経験値とは彼等よりも圧倒的に上であり能力的にも比べ物にならない位に勝っていた、現に真っ暗闇の中で、しかも目を閉じているにも関わらずにアウロラからの補助魔法を受けた蒼太達は順調にハウシェプストの手勢を撃破していった。
蒼太とオリヴィアは剣で相手の両足や太腿、そして利き腕の肩を貫いて無力化させ、その場に次々と倒れ伏せさせていったがその一方で。
メリアリアもまた負けてはいなかった、“茨の聖鞭”を縦横無尽に振り動かしては相手の喉元、もっと言ってしまえば頸動脈や気道を狙って鞭を横殴りに叩き付け、血液の流れを遮断させて鬱血させたり、或いは呼吸不全に追いやったりして順々に気絶させていったのである。
「そっちへ行ったぞ!!?」
「くそ、なんて速さだ。反応が追い付かないっ!!!」
「ちっ、ちょこまか動きやがって!!!」
次第に劣勢に追い込まれて行くハウシェプストの面々は口々にそう叫ぶモノの、しかし彼等はそれでも一歩も退かなかった、相手が何者であろうと自分達も厳しい修業に耐え抜いて来たのだ、と言う自身と自負とを持っていた彼等はだから、ましてやこの暗闇の空間内では多少、手こずる事はあったとしても必ずや、相手を撃滅出来ると信じて疑わなかったのだ。
「くそっ、なんだコイツら・・・っ!!?」
「目を瞑って戦ってやがるぞ!!?」
「そんなバカな・・・っ。げはああぁぁぁ・・・っ!!!」
「・・・・・」
(どうやら・・・。奴等は“ノクトビジョン”を使用している様だな、此方の詳細が読めている様だし。それに何より、“赤外線”が皮膚に当たる感触がするので解るぞ・・・!!!)
一人、また一人と相手を虱潰しに“制圧”しながらも蒼太が思うが果たして彼の直感通りでハウシェプストの手勢は赤外線ゴーグル型の“ノクトビジョン”を使用しており、これとこの真っ暗闇のラビリンスの感覚を封殺させて位置情報を狂わせてしまう効能とが“ラウル”を捕縛する際にも一役買った、と言う訳である。
勿論、彼等自身のレベルがそれなりにあった事も理由の一つではあったがしかし、何れにしてもネタが解ってしまえば後はどうという事は無かった、蒼太達はアッサリと十名前後の“ハウシェプスト守備隊”を沈黙させては捕虜にして、その情報を上階にある“秘密の通用口”付近で待機していた“バーナード”達へと送ると自分達は更に奥地にある、ハウシェプスト協会のルテティア支部へと向けて歩を進めて行った。
「ぐわっ!!?」
「ぎゃはあぁぁぁっ!!!」
「なんで・・・っ!!?」
途中で二度ほど、同程度の守備隊達と戦闘になったがいずれも蒼太達の圧勝であり、彼等は傷一つ付かなかった。
それどころか。
「うぎゃあああっ!!!」
「ぐああああっ!!!」
「痛ってええぇぇぇっ!!!」
「ぎゃああああっ!!?」
「おいっ!!!」
剣で殺さない様にと手加減しつつも両足の太腿と利き腕の肩とを刺し貫いたその後で、蒼太は守備隊の喉元に切っ先を突き付けて尋問した。
「つい今し方、僕らの仲間が世話になった様だけれども・・・。彼は今、何処にいる。無事なんだろうな?」
「痛っつつつ・・・っ。くっ、はっはっはっ。知った事か、そんなこと。とっくに仲間達によって始末されているだろうぜ?もしかしたなら拷問されているかもなぁっ。お前らもじきにそうなるんだ、覚悟しておけよ・・・!!!」
「そうかい・・・っ!!!」
痛みを堪えつつもふてぶてしい態度でそう応える男に対して蒼太はそれだけ告げるとー。
後は彼の鳩尾に強烈な一撃を放って“落と”させた後で、全員を集めてこう言い放った。
「この様子では彼等“外廻り組”の連中は内部の様子を知らないだろうね、何を聞いても無駄だろう・・・!!!」
「・・・確かに。嘘を付くような余裕があった様には、感じられなかったモノね!!!」
「痛みと出血によるモノ以外には、鼓動と脈拍とに変化はありませんでした・・・!!!」
「所詮は下っ端と言うわけか。しかしあと何回、コイツらと戦わねばならぬのだろうな・・・!!!」
そんな“花嫁達”の言葉を聞いた蒼太はここで、ちょっとした“搦め手”を使う事を思い付いた、彼が普段、メリアリア達に会いに行く際に使用する秘法である“陰陽・影括りの術”を用いて独自にルテティア支部へと侵入、中の様子を見定めてこよう、と言うモノであったのだ。
幸いにしてここは真っ暗闇の中である、陰になりそうな場所は幾らでもあったから“陰陽術”を駆使しても蒼太は自由に動く事が出来る、と言う訳であった。
「僕が先に潜入して、中の様子を探ってくるよ。皆はここで待機していてくれ」
「えええっ!!?それはちょっと・・・っ!!!」
「絶対ダメです、幾ら何でも危険過ぎます!!!」
「そんなの行かせられる訳無いだろう!!!」
そう言って青年が出発しようとするとしかし、愛妻達が途端にブレーキを掛けてくるモノのそんな彼女達に蒼太は一つずつ語って聞かせた、これ以上、前に進むにはまずは敵情を把握する必要がある事、“ラウル”の身の安否を確認して来なければならない事、このまま四人で突入を続行していた場合、いざという時に人質を使われてしまったりしたら却って身動きが取れなくなる事、等を順々に説いて聞かせる。
「だから取り敢えず、まずは僕がルテティア支部に潜入して“ラウル”の居場所とか、彼の状況なんかを確認してくるよ。皆はいざという時の為に、ここで待機していてくれ」
「あら、それなら・・・!!!」
とここでメリアリアが片方のツインテールを掻き上げながら言葉を発した。
「私達も出来るだけ、距離を詰めておいた方が良いんじゃないかしら?いざという時にあなたの援護も出来るし、それに・・・」
「・・・・・?」
「なんなら、私達が“囮”になってあげても良いのよ?あなた・・・!!!」
「・・・・・っ。そんなこと!!!」
「あら、それは良いですわね?」
「賛成だ、その方が敵の本拠地にも侵入しやすくなると言うモノだからな!!!」
“何をバカな事を言っているんだ!!!”と愛妻の言葉に釘を刺そうとした蒼太の方が逆に花嫁達三人からその出鼻を挫かれる事となった、近頃、蒼太との事で問題が起きると彼女達は何かと連帯する様になっており、そしてそうなると蒼太の言うことを中々聞いてくれなくなる一幕もあったのである。
「・・・ち、ちょっと待ってよ、みんな。それはヤバいよ、それだけは止めてくれマジで!!!」
「あら!!?」
するとここでもメリアリアがいの一番に威勢良く、“心外ね!!?”とでも言わんばかりの顔で夫へと向き直るがそれはまさに、“お転婆娘”の面目躍如であったのだ。
「なによ、あなたったら時分は無茶をする癖に。私達には何もするなって言うの!!!!?」
「そうです、蒼太さんは近頃無茶をし過ぎです。私達(わたくしたち)がどんなに心配をしているのか、考えて下さらないと困りますわ!!!!?」
「夫にだけ危険な役目を押し付けて、私達だけ待っていろ、等とはとても我慢がならないよ蒼太。ここは私達も一緒に暴れさせてもらうよっ!!!!!」
「それはそうだけど・・・っ。でもそれは・・・っ!!!」
「私達だって、あなたの役に立ちたいわ!!!お願いよあなた、少しくらいは手伝わせて・・・!!?」
「蒼太さんにばっかり、危険な役目を押し付けるだなんて、私達(わたくした)には耐えられないのっ。私達にだって蒼太さんの命を預けて欲しいのでせすっ!!!」
「もっと甘えても良いんだよ?蒼太。君は気を張りすぎている、夫として立派でいてくれるのは、私達には確かにとても嬉しいのだけれど・・・。でもそれだけでは寂しいもの・・・!!!」
「・・・・・」
「「「・・・・・」」」
「・・・・・」
「「「・・・・・」」」
「・・・・・」
「「「・・・・・」」」
「・・・・・」
「「「・・・・・」」」
「・・・・・」
「「「・・・・・」」」
「・・・・・」
「「「・・・・・」」」
硬い覚悟と壮絶な決意と、そして何より熱い願いを込めた瞳で自身を真っ直ぐに見つめながらもそう告げてくる愛妻達の訴えに、蒼太はもうそれ以上、何も言えなくなってしまっていた、結局のところ“解ったよ”と彼は渋々頷くと作戦を一部変更してまずはメリアリア達に敵の目を惹き付けてもらっている間に自らが術を使って内部に侵入、“ラウル”の様子を探ると言う計画に切り替えたのである(勿論、出来る事ならば彼を救出するのは言うまでもない)。
残っている敵の数は決して多くは無い、それは確かに感じる事実でありだからこそここからは慎重に慎重を期して行かなければならないのであった、何故ならば追い詰められたハウシェプスト協会の連中が事態打開の切り札として“ラウル”を使って来ないとは限らなかった為であり、そしてそれを防ぐためには早急かつ確実なる有効打を打つ必要があったのであって、その事に付いて今現在、のんびりと議論している時間的猶予は蒼太達には与えられてはいなかったのだ。
「残っているのは大体、二十名前後と言ったところだろう。ちょっと骨が折れるかも知れないけれども・・・。それでも頼むよ?どうか僕が“ラウル”を連れて戻って来るまで持ち堪えていて欲しい・・・っ!!!」
「・・・・・っ!!!」
「・・・・・っ!!!」
「・・・・・っ!!!」
「断っておくけれども・・・。くれぐれも“無茶”だけはしないでくれよ?本当に危なくなったら一時撤退してくれ。君達が無事ならば僕は嬉しいし、それに人任せにしてしまうようで申し訳ないんだけれども、必ず皆が助けに来てくれるって信じられるからね!!?だからそれだけは約束してくれ!!!」
「うん・・・っ!!!」
「・・・・・っ!!!」
「・・・・・っ!!!」
「・・・よし。じゃあ、行くよ?皆気を付けて!!!」
「ええ・・・っ!!?」
「それだけ、ですの・・・?」
「もう一言、あっても良いんじゃないか?蒼太・・・っ!!!」
「・・・・・っ。えっ?」
するとそんな花嫁達の言葉に、青年が少し驚き戸惑っていると、メリアリアが少し寂しそうに笑って夫に告げた、“違うわ、あなた・・・”とそう言って。
「それは確かに、解っているけれど・・・。でももう一言あるんじゃない?」
「・・・・・?」
「“もしもの時は一緒に死んでくれ”って、どうして言ってくれないの・・・?」
「そうですよ」
するとそれを聞いていたアウロラまでもがメリアリアに同調した。
「お気持ちは、良く解っているのですけれども・・・。私達はもう他人では無いではありませんか!!!」
「私達はいつも一つだ、君のために命を投げ出す事も厭わないつもりだよ・・・。君には意外な事だったかな?」
「そ、そんなつもりは・・・っ!!!」
「死ぬときは、一緒よ?だけど絶対に生きて帰りましょうね・・・!!!」
とどめとばかりに蒼太に向けて言葉を放ったその後で、思わずしどろもどろになってしまう花婿に対してメリアリアが静かにしかし、凄絶なまでの誓いを込めてそう言った。
「ねっ?あなた・・・っ!!!」
「メリー・・・ッ!!!」
“何て事だろう!!!”と蒼太は思わず天を仰いだ、僕の花嫁達は僕が思うよりもずっと強くて優しくて、そして暖かな人達だったんだと、こんなにまでも自分の事を愛してくれていたのだと、信じてくれていたのだと彼女達の気持ちの深くて確かなる事を思い知らされ、その思いの丈にしこたま打ちのめされてしまったのであった。
「解ったよメリー、アウロラ、オリヴィアも・・・。必ず全員で生き残ろう!!!」
「・・・・・っ。うん!!!」
「はいですっ!!!」
「勿論だ!!!」
そう頷き合うと蒼太は今後の段取りと同時に予想外の出来事が起こったり、相手が人質を出してきた場合の幾つかのプランについて彼女達と話し合い、それが済むと早速術を発動させては暗闇の中へと姿を溶け込ませていったのである。
ーーーーーーーーーーーーーー
大変長らくお待たせ致しました、漸く物語を先に進ませる事が出来ました(皆様方を混乱させてしまい、本当に申し訳御座いませんでした)尚、“神との修業”シリーズは割り込み投稿で241話、242話、243話に入れて纏めてあります、此方もお読みいただきますと今後の蒼太君達の活躍に対する理解がもう一歩、深まると思います(どうやって蒼太君が“神人化”をモノにしたのか、と言うお話です)。
暇な時にでも読んでいただければ幸いです。
敬具。
ハイパーキャノン。
先に潜入を果たして一時退避の途に就いていた“バーナード”達“プラム”の隊員達であった、真っ暗闇の迷宮から何とかここまで帰還を果たして来た彼等は蒼太達にこの先にある“秘密の通用口”の存在を教えるためにここで待機していてくれたのである。
「蒼太君、この先は難儀な道だぞ?正直に言って私達は暗闇専用の装備を持ってきてから再度チャレンジした方が良いと思うのだが・・・!!!」
「そうだ、このままでは二次損害が出るかも知れない。いくら無茶振りを強要する上層部だって流石にそれは嫌だろう!!!」
「我々と共に退避しよう、事情を話せばポールさん達ならばきっと解ってくれる筈だ!!!」
「どうも有り難う御座います、エメリックさん。そして他の方々も、だけど急がなくては・・・!!!」
「どっちみち、このまま“ラウル”が捕らわれたままでいるのは良くないわ?早く助けてあげたいし、それに彼が口を割らされる様な事にでもなれば、私達の日常生活が成り立たなくなってしまうもの!!!」
「そうです、この場は絶対に退く訳には参りませんわ!!?」
「お心遣い、誠に痛み入ります。しかし今は断固として進まなければならない局面なのです!!!」
「・・・・・」
「・・・・・」
「まあ確かに、な・・・?」
「“ラウル”が取り調べを受ける前に何としても奪還しなければなりません。相手は非道な狂信者達です、下手をすれば拷問紛いの事も実施するかも知れません!!!」
「急がないと。もし“ラウル”さんの身に何か起きてからでは遅いもの!!!」
「それに今ならば相手も油断しているかも知れませんわ?だってつい今し方捕まえたばかりの対象を、私達(わたくしたち)がこれ程早くに奪い返しに来る等とは思ってもいないでしょうからね・・・!!!」
「敵の虚を突く、と言う意味に於いても今が最良のタイミングと言う訳だな?」
「・・・・・」
「・・・・・」
「うーん、そうか・・・!!!」
青年達“セイレーン”の面々からからそこまで言葉が放たれるに及んでエメリック達“潜入組”も大きく頷かざるを得なかった、確かに蒼太達の言っている事は理解できる内容のモノだった為である。
「蒼太君、充分に気を付けてくれ。我々も周囲には極力、神経を研ぎ澄ませながら進んでいたんだ。・・・勿論、己の気配は消した上でな?」
「しかし結局は何も感じられなかったし、人や他の存在を察知する事は出来なかった。・・・この通路の向こう側に広がっている、“暗闇の空間”に入ってからは特にそうだったんだが」
「相手はどうやってか知らないが、此方の動きをよく掴んでいる様子だからな。・・・本当はこう言った場所や相手専用の装備、準備を調えてから突入を果たしたかったのだが!!!」
「その言葉だけで充分ですよ、了解しました。気を引き締めて任務に当たる事と致します!!!」
「有り難う御座います、エメリックさん。そして他の方々も!!!」
「恐縮ですわ!!!」
「お心遣い、痛み入る!!!」
それだけ言うと四人は密集隊形を取りつつ、奥にある“秘密の通用口”から更に地下へと降りて行った、果たしてそこは本当に真っ暗闇の、一言で言えば“虚無”だった、いや確かに内部は彼方此方に通路が折り曲げられていたり、分かたれたりして複雑な迷路の様な構造になってはいたモノの、自分達以外の何の生物の痕跡も感じられない、まるで丁度無人の“伽藍堂”の真っ只中に入ってしまったのと同じ印象を受けるのである。
それだけではない、この暗闇の空間に至った瞬間から頭に何やら被り物を被らされた様な感覚が襲い掛かって来るモノの、その結果として蒼太達は先程まではあれ程ハッキリと感じていた、足下(そっか)で蠢く人々の気配が一切合切、解らなくなってしまっていたのだ。
(なんだ?これは・・・。まるで感覚のセンサーが封殺されているみたいだ、自分達の居る位置が上手く掴めないし集中力が掻き乱される・・・!!!)
青年が戸惑うモノのこれが通常ならば、例え真っ暗闇の中だとしても、或いは目を閉じたままで移動する事を余儀なくされた場合であっても蒼太は周囲の状況が手に取る様に理解できるし、戦闘だって熟(こな)す事が可能だった訳なのであるがこの状況では話しは別だ、今現在の彼は自分の周囲はおろか、空間内に於ける立ち位置さえも満足に把握する事が出来なくなってしまっていたのだ。
「・・・・・」
「・・・ねえ、ちょっと。あなた!!?」
「蒼太さん、おかしいです。私の方向感覚が狂わされているみたいで・・・!!!」
「自分の居場所が、上手く掴めん。なんだか目を閉じたままで思いっ切りグルグルと回転させられ、その後で放り出されたみたいだ・・・!!!」
それはどうやら“花嫁達”もまた同様だったらしくて、現に彼女達も三者三様の驚きと戸惑いの言葉を口にするモノの、そんな愛妻達と共に、この“地下通路そのもの”に疑問を抱きながらも暗闇の中で壁に手を付きつつも一歩一歩、足を進めていた蒼太であったが、ある程度まで来た時に“マジック・ラビリンスか・・・!!!”と何事かを思い付いた様に口にした。
「・・・・・っ。あなた?」
「蒼太さん・・・!!?」
「どうしたのだ?急に立ち止まって・・・!!!」
そんな“夫”の態度に怪訝そうな表情を浮かべつつも花嫁達が尋ねるモノの、果たして蒼太の言った通りでこの地下通路は“方位気学”を応用した魔術の一種でありそれ自体が巨大な“隠形術”の役割を果たしている“魔力迷宮”に他ならなかった。
この世界には稀にそう言った“魔法建築”、所謂(いわゆる)一種の“奇門遁甲術”に精通している建築士が居て、例えば南東の方角に高い塔を建てると火炎魔法の威力がアップするとか、はたまた或いは北東の方角の土中に呪(まじな)いを込めた黄金の玉を封入すると運気が良くなる、と言った様な塩梅で、己の感性を頼りにしつつもある一定の“波動法則”と“運命学”に基づいたデータを用いて巨大な“呪物構築”を行うのである。
今現在、蒼太達が進んで来たラビリンスも正にそれそのものであって、万が一にも外敵が侵入してきた際には相手の視覚や方向感覚は勿論、第六感までをも含む人体の霊的センサーを封殺して彼の者を虜にするために設けられていた、呪術的な罠だったのだ。
「道理で・・・。地上にいる時はハッキリと感じた人々の気配がピタリと解らなくなってしまった訳だよね?」
「どうするの?あなた。やっぱり一旦、帰りましょうか・・・!!!」
「このままでは“ラウル”さんを救出する事はおろか、私達自身も捕虜となってしまうかも知れませんし・・・!!!」
「方向感覚を狂わされている上に、満足に戦う事も出来ない。と来てはな・・・!!!」
花嫁達の言葉に思案を巡らせる青年だったが、やはりこのまま突き進まざるを得ない、と言う結論に達していた、この様な“罠”が張り巡らされているのならばその先にある秘密はそうまでして守らなければならない価値がある、と言う事であり、ここまで進んで来た事は決して無駄足にはならない筈である、前進するにしくは無い。
それに。
(“ラウル”の身が心配だ・・・!!!)
決して焦ってはいけないと自分自身に言い聞かせつつも蒼太はそれでも心が逸るのを感じずにはいられなかった、現在“ラウル”は恐らく、非道な取り調べを受けている真っ最中なのかも知れずに早期の奪還が望まれるが、さて。
「みんな、ちょっと待ってて!!!」
“いけない、いけない”と蒼太は頭(かぶり)を振りつつも一度、自分自身を静止させるとメリアリア達にそう告げるや否や、その場で肺はおろか胃袋までをも使用する大きな呼吸を何度もゆっくりと行って己の丹田に気と意識とを集中させて行き、自身の内側深くに眠る神の領域へと意識のレベルを合わせて行く、そこから。
極めて強烈な光の波動を発生させるとそれを改めて自分の血管や経絡、神経と言った呼吸循環器系や感覚伝達系へと向けて一気に放出させて行き、煌々と輝くそのエネルギーを体の隅々にまで行き渡らせていった、すると。
「・・・・・!!!」
まずはそれまで緊張状態が続いていた事により不要なまでに力みがちだった気道関係と神経パルスとが落ち着きを取り戻し、心臓の鼓動が穏やかなモノへとなって行く。
それは遂には脈拍にまでも作用して脳波を著しいまでに活性化して行った、特に意識レベルが“Θ波”の活動領域にまで振動数を引き上げられた事で己自身の“神の部分”とより強固に直結した彼はそのオーラで呪術の魔力を打ち破って感覚を正常な状態へと回復させ、結果として周囲の状況がそれまで通りに、手に取る様に解るようになっていったのである。
「ふううぅぅぅ・・・っ!!!まずはこれでよし、と。あとはメリー、アウロラ、オリヴィア!!!」
そう言うと蒼太は次にメリアリア達に声を掛けた、彼女達にもこの呼吸法を実践させて、霊的なバランスセンサーを全て元に戻した上でフル稼働させなければならないからであったのだ。
「大丈夫、僕がサポートするから。君達ならすぐ出来る様になるよ、やってごらん?」
「う、うん。解った・・・っ!!!」
「下腹部全体を収縮させるようにするのですね?」
「この前やった、“オーバードライヴ”のやり方に近いモノがあるな・・・!!!」
そんな事を言い合いつつも三人は直ぐさま、この瞑想法をマスターしてしまいその出来栄えは青年のそれと殆ど大差ないモノであった。
「・・・・・っ!!?」
(驚いた・・・っ!!!)
蒼太は素直にそう思った、自分はこれをマスターするまで“鹿島の神”の指導の元で一ヶ月は掛かった、と言うのにこの子達は。
(幾ら下地があった、とは言えどもこの土壇場でこれだけの、自分の中に眠りし神との“一体化”を顕現出来得るなんて。これが“天才”と言うモノか・・・!!!)
「ふううぅぅぅ・・・っ!!!」
「終わりました、蒼太さんっ!!!」
「これは助かる、位置感覚が本当にハッキリとして来るな・・・っ!!!」
驚き戸惑う蒼太を他所に、三人がキャッキャッと燥(はしゃ)いでいるとー。
「・・・・・っ!!?」
「・・・・・っ!!!」
「そ、蒼太さんっ!!!」
「お客人のお出ましか・・・?」
四人が前方に何者かの気配を感じて暗闇の中で武器を取って身構えるが、それは本当に自分達まで後二十メートル程の距離にまで接近して来ており、如何に漆黒の空間の中にいた、とは言えどもなんで今まで気が付かなかったのか、自分で自分に疑問が生じる程である。
「目は瞑っておいた方が良いな・・・!!!」
「ええ、そうね。なまじ目を開けているとつい、目で見よう目で見ようとしてしまうモノだから・・・!!!」
「感覚で感じて戦った方が、より正確に相手の行動を見抜けますしね・・・!!!」
「やっこさん、数は十人前後と言ったところか、随分と甘く見られたモノだな・・・っ!!!」
四人はそう言い合うと。
次の瞬間蒼太、メリアリア、オリヴィアの三人が目を閉じたままでハウシェプスト協会の手勢を相手に疾走して行き、直後にそこかしこで戦闘が勃発した、蒼太は手にした聖剣“ナレク・アレスフィア”で、メリアリアは“聖なる茨の鞭”で、そしてオリヴィアは家宝でありずっと幾多の戦場を共にして来た両手持ちの片刃長剣“エル・パシオス”で次々と相手に踊り掛かって行くモノの、一方で。
その後方では“青き星の祈り姫”ことアウロラが直ちにスピードアップと防御能力向上と、そして攻撃力増大の補助魔法を重ね掛けしては三人の下支えに入って行った、果たして蒼太やメリアリアが予想した通りで相手は確かにある程度以上の鍛錬を積んでいる様子であり、流石にそんじょそこらの一般的な雑魚番兵とは訳が違っていたのだ。
恐らくは“カインの子供達”を除けば選りすぐりの精鋭部隊なのであろう彼等は動きも俊敏で力もそれなりに強く、現に蒼太もメリアリアもオリヴィアも、相手方が繰り出して来るナイフやレイピアによる横凪の切り払いや刺突、或いは徒手空拳を寸での所で躱しつつ、そのまま反撃に移ってカウンターで撃退する、と言う事を何度となく繰り返し続けていたのである。
暗闇の中にも関わらず短剣の刃が冷たく光り、鼻先を掠めたそれらが蒼太達の頭髪を数本、短く切り裂いては宙を舞わせた時もあった。
しかし。
「・・・・・っ!!?」
「!?!?!?!?!?」
「ぐっはああぁぁぁ・・・っ!!!」
それでもやはり、幾多の厳しい戦場と試練とを踏破して来ただけあってこの時の蒼太達の力量と経験値とは彼等よりも圧倒的に上であり能力的にも比べ物にならない位に勝っていた、現に真っ暗闇の中で、しかも目を閉じているにも関わらずにアウロラからの補助魔法を受けた蒼太達は順調にハウシェプストの手勢を撃破していった。
蒼太とオリヴィアは剣で相手の両足や太腿、そして利き腕の肩を貫いて無力化させ、その場に次々と倒れ伏せさせていったがその一方で。
メリアリアもまた負けてはいなかった、“茨の聖鞭”を縦横無尽に振り動かしては相手の喉元、もっと言ってしまえば頸動脈や気道を狙って鞭を横殴りに叩き付け、血液の流れを遮断させて鬱血させたり、或いは呼吸不全に追いやったりして順々に気絶させていったのである。
「そっちへ行ったぞ!!?」
「くそ、なんて速さだ。反応が追い付かないっ!!!」
「ちっ、ちょこまか動きやがって!!!」
次第に劣勢に追い込まれて行くハウシェプストの面々は口々にそう叫ぶモノの、しかし彼等はそれでも一歩も退かなかった、相手が何者であろうと自分達も厳しい修業に耐え抜いて来たのだ、と言う自身と自負とを持っていた彼等はだから、ましてやこの暗闇の空間内では多少、手こずる事はあったとしても必ずや、相手を撃滅出来ると信じて疑わなかったのだ。
「くそっ、なんだコイツら・・・っ!!?」
「目を瞑って戦ってやがるぞ!!?」
「そんなバカな・・・っ。げはああぁぁぁ・・・っ!!!」
「・・・・・」
(どうやら・・・。奴等は“ノクトビジョン”を使用している様だな、此方の詳細が読めている様だし。それに何より、“赤外線”が皮膚に当たる感触がするので解るぞ・・・!!!)
一人、また一人と相手を虱潰しに“制圧”しながらも蒼太が思うが果たして彼の直感通りでハウシェプストの手勢は赤外線ゴーグル型の“ノクトビジョン”を使用しており、これとこの真っ暗闇のラビリンスの感覚を封殺させて位置情報を狂わせてしまう効能とが“ラウル”を捕縛する際にも一役買った、と言う訳である。
勿論、彼等自身のレベルがそれなりにあった事も理由の一つではあったがしかし、何れにしてもネタが解ってしまえば後はどうという事は無かった、蒼太達はアッサリと十名前後の“ハウシェプスト守備隊”を沈黙させては捕虜にして、その情報を上階にある“秘密の通用口”付近で待機していた“バーナード”達へと送ると自分達は更に奥地にある、ハウシェプスト協会のルテティア支部へと向けて歩を進めて行った。
「ぐわっ!!?」
「ぎゃはあぁぁぁっ!!!」
「なんで・・・っ!!?」
途中で二度ほど、同程度の守備隊達と戦闘になったがいずれも蒼太達の圧勝であり、彼等は傷一つ付かなかった。
それどころか。
「うぎゃあああっ!!!」
「ぐああああっ!!!」
「痛ってええぇぇぇっ!!!」
「ぎゃああああっ!!?」
「おいっ!!!」
剣で殺さない様にと手加減しつつも両足の太腿と利き腕の肩とを刺し貫いたその後で、蒼太は守備隊の喉元に切っ先を突き付けて尋問した。
「つい今し方、僕らの仲間が世話になった様だけれども・・・。彼は今、何処にいる。無事なんだろうな?」
「痛っつつつ・・・っ。くっ、はっはっはっ。知った事か、そんなこと。とっくに仲間達によって始末されているだろうぜ?もしかしたなら拷問されているかもなぁっ。お前らもじきにそうなるんだ、覚悟しておけよ・・・!!!」
「そうかい・・・っ!!!」
痛みを堪えつつもふてぶてしい態度でそう応える男に対して蒼太はそれだけ告げるとー。
後は彼の鳩尾に強烈な一撃を放って“落と”させた後で、全員を集めてこう言い放った。
「この様子では彼等“外廻り組”の連中は内部の様子を知らないだろうね、何を聞いても無駄だろう・・・!!!」
「・・・確かに。嘘を付くような余裕があった様には、感じられなかったモノね!!!」
「痛みと出血によるモノ以外には、鼓動と脈拍とに変化はありませんでした・・・!!!」
「所詮は下っ端と言うわけか。しかしあと何回、コイツらと戦わねばならぬのだろうな・・・!!!」
そんな“花嫁達”の言葉を聞いた蒼太はここで、ちょっとした“搦め手”を使う事を思い付いた、彼が普段、メリアリア達に会いに行く際に使用する秘法である“陰陽・影括りの術”を用いて独自にルテティア支部へと侵入、中の様子を見定めてこよう、と言うモノであったのだ。
幸いにしてここは真っ暗闇の中である、陰になりそうな場所は幾らでもあったから“陰陽術”を駆使しても蒼太は自由に動く事が出来る、と言う訳であった。
「僕が先に潜入して、中の様子を探ってくるよ。皆はここで待機していてくれ」
「えええっ!!?それはちょっと・・・っ!!!」
「絶対ダメです、幾ら何でも危険過ぎます!!!」
「そんなの行かせられる訳無いだろう!!!」
そう言って青年が出発しようとするとしかし、愛妻達が途端にブレーキを掛けてくるモノのそんな彼女達に蒼太は一つずつ語って聞かせた、これ以上、前に進むにはまずは敵情を把握する必要がある事、“ラウル”の身の安否を確認して来なければならない事、このまま四人で突入を続行していた場合、いざという時に人質を使われてしまったりしたら却って身動きが取れなくなる事、等を順々に説いて聞かせる。
「だから取り敢えず、まずは僕がルテティア支部に潜入して“ラウル”の居場所とか、彼の状況なんかを確認してくるよ。皆はいざという時の為に、ここで待機していてくれ」
「あら、それなら・・・!!!」
とここでメリアリアが片方のツインテールを掻き上げながら言葉を発した。
「私達も出来るだけ、距離を詰めておいた方が良いんじゃないかしら?いざという時にあなたの援護も出来るし、それに・・・」
「・・・・・?」
「なんなら、私達が“囮”になってあげても良いのよ?あなた・・・!!!」
「・・・・・っ。そんなこと!!!」
「あら、それは良いですわね?」
「賛成だ、その方が敵の本拠地にも侵入しやすくなると言うモノだからな!!!」
“何をバカな事を言っているんだ!!!”と愛妻の言葉に釘を刺そうとした蒼太の方が逆に花嫁達三人からその出鼻を挫かれる事となった、近頃、蒼太との事で問題が起きると彼女達は何かと連帯する様になっており、そしてそうなると蒼太の言うことを中々聞いてくれなくなる一幕もあったのである。
「・・・ち、ちょっと待ってよ、みんな。それはヤバいよ、それだけは止めてくれマジで!!!」
「あら!!?」
するとここでもメリアリアがいの一番に威勢良く、“心外ね!!?”とでも言わんばかりの顔で夫へと向き直るがそれはまさに、“お転婆娘”の面目躍如であったのだ。
「なによ、あなたったら時分は無茶をする癖に。私達には何もするなって言うの!!!!?」
「そうです、蒼太さんは近頃無茶をし過ぎです。私達(わたくしたち)がどんなに心配をしているのか、考えて下さらないと困りますわ!!!!?」
「夫にだけ危険な役目を押し付けて、私達だけ待っていろ、等とはとても我慢がならないよ蒼太。ここは私達も一緒に暴れさせてもらうよっ!!!!!」
「それはそうだけど・・・っ。でもそれは・・・っ!!!」
「私達だって、あなたの役に立ちたいわ!!!お願いよあなた、少しくらいは手伝わせて・・・!!?」
「蒼太さんにばっかり、危険な役目を押し付けるだなんて、私達(わたくした)には耐えられないのっ。私達にだって蒼太さんの命を預けて欲しいのでせすっ!!!」
「もっと甘えても良いんだよ?蒼太。君は気を張りすぎている、夫として立派でいてくれるのは、私達には確かにとても嬉しいのだけれど・・・。でもそれだけでは寂しいもの・・・!!!」
「・・・・・」
「「「・・・・・」」」
「・・・・・」
「「「・・・・・」」」
「・・・・・」
「「「・・・・・」」」
「・・・・・」
「「「・・・・・」」」
「・・・・・」
「「「・・・・・」」」
「・・・・・」
「「「・・・・・」」」
硬い覚悟と壮絶な決意と、そして何より熱い願いを込めた瞳で自身を真っ直ぐに見つめながらもそう告げてくる愛妻達の訴えに、蒼太はもうそれ以上、何も言えなくなってしまっていた、結局のところ“解ったよ”と彼は渋々頷くと作戦を一部変更してまずはメリアリア達に敵の目を惹き付けてもらっている間に自らが術を使って内部に侵入、“ラウル”の様子を探ると言う計画に切り替えたのである(勿論、出来る事ならば彼を救出するのは言うまでもない)。
残っている敵の数は決して多くは無い、それは確かに感じる事実でありだからこそここからは慎重に慎重を期して行かなければならないのであった、何故ならば追い詰められたハウシェプスト協会の連中が事態打開の切り札として“ラウル”を使って来ないとは限らなかった為であり、そしてそれを防ぐためには早急かつ確実なる有効打を打つ必要があったのであって、その事に付いて今現在、のんびりと議論している時間的猶予は蒼太達には与えられてはいなかったのだ。
「残っているのは大体、二十名前後と言ったところだろう。ちょっと骨が折れるかも知れないけれども・・・。それでも頼むよ?どうか僕が“ラウル”を連れて戻って来るまで持ち堪えていて欲しい・・・っ!!!」
「・・・・・っ!!!」
「・・・・・っ!!!」
「・・・・・っ!!!」
「断っておくけれども・・・。くれぐれも“無茶”だけはしないでくれよ?本当に危なくなったら一時撤退してくれ。君達が無事ならば僕は嬉しいし、それに人任せにしてしまうようで申し訳ないんだけれども、必ず皆が助けに来てくれるって信じられるからね!!?だからそれだけは約束してくれ!!!」
「うん・・・っ!!!」
「・・・・・っ!!!」
「・・・・・っ!!!」
「・・・よし。じゃあ、行くよ?皆気を付けて!!!」
「ええ・・・っ!!?」
「それだけ、ですの・・・?」
「もう一言、あっても良いんじゃないか?蒼太・・・っ!!!」
「・・・・・っ。えっ?」
するとそんな花嫁達の言葉に、青年が少し驚き戸惑っていると、メリアリアが少し寂しそうに笑って夫に告げた、“違うわ、あなた・・・”とそう言って。
「それは確かに、解っているけれど・・・。でももう一言あるんじゃない?」
「・・・・・?」
「“もしもの時は一緒に死んでくれ”って、どうして言ってくれないの・・・?」
「そうですよ」
するとそれを聞いていたアウロラまでもがメリアリアに同調した。
「お気持ちは、良く解っているのですけれども・・・。私達はもう他人では無いではありませんか!!!」
「私達はいつも一つだ、君のために命を投げ出す事も厭わないつもりだよ・・・。君には意外な事だったかな?」
「そ、そんなつもりは・・・っ!!!」
「死ぬときは、一緒よ?だけど絶対に生きて帰りましょうね・・・!!!」
とどめとばかりに蒼太に向けて言葉を放ったその後で、思わずしどろもどろになってしまう花婿に対してメリアリアが静かにしかし、凄絶なまでの誓いを込めてそう言った。
「ねっ?あなた・・・っ!!!」
「メリー・・・ッ!!!」
“何て事だろう!!!”と蒼太は思わず天を仰いだ、僕の花嫁達は僕が思うよりもずっと強くて優しくて、そして暖かな人達だったんだと、こんなにまでも自分の事を愛してくれていたのだと、信じてくれていたのだと彼女達の気持ちの深くて確かなる事を思い知らされ、その思いの丈にしこたま打ちのめされてしまったのであった。
「解ったよメリー、アウロラ、オリヴィアも・・・。必ず全員で生き残ろう!!!」
「・・・・・っ。うん!!!」
「はいですっ!!!」
「勿論だ!!!」
そう頷き合うと蒼太は今後の段取りと同時に予想外の出来事が起こったり、相手が人質を出してきた場合の幾つかのプランについて彼女達と話し合い、それが済むと早速術を発動させては暗闇の中へと姿を溶け込ませていったのである。
ーーーーーーーーーーーーーー
大変長らくお待たせ致しました、漸く物語を先に進ませる事が出来ました(皆様方を混乱させてしまい、本当に申し訳御座いませんでした)尚、“神との修業”シリーズは割り込み投稿で241話、242話、243話に入れて纏めてあります、此方もお読みいただきますと今後の蒼太君達の活躍に対する理解がもう一歩、深まると思います(どうやって蒼太君が“神人化”をモノにしたのか、と言うお話です)。
暇な時にでも読んでいただければ幸いです。
敬具。
ハイパーキャノン。
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