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ガリア帝国編
神との修業 その3
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鹿島の神は別名を“建御雷神”と言ったが彼は蒼太に修業を付ける際に、この少年が余りにもクソ真面目で素直で優しい事に、ある種の危惧を抱いていた。
(この手のタイプは他人に追い込まれる、と言うよりも自分で自分を雁字搦めにして終いには身動き取れなくしてしまうのが欠点なのじゃな。要するに余りにも“真人間”過ぎる!!!)
それが建御雷神の“蒼太評”であり、しかもそれはほぼほぼ当たっていた、現に蒼太はこの一連の修業の醍醐味である、一番の極意“神人化”を遂に果たす事が出来ずにいたのだ。
真面目な性分な蒼太の事である、恐らく心の何処かでは自らを“神である”と認識する事に対する畏れがあり、それが元で失敗しているのだろうと見て取った“建御雷神”は“罷る返しの玉”の神力を使って一時的に蒼太の両親を神界へと顕現させる事とした。
最初は蒼太に再び会える、と言う事で大喜びしていた二人も、しかし詳しい話を説明されるに及んで徐々にその顔から血の気が失せて、失望と怒りが込み上げて来た。
それはそうだろう、如何に神にとは謂えども突然現れた相手から、しかもよりにもよって“愛しい我が子を殺す気で戦え”、“手心を加える事は罷り成らん!!!”等と告げられた時の清十郎と楓の気持ちは如何ばかりか。
しかし。
「御両人とも、良く聞いてもらいたい。蒼太はどっちみち、今後は背中に気を付けて生きて行かねばならなくなるのじゃ。私はその為の覚悟と力とを彼の者に授けてやりたい、そしてそれが叶わぬのであれば、逆に一思いに楽にしてやりたいのじゃ。・・・“綾壁蒼太”と言う人間に関わってしまった神としての、それがせめてもの情けであり、務めであると思っておるのじゃよ・・・!!!」
「・・・・・」
「・・・・・」
「お主達にも先祖としての責務があろう?ならばここ一番と言う今こそ力を貸してもらいたいのじゃ。・・・蒼太をもう一段階、上手の男子(おのこ)にしてやる為にのう!!!」
「・・・・・」
「・・・・・」
「彼奴(あやつ)にもう少し、逞しさと言うか、強かさを教えてやって欲しいのじゃ。それが出来るのは、御両人しかおらぬのじゃよ・・・!!!」
「・・・・・」
「・・・・・」
“解りました・・・”、“やってみせます!!!”と、鹿島の神の説得に対して漸く頷いた清十郎と楓は早速、“罷る返しの玉”の神力を以て蘇りを果たすとそのまま建御雷神に誘われつつも神界へと至り、蒼太の前に現れた、と言う次第であったが、しかし。
状況は思ったよりも良く、また悪くもあった、蒼太は自分達が指導をしていた頃よりも遥かに立派に、かつ強く鍛えられており、その身の何処にも付け入る隙を見出せなかった。
それだけではない、清十郎は心を鬼にして蒼太に重厚なる殺気を叩き付けたが、それは悉(ことごと)く受け流されて用を為さなかったのである。
その後も何度か同じように殺意の塊をぶつけてみたり、また巫女である楓が“金縛りの術”を掛けてみたモノの結果は同じで蒼太は微動だにしなかった、間違いなく彼は揺るぎない己自身を手に入れていたのであったが、しかしその一方で。
(・・・・・っ!!?)
(“いい子”に、育ち過ぎたんだ。蒼太は・・・っ!!!)
清十郎も楓も大人びて来た彼と対面してそれが良く良く思い知らされた、成る程確かにこれでは“神人化”を成し得るのはそう容易な事では決して無いだろう、そう考えた二人は。
自身の最大の技術を駆使して蒼太に相対する事とした、清十郎は“大津国流剣術”の奥義“始原法の型”を取り、楓は“蔵王権現天狗の業”をその呪力でもって顕現させる。
「蒼太、情け無い奴だ。何時からそんな“いい子ちゃん”になってしまったんだ!!!」
「男の子の癖に、なんて意気地の無い子なんだろう!!!」
「!?!?!?!?!?」
戦いが始まる前に、まずは清十郎と楓が息子に声を掛けて来た、蒼太にとっては意外だった、彼は両親達からそんな風に罵倒された事は一度として存在してはいなかったからである。
「一丁前に体だけは立派になったようだがな・・・。精神的にはいつまで経っても子供のままだな!!!」
「神の御期待にも応える事が出来ない癖に、それでも日本男児なのですか?恥を知りなさい!!!」
「な、なっ。なんだよ、急に・・・!!!」
突如として発せられた両親達のその言葉に、蒼太が怪訝な表情を浮かべていると、まずは清十郎が一挙に間合いを詰めて斬り掛かって来た。
その直後に。
「己の殻を破れ、蒼太!!!」
「・・・・・っ!!?」
ガキイイィィィンッ!!!と清十郎と蒼太の間で剣同士がぶつかり合い、火花が飛び散って鍔迫り合いが起こるモノの刃を交えた瞬間に清十郎は思わず舌を巻いていた、確かに蒼太は逞しくなっていた、単純な力では清十郎が押し返せなくなっていたのである、しかし。
「ぬおおおおおっ!!!!?」
「く・・・っ!!!」
それは清十郎一人の力では、と言う意味だった、そうだ、彼には妻である楓がいたのであり、彼女の施した筋力増強、防御力向上、スピードアップの補助魔法が遺憾なくその威力を発揮しては蒼太の鋭峰を押し戻して行った。
「どうした?蒼太よ、神人化はまだ出来んのか!!?」
「ちいぃ・・・っ!!!」
父親からの叱咤とも催促とも取れる言葉に舌打ちしつつも、それでも蒼太は“何かしなくてはならない”事は熟知していた、つい今し方、切り結んだ瞬間に改めて思い知らされたのだが両親はやはり、手心を加える気等は一切合切、無いらしい。
とすれば
「でりゃああぁぁぁっ!!!」
気合一閃、少年は覚悟を決めて父親の首を狙い澄ますと剣を横一文字に奔らせた、このまま押し切られてしまえばやられてしまう事は火を見るより明らかだったからであり“何かしなければならない”と言う事を、即ち自分で動いて行かない限りかはその現実を変える事等、絶対に出来ないのだと言う事を、若いながらに熟知していたからであったのだが、しかし。
「無駄だ!!!」
それはアッサリと躱された挙げ句にカウンターで蒼太もまた、その首を狙われる羽目となった、それを己の剣で弾き飛ばしつつも蒼太は何度も何度も噛み締める様にしてこの現実の非情さを心の中へと落とし込むが、彼が何をどう思おうともどうしたって父にも母にも迷いと言うモノは存在しておらずに本気で自分の前に試練として立ち塞がって来ているのであると理解する。
それだけではない、“父は何と強かったのだろうか”と胸の内で驚愕するが、この神界に来てからと言うもの蒼太も随分とレベルアップしている筈なのに、それでも漸く互角の戦いが出来ているに過ぎずに、攻め込む事が出来ないのである。
「どうしたのだ、蒼太よ。お前の覚悟はそんなモノかっ!!?」
「メリアリアちゃんに、会いたくは無いの?お嫁さんにするんじゃないのっ!!?」
「・・・・・っ!!!」
“巫山戯た事ばかり言いやがって!!!”と蒼太は思った、“二人とも、勝手に死んでいったクセに!!!”とこの時蒼太の中には初めて親に対する反抗心と言うか、所謂(いわゆる)一種の“謀反気”が生まれた、“男の子”から“大人の男”として心理の面でも徐々に覚醒し始めたのであった。
「もしその思いが真に本物ならば、気持ちが確かなモノならばっ!!!」
「私達を倒してみなさい、“神人化”を使ってね!!!」
そう言うが早いか清十郎は剣の切っ先を蒼太の喉元目掛けて突き立て、一方の楓は“足取りの術”と言う捕縛術を用いて蒼太の動きを牽制しようとするモノの、それを。
「巫山戯(ふざけ)んなっ!!!」
叫び様蒼太は素早く身を捩ると同時に楓の呪力を霊力を込めた右足で踏み潰してみせた、二人の連携攻撃を見事に躱して見せたのである。
「勝手な事ばかり言いやがってっ、なんだよ二人してさっさと死んでいったクセにっ!!!」
“僕の気持ちなんか解らない癖にっ!!!”と言う憤怒に突き動かされる様にして蒼太は“今、この瞬間”へと意識を集中させると清十郎と楓の動きを瞬時に読み切り、まずは父へと向けて剣閃を放った、それは胸の中央より左側、心臓を正確に捉えていたのであるがしかし。
「ふ・・・っ!!!」
楓から強化呪術を受けている今の清十郎には為す術も無く躱されてしまった、しかし蒼太は揺るがない。
「でやぁっ!!!」
「・・・・・っ!!?」
直ぐさま体勢を立て直すと地面を蹴って跳躍し、俊敏な動きで距離を詰めると同時に頭から脳天唐竹割りの体勢に入るが、それを。
「ぬうううぅぅぅぅぅっ!!!」
「ちいいいぃぃぃぃぃっ!!!」
清十郎は愛用の大剣を両手持ちで奮って防ぐとそのまま両者は鍔迫り合いを行って、一歩も退かない構えを見せる。
「・・・・・」
それを上空から腕組みしつつも見ていた“鹿島の神”はやや厳しい表情になっていた、確かに少しは“硬さ”は取れたし、両親と言う名の呪縛から解放されて独立独歩の道を歩み始めてはいるモノの、やはりどうしても蒼太の中には遠慮と言うか“両親に対する手心”が存在していて責め手が甘く、未だに腹が括り切れていない、要するに“いい子ちゃん”が抜けきれていないのだ。
今だってそうである、もし蒼太がその気になっていたのならば清十郎を討ち取る事は叶わなくともある程度押し戻す事は確実に出来た筈であり、それが現実に為されていない事が無念ですらあったのである。
しかも。
「神様っ!!!」
自分に気が付いた蒼太は戦いの最中であると言うのに尚も懇願までして来る有様であった、“こんな事は止めて欲しい”と、“両親達とは戦えない!!!”とそう告げて。
「堪えるのじゃ、蒼太よ!!!」
それに対して鹿島の神はやや厳しめに、気迫を込めてこう叫んだ。
「もしここで死ぬようであればお主は所詮、そこまでの人間であったと言うことじゃ。どうせこの先待ち受けている試練に耐え得る事なぞ、到底出来ぬじゃろうからな。それならばいっその事、ここで引導を渡してやる事こそが、お前と言う人間に関わりを持ってしまった神としての、せめてもの温情なのかも知れん・・・!!!」
「・・・・・っ!!!!!」
(な、なんだよ。それ・・・っ!!!)
「さあ蒼太よ、戦えっ。存分にやれいっ!!!」
「来い、蒼太よ。そんな体たらくでは到底、“神人化”等モノにする事は出来んぞっ!!?」
「蒼太、いい加減に覚悟を決めなさい。お母さんはお前をそんな風に育てた覚えはありませんよっ!!?」
「くうぅぅ・・・っ!!!」
蒼太は焦った、それと同時に段々腹が立って来た、皆勝手な事を言う、人の気も知らないでと、フツフツとある種の怒りが沸き上がって来たのである。
「どうした?蒼太、そこまでか!!?」
「お前の人生はここまで止まりだったのか!!?お父さんはガッカリだぞ!!!」
「とんでもない親不孝者だよ、お前は!!!」
「・・・・・」
それらの言葉を聞いた瞬間、蒼太の中で何かがプツッと音を立てて切れてしまった、そしてそれを境目にして蒼太は徐々に自身のストッパーを解除して行った。
この時まで彼は内心、どうしたって自分なんかが神に等なれる訳が無いと、そんな事を思うのは神々に対していっそ失礼な事なのだと思ってしまっていたのである、神とは本当に素晴らしい存在であり人類の遥かに先を行く偉大な先達でもある、そんな神々と同列になる事を、神人化なんて畏れ多い事を本当に自分ごときがやって良いのか、そんな資格があるものなのか?と自分自身を卑下する思い、所謂(いわゆる)一種の“自己否定意識”に端を発する自問自答を繰り返し続けていたのであった。
それだけではない、蒼太は無意識の内に“自分は一人の人間なのだ”、“自分自身の分を守って生きて行く事が何より大切な事なのだ”と言う枷を何重にも渡って作り上げ、それで己を雁字搦めにしてしまっていたのであった、“絶対に調子に乗って、大それた事を考えてはいけない”と、その事ばかりを肝に銘じて生きて来た訳なのであるが、ここに来てそれらが全て吹っ飛んで行った。
“巫山戯た事ばかり言いやがって”、“誰も自分の気持ちなんて解ってはくれないんだ!!!”と言う一抹の寂しさと、口々に好き勝手な事を言い放って自分を煽り立てて来る神や両親達に対する憤懣遣る方ない怒りとがここに来て彼のいい子ちゃんの部分を完璧に破壊して行った、“そんなモノかだと!!?”、“今まで僕がどれだけ頑張って来たのか解らないだろう!!!”と心底そう考えた彼は“もうどうにでもなれ!!!”と半ばヤケクソになりながらも、それでも漸くにして素直に自分自身を解放させて、感じるままに己の中の神の部分を認識させて行くに至ったのだ。
(確かなモノは自分自身だけ。自分の中に神が居る、こんなにも熱くて大きく、力強い神が!!!ああ、僕は。なんで今まで気が付かなかったのだろう、なんで今まで自分で自分を否定し続けてしまっていたのだろう!!!!!)
その思いは自然自然と増大して行き、彼に己の中の神を認識させるに留まらず“己が丸ごと神なのだ”、“神の化身なのだ”と言う事を確信させるに至って行った。
すると直後に。
「・・・・・っ!!?」
(これは・・・っ!!!)
自分の中から光と同時に“比類無き暖かさ”が沸き上がって来たと思ったら次の瞬間、それが一気に周囲に拡散して行った、オーラが分厚く高質化して脳が一気に覚醒し、意識は恐ろしく安らかで落ち着いているのに頭が妙にハッキリと澄み渡って行く。
周囲の時間がゆっくりと流れるかのような感覚に襲われて耳に聞こえる音が大きくなり、空間認識能力が増大して辺りの様子が悉く、手に取る様に理解する事が出来るようになったのだ。
「・・・・・っ!!?」
「・・・・・っ!!!」
「よくやった・・・っ!!!」
それを見ていた両親達は唖然とし、建御雷神は満足した表情で頷いた、そこには長く伸びた頭髪を左右対称に結わき、首には八尺瓊勾玉の首飾りを掛けて腰に“十拳の剣”を佩いた、一柱の神が立っていたのである。
「・・・・・っ!!?」
その自らの変化に一番、驚いていたのは他ならぬ蒼太自身であった、今の自分の状態が信じられなくて自分で自分の手を見たり、足下を見渡したりしてキョロキョロとしていたのであるが、そんな彼に。
再び清十郎が剣を振り上げて迫って来た、建御雷神が目で合図を送ったのである、“構わぬ”と、“存分にやれい!!!”と。
しかし。
「・・・・・っ!!!!?」
“神人化”した我が子を間合いに捉えて切っ先を振り下ろそうとした清十郎だったが、気が付いた時にはもう、その場所から吹き飛ばされてしまっていた、彼はこの時、自分が何をされたのかが全く知覚出来ずにいたのだが、それに続いて。
「きゃあああぁぁぁぁぁっ!!!!?」
呪術を発動させようとしていた楓までもが同じように弾き飛ばされ、清十郎の近くにまで宙を舞って落着した、蒼太の“神威”が二人を捉えてその形作られた力場ごと撥ね付けてしまったのである。
「・・・・・っ。く、くっ!!!」
「・・・くううぅぅぅっ!!!」
苦しそうな面持ちとなる二人であったが清十郎は既に起き上がって剣を構え、また楓も楓で攻撃を防御する為の結界を張り巡らせていた、それだけでは無い、剣士として名を馳せていた清十郎も、また巫女として卓越した手腕を誇っていた楓もそれぞれの“奥の手”を用意していたのである、即ち。
“大津国流剣術”の極意の一つ“神聖・黒龍衝波”と“蔵王権現呪術”の秘法である“篝山彦”だ、この内“黒龍衝波”は龍神の中でも金龍と並んで最高峰の力を持つと言われている“黒龍”のオーラ波動を我が身に取り入れて莫大なまでの霊力となし、それを剣身に纏わせた状態から解き放たれる渾身の一撃であり、もう一方の“篝山彦”は単に相手の攻撃エネルギーを防ぐのみならず、それを残らず吸収して己の力に変換してしまう、と言う厄介な効能を持っていた。
ところが。
「ぐわああぁぁぁっ!!!!?」
「きゃあああああっ!!!!!」
結果は全く同じであり、防御を完璧なモノにした上で先手を打って攻撃を仕掛けたのは確かに清十郎達の方だったにも関わらず、またもその場から一掃されたのもまた、彼等の方だった、“黒龍衝波”は打ち破られ“篝山彦”も同様に雲散霧消してしまったのである。
理由は至って簡単であり、如何に神や天狗の力を借りている、とは言っても清十郎や楓はあくまでもそれらを己の“霊力”に直して使っていたのに対して蒼太の場合は直接“神力そのもの”を活用していたのであった、加えて。
“神の波動”と言うのは極めて高次元かつ強力なモノであり、この宇宙全体を劈(つんざ)いて存在している超自然法則そのモノの体現と言っても良かったがそれ故に、まだ未熟で無知なる領域を残している人間がそれを不用意に吸収しようとしても成し遂げられずに逆に弾き飛ばされてしまうのである。
如何に優れた巫女である楓と言えどもこればかりは例外では無くて、彼女は例えるならば巨大な滝の水柱を金魚鉢で全て受け止めようとしてしまったのであり、その結果として叶わずにその怒濤の衝撃をモロに受けたのみならず、鉢そのものすら破壊されてしまった、と言う訳であったのだ。
「・・・・・っ!!?」
「うぅぅ・・・っ!!!」
「・・・・・」
(ここまでじゃな・・・!!!)
そんな清十郎と楓の様子を眺めていた鹿島の神は蒼太を制止した、“もう良い”と、“よくやったぞ、蒼太!!!”とそう言って。
「お主は立派に“神人化”を成し遂げたのじゃ、両親に感謝せい!!!」
「・・・・・っ。はい、神様」
神の言葉にそう頷くと、蒼太はまだ片膝を付いたままでいる両親達の元へと赴き、“有り難う御座いました・・・!!!”とだけ告げた、本当はもう一度だけ抱き着きたいと思ったが、同時に“それは甘えでは無いか?”と言う考えが浮かんで来た為に、グッと堪えて二人を見つめる。
しかし。
「ほれ、お主。また頭で考えておるな?こう言う場合は自分の心に従(したご)うた方が良いぞ?」
「神様、しかし・・・!!!」
「お主が生前でこの者達と会えるのは、恐らくこれが最後となろう。存分にいたせ?」
「・・・・・」
そう言って鹿島の神は蒼太の肩をポン、と叩いて両親達へと向けて押してやったが、そんな神の計らいに彼は心底感謝した、感謝してそして。
「・・・・・」
「蒼太・・・っ!!!」
「蒼太、立派になって・・・っ!!!」
もう一度だけ、両親達に抱き着いた、今度はもう、涙は流れ落ちたりしなった、彼は彼なりに漸くにして二人にお別れを済ませる事が出来たのである。
その最中。
「蒼太よ、私達はお前に一つ、告げておかなくてはならない事がある・・・」
「お前にもそろそろ、真実を語り聞かせても良いでしょうからね・・・」
清十郎と楓とが不意に真顔となって蒼太に告げるがそれによると、自分達を殺害したのは“アレクセイ・デュマ”と言う男だ、との事だったのである。
「アレクセイ・デュマ?」
「そうだ、蒼太よ。お前もいずれ戦う事になるかも知れないから、よくよく覚えておくと良いが・・・。アイツは、デュマは恐ろしい男だぞ?私のみならず、楓までをもその手に掛けたのだからな・・・!!!」
「・・・・・」
「・・・・・っ!!!どう言う、事なのさ。母さんは病気で死んだんじゃ、無かったの・・・!!?」
「わしが、見せてやろう。蒼太・・・!!!」
するとそれまで黙って親子の会話を聞いていた神がそう言って間に割って入り、蒼太のおでこに指を翳す、そうしておいてー。
何やら、呪(まじな)いの言葉を唱えると不思議な事に蒼太の頭の中にある情景がハッキリと浮かび上がって来た、そこには。
楓の呪術的援護を受けた清十郎が、ミラベルからの特命を受けてガリア帝国とプロイセン大帝国の国境沿いの街や村々に派遣された事、そこでデュマと遭遇し戦闘になった事、デュマが周辺の街や村々の人々を人質に取って清十郎に迫り、父を殺害した後で呪術的に彼を擁護していた楓にまでも呪いを掛けて呪殺した事、等が有り有りと浮かび上がって来たのであった。
「この男がアレクセイ・デュマじゃ。いずれお主は戦う事になろうが、良いか?その時はこの男の事を、間違(まちご)うても人間だ、等とは思うで無いぞ!!?」
「アレクセイ・デュマ・・・!!!」
この時。
まだ少年だった蒼太の心に始めて、耐え難い程の、そして堪え難い程の怒りと憎しみの心がフツフツと湧き上がって来た、“父を汚い手段で抹殺した挙げ句、母までをも・・・!!!”と己の全てからデュマを唾棄し、呪い、侮蔑する。
「こりゃ、蒼太よ。怒りに飲み込まれてはならん。何のための“想念観察”なんじゃ!!!」
「神様、僕はコイツを、デュマを絶対に許さないっ。絶対に、絶対に・・・っ!!!」
「うーむ、まだちと早かったかのう。今のお主ならば大丈夫じゃろうと踏んだのじゃが・・・!!!」
「・・・・・っ。大丈夫です、神様。僕なら大丈夫ですから!!!」
すると蒼太はハッと我に返ると慌てて想念を受け流し始めるモノの、それを見た鹿島の神も清十郎も楓も、“うむ・・・”と頷いてニッコリと微笑んだ。
「良い子じゃ。それで良い、それでな」
「だが蒼太よ。デュマにはくれぐれも気を付けるのだぞ!!?」
「私達を死に追いやった策謀能力と執念深さ。そして何よりその実力は、確かに本物でしたからね!!!」
「・・・・・」
“解ったよ父さん、母さん”と言うと蒼太は二人から離れて後退り、まるで“忘れまい”とでもするかの様に、今度は二人の姿をマジマジと見据える様にした。
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「さて、と。それではそろそろ別れの時じゃな・・・!!!」
「神よ、感謝します・・・!!!」
「私達をこの子にもう一度だけ会わせていただけた事。誠に嬉しく思います・・・っ!!!」
「うむ。ご苦労だったな?さあ元の世界へと帰るが良い・・・!!!」
神がそう言われるや否や、二人の身体が徐々に透明に透けて行き、気配も淡いモノへとなって来る。
“霊界へと帰るのだな”と、神人化していた蒼太にはそんな両親達の次元を超えた波動の移ろいを感知する事がハッキリと出来ていたのだ。
「蒼太、頑張るのだぞ?蒼太・・・っ!!!」
「体に、気を付けてね?蒼太・・・っ!!!」
「父さん、母さん!!!」
“有り難う・・・!!!”と二人の姿が完全に消え失せてしまう直前に蒼太が改めて礼を言うと、清十郎も楓もニッコリと微笑んでそのまま成仏していった。
「・・・・・」
「さて・・・」
“神様”と、何事か言い掛けた神の言葉を蒼太が遮る。
「なんじゃ?」
「・・・・・。有り難う、御座いました!!!」
蒼太がそう言って、改めて深々と頭を下げるがそれを見ていた建御雷神は無言で目を閉じ、静寂を貫いていた、どうやら何事か、考え事をしている様子であったが、暫くすると口を開いて語り始める。
「お主、“有り難う”の言葉の意味を知っておるか?知らぬじゃろうな、それはとてもとても尊くて大切な言葉なんじゃ」
「・・・・・」
“お主もいつか、気付くと良いのう”と呟くように彼に告げると神はまた蒼太に修業を課し始めた、曰く。
「“神人化”を何時でも好きな時に好きな様に出来る様になれ!!!」
との事であり、蒼太はそれを自在に熟せる様になるまでに更に半年間を要したのである、そうしてー。
晴れて全ての鍛錬を終えた彼は立派な青年の姿となって“時渡り”を行っては現実世界に帰還して行ったのである。
もっとも。
“彼”が元いた世界でメリアリア達と再会出来るのは、もう少し後の話であり、蒼太はこの後並行世界にあるパラレルワールドの世界線“ガイア・マキナ”へと飛ばされて、そこで本格的な戦闘を経験する事となるのであった。
ーーーーーーーーーーーーーー
“神の波動”とは何なのか、と言うと、それは極限にまで純化された光の高次元エネルギーです。
そしてその大元にあるのは“大いなる感謝と愛”ただそれのみなのだそうですが、それ故に邪神や悪鬼羅刹と言った闇の存在、はたまた低次元で余計な事ばかり考えている邪な霊魂や人間達と言うのは神の波動を吸収する事が出来ません(この内特に、邪神や悪鬼羅刹と言うのは人々の放つ悲しみや苦しみ、憎しみや恨みと言った負の感情エネルギーを食べて自らの糧としている為に、それとは正反対の神の波動とは決して相容れないのです)。
それは丁度、超甘党の人に激辛ラーメンを勧めたり、はたまたもっと詳しく言ってしまえば自身の体に酒を分解する効能や酵素を持っていない赤ん坊や犬畜生に酒を無理矢理、それも大量に与える事と同義語であり、結果として対象の“ショック死”を引き起こしてしまうそうです(高次元の光のエネルギーを受け入れられる準備、器の整っていない存在に無理矢理その波動を注入すると、それと同じ事が起きるのだそうです)。
その為に蒼太君が“神人化”している場合は“神威”のエネルギーを吸収される事はありません(特に神々や蒼太君は“想念観察”を行って、己の波動と想念とを完全に分離している為に、神威に“排他的意志”や“攻撃意識”が混ざり込む事はありません。あれは“純粋波動”とでも言うべき高次元の光エネルギーの、怒濤の様な奔流の集束されたモノなのです)、ただし“人間形態”の場合は話は別になります(人間の形態の場合には人間や霊魂同士のエネルギーのやり取りなので、場合によっては自身の波動を相手に吸収されてしまう事もあり得ます)。
(この手のタイプは他人に追い込まれる、と言うよりも自分で自分を雁字搦めにして終いには身動き取れなくしてしまうのが欠点なのじゃな。要するに余りにも“真人間”過ぎる!!!)
それが建御雷神の“蒼太評”であり、しかもそれはほぼほぼ当たっていた、現に蒼太はこの一連の修業の醍醐味である、一番の極意“神人化”を遂に果たす事が出来ずにいたのだ。
真面目な性分な蒼太の事である、恐らく心の何処かでは自らを“神である”と認識する事に対する畏れがあり、それが元で失敗しているのだろうと見て取った“建御雷神”は“罷る返しの玉”の神力を使って一時的に蒼太の両親を神界へと顕現させる事とした。
最初は蒼太に再び会える、と言う事で大喜びしていた二人も、しかし詳しい話を説明されるに及んで徐々にその顔から血の気が失せて、失望と怒りが込み上げて来た。
それはそうだろう、如何に神にとは謂えども突然現れた相手から、しかもよりにもよって“愛しい我が子を殺す気で戦え”、“手心を加える事は罷り成らん!!!”等と告げられた時の清十郎と楓の気持ちは如何ばかりか。
しかし。
「御両人とも、良く聞いてもらいたい。蒼太はどっちみち、今後は背中に気を付けて生きて行かねばならなくなるのじゃ。私はその為の覚悟と力とを彼の者に授けてやりたい、そしてそれが叶わぬのであれば、逆に一思いに楽にしてやりたいのじゃ。・・・“綾壁蒼太”と言う人間に関わってしまった神としての、それがせめてもの情けであり、務めであると思っておるのじゃよ・・・!!!」
「・・・・・」
「・・・・・」
「お主達にも先祖としての責務があろう?ならばここ一番と言う今こそ力を貸してもらいたいのじゃ。・・・蒼太をもう一段階、上手の男子(おのこ)にしてやる為にのう!!!」
「・・・・・」
「・・・・・」
「彼奴(あやつ)にもう少し、逞しさと言うか、強かさを教えてやって欲しいのじゃ。それが出来るのは、御両人しかおらぬのじゃよ・・・!!!」
「・・・・・」
「・・・・・」
“解りました・・・”、“やってみせます!!!”と、鹿島の神の説得に対して漸く頷いた清十郎と楓は早速、“罷る返しの玉”の神力を以て蘇りを果たすとそのまま建御雷神に誘われつつも神界へと至り、蒼太の前に現れた、と言う次第であったが、しかし。
状況は思ったよりも良く、また悪くもあった、蒼太は自分達が指導をしていた頃よりも遥かに立派に、かつ強く鍛えられており、その身の何処にも付け入る隙を見出せなかった。
それだけではない、清十郎は心を鬼にして蒼太に重厚なる殺気を叩き付けたが、それは悉(ことごと)く受け流されて用を為さなかったのである。
その後も何度か同じように殺意の塊をぶつけてみたり、また巫女である楓が“金縛りの術”を掛けてみたモノの結果は同じで蒼太は微動だにしなかった、間違いなく彼は揺るぎない己自身を手に入れていたのであったが、しかしその一方で。
(・・・・・っ!!?)
(“いい子”に、育ち過ぎたんだ。蒼太は・・・っ!!!)
清十郎も楓も大人びて来た彼と対面してそれが良く良く思い知らされた、成る程確かにこれでは“神人化”を成し得るのはそう容易な事では決して無いだろう、そう考えた二人は。
自身の最大の技術を駆使して蒼太に相対する事とした、清十郎は“大津国流剣術”の奥義“始原法の型”を取り、楓は“蔵王権現天狗の業”をその呪力でもって顕現させる。
「蒼太、情け無い奴だ。何時からそんな“いい子ちゃん”になってしまったんだ!!!」
「男の子の癖に、なんて意気地の無い子なんだろう!!!」
「!?!?!?!?!?」
戦いが始まる前に、まずは清十郎と楓が息子に声を掛けて来た、蒼太にとっては意外だった、彼は両親達からそんな風に罵倒された事は一度として存在してはいなかったからである。
「一丁前に体だけは立派になったようだがな・・・。精神的にはいつまで経っても子供のままだな!!!」
「神の御期待にも応える事が出来ない癖に、それでも日本男児なのですか?恥を知りなさい!!!」
「な、なっ。なんだよ、急に・・・!!!」
突如として発せられた両親達のその言葉に、蒼太が怪訝な表情を浮かべていると、まずは清十郎が一挙に間合いを詰めて斬り掛かって来た。
その直後に。
「己の殻を破れ、蒼太!!!」
「・・・・・っ!!?」
ガキイイィィィンッ!!!と清十郎と蒼太の間で剣同士がぶつかり合い、火花が飛び散って鍔迫り合いが起こるモノの刃を交えた瞬間に清十郎は思わず舌を巻いていた、確かに蒼太は逞しくなっていた、単純な力では清十郎が押し返せなくなっていたのである、しかし。
「ぬおおおおおっ!!!!?」
「く・・・っ!!!」
それは清十郎一人の力では、と言う意味だった、そうだ、彼には妻である楓がいたのであり、彼女の施した筋力増強、防御力向上、スピードアップの補助魔法が遺憾なくその威力を発揮しては蒼太の鋭峰を押し戻して行った。
「どうした?蒼太よ、神人化はまだ出来んのか!!?」
「ちいぃ・・・っ!!!」
父親からの叱咤とも催促とも取れる言葉に舌打ちしつつも、それでも蒼太は“何かしなくてはならない”事は熟知していた、つい今し方、切り結んだ瞬間に改めて思い知らされたのだが両親はやはり、手心を加える気等は一切合切、無いらしい。
とすれば
「でりゃああぁぁぁっ!!!」
気合一閃、少年は覚悟を決めて父親の首を狙い澄ますと剣を横一文字に奔らせた、このまま押し切られてしまえばやられてしまう事は火を見るより明らかだったからであり“何かしなければならない”と言う事を、即ち自分で動いて行かない限りかはその現実を変える事等、絶対に出来ないのだと言う事を、若いながらに熟知していたからであったのだが、しかし。
「無駄だ!!!」
それはアッサリと躱された挙げ句にカウンターで蒼太もまた、その首を狙われる羽目となった、それを己の剣で弾き飛ばしつつも蒼太は何度も何度も噛み締める様にしてこの現実の非情さを心の中へと落とし込むが、彼が何をどう思おうともどうしたって父にも母にも迷いと言うモノは存在しておらずに本気で自分の前に試練として立ち塞がって来ているのであると理解する。
それだけではない、“父は何と強かったのだろうか”と胸の内で驚愕するが、この神界に来てからと言うもの蒼太も随分とレベルアップしている筈なのに、それでも漸く互角の戦いが出来ているに過ぎずに、攻め込む事が出来ないのである。
「どうしたのだ、蒼太よ。お前の覚悟はそんなモノかっ!!?」
「メリアリアちゃんに、会いたくは無いの?お嫁さんにするんじゃないのっ!!?」
「・・・・・っ!!!」
“巫山戯た事ばかり言いやがって!!!”と蒼太は思った、“二人とも、勝手に死んでいったクセに!!!”とこの時蒼太の中には初めて親に対する反抗心と言うか、所謂(いわゆる)一種の“謀反気”が生まれた、“男の子”から“大人の男”として心理の面でも徐々に覚醒し始めたのであった。
「もしその思いが真に本物ならば、気持ちが確かなモノならばっ!!!」
「私達を倒してみなさい、“神人化”を使ってね!!!」
そう言うが早いか清十郎は剣の切っ先を蒼太の喉元目掛けて突き立て、一方の楓は“足取りの術”と言う捕縛術を用いて蒼太の動きを牽制しようとするモノの、それを。
「巫山戯(ふざけ)んなっ!!!」
叫び様蒼太は素早く身を捩ると同時に楓の呪力を霊力を込めた右足で踏み潰してみせた、二人の連携攻撃を見事に躱して見せたのである。
「勝手な事ばかり言いやがってっ、なんだよ二人してさっさと死んでいったクセにっ!!!」
“僕の気持ちなんか解らない癖にっ!!!”と言う憤怒に突き動かされる様にして蒼太は“今、この瞬間”へと意識を集中させると清十郎と楓の動きを瞬時に読み切り、まずは父へと向けて剣閃を放った、それは胸の中央より左側、心臓を正確に捉えていたのであるがしかし。
「ふ・・・っ!!!」
楓から強化呪術を受けている今の清十郎には為す術も無く躱されてしまった、しかし蒼太は揺るがない。
「でやぁっ!!!」
「・・・・・っ!!?」
直ぐさま体勢を立て直すと地面を蹴って跳躍し、俊敏な動きで距離を詰めると同時に頭から脳天唐竹割りの体勢に入るが、それを。
「ぬうううぅぅぅぅぅっ!!!」
「ちいいいぃぃぃぃぃっ!!!」
清十郎は愛用の大剣を両手持ちで奮って防ぐとそのまま両者は鍔迫り合いを行って、一歩も退かない構えを見せる。
「・・・・・」
それを上空から腕組みしつつも見ていた“鹿島の神”はやや厳しい表情になっていた、確かに少しは“硬さ”は取れたし、両親と言う名の呪縛から解放されて独立独歩の道を歩み始めてはいるモノの、やはりどうしても蒼太の中には遠慮と言うか“両親に対する手心”が存在していて責め手が甘く、未だに腹が括り切れていない、要するに“いい子ちゃん”が抜けきれていないのだ。
今だってそうである、もし蒼太がその気になっていたのならば清十郎を討ち取る事は叶わなくともある程度押し戻す事は確実に出来た筈であり、それが現実に為されていない事が無念ですらあったのである。
しかも。
「神様っ!!!」
自分に気が付いた蒼太は戦いの最中であると言うのに尚も懇願までして来る有様であった、“こんな事は止めて欲しい”と、“両親達とは戦えない!!!”とそう告げて。
「堪えるのじゃ、蒼太よ!!!」
それに対して鹿島の神はやや厳しめに、気迫を込めてこう叫んだ。
「もしここで死ぬようであればお主は所詮、そこまでの人間であったと言うことじゃ。どうせこの先待ち受けている試練に耐え得る事なぞ、到底出来ぬじゃろうからな。それならばいっその事、ここで引導を渡してやる事こそが、お前と言う人間に関わりを持ってしまった神としての、せめてもの温情なのかも知れん・・・!!!」
「・・・・・っ!!!!!」
(な、なんだよ。それ・・・っ!!!)
「さあ蒼太よ、戦えっ。存分にやれいっ!!!」
「来い、蒼太よ。そんな体たらくでは到底、“神人化”等モノにする事は出来んぞっ!!?」
「蒼太、いい加減に覚悟を決めなさい。お母さんはお前をそんな風に育てた覚えはありませんよっ!!?」
「くうぅぅ・・・っ!!!」
蒼太は焦った、それと同時に段々腹が立って来た、皆勝手な事を言う、人の気も知らないでと、フツフツとある種の怒りが沸き上がって来たのである。
「どうした?蒼太、そこまでか!!?」
「お前の人生はここまで止まりだったのか!!?お父さんはガッカリだぞ!!!」
「とんでもない親不孝者だよ、お前は!!!」
「・・・・・」
それらの言葉を聞いた瞬間、蒼太の中で何かがプツッと音を立てて切れてしまった、そしてそれを境目にして蒼太は徐々に自身のストッパーを解除して行った。
この時まで彼は内心、どうしたって自分なんかが神に等なれる訳が無いと、そんな事を思うのは神々に対していっそ失礼な事なのだと思ってしまっていたのである、神とは本当に素晴らしい存在であり人類の遥かに先を行く偉大な先達でもある、そんな神々と同列になる事を、神人化なんて畏れ多い事を本当に自分ごときがやって良いのか、そんな資格があるものなのか?と自分自身を卑下する思い、所謂(いわゆる)一種の“自己否定意識”に端を発する自問自答を繰り返し続けていたのであった。
それだけではない、蒼太は無意識の内に“自分は一人の人間なのだ”、“自分自身の分を守って生きて行く事が何より大切な事なのだ”と言う枷を何重にも渡って作り上げ、それで己を雁字搦めにしてしまっていたのであった、“絶対に調子に乗って、大それた事を考えてはいけない”と、その事ばかりを肝に銘じて生きて来た訳なのであるが、ここに来てそれらが全て吹っ飛んで行った。
“巫山戯た事ばかり言いやがって”、“誰も自分の気持ちなんて解ってはくれないんだ!!!”と言う一抹の寂しさと、口々に好き勝手な事を言い放って自分を煽り立てて来る神や両親達に対する憤懣遣る方ない怒りとがここに来て彼のいい子ちゃんの部分を完璧に破壊して行った、“そんなモノかだと!!?”、“今まで僕がどれだけ頑張って来たのか解らないだろう!!!”と心底そう考えた彼は“もうどうにでもなれ!!!”と半ばヤケクソになりながらも、それでも漸くにして素直に自分自身を解放させて、感じるままに己の中の神の部分を認識させて行くに至ったのだ。
(確かなモノは自分自身だけ。自分の中に神が居る、こんなにも熱くて大きく、力強い神が!!!ああ、僕は。なんで今まで気が付かなかったのだろう、なんで今まで自分で自分を否定し続けてしまっていたのだろう!!!!!)
その思いは自然自然と増大して行き、彼に己の中の神を認識させるに留まらず“己が丸ごと神なのだ”、“神の化身なのだ”と言う事を確信させるに至って行った。
すると直後に。
「・・・・・っ!!?」
(これは・・・っ!!!)
自分の中から光と同時に“比類無き暖かさ”が沸き上がって来たと思ったら次の瞬間、それが一気に周囲に拡散して行った、オーラが分厚く高質化して脳が一気に覚醒し、意識は恐ろしく安らかで落ち着いているのに頭が妙にハッキリと澄み渡って行く。
周囲の時間がゆっくりと流れるかのような感覚に襲われて耳に聞こえる音が大きくなり、空間認識能力が増大して辺りの様子が悉く、手に取る様に理解する事が出来るようになったのだ。
「・・・・・っ!!?」
「・・・・・っ!!!」
「よくやった・・・っ!!!」
それを見ていた両親達は唖然とし、建御雷神は満足した表情で頷いた、そこには長く伸びた頭髪を左右対称に結わき、首には八尺瓊勾玉の首飾りを掛けて腰に“十拳の剣”を佩いた、一柱の神が立っていたのである。
「・・・・・っ!!?」
その自らの変化に一番、驚いていたのは他ならぬ蒼太自身であった、今の自分の状態が信じられなくて自分で自分の手を見たり、足下を見渡したりしてキョロキョロとしていたのであるが、そんな彼に。
再び清十郎が剣を振り上げて迫って来た、建御雷神が目で合図を送ったのである、“構わぬ”と、“存分にやれい!!!”と。
しかし。
「・・・・・っ!!!!?」
“神人化”した我が子を間合いに捉えて切っ先を振り下ろそうとした清十郎だったが、気が付いた時にはもう、その場所から吹き飛ばされてしまっていた、彼はこの時、自分が何をされたのかが全く知覚出来ずにいたのだが、それに続いて。
「きゃあああぁぁぁぁぁっ!!!!?」
呪術を発動させようとしていた楓までもが同じように弾き飛ばされ、清十郎の近くにまで宙を舞って落着した、蒼太の“神威”が二人を捉えてその形作られた力場ごと撥ね付けてしまったのである。
「・・・・・っ。く、くっ!!!」
「・・・くううぅぅぅっ!!!」
苦しそうな面持ちとなる二人であったが清十郎は既に起き上がって剣を構え、また楓も楓で攻撃を防御する為の結界を張り巡らせていた、それだけでは無い、剣士として名を馳せていた清十郎も、また巫女として卓越した手腕を誇っていた楓もそれぞれの“奥の手”を用意していたのである、即ち。
“大津国流剣術”の極意の一つ“神聖・黒龍衝波”と“蔵王権現呪術”の秘法である“篝山彦”だ、この内“黒龍衝波”は龍神の中でも金龍と並んで最高峰の力を持つと言われている“黒龍”のオーラ波動を我が身に取り入れて莫大なまでの霊力となし、それを剣身に纏わせた状態から解き放たれる渾身の一撃であり、もう一方の“篝山彦”は単に相手の攻撃エネルギーを防ぐのみならず、それを残らず吸収して己の力に変換してしまう、と言う厄介な効能を持っていた。
ところが。
「ぐわああぁぁぁっ!!!!?」
「きゃあああああっ!!!!!」
結果は全く同じであり、防御を完璧なモノにした上で先手を打って攻撃を仕掛けたのは確かに清十郎達の方だったにも関わらず、またもその場から一掃されたのもまた、彼等の方だった、“黒龍衝波”は打ち破られ“篝山彦”も同様に雲散霧消してしまったのである。
理由は至って簡単であり、如何に神や天狗の力を借りている、とは言っても清十郎や楓はあくまでもそれらを己の“霊力”に直して使っていたのに対して蒼太の場合は直接“神力そのもの”を活用していたのであった、加えて。
“神の波動”と言うのは極めて高次元かつ強力なモノであり、この宇宙全体を劈(つんざ)いて存在している超自然法則そのモノの体現と言っても良かったがそれ故に、まだ未熟で無知なる領域を残している人間がそれを不用意に吸収しようとしても成し遂げられずに逆に弾き飛ばされてしまうのである。
如何に優れた巫女である楓と言えどもこればかりは例外では無くて、彼女は例えるならば巨大な滝の水柱を金魚鉢で全て受け止めようとしてしまったのであり、その結果として叶わずにその怒濤の衝撃をモロに受けたのみならず、鉢そのものすら破壊されてしまった、と言う訳であったのだ。
「・・・・・っ!!?」
「うぅぅ・・・っ!!!」
「・・・・・」
(ここまでじゃな・・・!!!)
そんな清十郎と楓の様子を眺めていた鹿島の神は蒼太を制止した、“もう良い”と、“よくやったぞ、蒼太!!!”とそう言って。
「お主は立派に“神人化”を成し遂げたのじゃ、両親に感謝せい!!!」
「・・・・・っ。はい、神様」
神の言葉にそう頷くと、蒼太はまだ片膝を付いたままでいる両親達の元へと赴き、“有り難う御座いました・・・!!!”とだけ告げた、本当はもう一度だけ抱き着きたいと思ったが、同時に“それは甘えでは無いか?”と言う考えが浮かんで来た為に、グッと堪えて二人を見つめる。
しかし。
「ほれ、お主。また頭で考えておるな?こう言う場合は自分の心に従(したご)うた方が良いぞ?」
「神様、しかし・・・!!!」
「お主が生前でこの者達と会えるのは、恐らくこれが最後となろう。存分にいたせ?」
「・・・・・」
そう言って鹿島の神は蒼太の肩をポン、と叩いて両親達へと向けて押してやったが、そんな神の計らいに彼は心底感謝した、感謝してそして。
「・・・・・」
「蒼太・・・っ!!!」
「蒼太、立派になって・・・っ!!!」
もう一度だけ、両親達に抱き着いた、今度はもう、涙は流れ落ちたりしなった、彼は彼なりに漸くにして二人にお別れを済ませる事が出来たのである。
その最中。
「蒼太よ、私達はお前に一つ、告げておかなくてはならない事がある・・・」
「お前にもそろそろ、真実を語り聞かせても良いでしょうからね・・・」
清十郎と楓とが不意に真顔となって蒼太に告げるがそれによると、自分達を殺害したのは“アレクセイ・デュマ”と言う男だ、との事だったのである。
「アレクセイ・デュマ?」
「そうだ、蒼太よ。お前もいずれ戦う事になるかも知れないから、よくよく覚えておくと良いが・・・。アイツは、デュマは恐ろしい男だぞ?私のみならず、楓までをもその手に掛けたのだからな・・・!!!」
「・・・・・」
「・・・・・っ!!!どう言う、事なのさ。母さんは病気で死んだんじゃ、無かったの・・・!!?」
「わしが、見せてやろう。蒼太・・・!!!」
するとそれまで黙って親子の会話を聞いていた神がそう言って間に割って入り、蒼太のおでこに指を翳す、そうしておいてー。
何やら、呪(まじな)いの言葉を唱えると不思議な事に蒼太の頭の中にある情景がハッキリと浮かび上がって来た、そこには。
楓の呪術的援護を受けた清十郎が、ミラベルからの特命を受けてガリア帝国とプロイセン大帝国の国境沿いの街や村々に派遣された事、そこでデュマと遭遇し戦闘になった事、デュマが周辺の街や村々の人々を人質に取って清十郎に迫り、父を殺害した後で呪術的に彼を擁護していた楓にまでも呪いを掛けて呪殺した事、等が有り有りと浮かび上がって来たのであった。
「この男がアレクセイ・デュマじゃ。いずれお主は戦う事になろうが、良いか?その時はこの男の事を、間違(まちご)うても人間だ、等とは思うで無いぞ!!?」
「アレクセイ・デュマ・・・!!!」
この時。
まだ少年だった蒼太の心に始めて、耐え難い程の、そして堪え難い程の怒りと憎しみの心がフツフツと湧き上がって来た、“父を汚い手段で抹殺した挙げ句、母までをも・・・!!!”と己の全てからデュマを唾棄し、呪い、侮蔑する。
「こりゃ、蒼太よ。怒りに飲み込まれてはならん。何のための“想念観察”なんじゃ!!!」
「神様、僕はコイツを、デュマを絶対に許さないっ。絶対に、絶対に・・・っ!!!」
「うーむ、まだちと早かったかのう。今のお主ならば大丈夫じゃろうと踏んだのじゃが・・・!!!」
「・・・・・っ。大丈夫です、神様。僕なら大丈夫ですから!!!」
すると蒼太はハッと我に返ると慌てて想念を受け流し始めるモノの、それを見た鹿島の神も清十郎も楓も、“うむ・・・”と頷いてニッコリと微笑んだ。
「良い子じゃ。それで良い、それでな」
「だが蒼太よ。デュマにはくれぐれも気を付けるのだぞ!!?」
「私達を死に追いやった策謀能力と執念深さ。そして何よりその実力は、確かに本物でしたからね!!!」
「・・・・・」
“解ったよ父さん、母さん”と言うと蒼太は二人から離れて後退り、まるで“忘れまい”とでもするかの様に、今度は二人の姿をマジマジと見据える様にした。
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「さて、と。それではそろそろ別れの時じゃな・・・!!!」
「神よ、感謝します・・・!!!」
「私達をこの子にもう一度だけ会わせていただけた事。誠に嬉しく思います・・・っ!!!」
「うむ。ご苦労だったな?さあ元の世界へと帰るが良い・・・!!!」
神がそう言われるや否や、二人の身体が徐々に透明に透けて行き、気配も淡いモノへとなって来る。
“霊界へと帰るのだな”と、神人化していた蒼太にはそんな両親達の次元を超えた波動の移ろいを感知する事がハッキリと出来ていたのだ。
「蒼太、頑張るのだぞ?蒼太・・・っ!!!」
「体に、気を付けてね?蒼太・・・っ!!!」
「父さん、母さん!!!」
“有り難う・・・!!!”と二人の姿が完全に消え失せてしまう直前に蒼太が改めて礼を言うと、清十郎も楓もニッコリと微笑んでそのまま成仏していった。
「・・・・・」
「さて・・・」
“神様”と、何事か言い掛けた神の言葉を蒼太が遮る。
「なんじゃ?」
「・・・・・。有り難う、御座いました!!!」
蒼太がそう言って、改めて深々と頭を下げるがそれを見ていた建御雷神は無言で目を閉じ、静寂を貫いていた、どうやら何事か、考え事をしている様子であったが、暫くすると口を開いて語り始める。
「お主、“有り難う”の言葉の意味を知っておるか?知らぬじゃろうな、それはとてもとても尊くて大切な言葉なんじゃ」
「・・・・・」
“お主もいつか、気付くと良いのう”と呟くように彼に告げると神はまた蒼太に修業を課し始めた、曰く。
「“神人化”を何時でも好きな時に好きな様に出来る様になれ!!!」
との事であり、蒼太はそれを自在に熟せる様になるまでに更に半年間を要したのである、そうしてー。
晴れて全ての鍛錬を終えた彼は立派な青年の姿となって“時渡り”を行っては現実世界に帰還して行ったのである。
もっとも。
“彼”が元いた世界でメリアリア達と再会出来るのは、もう少し後の話であり、蒼太はこの後並行世界にあるパラレルワールドの世界線“ガイア・マキナ”へと飛ばされて、そこで本格的な戦闘を経験する事となるのであった。
ーーーーーーーーーーーーーー
“神の波動”とは何なのか、と言うと、それは極限にまで純化された光の高次元エネルギーです。
そしてその大元にあるのは“大いなる感謝と愛”ただそれのみなのだそうですが、それ故に邪神や悪鬼羅刹と言った闇の存在、はたまた低次元で余計な事ばかり考えている邪な霊魂や人間達と言うのは神の波動を吸収する事が出来ません(この内特に、邪神や悪鬼羅刹と言うのは人々の放つ悲しみや苦しみ、憎しみや恨みと言った負の感情エネルギーを食べて自らの糧としている為に、それとは正反対の神の波動とは決して相容れないのです)。
それは丁度、超甘党の人に激辛ラーメンを勧めたり、はたまたもっと詳しく言ってしまえば自身の体に酒を分解する効能や酵素を持っていない赤ん坊や犬畜生に酒を無理矢理、それも大量に与える事と同義語であり、結果として対象の“ショック死”を引き起こしてしまうそうです(高次元の光のエネルギーを受け入れられる準備、器の整っていない存在に無理矢理その波動を注入すると、それと同じ事が起きるのだそうです)。
その為に蒼太君が“神人化”している場合は“神威”のエネルギーを吸収される事はありません(特に神々や蒼太君は“想念観察”を行って、己の波動と想念とを完全に分離している為に、神威に“排他的意志”や“攻撃意識”が混ざり込む事はありません。あれは“純粋波動”とでも言うべき高次元の光エネルギーの、怒濤の様な奔流の集束されたモノなのです)、ただし“人間形態”の場合は話は別になります(人間の形態の場合には人間や霊魂同士のエネルギーのやり取りなので、場合によっては自身の波動を相手に吸収されてしまう事もあり得ます)。
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