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ガリア帝国編
ナンバーワンとオンリーワン
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読者の皆様方こんにちは、ハイパーキャノンと申します。
いつもいつも作品を読んで下さいまして誠に有難う御座います、大変感謝しております。
今回のお話しはもしかしたなら、皆様方を(ある特定のファンの方々を、ですが)裏切ってしまう事になるかも知れません、ですが私はどうしても、自分の心に嘘は付けなかった、蒼太君、格好いいです、メリアリアちゃん、可愛いです。
2人はお似合いのカップルなんです(魂の底から求め合っている、超絶イチャラブ夫婦なんです)。
ーーーーーーーーーーーーーーー
メリアリアの実家である、“カッシーニ家(ハーズィ)”に於いて、彼女の両親にして現当主夫妻であるダーヴィデとベアトリーチェの支持を取り付ける事に成功した蒼太達は、明くる日の朝、午前9時には、今度はアウロラの実家である“フォンティーヌ家(ハーズィ)”へと赴く事となったのである。
「ね、ねえあなた。ドレス、変じゃないかしら?」
「ううん、全然大丈夫だよ?皺もないし、とっても綺麗だ。良く似合っているよ、お姫様みたいだよ?メリー・・・!!!」
「あなた・・・っ。有り難う・・・っ!!!」
「そ、蒼太さん。私はどうですか?新しく新調したモノなのですが・・・っ!!!」
「そ、蒼太っ。それなら私もどうだろうかっ。伯爵様に失礼が無いと良いのだが・・・っ!!!」
出立の直前に。
三人の“花嫁達”は、それぞれにそう言っては蒼太に自身の姿を見せ付けるが、蒼太はそれに対して一人一人にキチンと向き合い、言葉を掛けた、“何処もおかしな所など無い”、“みんな凄く美しくて気品に溢れているよ?”とそう告げて。
「むしろ僕の方が気後れしちゃう位だよ。タキシード、ちゃんと似合っているかな?」
「う、うん、全然大丈夫っ。決まっているわ、あなたっ!!!」
「素敵です、蒼太さんっ!!!」
「格好いいぞ、蒼太っ。惚れ直してしまいそうだっ!!!」
そう言って答えてくれるメリアリア達に対して“有り難う”と少し照れながらそう応じると、蒼太は“それじゃあ、出発しようか?”とそう言っては仮宿である、オリヴィアの部屋を後にした。
「やあ、蒼太君。と、我が愛娘よ、良く帰って来たな!!!」
「お父様、お母様!!!」
フォンティーヌ家の門の前に着いた蒼太達はいきなり、現当主にしてアウロラの父であるエリオットとその妻シャルロットを始めとして、使用人達も含めた家中総出の歓待を受けた、何やら大事な話がある、との事だったのであり、験を担ぐ為に慣わしとしてそうするのだ、と言う事を、アウロラから聞かされていた蒼太達はだから、取り敢えずは心の準備が出来ていたのであったがそうで無ければビックリすると同時に、圧倒される所である、それほど一種の迫力に満ち満ちている、スペクタクルであったのだ。
「アウロラはこの前帰って来たけれど・・・。蒼太君、君は随分と久し振りだな。見違えたよ!!!」
「おじさ・・・。伯爵様におかれましても、お変わりなきようで何よりです」
「あっはっはっ、いいよ、“おじさん”で。君にとって私は確かに、おじさんには変わりないのだからね!!!」
「は、ははは。は・・・」
「あっはっはっは・・・っ。・・・ところで」
とエリオットが不思議そうな顔を覗かせて見せた、確か今日は“アウロラとの将来に付いての大切な話がある”との事だったのであるモノの、どうしてこの場にメリアリア達がいるのであろうか。
「お久し振りだね、メリアリア嬢。何時ぞやはアウロラを助けてくれて、大変に感謝している。その後、変わりは無かったかね?」
「ご機嫌麗しゅう、エリオット伯爵。お陰様で息災に過ごしていました・・・」
「そうか、それは良かった。君のような聡明なレディならば、いつ尋ねて来ても大歓迎さ。またいつでもお越し頂いて構わないよ、私も出来うる限りでお持て成しさせていただこう。はて、そちらは確か・・・」
「オリヴィア・イネス・ド・フェデラールと申します、エリオット伯爵。お初にお目に掛かります!!!」
「おおっ、そうか。君が・・・っ!!!」
“氷炎の大騎士か!!!”とエリオットはやや興奮した面持ちでそう叫んでいた、と言うのは“セイレーンの黒いバラ”ことオリヴィアの名前は一部の上流貴族の間では既に知れ渡っており、姿を見た事は無くても噂くらいは何かの拍子に聞いた事がある者は数多くいたのである。
「ご活躍は、聞いている。今日の我が国の発展があるのも君やメリアリア嬢を始めとした、セイレーンのメンバーの下支えがあっての事だ。大変な任務であるとは思うが、これからもよろしく頼むよ?」
「はい、エリオット伯爵。光栄に存じます!!!」
「うん、ところでな・・・」
そこまで言葉を綴ったエリオットは改めて蒼太に向き直った。
「蒼太君。確か今日は、アウロラとの事で話があるのでは無かったのかね?」
「はい、そうです。伯爵。そして伯爵夫人。大切なお話があるのです・・・!!!」
「ふむ・・・」
そう言って蒼太から真剣な眼差しを向けられたエリオットとシャルロットは、二人で一旦、お互いを見合うと、“兎に角、一度屋敷へ入りたまえ”と懇ろに彼等を邸宅へと招き入れ、特にお茶等を出してくれた、その席で蒼太から“アウロラと婚約させて欲しい事”と同時に“ここにいる三人と同時に結婚させて欲しい事”を続けて告げて、エリオット夫妻にその了承を求めたのである。
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
“そうか・・・!!!”とその話を聞いた時に、エリオットはその妻であるシャルロット共々、遂に“来るべき時が来たか!!!”と思っていたのだ、それと言うのも。
メリアリアの両親である、ダーヴィデ夫妻がそうであったように、彼等もまた一族に伝わる秘術“エクストラ・ホロスコープ”を用いてアウロラと蒼太の運命を占った所、“2人は結婚する運命にあるモノの、花婿となる者の元にはあと2人の花嫁が嫁いでくるであろう”との“卦”が出ていたからである。
つまりは蒼太は三人の花嫁達と同時に結婚する運命を持っていたのであり、その事を予め予感していたエリオット夫妻はだから、いよいよそれが現実のモノとなった時に、“自分達もある種の覚悟を決めなければならない”と、本気で考えていたのである。
即ち。
蒼太に“英雄号”を授与する為の、“認定審査会”を開くための覚悟であったが現状、この“認定審査会”に於いては“確実に”フォンティーヌ家の味方となってくれそうな、“伯爵位”以上を誇る家柄の貴族と言うのが実質、皆無と言って良く、今の内から手回し、根回しをしたとしても最低条件である、“推薦三家”を取るためには、彼方此方と“政略結婚”等を通じて誼を深めて行かねばならなかったのであり、それはエリオット及びシャルロットの望む所では無かった、と言うのが実状であったのだ。
しかし。
(アウロラは勿論の事として・・・。メリアリア嬢もオリヴィア嬢も、確か“伯爵家”の出であると聞く、彼女達の実家である“カッシーニ家”、並びに“フェデラール家”と連携を取る事が出来たなら。推薦を勝ち取る事も夢では無い!!!)
“それに”とエリオットは考えていた、いざとなったら妻であるシャルロットの実家である“シルエット家”にも援助をお願いする事も出来る筈だ、と。
決して分が悪い戦とはならないのだろうが、さて。
「蒼太君。改めて確認して置きたいのだが・・・。君は本当に三人全員と、結婚をするつもりなのかね?」
「はい、伯爵。僕は本気です!!!」
「私達、愛し合っているんです。エリオット伯爵っ!!!」
「お父様、お母様、お願いしますっ。私達の仲を認めて下さいっ!!!」
「お願いしますっ。伯爵様・・・っ!!!」
「・・・・・」
そう答える4人の姿、気迫を見せ付けられてはエリオットは“ううーん”と唸らざるを得なかった、彼が見た所では、彼等彼女達のお互いを思う気持ちと覚悟とは、これ以上無い位にまで強くて確かなモノの様だ、生半可な覚悟でこの場に来ている訳では無い、と言う事なのであろう、多分。
しかし。
「蒼太君。解っているとは思うが“英雄号”を取得する為の道は中々に厳しいモノがある。勿論、君だって解っているだろうが、それは“絶対に大丈夫”だとは言えないモノなのだよ・・・?」
「お父様、それなら・・・っ!!!」
アウロラがエリオットに口を開いた、“蒼太さんには既に、国家功労勲章の授与が決まっているのです”とそう言って。
「まだ内々にですけれど・・・。でも確か、“英雄認定”を受ける為の要件の一つ、でしたわよね?」
「ふむ・・・!!!」
その言葉に頷くとエリオットは顎髭を人差し指で弄くり始めた、それを見たアウロラは思った、“もう一押しで父は頷く!!!”と。
だから。
「蒼太さんは凄い人です、この前も私達フォンティーヌ家の危機を救って下さいましたし、先日は極悪非道な秘密結社である、“ハウシェプスト協会”の総元締めを撃退して私達を守ってくれたのです。お父様、お母様。お願いしますっ。私にはもう、蒼太さん以外の人は考えられませんっ。この人と一緒になれないのならば、私は死んでもいいです、いっそ殺して下さいっ!!!」
「・・・・・っ。ま、待てっ。待て待て待て待てっ!!!」
「そうですよ?アウロラ。私達、まだ何も言っていないじゃないの・・・!!!」
そう言っては愛娘を窘める夫妻であったが、その胸の内はもう、決まっていた、ここまで言っている娘を送り出してやろう、と、せめてこの子の思いを親として応援してやろうと、心に決めていたのである。
それに2人とも、蒼太の事も密かに気に入っていたし、そう言った意味でも彼等の婚姻を阻む要素は何一つとして存在してはいなかった訳なのであったが、しかし。
(問題は・・・。やはり“認定審査会”だっ。それに全てが掛かっている・・・!!!)
エリオットが思うモノの現状、蒼太達にとっての最大の課題はまさにここにこそあったのであって、それと言うのもこの“認定審査会”と言うのは宮廷闘争の延長線上にある場所だったからに他ならなかった、何故ならば。
“英雄”を輩出した家々の持つ力と言うのは極めて強大なモノになる訳であってその為、様々な陰謀、策略が幾重にも渡って張り巡らされる事となる、極めてストレスフルかつスリリングな腹の探り合いが彼方此方で展開する、そう言った図式が遥か以前から出来上がっていた訳ではあったのである。
「話は解った。私達としては、君達を応援しているよ?蒼太君。アウロラの事をよろしくな!!!」
「子種は平等に分配をお願いしますね?婿殿・・・!!!」
「お、おじさ・・・っ。お義父さん、お義母さん。どうも有り難う御座います!!!」
「お父様、お母様!!!」
「有り難う御座います、エリオット伯爵、伯爵夫人!!!」
「この御恩は忘れません、私達の命ある限り!!!」
“有り難う!!!”とアウロラが述べた後にメリアリアとオリヴィアもそれぞれ、エリオット夫妻に礼を述べた、その後。
蒼太は些か、決まりが悪そうに、エリオット伯爵にこう告げたのである、“実はお義父さん達に、折り入って急ぎのお願いがあります”と。
「・・・なんだね?結婚式の金銭かな?それなら気にする事は無い、家が一切合切、全部出す!!!」
「何しろ愛娘達の、一世一代の晴れ舞台ですからね?他家に見られても恥ずかしくないモノにして見せますから!!!」
「いや、あの・・・。それはとても有り難いお話なのですけれども・・・!!!」
「・・・・・?他に、何かあるのかね?蒼太君、いいや婿殿。遠慮なく言いたまえ!!!」
「そうですよ?婿殿。もう家族になるのですから。水臭い事は無しにしましょう!!!」
「「「「・・・・・」」」」
その言葉に4人は一度顔を見合わせて頷き合うと、蒼太がエリオットに向けて切り出した、“いまメリアリアの実家であるカッシーニ家に於いて、送り祝いと呼ばれる式典が準備されている事”、“それにフォンティーヌ家の当主として出席して欲しい事”等を順々に説明していったのである。
「これは“結婚式”にまで続く“カッシーニ家の儀式”の一つでして・・・。僕達の門出を祝して、一族総出で祝ってくれるのだそうです・・・!!!」
「あは、あはははははは・・・っ!!!」
「そ、そんな事になっていたのかっ!?それでそれは何時なのだっ!!?」
「それがその・・・。あと八日後に開催されます」
「ななななななっ。何という事だっ!!?」
ただでさえ、驚愕の只中にあったエリオットが思わず腹から絶叫した。
「こうしちゃ居られん、モハメドッ。急いで七日後から九日後までの予定を全てキャンセルしてくれっ。それから1週間で何かっ、カッシーニ家に持って行くモノを見繕ってくれっ。娘達の門出に相応しい、優雅で盛大な特注の品をなっ!!!」
「ドレスを、新調しなくちゃならないけれども・・・っ。果たして間に合うかしら・・・?」
話を聞いたエリオットとシャルロットが、急に慌ただしく動き始めて、それにつられて屋敷全体が、騒然とし始めた、何しろあと1週間である、その間に全ての準備を整えなくてはならないのだ。
「話は確かに承った、婿殿、改めてアウロラの事をよろしく頼むよっ!!?カッシーニ家のダーヴィデ伯爵夫妻に、どうかよろしく伝えてくれ、“命に換えても必ず出席するから”とそう言ってな!!?」
「アウロラ、貴女もドレスを新調しなければなりません。フェデラール家への御挨拶が終わったなら、一度帰って来なさい。良いですね?」
そう言うと謁見は終了となり、エリオットもシャルロットも自分達の準備に取り掛かるが、とにもかくにも、斯くしてフォンティーヌ家でも支持を取り付けた蒼太は明くる朝、三度三人を引き連れて今度はオリヴィアの生家である、“フェデラール家”へと赴いてはそこで現当主にしてオリヴィアの父である“アルベール・アナトル・ド・フェデラール”とその妻にして当主夫人の“アリーヌ・アストリ・ド・フェデラール”から歓待を受ける事となったのだ。
「良く来てくれたね、君が蒼太か。なるほど、良い青年だ・・・っ!!!」
「全身から迸る精気と言い、練り上げられた闘志と言い、オリヴィアの婿に相応しい偉丈夫ね・・・!!!」
そう言って2人は蒼太を含めた4人を特別に茶会に招待しては話を始めるモノの、アルベールとアリーヌは一目見て蒼太の事を気に入ったらしく、何くれとなく世間話に花を咲かせていたのであるが、しかし。
「ところで今日、家を訪ねて来てくれた用件だがね。先にそれを済ませてしまおうか・・・?」
「電話を受けた時にはビックリしましたよ、何しろ生涯、独身を貫くだろうと思っていたオリヴィアが、急に“結婚する事になった”等と言うものだから・・・!!!」
「・・・・・」
それを聞いた蒼太は改めてアルベール達に向き直ると、オリヴィアと2人で誠心誠意、頭を下げた。
「・・・お願いします、アルベール伯爵、アリーヌ伯爵夫人。オリヴィアと僕の仲を認めて下さい、そして僕達、4人の仲を認めて下さい、お願いします!!!」
「お願い致します、父上、母上。私達は真剣に将来を誓い合っているのです、愛を交わしているのです。お願い致します、どうか・・・!!!」
「アルベール伯爵、アリーヌ伯爵夫人。どうかお願いします、私達の事を認めて下さいっ!!!」
「本当に、真剣なんです。私達・・・。もうこの人しかいないって、心の底から思っているんです、愛してるんですっ!!!」
「・・・・・」
「・・・・・」
その言葉に2人は暫くの間双眸を閉じて腕を組み、宙を仰いで無言でいたが、その内に彼等の方を向き直ってはゆっくりとこう告げた、“構わないよ”とそう言って。
「娘はこんな時に、冗談を言うようか子では間違っても無かった。否、それ以前に。軽々しく他人様に心や身体を許すような子では、間違っても無いんだ、だから蒼太。その娘が選んだ君ならば信用出来る・・・」
“それに何より”とアルベールが告げた、“私達は君達が来るのを待ち侘びていたのだよ”とそう言って。
「・・・・・?」
「“待ち侘びていた”・・・?」
「・・・・・」
“そうだ!!!”とオリヴィアの言葉にアルベールが頷いて見せるが実はアルベールとアリーヌは、オリヴィアが生まれてから一ヶ月ほど経った夜に、一族の長老からある“予言”を授けられていたのである。
曰く。
「この子は齢二十歳を越えてから恋路が開ける、そして三十路を越えてから運命の人と愛し合える悦びを知るだろう。その花婿になる男はこの子の他にあと2人の花嫁を娶る事になるのだ!!!」
「・・・・・っ!!!」
「・・・・・っ!!!」
それを聞き及んだ時に。
流石のアルベールもアリーヌも驚きと戸惑いの余りに声が出せなくなってしまったが、その時の予言が今、まさに成就しようとしている訳であり、だからそれに付いて反対する理由は一切、何も無い、と言う訳であったのだ。
「・・・・・っ。長老、その男は信用出来る者なのですか?」
思わず聞き返してしまったアルベールに、長老は黙って頷き、こう答えた、“会えば解る、お前達も一瞬で認めるだろう”とそう言って、それから今日まで。
2人はオリヴィアを見守ると同時に、密かに“予言の男”を探しては、求め続けていた、と言う訳ではあったのであり今、その当の本人が目の前に現れている訳であって、だから両親としてみれば、“遂にこの時が来たのか!!!”と言うのが何よりも正直な心持ちであったのである。
「娘を頼むよ、蒼太。何しろ君はもう家族だ、今夜は遠慮なく飲もうでは無いか!!!」
「いや、あの。伯爵・・・!!!」
と、いきなり酒を勧めようとして来るアルベールに、蒼太はフォンティーヌ家でそうしたように今現在、カッシーニ家にて進められている“送り祝いの儀式”に付いての説明を行った、すると。
「なんだってええぇぇぇっ!!?」
「あと1週間しか無いじゃない!!!」
2人とも大急ぎで当日に来て行く服の新調や引き出物の準備、手配、人員の配置等に大わらわとなってしまい結局、“前祝い”はその日その時まではお預けとなってしまった。
ただし。
「祝着、娘をよろしく頼むよ?婿殿!!!それとメリアリア嬢とアウロラ嬢もな!!?」
「これからは家族として、末永くお付き合いしてちょうだいね!!?蒼太、メリアリア、アウロラ・・・!!!」
そう言って結婚と重婚に対する承諾は得たのであり、これを以て漸くにして、蒼太と花嫁達の試練の連続は、一先ずの幕引きとなったのであった。
・・・その夜。
「・・・・・」
「どうしたんだい?」
「あなた・・・っ!!!」
漸く一連の騒動も終わり、また一人ずつ過ごす事の安全も確認された為に久方振りに自分の部屋に戻っていたメリアリアの元を、蒼太がコッソリと訪ねて来たのだ。
「なんでも、無いわ。ちょっと夜風に当たっていただけ・・・!!!」
「・・・・・」
「なんだか、眠れ無くって・・・!!!」
そう告げるメリアリアの顔は何とか笑っていたモノの、その瞳と口元には隠しきれない寂しさの光と歪みが浮かび上がっていたのであり、彼女の性格を知っている蒼太として見れば彼女が何やら只ならぬ悩みを抱えている事が見て取れた。
「メリー・・・?」
「ごめんなさい、私・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
“悲しい訳じゃ、ないのよ?”とメリアリアはそう告げると、“ただ色々あったから・・・!!!”とそう続けて、今度こそ元気無く、俯き加減で本当に沈黙してしまったのであるモノの、そんな彼女に。
「メリー・・・」
横にピッタリと寄り添ったままで、蒼太はソッと肩を抱き寄せて、メリアリアを振り向かせた、しかし。
「・・・・・」
「・・・・・」
何を考えているのか、メリアリアは中々に、目を合わせてくれようとはしなかった、すまなさそうに、申し訳なさそうに俯いたままで、虚ろな光を青空色の両の瞳に浮かべていたモノのしかし、蒼太にはそんな彼女の気持ちが何となく解っていたのである、だから。
だから、自分はせめて、正直な思いを彼女にぶつけようと思っていた、お世辞でも何でも無くて自分の真っ直ぐな、正直な気持ちを。
「メリー・・・」
「・・・・・」
「メリー。聞いて欲しいっ!!!」
「・・・・・」
「僕が、本当に愛しているのは。三人の中で一番、一番愛しているのは。・・・君だよ、メリー」
「・・・・・っっっ!!!!!!!」
その言葉を聞いた時に。
メリアリアは思わず泣き出してしまっていた、それというのも。
メリアリアは本当は恐くて仕方が無かったのである、蒼太の気持ちが自分では無い、他の誰かに移ってしまうことが、他の誰かに蒼太を取られてしまうことが、恐くて恐くて仕方が無かったのであったのだ、しかし。
彼女はそんな自分に蓋をしていた、そんな事は“甘え”だと、自分の大好きな人が三人を三人とも花嫁にする、と言うのであれば、それを受け入れるべき事では無いか、と、目出度いと、喜ぶべき事では無いか、と考えてだから、甘えている場合じゃないんだと、自分を自分で叱咤激励していたのである。
のであるけれどもしかし、それでもやはり、湧き上がる不安と恐怖、蒼太が去って行く寂しさと寒さ、それらが一気に襲い掛かって来ては、彼女を心の底から凍えさせた、勿論気持ちの上では、蒼太に対する愛情ではメリアリアは他の2人にも、絶対に負けない自信があったが、しかしやはり、常に2人の活躍振りを、蒼太に対する献身振りを実際にその目で見ている内に、段々と不安になってきてしまったのであった、“自分はここまで、この2人ほど蒼太の役に立てているのだろうか”、“蒼太に尽くしてあげられているのだろうか”とそう考えて。
「ずっと。ずっと不安だったのっ、恐かったのっ。あなたの気持ちが私から離れて行ってしまうのが、恐くて仕方が無かったのっ!!!」
“だって”とメリアリアは続けた、“だって私はアウロラよりも弱い”とそう言って。
「魔法だって敵わないし、健気さだってあの子には敵わない。オリヴィアにだってそう、あんな強さも潔さも。私には無いわ、だから、だから・・・っ!!!」
「・・・・・」
そう言って泣きじゃくりながら嗚咽を漏らす彼女を優しく抱き締めつつも蒼太は言った、“そんな事、ないよ!!!”とそう告げて。
「君は僕の事で、こんなに苦しんでいたじゃないか、こんなに真剣になって、思い悩んでいてくれたじゃないか。凄く真剣に真剣に、自分自身と向き合ってくれているじゃないか、僕の事を考えてくれているじゃないか・・・!!!」
「ウ、ウエエェェェッ。グス、ヒグッ。ヒッグ、ヒッグ・・・ッ!!!」
「それは君が僕に、真実なる愛を向けてくれているからだ、真心の底から僕にそれを尽くしてくれているからだ、誠意を持って僕に愛を報いてくれているからだ。だからなんだよ?メリー・・・」
「グス、ヒグッ。ウエエェェェッ。ウ、ウ・・・ッ!!!」
「君は僕がピンチに陥ってしまった時に、何度も助けてくれたじゃないか、何度も死の淵にいる僕に呼び掛けて来てくれて、救い出してくれたじゃないか、守ってくれて来たじゃないか。今だってそう、こんなに自分を傷付けてまで、僕の事を思ってくれている、僕のために尽くそうとしてくれている。これが健気さじゃなくて、一体なんだって言うんだよ!!!」
「ウ、ウウッ。ウエエェェェッ!!?グス、ヒグ・・・ッ!!!で、でも・・・っ!!!」
「君は誰よりも一番、健気で強くって。愛を知っている女性だよ?優しくて暖かな女性だよ?メリー。でもね・・・」
「グス、ヒグッ。ウウゥゥゥ・・・ッ!!!・・・・・?」
“そんな事は関係ないんだ”、と蒼太は続けた、“例え本当に、アウロラよりも弱くても、オリヴィアみたいに強くなくても。それでも尚も、僕はそう言う所も引っくるめて、強さも弱さも引っくるめて君が一番、好きなんだ、一番、愛しくて仕方が無いんだ!!”と誠心誠意をこれ以上無いほどに込めて、心の底から、魂の底からそう告げる。
「愛が足りなくたっていい、弱くたって構わない。それでも僕は君じゃなきゃ、ダメなんだ、君じゃなきゃ、嫌なんだよ。だからお願いだから、側にいておくれよ、何処にもいかないで?お願いだから・・・っ!!!」
「ウ、ウエエェェェッ!!?グスッ、ヒグ・・・ッ!!!あ、あな、た・・・?」
「例え君の愛が本当に、夫婦となるのに、それでも尚もまだ足りないと言うのであれば、僕の愛をもっとあげる。だって僕は君を、誰よりも君の事をいつもずっと愛しているから。夫婦の愛は、いつも2人で一つだもの、“2人揃って初めて一人前”って事なんだもの。だったら2人の愛で間に合わせちゃおう、幸せになっちゃおう?メリー・・・」
「ウ、ウッ。ウエエェェェッ!!?ヒッグ、ヒッグ・・・ッ。あ、あな、た・・・!!!」
「君がいてくれれば僕は、それだけで頑張れるから。君がいてくれれば僕は幸せになれるから。だからこれからもいっぱい、いっぱい、僕の側で微笑んで居ておくれ?お願いだよ、メリー・・・っ!!!」
「う、うわあぁぁっ。うわあああああぁぁぁぁぁぁんっっっ!!!!!!!」
蒼太のその言葉を聞き終わった時に、メリアリアは感極まって思わず泣き出してしまっていた、彼女は心底、否、魂の底から蕩け切ってしまっていたのである、彼の優しさ、彼の暖かさ、彼の温もり、その全てに。
そして、彼の果てしなき、大いなる愛情に包まれた時に。
彼女は初めて救われたのであり、そしてその瞬間に、ようやく確固たる己自身を形成する事が出来た、即ち自己を確立させる事が出来たのである。
「うわああああぁぁぁぁぁん・・・・・っっっ!!!!!!!ウ、ウエエェェェッ!!?グス、ヒッグ、ヒッグ・・・ッ!!!」
「・・・・・」
それから5分程泣き続けてメリアリアが、漸く落ち着いて来た頃に、上目遣いで蒼太に尋ねた。
「グス、ヒグッ。ヒッグ・・・!!で、でも良いの?私なんかで。アウロラみたいに女の子らしく無いのに・・・」
「君じゃないと、ダメなんだよ。それに君は誰よりも一番、可愛らしい女の子だよ?もっと自信を持ちなよ!!!」
「う、うんっ。でも・・・っ!!!」
「・・・・・っ。決めた!!!」
それでもまだ、寂しそうな顔を見せるメリアリアに対して蒼太は言った、“僕、君のストーカーになる”、“メリーの事、絶対に離さない”とそう告げて。
「・・・・・っ。ふ、ふえぇぇっ!!?」
「メリー、絶対に逃がさないから!!!」
ビックリしているメリアリアに対して蒼太が“君が例え、何処かに行っちゃったとしても、何処かに逃げちゃったとしても。僕は必ず君を探し出して連れ戻すんだ、何としてでも僕の側に居させるからねっ!!!”と、力強くそう言葉を紡ぎ続けていると、ようやくにして。
「・・・・・っっっ!!!!!!?も、もうっ!!!」
“あなたったら!!!”とメリアリアは苦笑しつつもしかし、自身も満更でも無さそうな顔をしてそう答えていた、その顔には明るさが戻っており、いつもの快活な彼女の色が浮かび上がっていたのである。
「・・・もうっ。本当に、しょうがない人なんだからっ!!!」
そう言って心底楽しそうに、面白おかしそうに微笑むとしかし、メリアリアはまた優しくて何処かホッとしたかのような、愛しさでいっぱいの微笑みを彼に向けてこう告げたのである、“私もあなたのストーカーになる”とそう言って。
「私も。あなたの事、逃がさないわっ。絶対に離さないからっ!!!あなた、何処までも何処までも付いていって一生、ううん。永遠に付き纏ってやるんだからっ!!!」
「あははっ。それじゃあどっちが本当のストーカーか、勝負だね?」
「絶対負けないもんっ。あなたは私のモノなんだからっ、ずっと縛り付けてやるんだからっっっ!!!!!」
そう告げるメリアリアを抱き寄せて、蒼太がその唇に口付けをしようとすると、今度はいつもの様にメリアリアは答えてくれた、2人は久方振りとなる、濃厚なるキスを堪能した後で。
“時空断絶結界”と“侵入者探知用のそれ”を張り巡らせたその後で、“時の涙滴”を発動させては一ヶ月ほどその只中でのんびりと過ごし、愛を育み合ったのであった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
メリアリアちゃんはお転婆で活発で、だけど誰よりも純情で一途な子なんです、慎み深い子なんです、優しくて太陽みたいな子なんです!!!
そして紛う事無き“本当の愛情”と言うモノを知っている子なのです、例え言葉に直せなくともその心で、魂で感じてキチンと体現出来ている子なのです、理解している子なんです、蒼太君に捧げ尽くしている子なんです!!!
ただしそうなのですが、だからこそと申しましょうか、逆に色々と考えては葛藤し、悩み抜いてしまうのです(真実として彼女の愛はアウロラ、オリヴィアに勝る事はあっても劣る事はありません、それほどの輝きを有しているのです)。
ただし、前述の通りに慎み深い子なのでついつい、自分を過小評価してしまうんですね、それで苦しんでしまうのですが(それが特に、愛しい人の事であるなら尚更そうです)、人はそれを、“いじらしさ”と言うのです、“健気さ”と言うのです、“真心”と言うのです(決して“面倒臭い子”等ではありません)。
もう一度、言わせていただきますがメリアリアちゃんは間違っても“面倒臭い子”等では無いのです、誰よりも純情一途で、純粋で、確かなる愛を持っている子なのです、皆様方どうか、こんなメリアリアちゃんと蒼太君の事を今後ともよろしくお願い申し上げます(勿論、アウロラちゃんとオリヴィアちゃんの事もそうですが)。
敬具。
ハイパーキャノン。
いつもいつも作品を読んで下さいまして誠に有難う御座います、大変感謝しております。
今回のお話しはもしかしたなら、皆様方を(ある特定のファンの方々を、ですが)裏切ってしまう事になるかも知れません、ですが私はどうしても、自分の心に嘘は付けなかった、蒼太君、格好いいです、メリアリアちゃん、可愛いです。
2人はお似合いのカップルなんです(魂の底から求め合っている、超絶イチャラブ夫婦なんです)。
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メリアリアの実家である、“カッシーニ家(ハーズィ)”に於いて、彼女の両親にして現当主夫妻であるダーヴィデとベアトリーチェの支持を取り付ける事に成功した蒼太達は、明くる日の朝、午前9時には、今度はアウロラの実家である“フォンティーヌ家(ハーズィ)”へと赴く事となったのである。
「ね、ねえあなた。ドレス、変じゃないかしら?」
「ううん、全然大丈夫だよ?皺もないし、とっても綺麗だ。良く似合っているよ、お姫様みたいだよ?メリー・・・!!!」
「あなた・・・っ。有り難う・・・っ!!!」
「そ、蒼太さん。私はどうですか?新しく新調したモノなのですが・・・っ!!!」
「そ、蒼太っ。それなら私もどうだろうかっ。伯爵様に失礼が無いと良いのだが・・・っ!!!」
出立の直前に。
三人の“花嫁達”は、それぞれにそう言っては蒼太に自身の姿を見せ付けるが、蒼太はそれに対して一人一人にキチンと向き合い、言葉を掛けた、“何処もおかしな所など無い”、“みんな凄く美しくて気品に溢れているよ?”とそう告げて。
「むしろ僕の方が気後れしちゃう位だよ。タキシード、ちゃんと似合っているかな?」
「う、うん、全然大丈夫っ。決まっているわ、あなたっ!!!」
「素敵です、蒼太さんっ!!!」
「格好いいぞ、蒼太っ。惚れ直してしまいそうだっ!!!」
そう言って答えてくれるメリアリア達に対して“有り難う”と少し照れながらそう応じると、蒼太は“それじゃあ、出発しようか?”とそう言っては仮宿である、オリヴィアの部屋を後にした。
「やあ、蒼太君。と、我が愛娘よ、良く帰って来たな!!!」
「お父様、お母様!!!」
フォンティーヌ家の門の前に着いた蒼太達はいきなり、現当主にしてアウロラの父であるエリオットとその妻シャルロットを始めとして、使用人達も含めた家中総出の歓待を受けた、何やら大事な話がある、との事だったのであり、験を担ぐ為に慣わしとしてそうするのだ、と言う事を、アウロラから聞かされていた蒼太達はだから、取り敢えずは心の準備が出来ていたのであったがそうで無ければビックリすると同時に、圧倒される所である、それほど一種の迫力に満ち満ちている、スペクタクルであったのだ。
「アウロラはこの前帰って来たけれど・・・。蒼太君、君は随分と久し振りだな。見違えたよ!!!」
「おじさ・・・。伯爵様におかれましても、お変わりなきようで何よりです」
「あっはっはっ、いいよ、“おじさん”で。君にとって私は確かに、おじさんには変わりないのだからね!!!」
「は、ははは。は・・・」
「あっはっはっは・・・っ。・・・ところで」
とエリオットが不思議そうな顔を覗かせて見せた、確か今日は“アウロラとの将来に付いての大切な話がある”との事だったのであるモノの、どうしてこの場にメリアリア達がいるのであろうか。
「お久し振りだね、メリアリア嬢。何時ぞやはアウロラを助けてくれて、大変に感謝している。その後、変わりは無かったかね?」
「ご機嫌麗しゅう、エリオット伯爵。お陰様で息災に過ごしていました・・・」
「そうか、それは良かった。君のような聡明なレディならば、いつ尋ねて来ても大歓迎さ。またいつでもお越し頂いて構わないよ、私も出来うる限りでお持て成しさせていただこう。はて、そちらは確か・・・」
「オリヴィア・イネス・ド・フェデラールと申します、エリオット伯爵。お初にお目に掛かります!!!」
「おおっ、そうか。君が・・・っ!!!」
“氷炎の大騎士か!!!”とエリオットはやや興奮した面持ちでそう叫んでいた、と言うのは“セイレーンの黒いバラ”ことオリヴィアの名前は一部の上流貴族の間では既に知れ渡っており、姿を見た事は無くても噂くらいは何かの拍子に聞いた事がある者は数多くいたのである。
「ご活躍は、聞いている。今日の我が国の発展があるのも君やメリアリア嬢を始めとした、セイレーンのメンバーの下支えがあっての事だ。大変な任務であるとは思うが、これからもよろしく頼むよ?」
「はい、エリオット伯爵。光栄に存じます!!!」
「うん、ところでな・・・」
そこまで言葉を綴ったエリオットは改めて蒼太に向き直った。
「蒼太君。確か今日は、アウロラとの事で話があるのでは無かったのかね?」
「はい、そうです。伯爵。そして伯爵夫人。大切なお話があるのです・・・!!!」
「ふむ・・・」
そう言って蒼太から真剣な眼差しを向けられたエリオットとシャルロットは、二人で一旦、お互いを見合うと、“兎に角、一度屋敷へ入りたまえ”と懇ろに彼等を邸宅へと招き入れ、特にお茶等を出してくれた、その席で蒼太から“アウロラと婚約させて欲しい事”と同時に“ここにいる三人と同時に結婚させて欲しい事”を続けて告げて、エリオット夫妻にその了承を求めたのである。
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
“そうか・・・!!!”とその話を聞いた時に、エリオットはその妻であるシャルロット共々、遂に“来るべき時が来たか!!!”と思っていたのだ、それと言うのも。
メリアリアの両親である、ダーヴィデ夫妻がそうであったように、彼等もまた一族に伝わる秘術“エクストラ・ホロスコープ”を用いてアウロラと蒼太の運命を占った所、“2人は結婚する運命にあるモノの、花婿となる者の元にはあと2人の花嫁が嫁いでくるであろう”との“卦”が出ていたからである。
つまりは蒼太は三人の花嫁達と同時に結婚する運命を持っていたのであり、その事を予め予感していたエリオット夫妻はだから、いよいよそれが現実のモノとなった時に、“自分達もある種の覚悟を決めなければならない”と、本気で考えていたのである。
即ち。
蒼太に“英雄号”を授与する為の、“認定審査会”を開くための覚悟であったが現状、この“認定審査会”に於いては“確実に”フォンティーヌ家の味方となってくれそうな、“伯爵位”以上を誇る家柄の貴族と言うのが実質、皆無と言って良く、今の内から手回し、根回しをしたとしても最低条件である、“推薦三家”を取るためには、彼方此方と“政略結婚”等を通じて誼を深めて行かねばならなかったのであり、それはエリオット及びシャルロットの望む所では無かった、と言うのが実状であったのだ。
しかし。
(アウロラは勿論の事として・・・。メリアリア嬢もオリヴィア嬢も、確か“伯爵家”の出であると聞く、彼女達の実家である“カッシーニ家”、並びに“フェデラール家”と連携を取る事が出来たなら。推薦を勝ち取る事も夢では無い!!!)
“それに”とエリオットは考えていた、いざとなったら妻であるシャルロットの実家である“シルエット家”にも援助をお願いする事も出来る筈だ、と。
決して分が悪い戦とはならないのだろうが、さて。
「蒼太君。改めて確認して置きたいのだが・・・。君は本当に三人全員と、結婚をするつもりなのかね?」
「はい、伯爵。僕は本気です!!!」
「私達、愛し合っているんです。エリオット伯爵っ!!!」
「お父様、お母様、お願いしますっ。私達の仲を認めて下さいっ!!!」
「お願いしますっ。伯爵様・・・っ!!!」
「・・・・・」
そう答える4人の姿、気迫を見せ付けられてはエリオットは“ううーん”と唸らざるを得なかった、彼が見た所では、彼等彼女達のお互いを思う気持ちと覚悟とは、これ以上無い位にまで強くて確かなモノの様だ、生半可な覚悟でこの場に来ている訳では無い、と言う事なのであろう、多分。
しかし。
「蒼太君。解っているとは思うが“英雄号”を取得する為の道は中々に厳しいモノがある。勿論、君だって解っているだろうが、それは“絶対に大丈夫”だとは言えないモノなのだよ・・・?」
「お父様、それなら・・・っ!!!」
アウロラがエリオットに口を開いた、“蒼太さんには既に、国家功労勲章の授与が決まっているのです”とそう言って。
「まだ内々にですけれど・・・。でも確か、“英雄認定”を受ける為の要件の一つ、でしたわよね?」
「ふむ・・・!!!」
その言葉に頷くとエリオットは顎髭を人差し指で弄くり始めた、それを見たアウロラは思った、“もう一押しで父は頷く!!!”と。
だから。
「蒼太さんは凄い人です、この前も私達フォンティーヌ家の危機を救って下さいましたし、先日は極悪非道な秘密結社である、“ハウシェプスト協会”の総元締めを撃退して私達を守ってくれたのです。お父様、お母様。お願いしますっ。私にはもう、蒼太さん以外の人は考えられませんっ。この人と一緒になれないのならば、私は死んでもいいです、いっそ殺して下さいっ!!!」
「・・・・・っ。ま、待てっ。待て待て待て待てっ!!!」
「そうですよ?アウロラ。私達、まだ何も言っていないじゃないの・・・!!!」
そう言っては愛娘を窘める夫妻であったが、その胸の内はもう、決まっていた、ここまで言っている娘を送り出してやろう、と、せめてこの子の思いを親として応援してやろうと、心に決めていたのである。
それに2人とも、蒼太の事も密かに気に入っていたし、そう言った意味でも彼等の婚姻を阻む要素は何一つとして存在してはいなかった訳なのであったが、しかし。
(問題は・・・。やはり“認定審査会”だっ。それに全てが掛かっている・・・!!!)
エリオットが思うモノの現状、蒼太達にとっての最大の課題はまさにここにこそあったのであって、それと言うのもこの“認定審査会”と言うのは宮廷闘争の延長線上にある場所だったからに他ならなかった、何故ならば。
“英雄”を輩出した家々の持つ力と言うのは極めて強大なモノになる訳であってその為、様々な陰謀、策略が幾重にも渡って張り巡らされる事となる、極めてストレスフルかつスリリングな腹の探り合いが彼方此方で展開する、そう言った図式が遥か以前から出来上がっていた訳ではあったのである。
「話は解った。私達としては、君達を応援しているよ?蒼太君。アウロラの事をよろしくな!!!」
「子種は平等に分配をお願いしますね?婿殿・・・!!!」
「お、おじさ・・・っ。お義父さん、お義母さん。どうも有り難う御座います!!!」
「お父様、お母様!!!」
「有り難う御座います、エリオット伯爵、伯爵夫人!!!」
「この御恩は忘れません、私達の命ある限り!!!」
“有り難う!!!”とアウロラが述べた後にメリアリアとオリヴィアもそれぞれ、エリオット夫妻に礼を述べた、その後。
蒼太は些か、決まりが悪そうに、エリオット伯爵にこう告げたのである、“実はお義父さん達に、折り入って急ぎのお願いがあります”と。
「・・・なんだね?結婚式の金銭かな?それなら気にする事は無い、家が一切合切、全部出す!!!」
「何しろ愛娘達の、一世一代の晴れ舞台ですからね?他家に見られても恥ずかしくないモノにして見せますから!!!」
「いや、あの・・・。それはとても有り難いお話なのですけれども・・・!!!」
「・・・・・?他に、何かあるのかね?蒼太君、いいや婿殿。遠慮なく言いたまえ!!!」
「そうですよ?婿殿。もう家族になるのですから。水臭い事は無しにしましょう!!!」
「「「「・・・・・」」」」
その言葉に4人は一度顔を見合わせて頷き合うと、蒼太がエリオットに向けて切り出した、“いまメリアリアの実家であるカッシーニ家に於いて、送り祝いと呼ばれる式典が準備されている事”、“それにフォンティーヌ家の当主として出席して欲しい事”等を順々に説明していったのである。
「これは“結婚式”にまで続く“カッシーニ家の儀式”の一つでして・・・。僕達の門出を祝して、一族総出で祝ってくれるのだそうです・・・!!!」
「あは、あはははははは・・・っ!!!」
「そ、そんな事になっていたのかっ!?それでそれは何時なのだっ!!?」
「それがその・・・。あと八日後に開催されます」
「ななななななっ。何という事だっ!!?」
ただでさえ、驚愕の只中にあったエリオットが思わず腹から絶叫した。
「こうしちゃ居られん、モハメドッ。急いで七日後から九日後までの予定を全てキャンセルしてくれっ。それから1週間で何かっ、カッシーニ家に持って行くモノを見繕ってくれっ。娘達の門出に相応しい、優雅で盛大な特注の品をなっ!!!」
「ドレスを、新調しなくちゃならないけれども・・・っ。果たして間に合うかしら・・・?」
話を聞いたエリオットとシャルロットが、急に慌ただしく動き始めて、それにつられて屋敷全体が、騒然とし始めた、何しろあと1週間である、その間に全ての準備を整えなくてはならないのだ。
「話は確かに承った、婿殿、改めてアウロラの事をよろしく頼むよっ!!?カッシーニ家のダーヴィデ伯爵夫妻に、どうかよろしく伝えてくれ、“命に換えても必ず出席するから”とそう言ってな!!?」
「アウロラ、貴女もドレスを新調しなければなりません。フェデラール家への御挨拶が終わったなら、一度帰って来なさい。良いですね?」
そう言うと謁見は終了となり、エリオットもシャルロットも自分達の準備に取り掛かるが、とにもかくにも、斯くしてフォンティーヌ家でも支持を取り付けた蒼太は明くる朝、三度三人を引き連れて今度はオリヴィアの生家である、“フェデラール家”へと赴いてはそこで現当主にしてオリヴィアの父である“アルベール・アナトル・ド・フェデラール”とその妻にして当主夫人の“アリーヌ・アストリ・ド・フェデラール”から歓待を受ける事となったのだ。
「良く来てくれたね、君が蒼太か。なるほど、良い青年だ・・・っ!!!」
「全身から迸る精気と言い、練り上げられた闘志と言い、オリヴィアの婿に相応しい偉丈夫ね・・・!!!」
そう言って2人は蒼太を含めた4人を特別に茶会に招待しては話を始めるモノの、アルベールとアリーヌは一目見て蒼太の事を気に入ったらしく、何くれとなく世間話に花を咲かせていたのであるが、しかし。
「ところで今日、家を訪ねて来てくれた用件だがね。先にそれを済ませてしまおうか・・・?」
「電話を受けた時にはビックリしましたよ、何しろ生涯、独身を貫くだろうと思っていたオリヴィアが、急に“結婚する事になった”等と言うものだから・・・!!!」
「・・・・・」
それを聞いた蒼太は改めてアルベール達に向き直ると、オリヴィアと2人で誠心誠意、頭を下げた。
「・・・お願いします、アルベール伯爵、アリーヌ伯爵夫人。オリヴィアと僕の仲を認めて下さい、そして僕達、4人の仲を認めて下さい、お願いします!!!」
「お願い致します、父上、母上。私達は真剣に将来を誓い合っているのです、愛を交わしているのです。お願い致します、どうか・・・!!!」
「アルベール伯爵、アリーヌ伯爵夫人。どうかお願いします、私達の事を認めて下さいっ!!!」
「本当に、真剣なんです。私達・・・。もうこの人しかいないって、心の底から思っているんです、愛してるんですっ!!!」
「・・・・・」
「・・・・・」
その言葉に2人は暫くの間双眸を閉じて腕を組み、宙を仰いで無言でいたが、その内に彼等の方を向き直ってはゆっくりとこう告げた、“構わないよ”とそう言って。
「娘はこんな時に、冗談を言うようか子では間違っても無かった。否、それ以前に。軽々しく他人様に心や身体を許すような子では、間違っても無いんだ、だから蒼太。その娘が選んだ君ならば信用出来る・・・」
“それに何より”とアルベールが告げた、“私達は君達が来るのを待ち侘びていたのだよ”とそう言って。
「・・・・・?」
「“待ち侘びていた”・・・?」
「・・・・・」
“そうだ!!!”とオリヴィアの言葉にアルベールが頷いて見せるが実はアルベールとアリーヌは、オリヴィアが生まれてから一ヶ月ほど経った夜に、一族の長老からある“予言”を授けられていたのである。
曰く。
「この子は齢二十歳を越えてから恋路が開ける、そして三十路を越えてから運命の人と愛し合える悦びを知るだろう。その花婿になる男はこの子の他にあと2人の花嫁を娶る事になるのだ!!!」
「・・・・・っ!!!」
「・・・・・っ!!!」
それを聞き及んだ時に。
流石のアルベールもアリーヌも驚きと戸惑いの余りに声が出せなくなってしまったが、その時の予言が今、まさに成就しようとしている訳であり、だからそれに付いて反対する理由は一切、何も無い、と言う訳であったのだ。
「・・・・・っ。長老、その男は信用出来る者なのですか?」
思わず聞き返してしまったアルベールに、長老は黙って頷き、こう答えた、“会えば解る、お前達も一瞬で認めるだろう”とそう言って、それから今日まで。
2人はオリヴィアを見守ると同時に、密かに“予言の男”を探しては、求め続けていた、と言う訳ではあったのであり今、その当の本人が目の前に現れている訳であって、だから両親としてみれば、“遂にこの時が来たのか!!!”と言うのが何よりも正直な心持ちであったのである。
「娘を頼むよ、蒼太。何しろ君はもう家族だ、今夜は遠慮なく飲もうでは無いか!!!」
「いや、あの。伯爵・・・!!!」
と、いきなり酒を勧めようとして来るアルベールに、蒼太はフォンティーヌ家でそうしたように今現在、カッシーニ家にて進められている“送り祝いの儀式”に付いての説明を行った、すると。
「なんだってええぇぇぇっ!!?」
「あと1週間しか無いじゃない!!!」
2人とも大急ぎで当日に来て行く服の新調や引き出物の準備、手配、人員の配置等に大わらわとなってしまい結局、“前祝い”はその日その時まではお預けとなってしまった。
ただし。
「祝着、娘をよろしく頼むよ?婿殿!!!それとメリアリア嬢とアウロラ嬢もな!!?」
「これからは家族として、末永くお付き合いしてちょうだいね!!?蒼太、メリアリア、アウロラ・・・!!!」
そう言って結婚と重婚に対する承諾は得たのであり、これを以て漸くにして、蒼太と花嫁達の試練の連続は、一先ずの幕引きとなったのであった。
・・・その夜。
「・・・・・」
「どうしたんだい?」
「あなた・・・っ!!!」
漸く一連の騒動も終わり、また一人ずつ過ごす事の安全も確認された為に久方振りに自分の部屋に戻っていたメリアリアの元を、蒼太がコッソリと訪ねて来たのだ。
「なんでも、無いわ。ちょっと夜風に当たっていただけ・・・!!!」
「・・・・・」
「なんだか、眠れ無くって・・・!!!」
そう告げるメリアリアの顔は何とか笑っていたモノの、その瞳と口元には隠しきれない寂しさの光と歪みが浮かび上がっていたのであり、彼女の性格を知っている蒼太として見れば彼女が何やら只ならぬ悩みを抱えている事が見て取れた。
「メリー・・・?」
「ごめんなさい、私・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
“悲しい訳じゃ、ないのよ?”とメリアリアはそう告げると、“ただ色々あったから・・・!!!”とそう続けて、今度こそ元気無く、俯き加減で本当に沈黙してしまったのであるモノの、そんな彼女に。
「メリー・・・」
横にピッタリと寄り添ったままで、蒼太はソッと肩を抱き寄せて、メリアリアを振り向かせた、しかし。
「・・・・・」
「・・・・・」
何を考えているのか、メリアリアは中々に、目を合わせてくれようとはしなかった、すまなさそうに、申し訳なさそうに俯いたままで、虚ろな光を青空色の両の瞳に浮かべていたモノのしかし、蒼太にはそんな彼女の気持ちが何となく解っていたのである、だから。
だから、自分はせめて、正直な思いを彼女にぶつけようと思っていた、お世辞でも何でも無くて自分の真っ直ぐな、正直な気持ちを。
「メリー・・・」
「・・・・・」
「メリー。聞いて欲しいっ!!!」
「・・・・・」
「僕が、本当に愛しているのは。三人の中で一番、一番愛しているのは。・・・君だよ、メリー」
「・・・・・っっっ!!!!!!!」
その言葉を聞いた時に。
メリアリアは思わず泣き出してしまっていた、それというのも。
メリアリアは本当は恐くて仕方が無かったのである、蒼太の気持ちが自分では無い、他の誰かに移ってしまうことが、他の誰かに蒼太を取られてしまうことが、恐くて恐くて仕方が無かったのであったのだ、しかし。
彼女はそんな自分に蓋をしていた、そんな事は“甘え”だと、自分の大好きな人が三人を三人とも花嫁にする、と言うのであれば、それを受け入れるべき事では無いか、と、目出度いと、喜ぶべき事では無いか、と考えてだから、甘えている場合じゃないんだと、自分を自分で叱咤激励していたのである。
のであるけれどもしかし、それでもやはり、湧き上がる不安と恐怖、蒼太が去って行く寂しさと寒さ、それらが一気に襲い掛かって来ては、彼女を心の底から凍えさせた、勿論気持ちの上では、蒼太に対する愛情ではメリアリアは他の2人にも、絶対に負けない自信があったが、しかしやはり、常に2人の活躍振りを、蒼太に対する献身振りを実際にその目で見ている内に、段々と不安になってきてしまったのであった、“自分はここまで、この2人ほど蒼太の役に立てているのだろうか”、“蒼太に尽くしてあげられているのだろうか”とそう考えて。
「ずっと。ずっと不安だったのっ、恐かったのっ。あなたの気持ちが私から離れて行ってしまうのが、恐くて仕方が無かったのっ!!!」
“だって”とメリアリアは続けた、“だって私はアウロラよりも弱い”とそう言って。
「魔法だって敵わないし、健気さだってあの子には敵わない。オリヴィアにだってそう、あんな強さも潔さも。私には無いわ、だから、だから・・・っ!!!」
「・・・・・」
そう言って泣きじゃくりながら嗚咽を漏らす彼女を優しく抱き締めつつも蒼太は言った、“そんな事、ないよ!!!”とそう告げて。
「君は僕の事で、こんなに苦しんでいたじゃないか、こんなに真剣になって、思い悩んでいてくれたじゃないか。凄く真剣に真剣に、自分自身と向き合ってくれているじゃないか、僕の事を考えてくれているじゃないか・・・!!!」
「ウ、ウエエェェェッ。グス、ヒグッ。ヒッグ、ヒッグ・・・ッ!!!」
「それは君が僕に、真実なる愛を向けてくれているからだ、真心の底から僕にそれを尽くしてくれているからだ、誠意を持って僕に愛を報いてくれているからだ。だからなんだよ?メリー・・・」
「グス、ヒグッ。ウエエェェェッ。ウ、ウ・・・ッ!!!」
「君は僕がピンチに陥ってしまった時に、何度も助けてくれたじゃないか、何度も死の淵にいる僕に呼び掛けて来てくれて、救い出してくれたじゃないか、守ってくれて来たじゃないか。今だってそう、こんなに自分を傷付けてまで、僕の事を思ってくれている、僕のために尽くそうとしてくれている。これが健気さじゃなくて、一体なんだって言うんだよ!!!」
「ウ、ウウッ。ウエエェェェッ!!?グス、ヒグ・・・ッ!!!で、でも・・・っ!!!」
「君は誰よりも一番、健気で強くって。愛を知っている女性だよ?優しくて暖かな女性だよ?メリー。でもね・・・」
「グス、ヒグッ。ウウゥゥゥ・・・ッ!!!・・・・・?」
“そんな事は関係ないんだ”、と蒼太は続けた、“例え本当に、アウロラよりも弱くても、オリヴィアみたいに強くなくても。それでも尚も、僕はそう言う所も引っくるめて、強さも弱さも引っくるめて君が一番、好きなんだ、一番、愛しくて仕方が無いんだ!!”と誠心誠意をこれ以上無いほどに込めて、心の底から、魂の底からそう告げる。
「愛が足りなくたっていい、弱くたって構わない。それでも僕は君じゃなきゃ、ダメなんだ、君じゃなきゃ、嫌なんだよ。だからお願いだから、側にいておくれよ、何処にもいかないで?お願いだから・・・っ!!!」
「ウ、ウエエェェェッ!!?グスッ、ヒグ・・・ッ!!!あ、あな、た・・・?」
「例え君の愛が本当に、夫婦となるのに、それでも尚もまだ足りないと言うのであれば、僕の愛をもっとあげる。だって僕は君を、誰よりも君の事をいつもずっと愛しているから。夫婦の愛は、いつも2人で一つだもの、“2人揃って初めて一人前”って事なんだもの。だったら2人の愛で間に合わせちゃおう、幸せになっちゃおう?メリー・・・」
「ウ、ウッ。ウエエェェェッ!!?ヒッグ、ヒッグ・・・ッ。あ、あな、た・・・!!!」
「君がいてくれれば僕は、それだけで頑張れるから。君がいてくれれば僕は幸せになれるから。だからこれからもいっぱい、いっぱい、僕の側で微笑んで居ておくれ?お願いだよ、メリー・・・っ!!!」
「う、うわあぁぁっ。うわあああああぁぁぁぁぁぁんっっっ!!!!!!!」
蒼太のその言葉を聞き終わった時に、メリアリアは感極まって思わず泣き出してしまっていた、彼女は心底、否、魂の底から蕩け切ってしまっていたのである、彼の優しさ、彼の暖かさ、彼の温もり、その全てに。
そして、彼の果てしなき、大いなる愛情に包まれた時に。
彼女は初めて救われたのであり、そしてその瞬間に、ようやく確固たる己自身を形成する事が出来た、即ち自己を確立させる事が出来たのである。
「うわああああぁぁぁぁぁん・・・・・っっっ!!!!!!!ウ、ウエエェェェッ!!?グス、ヒッグ、ヒッグ・・・ッ!!!」
「・・・・・」
それから5分程泣き続けてメリアリアが、漸く落ち着いて来た頃に、上目遣いで蒼太に尋ねた。
「グス、ヒグッ。ヒッグ・・・!!で、でも良いの?私なんかで。アウロラみたいに女の子らしく無いのに・・・」
「君じゃないと、ダメなんだよ。それに君は誰よりも一番、可愛らしい女の子だよ?もっと自信を持ちなよ!!!」
「う、うんっ。でも・・・っ!!!」
「・・・・・っ。決めた!!!」
それでもまだ、寂しそうな顔を見せるメリアリアに対して蒼太は言った、“僕、君のストーカーになる”、“メリーの事、絶対に離さない”とそう告げて。
「・・・・・っ。ふ、ふえぇぇっ!!?」
「メリー、絶対に逃がさないから!!!」
ビックリしているメリアリアに対して蒼太が“君が例え、何処かに行っちゃったとしても、何処かに逃げちゃったとしても。僕は必ず君を探し出して連れ戻すんだ、何としてでも僕の側に居させるからねっ!!!”と、力強くそう言葉を紡ぎ続けていると、ようやくにして。
「・・・・・っっっ!!!!!!?も、もうっ!!!」
“あなたったら!!!”とメリアリアは苦笑しつつもしかし、自身も満更でも無さそうな顔をしてそう答えていた、その顔には明るさが戻っており、いつもの快活な彼女の色が浮かび上がっていたのである。
「・・・もうっ。本当に、しょうがない人なんだからっ!!!」
そう言って心底楽しそうに、面白おかしそうに微笑むとしかし、メリアリアはまた優しくて何処かホッとしたかのような、愛しさでいっぱいの微笑みを彼に向けてこう告げたのである、“私もあなたのストーカーになる”とそう言って。
「私も。あなたの事、逃がさないわっ。絶対に離さないからっ!!!あなた、何処までも何処までも付いていって一生、ううん。永遠に付き纏ってやるんだからっ!!!」
「あははっ。それじゃあどっちが本当のストーカーか、勝負だね?」
「絶対負けないもんっ。あなたは私のモノなんだからっ、ずっと縛り付けてやるんだからっっっ!!!!!」
そう告げるメリアリアを抱き寄せて、蒼太がその唇に口付けをしようとすると、今度はいつもの様にメリアリアは答えてくれた、2人は久方振りとなる、濃厚なるキスを堪能した後で。
“時空断絶結界”と“侵入者探知用のそれ”を張り巡らせたその後で、“時の涙滴”を発動させては一ヶ月ほどその只中でのんびりと過ごし、愛を育み合ったのであった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
メリアリアちゃんはお転婆で活発で、だけど誰よりも純情で一途な子なんです、慎み深い子なんです、優しくて太陽みたいな子なんです!!!
そして紛う事無き“本当の愛情”と言うモノを知っている子なのです、例え言葉に直せなくともその心で、魂で感じてキチンと体現出来ている子なのです、理解している子なんです、蒼太君に捧げ尽くしている子なんです!!!
ただしそうなのですが、だからこそと申しましょうか、逆に色々と考えては葛藤し、悩み抜いてしまうのです(真実として彼女の愛はアウロラ、オリヴィアに勝る事はあっても劣る事はありません、それほどの輝きを有しているのです)。
ただし、前述の通りに慎み深い子なのでついつい、自分を過小評価してしまうんですね、それで苦しんでしまうのですが(それが特に、愛しい人の事であるなら尚更そうです)、人はそれを、“いじらしさ”と言うのです、“健気さ”と言うのです、“真心”と言うのです(決して“面倒臭い子”等ではありません)。
もう一度、言わせていただきますがメリアリアちゃんは間違っても“面倒臭い子”等では無いのです、誰よりも純情一途で、純粋で、確かなる愛を持っている子なのです、皆様方どうか、こんなメリアリアちゃんと蒼太君の事を今後ともよろしくお願い申し上げます(勿論、アウロラちゃんとオリヴィアちゃんの事もそうですが)。
敬具。
ハイパーキャノン。
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