星降る国の恋と愛

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ガリア帝国編

花嫁達の輪舞曲(ロンド)

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「ハウシェプストの首領をやったのか!!?」

「やった、とは言っても片手を切り飛ばしただけですが・・・。それも気が付いたなら“デュマ”共々に、何処かへ消えて無くなってしまっていましたし・・・!!!」

 それから一夜開けてー。

 蒼太は花嫁達と時空間断絶用の結界と侵入者探知用のそれとに守られた部屋の中で一晩、グッスリ心身を休めて彼女達共々にリフレッシュさせてから、改めて昨夜に起きた“メイヨール・デュマ襲撃事件”の顛末を、ミラベル本部の上役達に語って聞かせた。

 彼等は興奮した面持ちでその言葉に聞き耳を立てていたモノの、“決着が着いた訳では無い”と解ると些か残念そうに落胆して見せたが、それを見たメリアリア達は思わずむかっ腹を立てていた、“相手がどれだけ強かったのか、聞いていなかったのか!!?”、“この人がどれだけ大変な思いをして私達を守ってくれていたのか、解ってはいないだろう!!!”と言うのがその憤慨の、主たる理由だったのであるモノの確かに、デュマは難敵中の難敵であり今、こうして蒼太が目の前にいて、自分達にいつもと変わらぬ笑顔、様相、容姿で接してくれているのが奇跡そのものだったのであって、ただしその有り難みや尊さと言うモノは、アイツとの戦闘を実際に経験した事の無い存在には、どれ程口を酸っぱくして言っても決して伝わらないであろう事もまた、彼女達には良く良く了知されている事だったのだ。

「頭来ちゃうわ、あの人達ったらっ!!!」

 家に帰る途次(みちすがら)、メリアリアはそれでも怒りが頂点に達して収まらず、激情を腹の底から煮え滾らせていた、蒼太があれだけボロボロになって苦労して、それで何とか撃退したのだ、と言う事を、あの人達は何にも解っていないのだと、彼女にはそれがどうにも我慢のならない事だったのである。

「ああ言う連中には、口でいくら伝えてもダメねっ!!?あなたがどれだけ大変な思いをしたのか、なんて、ちっとも解っていないんだからっ!!!」

「本当ですっ、酷すぎますっ!!!」

「蒼太をなんだと思っているのだっ!!?」

 アウロラもオリヴィアも同様の瞋恚(しんい)を抱いていたらしく、迷うこと無くそれに同調した、彼女達も心底激怒しており、堪らず不満を口にする。

「あのデュマと言う人は、只者ではありませんでした。“魔を超越したる者”、その片鱗を感じましたし・・・。蒼太さんはたった一人でそれを撃退したんですよ?どれだけの思いで闘っていたのかを、もう少し考えて下さっても良さそうなモノですけれども・・・!!!」

「蒼太がどれだけ必死だったのかを、ちっとも解ろうとしないのだからな。話にならないよ!!!」

 三人はそう言って立腹し続けた、蒼太は文字通りあの闘いに決死の覚悟で臨んでいたのであり、命を懸けて自分達を守り抜いてくれたのである、その彼の真心と真摯な思いを踏み躙られた感じがして、その事が余計に許せないでいたのであった。

 ただし一応は、彼等も一連の蒼太の活躍には評価を下してくれているらしくて、蒼太やメリアリア、アウロラにオリヴィアには再びの昇給と休暇、及び特に主犯格撃滅に功績のあった蒼太に対しては、国家に対して特別な働きがあった者にのみ送られる、“国家功労勲章”が授与される運びとなっていたのであり、これは政府や帝室から“英雄”認定を受ける為の輝かしい第一歩と言えたのである。

「まあでも・・・。今回も君達のお陰で助かったよ、本当にどうも有り難うね。みんな・・・っ!!!」

「そんな・・・っ。全然、そんな事っ。あなたがしてくれた事に比べたら・・・!!!」

「そ、そうですっ。蒼太さんが御無事で本当に良かったです、それしか考えていませんでしたから・・・っ!!!」

「あの時。蒼太が死んでしまうと思ったら、“そんなの嫌だ!!”、“絶対に嫌だ”って思って・・・っ。“何としてでも助けたい”って思っていたんだ、例え自分の命に代えてもこの身に代えても蒼太だけは、と・・・!!!」

「・・・・・っ!!!」

 “そうか・・・!!!”と蒼太は優しく微笑みながら頷くと、暫くの間、下を見て黙って俯いたまま、4人で一緒に歩いていたモノの、やがてメリアリアに向き直って尋ねた。

「メリー、あのさ・・・っ!!!」

「言わないで・・・!!?」

 “解っているから・・・!!!”とメリアリアはニッコリと微笑みながらそう応えた、その笑顔には確かに、一点の曇りも無くて、でも蒼太には何処か寂しそうに見えた。

「オリヴィアの輝き、私も見たもの。それならしょうが無いじゃない?」

「・・・・・っ!!!」

 “有り難う”と蒼太は告げた、そう告げて申し訳なさをひた隠しにして、それでも潔く頭を下げると、改めてメリアリア共々にオリヴィアに向き直ってこう告げた。

「オリヴィア・イネス・ド・フェデラール・・・!!!」

「・・・・・っ。な、なんだ?急に。改まって。と言うよりも」

 “本名を言われると照れるな!!!”等とオリヴィアが頬を掻くが、蒼太は至って真面目な顔をし、オリヴィアに向かってこう告げた、“僕と結婚して下さい”と、ハッキリと力強い口調で、そこにいた誰の耳にも届くように。

「・・・・・っ。え、ええっ!!?えぇぇぇえええぇぇぇぇぇえええええっっっ!!!!!」

「そ、蒼太さん・・・?」

 その言葉に一瞬、“何を言っているのか解らない”と言う顔をしたオリヴィアだったが次の瞬間にはそう叫んで困惑していた、その一方で。

 アウロラもまた、キョトンとした顔をしていたモノの、蒼太が“おいで?”と言うと全てを理解したかのようにニッコリ笑って頷くと、真っ直ぐに愛しい人の胸の中へと飛び込んで行ったのだ、そうして。

 蒼太やメリアリア共々に、オリヴィアの事を見つめるモノの、その当の本人であるオリヴィアは何が起きているのかを未だに解っていないらしく、彼女にしては珍しくも動揺しては、慌てふためいていたのである。

「ししし、信じられんぞっ!!?そ、そそそそっ。蒼太っ、君はっ。君は自分が何を言っているのか、解っているのかっ!!?」

「勿論、解っているつもりだよ?オリヴィア・・・」

「あぁぁぁあああぁぁぁぁあああああっっっ!!!!!!」

 その言葉に、オリヴィアはしかし、顔を真っ赤にしたまま両手で頭を抱え込むと、その場で“わあああっ!!?”と叫んでしゃがみ込んでしまったのである、何事かをブツブツと口にしつつも、俯き加減で瞳をキョロキョロさせながら。

「し、しかしっ。それは、あのっ。その・・・っ!!!」

「僕は、本気だよ?オリヴィア。何ならもう一回、言おうか?」

「ややややややや、止めろっ。止めるんだ、バカ者!!!なんて事を言っているんだ、君は!!!」

「・・・・・っ。オリヴィア。もしかして」

 “嫌なのかい?”と蒼太が告げるとオリヴィアは、いよいよ顔を真っ赤にしてこう答えていた、“いいいい、嫌な訳があるかっ。そんな事があるわけないっ!!!”と。

「たっ、ただっ。ただしだなっ!!?私にも心の準備と言うモノが・・・っ!!!」

「そんなの・・・」

 “幾らでも待つよ”と蒼太は言った、“ずっと待っててあげるから”と、優しい笑みを浮かべながら、暖かい口調でそう語り掛けるモノの、それを聞いたオリヴィアは“うう・・・っ!!!”と覚悟を決めたように蒼太へとゆっくりと向き直る、ただし。

 顔を紅潮させたまま、その漆黒のダイヤのような輝く双眸を、あさっての方向へと向けつつだ。

「わ、私。私は・・・っ!!!」

「・・・うん」

「わ、私はっ。君の事が・・・っ!!!は、はわわっ!?やっぱりいかんっ、そんな事言える訳がないっっっ!!!!!」

「頑張って、オリヴィアッ!!!」

「そうですよ、オリヴィアさん。ファイトですっ!!!」

 するとメリアリアがエールを送り、アウロラもまた、それに同調した、2人ともオリヴィアの事は大切な戦友であると同時に偉大なる同志、先達としてよくよく理解していた為に、こんな所で自分に負けて欲しくは無かったのであった。

 だから。

「オリヴィア、自分を信じてっ!!!」

「そうですよ、オリヴィアさん。いつもみたいに決めちゃって下さいっ!!!」

「・・・・・」

「うっ。ううう・・・っ!!!」

 2人の言葉に何とか己を奮い立たせると、オリヴィアは改めて真っ直ぐに、蒼太の事を見るモノの、まだ子供だった頃から知ってはいる彼の顔が、姿が何だかいつもより精悍で頼もしくて、立派なモノにみえたのであり、その迸る精気と優しさ、そして自信に満ち満ちた態度にオリヴィアは余計に鼓動が早く高鳴っては思わず心臓が口から飛び出そうになるかのような感覚を覚えて悶絶した。

「あ、あうぅぅっ。わ、私は・・・」

「・・・・・」

「わ、私はっ。蒼太の事が・・・っ!!!」

「・・・・・」

「君の事が。す、好きだっ。だから・・・っ!!!」

「・・・・・っ。うん」

「だからっ。よろしくお願い申し上げますっ!!!」

 そう言って、蒼太に思いっ切り最敬礼でお辞儀をすると、暫くした後にゆっくりと上半身を起き上がらせて恐る恐る彼を見つめるモノの、そんな彼女をー。

 蒼太はゆっくりと歩み寄ると、そのスミレの花の匂いのする華奢な身体をしっかりと抱き締めて見せた、オリヴィアは一瞬、ビクッとなったがやがて自分も蒼太の肉体に腕を回すとその逞しい背中に手をやって抱き着き、己の肢体をしっかりと密着させた。

 2人はそのまま、暫くの間は黙って抱き合っていたモノの、やがてどちらともなく身体を離すとニッコリと微笑み合い、もう一度抱き合ってから、メリアリアとアウロラの元へと帰って来たのである、これでー。

 蒼太の元へはまさに三人の花嫁達が集まった事になったモノの、これからが大変だった、まずはそれぞれの家に赴いてはこの事を彼女達の両親である当主とその夫人とに告げて結婚の、否、もっと正確に言ってしまえば重婚の許可を得なければならないのである。

 それだけでは無い、国と政府に働き掛けては蒼太は自身を“英雄”か“聖人”かに推してもらう必要があるのであり、そう言う意味では確かに今回、“ハウシェプスト協会”の“総元締め”たる男、“デュマ”を取り逃がしたのはいただけなかった、いずれ決着を着ける時が来るであろうがもし、奴をあそこで撃滅する事が出来ていたなら。

 “フォンティーヌ並びにヴァロワ家壊乱作戦”、“ルテティア第三総合病院事件”の両計画において、その中心的役割を果たしていた組織の幹部とトップを捕縛、或いは撃滅したカドで蒼太は間違いなく、押しも押されぬ“英雄認定”を受ける事が出来ていたであろう事は、疑いようの無い事実であったからであり、現に今でもセイレーン、ミラベル双方からの覚えも目出度い彼はだから、今回の事で再びの昇給と休暇をもらえる事となり、“勲章”すらも授与される運びとなっていたのだ。

「・・・・・」

(でもそうなのよね、この人って凄いのよ。だって悪霊や魔物は勿論のこと、鬼や悪魔だって抹殺しちゃうし、“レウルーラ”と戦って撃退してるし。それに今回の“ハウシェプスト協会”との一連の戦闘にだって全部勝って来てるんだもん!!!)

(普段はおっとりしているように見えますけれど・・・。蒼太さんてやる時はやる人なんですよね、凄いです!!!)

(あんなに小さかった少年が、今やこんなに逞しくなって。・・・そ、それにそのっ。私の事まで!!!)

 そんな事を考えながらも、メリアリア達は改めて蒼太に目を向け、そして思った、“この人ならばやるかも知れない”と、“いや、やるだろう!!!”と。

(((本当に、英雄になれるかも知れないっ!!!ううん。そんな事無い、だってこの人は、とっくに私のヒーローだったものっ!!!)))

 全員が、心の中で強くそう思うと蒼太にソッと抱き着いてはその身と身体とを愛しそうに擦り寄せるモノの、そんな彼女達に腕を回して抱き締めると蒼太は考えを新たにしていた、“ちゃんとそれぞれの御両親に挨拶に言って、キチンと許可を得てこよう”と、“これまでの事を正直に話して、受け入れてもらえるように努力しよう”と。

 そうすることこそが今、自分がこの子達に報いる道であると、改めてそう考えていたのであるがその為、蒼太はまずは第一番目の花嫁であり、尚且つ今現在、“送り祝い”の準備の真っ只中にあるメリアリアの実家、“カッシーニ家”から訪問する事に心を決めて、アポイントメントを取る事にした。

「やあ蒼太。どうしたんだい?」

 娘婿からの電話と聞いて、ダーヴィデが慌ただしく、それでも懇切丁寧な物腰で電話口で応対に出てくれた。

「お義父さん、実は大事なお知らせがあります」

「・・・なんだい?改まって」

「その事を御説明申し上げる為にまずは一度、会って頂きたいのです。直接会ってお話を、申し上げさせていただきたいので。それも出来る限り早急にです・・・!!!」

「・・・・・?ああ、それは構わんよ。ただし今は2人の“送り祝い”の準備の最中で忙しいから、あんまり時間は取れないが」

 “お時間は取らせませんから”、“それでもなるべく早くに会っていただきたいんです!!!”と言う蒼太の言葉に頷くと、ダーヴィデは“それなら今日の午後にでもおいで?”、“一時間ほど時間を空けておくから”とそう言い渡して電話を切った。

「・・・・・」

「お父さん、何だって?」

「“今日の午後に来い”って、会ってくれるそうだよ・・・!!!」

「・・・・・っ。ん、そっか!!!」

「き、緊張して来ました。初めてです、ダーヴィデ伯爵にお会いするのは・・・っ!!!」

「わ、私もだ。フェデラール家も“伯爵位”を持ってはいるが・・・。何分にも“裏貴族”だったからな、“そう言った家系”同士がお互いの家を行き来する事は、婚姻関係を結んでいる以外では滅多に無い・・・!!!」

 “君達も来るように”と蒼太に言われたアウロラとオリヴィアはその瞬間、身振り手振りにぎこちなさが出て来た、それはそうだろう、何しろ2人ともダーヴィデに会うのはこれが初めての事であったし、しかも会う理由が理由なのだ、緊張するな、等と言う方がどだい無理な注文以外の何物でも無かったのであるモノの、しかし。

「大丈夫だよ」

 と蒼太は言った、“ダーヴィデ伯爵は優しくて気さくな方だから、2人ともそんなに畏まらなくても平気だよ?”と。

「ねえ?メリー」

「ええっ!!!」

 と蒼太に話を振られたメリアリアはにこやかな顔をして頷いて見せたのである、“心配ないわ!!!”とそう告げて。

「私のお父さん、お客様は大好きなのよ?それに2人は素晴らしいレディですもの、きっと喜んで迎え入れてくれる筈だわ!!!」

「そ、そうなのですか?それでしたなら・・・!!!」

「よ、良かった。後は粗相が無いようにせねば・・・っ!!!」

 メリアリアの言葉に2人がそう頷いて、幾分落ち着きを取り戻すのを確認すると、蒼太は今度は同じようにアウロラの実家である、フォンティーヌ家、そして彼自身も初めてとなる、オリヴィアの実家、“フェデラール家”へと連絡を取る事にした。

 もっとも。

 フェデラール家には初めて連絡を取る手前もあり、彼が応対するのでは無くて、最初にオリヴィアに電話を掛けて貰い、ある程度事情を話した後に蒼太が代わる、と言う手法を取ったがその結果、明日の午前中にフォンティーヌ家、明後日の同時刻にフェデラール家を訪問する運びとなり、取り敢えず各伯爵家へのアポイントメントは成立した訳である。

 後は。

「・・・・・」

(事情を話したとして・・・。お義父さん達が果たして納得してくれるか、だな・・・!!!)

 蒼太はそう考えるモノの、こればっかりは実際に彼等の元へと足を運んで誠心誠意、訴えるほか無く、だから蒼太は回りくどい言い方や詭弁を弄するつもりはサラサラ無かった、あくまで裸一貫、心と心でぶつかり合うつもりでいたのであり、自身の体験からその真心が彼等に伝わるならば、必ず道は開けるであろうと確信していたのである。

 そう言う心づもりで一度寮に帰ってからそれぞれ、入浴して身嗜みを整え、正装して赴いた先で開口一番、蒼太が放ったその言葉に、流石のダーヴィデ達も目を丸くした。

 曰く“この子達全員と結婚する事になった”と言うので“それを認めて欲しい”との事だったのだが、それを聞いた時に。

 ダーヴィデとベアトリーチェは驚き半分と同時に何処かで“やっぱりそうか”と言う思いに駆られていた、この時彼等の頭の中にあったのは、自分達の占いの事だったのであり、あの“星座神霊術”によって導き出された“卦”は正しかったと確信するに至っていたのだ。

 ただし。

「そ、蒼太。君は・・・!!!」

「本気で三人全員と結婚するつもりなのかい・・・!!?」

「はい、本気です!!!」

 ダーヴィデとベアトリーチェから再度そう尋ねられた蒼太は心の底から頷いて見せたのであり、それぞれの花嫁達もまた、瞳にこれ以上無い程に強くて確かな愛情と、決意の光りを宿していた。

「お父さん、お母さん。お願い、認めて欲しいのっ!!!」

「私達、蒼太さんの事を愛しているんですっ!!!」

「真剣なのですっ、間違っても軽い気持ちではありませんっ!!!」

 自分達の意思と心に正直になって口々にそう叫ぶ花嫁達の気迫にダーヴィデとベアトリーチェはもう、何も言えなくなってしまった、彼等としてみれば、“認めてやっても良い”と思っていた、“星座神霊術”で得ていた“答え”でもあった事だし、また仮にも貴族である彼等の先祖の中には何人もの妻や愛人を持っていた者もいた訳であって、そう言う意味では一夫多妻制は決して理解できない訳では無かったからである。

 ただし。

「結論から言おう。私達自身は別に良いと思っている、思ってはいるが、しかし・・・!!!」

「蒼太、お前さんは本当に解っているのかい?重婚を成し遂げる為にはとんでもない功績を挙げて、国や帝室から“英雄”もしくは“聖人”認定されなければならない事を・・・っ!!!」

「・・・・・っ。勿論、知っています」

「“あて”はあるのかい?その道筋を成し遂げる為の・・・!!!」

「この人は既に、“国家功労勲章”を授与される事が決まっているのよ?お父さん、お母さん!!!」

 その事を打ち明けつつも、メリアリアがこれまでの彼の活躍や、その実力の凄まじさに付いて力強く説明するモノの、それを聞いていたダーヴィデ達は“ううむ・・・!!!”と何事かを考えて俯いてしまっていた、どうやら彼等にも彼等の考えがあるらしく、それを伝えようかどうか、迷っていた様子であったが、しかし。

「お父さん、お母さん、お願いよっ。この人との結婚を認めて欲しいのっ。この人の事が、蒼太の事が、ずっとずっと大好きだったのっ。この人の事しか考えられないっ、この人と一緒になれるのならば、私は死んでもいいっ!!!」

「メリー」

 するとそれを聞いた蒼太が告げた、“勝手に死ぬなんて言わないで?”とそう告げて。

「それならば、僕も一緒に死ぬよ、君だけを一人でいかせはしないよ!!!」

「あなた・・・っ。うん、死ぬ時は一緒よ?」

「そ、それならっ!!!」

 とアウロラが告げた、“私も一緒に死にますっ!!!”とそう言って、そしてオリヴィアも。

「私だって同じだよ」

 覚悟を秘めた瞳でそう言葉を綴ると、“一緒に死ぬ”とそう続けた。

「お義父さん、お義母さん。お願いしますっ。僕達の仲を認めて下さいっ!!!」

「お父さん、お母さん。お願いよ、私には絶対に、この人しかいないの・・・っ!!!」

「ダーヴィデ伯爵、お願いしますっ。どうか私達の結婚を認めて下さいっ!!!」

「一生のお願いです、この人と人生を共にさせて下さいっ。ダメならばこの場で首を切り落として下さいっ!!!」

「「・・・・・」」

「「「「・・・・・」」」」

「「・・・・・」」

「「「「・・・・・」」」」

「「・・・・・」」

「「「「・・・・・」」」」

「「・・・・・」」

「「「「・・・・・」」」」

「「・・・・・」」

「「「「・・・・・」」」」

「「・・・・・」」

「「「「・・・・・」」」」

 “解ったよ”とダーヴィデが頷くと同時に、ベアトリーチェが苦笑していた、その意味する所を、蒼太達はまだ知らなかったが次の瞬間には彼等の考えを聞き及び、驚愕する運びとなるモノの、曰く。

 “単に功績を立てただけでは英雄にはなれない”との事であり、その条件としては“認定審査会”の審議を経て了承されし者だけが国と帝室からその称号と権利を送られるのだ、と言う訳だったのである。

「余り知られてはいない事なのだけれども・・・。その“認定審査会”を開くための条件と言うのが最低でも伯爵位以上の家柄の貴族三人からの推薦があった時に限る、と言う事になっていてね。だから蒼太、君がこの三人と出会う事は、本当に運命だったのかも知れないよ?本当に三人と結ばれる、運命だったのかも知れない・・・!!!」

「あの小さかった男の子が立派になって、まさか三人の花嫁と一緒に自分達の前に現れるなんて、思っても見なかったよ、こんなに沢山の人々の運命と縁とを手繰り寄せて来るなんて、まるで夢でも見ているような気分だけれども・・・!!!」

 そう言って2人は改めてクスリと微笑んでくれたが、それを見て既にその暖かさを感じていた蒼太とメリアリアは勿論の事、アウロラもオリヴィアも確信を持つに至っていたのである、“この人達は優しい人達だ”と。

(なんでしょう。お父様やお母様と同じように、不思議な暖かみを感じます・・・!!!)

(まるで実家の父上と母上とに出会った時のような、ホッとする感覚を覚えるな・・・!!!)

 2人は思うがそう言えば、と彼女達は更に考えていた、“このカッシーニ邸は自分達の実家と同じような居心地の良さを感じる”と。

 それと同時に。

(な、なんでしょうか。この物凄い力を内包した光りの波動は・・・っ!!!)

(実家に時々帰って来た時に感じていたのと同じような、“神秘の力の迸り”を感じる・・・っ!!!)

 そう思って2人は些か驚くと同時に困惑するモノの、それは蒼太にはおろかメリアリアにすらまだ明かされていない真実だったが彼女の自宅の奥底には、カッシーニ家の遠い先祖が神より賜った神宝“光輝玉の金剛石”が祀られており、それは幾重にも厳重なる防御壁や遮蔽幕で覆い尽くされ、守られていたモノであったのである。

 しかしメリアリアと同様に、その身に“神の波動”を宿していたアウロラもオリヴィアもだから、その神宝との間に“波動共”を誘発させてはその存在を感じ取った訳であるモノの、そんな一種の戸惑いを覚えて多少、ドキマギとしている2人に対してダーヴィデとベアトリーチェはあくまで穏やかな口調で告げた、“何も心配はいらないよ”とそう言って。

「蒼太と君達の気持ちは解ったよ、君達さえ良ければ我々は別に構わない・・・!!!」

「この結婚を成立させるために、私達も全力で応援するよ。ただしまずは“三人の同志”達を集めなくてはならないね・・・!!!」

 そう伝えると今度は蒼太に、“2人の御両親には連絡を取ったのか?”と尋ねた所、“まだです”、“ここに一番最初に来ました”との事であったので、ダーヴィデ達としてはまずは残りの“フォンティーヌ家”、“フェデラール家”双方の意向を確認したい所である。

「まずは2人の御両親に、了承を取りなさい。この話はそれからだよ?」

「私達としても、仲間がいてくれた方が動きやすいし・・・。それに相手が天下のフォンティーヌとフェデラールならば、言うことはなしだからね!!!」

 娘とその花婿とにそう告げると。

 改めて“4人で幸せにおなり?”と言葉を添えては特に、彼等の為に“お茶会”を催してくれた、“送り祝い”の準備の最中だった為にそれは本当に簡単なモノではあったけれども、心の籠もった応接に満たされた4人は口々に改めて御礼を述べると“カッシーニ邸”を後にした。

「お義父さん、お義母さん。本当に・・・っ!!!」

「お父さん、お母さん。有り難う・・・っ!!!」

「本当に有り難う御座いました!!!」

「この御恩は一生、忘れません!!!」

 その言葉を以て蒼太と花嫁達の、最初の試練が幕を閉じた。

 残るは二つ、フォンティーヌ家とフェデラール家である。

 “まずは良かった”とその場に居た全員がそう思うと同時に“次も頑張ろう”、“ここからが正念場だぞ!?”と油断を引き締めては、思いを新たにしたのである。
ーーーーーーーーーーーーーーー
 オリヴィアちゃんはその本名を、“オリヴィア・イネス・ド・フェデラール”と言い古からの名族“フェデラール伯爵家”の長女です(通称が“オリヴィア・フェデラー”となります)。

 このフェデラール家もまた、カッシーニ家、フォンティーヌ家と同様にかつて神々にお仕えしていた由緒正しき家柄であり、その高い霊力と人格故に神によって祝福され、神宝である“黒曜石の銀水晶”を賜る事となったのです。

 オリヴィアちゃんは元々、魂のレベルで高潔であり、また子供の頃からその神宝の神力の影響を受けていた為に、その身に、そして何より“霊性なる根源”の央芯中枢に“神の力の輝き”を宿す事となったのです(それがデュマ戦の際に遺憾なく発揮された、と言うわけですね)、そう言う事で御座います。
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