星降る国の恋と愛

モノポールエンジン

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ガリア帝国編

VSレプティリアン戦(デュマ編)

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 “神人化”した蒼太には“人間形態”の時よりも更にハッキリとした“未来視”の“神通力”が備わっていて、意識を集中させさえすればだから、自分達の運命の最短十数分~最長で数十年後位までの内で、それを最も可能性が高いモノから順に三つ程までを見通す事が出来たのである。

 ただし。

 大変な精神力を消耗するこの“霊視占い”、もしくは“神霊卜占”と言うものにも当たり外れ以外にも、出て来る“卦”自体にある“例外”が存在していた、例えば度を超える程に強烈な“意志”や“波動”、“魔力”を持った“何者か”の“干渉”が時空上に発生している場合においては、その未来を正確に見切る事が出来ないのであって、その事を蒼太自身は神から教えられてはいたモノのまだ、見極める事が出来ていなかったのであったのだ。

 まだ若干、二十歳にすら満たない彼にはそれでも、“神人化”さえしている間はその“異変”が十二分に差し迫ったモノであれば(即ちその影響の余波が、あと10分か20分程の後に自分達の身に降り掛かる様になっているのであれば)、ほぼ確実にその歪みをキャッチ、分析する事が、出来るようにはなっていた、そこまでは“万が一があるといけないから”と言って雷神でもある“鹿島の神”が特に、彼に念入りに指導を行っていたのであるモノの、しかし。

「・・・・・っ!!!」

「・・・・・っ!!?」

「な、何?何なの、この魔力は・・・っ!!!」

「底知れぬ不気味さ、地を這いずり回るような暗黒の鳴動。これは一体・・・っ!!!」

 それでも尚、彼は未だに至らなかった、無理も無いだろう、彼まだ19歳と少しになったばかりなのであり、むしろその若さの身でここまでただひたすらにその身を心を、魂を練り上げ続けて来た事こそが、驚異中の驚異と言えたが、そんな蒼太達の目の前に今、“最大の試練”が訪れようとしていたのであるが、それこそが。

 “ハウシェプスト協会”の特別大祭祀長にして“アンチ・クライスト・オーダーズ”の“密儀”を務める影の男、“アレクセイ・デュマ”その人に他ならなかったのである。

 否、その男の事を果たして、“人”と言って良いかどうかさえ、疑わしかった、何故ならば。

「ぐ、ぐ・・・っ!!!」

(か、体が押されるっ。何という“魔力”だ、波動自体が威圧に近い・・・っ!!!)

 蒼太が思わず表情を硬くしたまま“ソイツ”に向けて向き直るモノのその日、ガイヤール達との“連戦”を終えて勝利を収め、無事に人質を解放すると同時に自身と花嫁達の身と命運とを見事に守り抜いた蒼太は彼女達を引き連れて本部に帰還し、上役達の目の前での詳しい状況報告やら彼等からの褒賞授与の決定伝達、今後の予定の確認と言った“事後処理”を全て終えるとその足で塒(ねぐら)となっている、セラフィム学生寮内にある“オリヴィアの部屋”へと向けて、引き上げて行く最中ではあったのだ。

 そこへ。

 突如として怪しい気配が漂い始めたかと思うと彼等の前方の少し離れた所から、黒くて不気味な光を放つ“魔力の霧”が出現して辺り一帯に立ち込めて行った、それはれっきとした“異次元空間”への連絡口であり、元になっている波動こそは違うモノの、それでも基本的には対ガイヤール及び、デマーグ戦において蒼太の用いたモノと同一系統的なモノであった。

 だからこそ。

 程なくしてその中心部分から姿を現した、漆黒のフードを身に纏い、顔を隠している人物を見ると同時に蒼太は殆ど反射的に確信していた、“これはこちらも神人化を使わなければ、決して勝てない相手だ”と。

 しかしー。

「・・・・・っ!!!」

 “くそ・・・っ!!!”と蒼太は毒づくモノの、既にしてその“神人化の奥義”は使用してしまっているのであり最低でも、明後日か明明後日にならなければ発動させる事は覚束無かった、かてて加えてー。

 それを使った反動で蒼太自身がまずはしこたま消耗しており、身動きするのも億劫極まる状況ですらあったのだが、しかしー。

「・・・・・っ!!!」

(やるしかない、ここはもう、“異世界”の中だっ。自分だけが戦って時間稼ぎをしてあげたかったけれども、それをやってももう遅い!!!)

 “くそ・・・っ!!!”と蒼太はまた毒づいたがこんな事なら異変に気付いた瞬間にでも、メリアリア達に遠くへ逃げるようにとでも、指示を出しておくべきだった、と後悔した、決断力が鈍く、感覚が思ったように働かない。

 普段の彼ならば、こんな事等決して無かったが今の蒼太は疲弊し尽くしてしまっており、覇気も弱くて身体も重かった、要するに精彩を欠いていたのである。

 それでも。

(守ってみせる、メリー達の事だけはっ、この身に換えても、命に換えても・・・っ!!!)

 そう思い立つと蒼太は背中に背負ったベースケースから聖剣である“ナレク・アレスフィア”を抜き放つと両手で柄を持って構える。

 その瞳には強い決意が戻って来ており、萎えていた気力も再び充実して来るモノのこの時、正直に言って彼は“己の死”を確信していた、それでも尚、死して尚、メリアリア達の事を守ろうと、何でも良いからせめて一矢報いて相手を傷を付け、出来うる限りに深手を負わせて散華しようと心に決めていたのである。

 ・・・決して無駄死にだけはするまいと、そう覚悟を決めて決心し、己を奮い立たせると同時に最愛の花嫁達に“みんな下がって”と声を掛けた。

「アイツは只者じゃない。まずは僕が行くから、みんなは様子を見ていてくれ・・・!!!」

「・・・・・っ。そ、そんなっ。それじゃあっ!!!」

「だ、ダメですっ。そんなの危険過ぎます!!!」

「皆で戦うべきだ、蒼太っ!!!」

「良く聞いてくれ!!!」

 と蒼太は続けた、“ここは現実とは隔絶された結界の中だ”と、“つまりは完全なる異世界に、僕達は閉じ込められてしまったんだ”とそう言って。

「ここでは多分、全てが奴の思うがままだ、正直に言って何が起こるか解らない。だから皆は一旦、後方に下がって様子を見ていて欲しいんだ、それで何か起きないか、例えば敵が何か罠を張っていないかどうか、他にも援軍が来ないかどうかを警戒しておいて欲しいんだ・・・!!!」

「・・・・・っ!!!」

「・・・・・っ!!?」

「・・・・・っ!!!」

「アイツは必ず、僕が何とかする。だから君達は他に何か無いかを確認して、余計な手出しをさせないようにしていてくれ・・・っ!!!」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

 “頼むっ!!!”と蒼太は告げるがそれに対して暫しの沈黙の後に、メリアリアが口を開いた、“嫌よ!!!”とハッキリとそう言って。

「絶対にダメッ。そんなことっ!!!」

「そうですよ、そんな事させませんっ!!!」

「皆で掛かろう、蒼太っ!!!」

 口々にそういっては、心配そうな面持ちと何かを訴えるような眼差しをしたまま、縋り付くかのように剣を構える蒼太にしがみ付き、口々に訴えるモノの彼女達はこの時、蒼太のつもりがハッキリと見て取れたのである、即ち。

 “自分達の為に、捨て駒になろうとしている”、と言うその意思が。だから。

「絶対にいや、ダメよっ。そんな事・・・っ!!!」

「蒼太さん、皆で戦いましょうっ!!!」

「私達も、力を貸すから。苦しみも辛さも痛みも、皆で分け合おう?蒼太・・・っ!!!」

「・・・・・」

「あなた、お願い。私を一人にしないで・・・っ!!!」

「蒼太さん、お願いします、ずっと一緒にいて下さいっ!!!」

「嫌だと言っても、死んでも地獄の底まで付き合うからなっ。私はっ!!!」

「・・・・・」

 それを聞いた蒼太はそれでも、尚も逡巡していた、正直に言って皆には、生きていて欲しかった、何処までも生きて生きて、生き抜いていて欲しかった、そしてそれと同じ位に。

 何より無事でいて欲しかった、安寧と安楽の只中にあっていつまでもいつまでも、優しく微笑んでいて欲しかったのであるモノの、一方で。

 それでもあくまで、剣の切っ先を自身に向けたまま、この子達に手出しはさせないと心に決めて、たじろぐ事すらしなかった蒼太を、別に自分には興味は無い、と言わんばかりにただただ黙って観察していたデュマはしかし、やがて何かを察したかのように、突如として悍(おぞ)ましい笑みを浮かべて自身も何やら漆黒の黒鋼(くろはがね)で出来た、おどろおどろしい大剣を構えるモノの、その剣の放つ禍禍しさと言ったら他に言い表しようが無かった、デュマ本人に負けず劣らず強烈なまでの魔力と同時に酷い腐臭を放っていたのだ。

「クレイディフ・シュヴァルツ。人呼んで“死神の剣”・・・!!!」

 不敵な笑みを絶やすこと無くデュマは言う、“お初にお目に掛かる”と。

「私の名前は、敢えて一々名乗るまい・・・。ただ“ハウシェプスト協会”の“総元締め”とでも言っておこう!!!」

「・・・・・っ!!!」

 それを聞いた瞬間に。

 蒼太の意識は“ある事”を起爆剤として再びハッキリと覚醒した、“コイツなんだ”と思った、“コイツこそがアレクセイ・デュマだ!!!”と彼は直感したのであり、そしてそれ故に。

 先程までとはまた違った激情が、心の内に充満して行った、それはハッキリとした“怒り”であり、相手に対する“殺意”であった、蒼太は思った、顔はフードで見えないモノの、コイツこそがかつて父を死に追いやり、返す刀で母の命すらも奪った男に相違ない、と。

 それに気付いた瞬間。

 先程のモノに輪を掛けて、体の奥底よりも更なる力がフツフツと湧き上がって来た、闘志が芯から溢れ出し、気分が一気に高揚して来る。

「アレクセイ・デュマ!!!」

「・・・・・っっっ!!!!!?」

 蒼太から放たれた己が名前にデュマは明らかに一瞬、ギョッとした表情を浮かべるモノの、蒼太は構わず男を睨み付ける。

「僕はお前を許さないっ、ここでお前を殺すっ!!!」

「・・・・・っ!!!」

「え、え・・・っ!!?」

「デュマ!?するとコイツが・・・!!!」

「・・・・・っ。ふ、ふはははははははっ!!!」

 するとその言葉を聞いて驚愕の色を浮かべると同時に自身達も身構える“花嫁達”よりも更に、ハッキリとした激しくて踏み込んだ態度を蒼太は取って見せたのである、眥(まなじり)を決して彼を睨み付けつつ尚も聖剣の切っ先を尖らせるが、それに対してデュマはまたも一瞬、驚愕した後に、今度は大声で笑い出した、“あっはははははははははっ!!!”とそう言って。

「結構、結構。実に愉快だ、やはり戦(いくさ)と言うものは、こうで無ければいかん!!!」

 そう言って再び蒼太を向くと、デュマはいやらしい笑みを浮かべたままでこう返したのである、“先程までの死に体が消えたな?”とそう告げて。

「そうかそうか、なるほどな。察する所はその娘達の為に、捨て石になろうとした訳か・・・!!!」

「・・・・・」

「・・・・・っ。あなたっ!!!」

「蒼太さん、やっぱり・・・っ!!!」

「蒼太っ、君は・・・っ!!!」

 するとそんなデュマの言葉に対する蒼太の反応を見た時に、メリアリア達はやはり、自分達の感覚は間違ってはいなかったのだと改めて確信していた、こんなバカな事を思わせない為には、後で思いっ切り叱ってやらなければならないと、メリアリアとオリヴィアは思い、アウロラもまた何処までも何処までも抗議する気が満々であった。

 しかし。

「みんな、頼むっ。今は僕を信じてくれっ、決して捨て鉢になったりはしないと約束するからっ。絶対にだから・・・っ!!!」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

 それでも、やはり。

 メリアリアは“ダメよ”と言った、予想外に彼女が頑固に蒼太の言葉に反対したのは、それだけ蒼太のやろうとしていた事が、彼女にとって衝撃的だったからであろうが、しかし。

「絶対にダメッ。私も一緒に戦うっ!!!」

「同意見ですっ!!!」

「全くだなっ!!!」

 と、彼女達の何れもが、全く蒼太の言葉に頷く気配を見せないのはそれだけ珍しい事なのであったがしかし、一方で。

「何やら決死の覚悟をしていた様だがやはり、闘志をぶつかり合わさねば戦とは呼べんからな、小僧。いいや今こそ私もハッキリと悟ったぞ?お前こそが“真に時空を糺し得る者”だっっっ!!!!!」

「・・・・・っ!!!!!」

(早い・・・っ!!!)

 それまで不気味な笑みを浮かべて突っ立っているだけだったデュマは、不意に突然、そこまで言い終わるかどうかの内からいきなり蒼太に向かって上段に構えて斬り掛かって来た、その動体スピード、切り込みの速さは恐るべきモノであり、感覚を最大限に研ぎ澄ましてさえも今の蒼太には見切れるモノでは決して無かった、無かったがしかし。

 ガキイイィィィィンッッッ!!!!!

「・・・・・っ!!!」

「ほほう・・・っ!!?」

 防がれた事が余程意外だったのか、それとも“手応えがある相手だ”と感じたのか、はたまたその両方か。

 鍔迫り合いを演じながらもデュマが改めて蒼太を見るモノのなるほど、この青年は大したモノだと直感した、見た所まだ二十歳かそこらの歳でしかあるまいに、その若さにも関わらずに決して揺るがぬ闘志と芯の強さを合わせ持ち、体幹もしっかりと出来上がっている、そして何よりかにより。

 魔力を込めた自分の一撃を、恐らくは疲れ切っている身体で真っ向から受け止めてみせたその心身の強靱さ、技の冴え、どれを取っても超一流でありなるほど、これ程までの実力を、秘めている者がいたのであれば手下共では話にならなかった事が、頷けると言うものだった。

 一方で。

 蒼太もまた驚愕していた、デュマの底知れぬ気迫に魔力、剣技の威力に、そして地の底深くから湧き上がって来るかの様な恐ろしい程に強い力の確かさにだ、かつてこれ程までの深くて完成された実力を持った相手と蒼太は相対した事が無かったのであるモノの、それを。

「でやあああぁぁぁぁぁっ!!!!!」

 グググッと気迫で押し返すと蒼太はそのまま追撃に移って行った、“ナレク・アレスフィア”を振り翳しては“渾身の一撃”を、怨敵へと向けて解き放つがそれを何処か楽しそうに受け止めながらもデュマは自身も決して油断することなく、蒼太に対して剣閃を解き放って行く。

 その研ぎ澄まされた感覚と極限にまで練り上げられた波動はそれだけ、この若者が鍛錬に明け暮れると同時に実戦を潜り抜けて来た事を示していたモノの一方で、蒼太も蒼太で攻撃、防御の双方においてキチンとデュマの動きに対応して見せていた、改めて見て見ると、このデュマと言う男は決して気の抜けない相手であった、そのか細い腕や老人の様な見てくれとは違っていて膂力は非常に強力であり、一撃一撃が素早く重い。

 正直に言って今の蒼太では、受け止めるだけで筋肉の繊維が何本かは千切れ飛び、骨がギシギシと軋んで弛むがそれらを束ねて修復させつつ、蒼太はこの難敵との決戦に臨んでいた訳であったのだ。

 ガキイイィィィィンッ。ギン、ギイイィィィィンッ、ガッキイイィィィィィッッッ!!!!!!!

 撃ち合いはやがて数十合に及んでいたモノの、二人の決着は中々に着かなかった、溢れる魔力と腕力とでひたすらに押しまくるデュマと、それにしっかりと対応しつつも受け流しながら見事な反撃を決めて行く蒼太。

 戦線は一種の“膠着状態”に陥ってしまっているかの様であり、しかし一見するとジリジリと蒼太の方が押している様にも見て取れた、現に先程から二人の剣戟はメリアリア達花嫁から大分離れた場所へと移りつつあり、彼女達はそれを、何が起きても対処できる様にと身構えつつも、固唾を飲んで見守っていたのだ。

 ガキイイィィィィ、ガギンッ。ギイイィィィィンッ、ガン、ギンッ!!!

「・・・・・っ!!!」

「・・・・・っ!!?」

「ああ・・・っ!!!」

 刀同士が打ち合わされる、鈍い金属音だけが夜の静寂(しじま)に何処までもいつまでも、響き渡り続けていた、二人の間には何度となく火花が飛び散り、その度にお互いの衣服や皮膚が裂けて、そこからは血が滲み出して来ていたのである、達人同士の戦いである故に起こってくる現象であったが彼等はギリギリ一瞬の刹那にすらも届かない合間にまでも感覚を集中させて、ほんの僅かな差で何とか相手の攻撃を見極めては躱し弾いてそのまま反撃に転じて行く、と言う事を、いつ果てるともなく繰り返していたのであった。

 どこまでも研ぎ澄まされたシャープなメリアリア達の意識と精神とは、そんな二人の攻防をハッキリと知覚していたのであり、このままでは下手をすれば相討ちか、そうで無くても消耗し、疲弊している蒼太の方が先に倒れ伏してしまうと思い立ち、彼女達がそれぞれ、夫の増援の為の攻撃を繰り出そうとしていた、その時だった。

 それまで剣戟に集中していた蒼太が瞬時に身体を逸らすと同時に大きく自分達側へ、即ち後方に飛び退いてはデュマとの距離を取ったのであるモノの、それを見たデュマはまたしても感心したかのようにして“良く見切ったな?”と青年を褒め称える。

「“影の触腕”見切られたのは久方振りだ!!!」

「・・・・・」

 方々から出血しながら、それでも蒼太は着地をすると同時に呼吸を整え、切っ先をデュマへと向けるが、そんな蒼太の側を。

 颯爽と駆け抜けて行く、二つの美麗な女性達がいた、メリアリアとオリヴィアであるモノの、よく見ると二人の周囲にはかなりの魔法力が、それも何重にも渦巻いておりそれが彼女達の俊敏さや反応速度を、極限にまで高めているのが見て取れたモノの、さて。

「・・・・・」

(そうかっ、アウロラがバフを掛けて・・・っ!!!)

 そう思って一瞬、彼がデュマから目を逸らした、その隙に。

 デュマは“女王位”達二人からの、容赦ない猛攻撃に晒される事となったのであるモノの元々、メリアリアの方が魔法力の技術と体術で、そしてオリヴィアの方が剣術のスキルで蒼太よりも遥かに勝っており、しかも二人はそれを、蒼太から教えてもらった“超過活性(オーバードライヴ)”によって最高値にまで高めている上に、アウロラから既に“パワー、スピード、ディフェンスガード”の強化アップの為の魔法を重ね掛けして貰っていた為に、尚一層、手に負えない程に凄まじいモノとなっていたのである。

「・・・・・っ!!!」

 その力量と鋭さとに、デュマは文句なく驚愕した、今戦っていた男の方も総合力では相当なモノだろうが、こと“戦闘能力”と言う事に関して言えば間違いなくこの二人の方に軍配が上がるだろう事は、全く以て疑う余地が無い。

 現にこの二人の連携攻撃の前に、デュマは忽ちの内に劣勢となっていった、身体の彼方此方から血飛沫が飛び散り、“影の技”は躱されるか弾き飛ばされ、魔法は精製する側からその力場ごと断絶されて行く。

「・・・・・っ!!!!!?」

(す、凄いっ。改めて見ると本当に良く解るが、メリー達は“次元”が違う・・・っ!!!)

 その光景を、少し離れた場所から目撃していた蒼太は思わず唖然となっていた、如何に消耗していた身とは言えども、そして三対一であるとは言えども自分があれだけ苦戦していたデュマを相手に易々とダメージを与えて行く、その攻撃の熾烈さと回避、防御に於ける体捌きの見事さに、思わず圧倒されていたのだ。

 しかも。

(まだだ、まだメリー達は本気を出してはいない・・・!!!)

 蒼太は思うがその証拠に未だにメリアリアは“絶対熱の極意”を発動させてはおらずに普通の“光炎魔法”で戦っていたし、一方のオリヴィアもオリヴィアで“極光の閃熱魔法”、所謂(いわゆる)“パルサー呪文”を用いる事なく、基本系統である“閃光魔法”を剣に纏わせてはデュマ目掛けて繰り出していた。

 それでもデュマの劣勢は誰の目にも明らかだったのであって、その煌びやかにして必殺の舞いが舞われる度に彼の身体は切り刻まれて行き、打ち拉がれていったのである。

 やがて。

「ぐわああああああああっ!!!!!!」

 メリアリアの鞭とオリヴィアの剣とがそれぞれ、胸と腹部を捕らえて貫き、デュマを内側から焼き尽くしていった、二人の攻撃の直撃を受けたデュマは嗚咽のような呻き声を発してその場にしゃがみ込み、苦しそうな表情を見せるが、しかし。

「・・・・・?」

(妙だな?あんな状態なのにも関わらず、まだ生命の灯火には余裕がある・・・)

 そう思った蒼太が、“神人化”は叶わなくともせめて、とは思い、自身もメリアリア達を見習って“オーバードライヴ”を用いては再び自身も切っ先をデュマへと向けて攻撃陣形に加わり、彼女達共々に、怨敵であるあの男にとどめを刺そうとした、その時だった。

「くふうううぅぅぅぅぅっっっ!!!!!!」

 何と瀕死の重傷を負っていた筈のデュマがゆっくりと立ち上がっては再び剣を構えて呼吸を整え、笑みを浮かべてこちらをみていた、その全身からは憎しみのオーラが満ち満ちており、凄まじいまでの魔力の奔流が放出されて来ていたのである。

「ぐ、ぐぐっ!!?ぐはははははははははっ。やってくれたな、小僧ども。お陰で体がこんなにも傷付いてしまったよ、どうしてくれるんだ!!!」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

 それを見たメリアリア達は警戒心を露わにして瞬時に後方へと飛び退くと、蒼太のいる近辺へと移動しては再びその武器を構えるモノの、その言葉を受けてしかし、蒼太達が尚も黙っていると“この償いは”とデュマが続けた、“貴様達の死で以て購(あがな)ってもらう!!!”とそう言って、そして。

「“神々に反逆する者よ”、“盟約に従いてその身、その力を我へと与えよ!!!”」

 放出した魔力を吸い込んでは丹田に集めて“コオオォォォォォッ”、“コオオォォォォォッ”と独特な呼吸を繰り返し、最後に呪いの言葉を唱えると同時に一気に息を吐き出して行くと、それと同時に。

 デュマのオーラが厚さとどす黒さを増したかと思うとその身がみるみる内に“レプティリアン”のそれとなる、全身は鱗と蜥蜴革に覆われて行き、外見はほぼ完全に爬虫類のモノとなり、口が耳まで裂けて鋭い牙が生えそろい、両手両脚には巨大な爪が出現しては鋭利な光を放っていたのだ。

 それだけではない、身体自体が強大化して巨大化し、人間だった頃のデュマと比較しては体積で凡そ2倍近くにまで増えていた。

「・・・・・っ!!!」

「・・・・・っ!!?」

「あれは・・・っ!!!」

「みんな、気を付けろ!!!」

 驚愕している花嫁達に対して蒼太が叫んだ、“あれになると、力や魔力が格段にアップするんだ”とそう告げて。

「奴をもう、人だと思うな。正真正銘のバケモノだと思えっ!!!」

「・・・・・っ!!!」

「それは・・・っ。でも確かに!!!」

「どうやら、そのようだな・・・!!!」

 蒼太の言葉に三人が頷いて見せるモノの、次の瞬間。

「グルルルルルルッ。グガアアアァァァァァッッッ!!!!!」

「くううぅぅぅっ!!!」

「きゃあああああっ。な、なんて・・・っ!!!!!」

「う、嘘でしょうっ。こんな事って・・・っ!!!!?」

「ぐぐぐぐっ。な、何という・・・っ!!!!!」

 “殺意と殺気か!!?”とその場にいた全員がそう思うモノの、デュマの全身から放たれるそれらの“害意”は、一般人が食らってしまえば、特に何も術を発動させなかったとしても、それだけで金縛りに陥ってしまうほどの凄まじさを誇っていたのだ。

 しかし。

(・・・・・っ!!!)

(負けやしないっ、こんなモノには。だって、だって・・・っ!!!)

(何としてでも蒼太さんを守るっ!!!)

(私達がやられてしまえば、蒼太が死ぬ、死んでしまうんだっ。それだけはっ!!!)

 怒りの覚悟に燃える蒼太の炎と、そしてそんな彼を“絶対に死なせまい!!!”とする花嫁達の強い意志とが、その魔力を退けては打ち破り、自分をしっかりと保たせたままで受け流して見せたのである、するとそれを見たデュマは。

「・・・・・っ!?!?!?」

「あなたっ!!!」

「蒼太さんっ!!!」

「蒼太っ!!!」

 突然再び“グルルルルルルッ!!!”と呻いたかと思うと、手にした剣を振り翳しては蒼太に斬り掛かって来たのであり、その速さ、鋭さは先程のそれを遥かに凌いでいた、“オーバードライヴ”を使用していた蒼太は辛うじてそれに対処する事が出来たのであり、そうで無ければこの一瞬で、首を掻き切られていたであろう事は想像に難くなかった、それほどのスピードと勢いとでデュマは襲い掛かって来たのである。

 それを。

 何とかタイミングを合わせて剣をぶつけ、弾き飛ばそうとした蒼太は尚も驚愕する運びとなった、なんと相手の攻撃を逸らすことが出来ずに鍔迫り合いに持ち込まれてしまったのだ。

 その膂力、圧迫感は“人間形態”であった時とは比べ物にならない位に遥かに強力なモノとなっており、蒼太は改めて自分が今、とんでもない程の危機に陥っている事を自覚すると同時にコイツに対するには文字通り、“命を燃やして反撃に転じる”事を改めて決意せざるを得なくなったのだった、そうで無ければとてもの事、その鋭峰を食い止める事は出来ないであろう、と。

(・・・どっちみち。これ以上“術式”を発動させてはしまえばもう、僕の精神力は“疲弊”を超えて“摩耗”してしまう事になるだろう。そうなれば回復させるのに、一年以上の時間が掛かる事になる、その間無事でいられる保証は無い!!!)

 “それならば!!!”と蒼太は思った、“ここで潔く命を燃やし尽くそう”と、“決してメリアリア達の足手纏いにはなるまい”と。

「てりゃああああああああっ!!!!!?」

「!?!?!?!?!?」

 今度は蒼太の気迫とその力とに驚愕したのはデュマの方であり、彼はこのまま鍔迫り合いを続けていれば、やがてはコイツは力尽きる、その際に改めて、首を掻き切ってやれば良いと、そんな事を考えていたのであったが、その予想は完璧に外れる事となった、なんと蒼太は自分の圧力を跳ね返して剣を押し出して来たのであり、実に驚異的な底力であると言わざるを得なかった。

「グルルルルルルッ!!?こ、小僧・・・っ!!!」

「たああああああっ!!!」

「てりゃああああああああっ!!!」

 デュマが気圧されているとそこへ今度は鞭を撓らせつつもメリアリアが、そして剣を構えてオリヴィアが瞬時に突っ込んで来た、如何に“オーバードライヴ”を使用しているとは言えどもそれでも、極めて尋常ならざる蒼太の気概と力の発揚とに、二人は“夫”のつもりを悟り、それを翻意させると同時に何としてでも彼を救うべく突っ込んで来たのであった、しかし。

「な、何・・・っ!!?」

「きゃああああああああっ!!!!!?」

「ぐううううううううっ!!!!!!」

 彼女達の攻撃力の熾烈さと厄介なるを知っていたデュマは、今度はそうさせじとオーラを発してバリアーを張り巡らせると共に、その障壁を一気に拡張させてメリアリア達を吹っ飛ばして見せたのである。

 そこに蒼太も巻き込まれてしまい、それでも鍔迫り合いから解放された彼は漸くにして身体の自由を回復する事が出来たのであって、漸くこれで攻撃に移る事が出来ると言うモノであったのだ。

 一方で。

 メリアリア達もまた、その衝撃を受け流しつつも綺麗に着地を決めており、再び攻撃態勢をとってデュマへと向けて、奥義秘術を繰り出そうとしていた、その時だった。

「・・・・・!!?」

「アイツは!!?」

「デュマがいないぞ!!!」

「上ですっ、皆さん!!!」

 驚愕する三人にアウロラが告げるモノの、何とデュマは魔力で出来た磁場の反発力を用いては空中に浮遊し、その掌を更に上空高く掲げていた、その先には。

 これ以上無いほどの憎しみと敵意とに裏打ちされた、彼自身の魔力をふんだんに練り込んである、ドス黒い光を放っている囂々たる大火球が出現しており、それを蒼太達目掛けて振り降ろしたのだ。

「グルルルルルル・・・ッ!!!」

 “躱せまい!!!”とデュマは思った、躱したとしても無駄であり、次の瞬間には辺り一帯が“地獄の業火”に焼き払われる仕組みとなっていたからである。

 “彼等”はそれに気付いたであろうし、そうであるからには死力を尽くして防ぐであろう、その隙に。

(まずはあの“小僧”から始末してやろう・・・っ!!!)

 そう考えたデュマはだから、火球を振り下ろすと同時に素早く地面に落着すると、蒼太目掛けて疾走して行ったモノの、しかし。

「・・・・・っ!!?、!?!?!?!?!?」

 そんな彼の足を止めたのが、その目の前で煌々と金色に燃え上がる比類無き威力を内包している炎の分厚い壁であった、それはそれまで、デュマが目撃した事の無い程の凄まじさでその場に顕現し続けており、しかも見ると、その中心部からは更に強力な力の波動を感じる“光の玉”が“黒炎球”目掛けて放たれ、それが命中した瞬間には。

 彼の自慢の一つであった、“破滅の黒炎”が一気に“蒸発”して行くのが見て取れたモノの、この“地獄の業火を蒸発させてしまう光の炎”こそ、メリアリアの解き放ちたる最終闘法“絶対熱の極意”であって、そしてそれは彼女の身に秘め宿したる“神秘の力”の徹底的なる具象化そのものに他ならなかったのである。

「・・・・・っっっ!!!!!」

(し、信じられんっ、何という強大無比なる光炎なのかっ。レプティリアンとして1700年、この地で生きてきたモノの、かつてこれ程にまで凄絶なる炎は見た事がないっっっ!!!!!)

 デュマは一瞬、それに対して恐れにも似た感情を抱くが直ぐさまそれを追い払って見せたのである、何故ならば自分が恐れるモノがあるとすればそれは“キング・カイザーリン”と“反逆皇帝ゾルデニール”の二人であって、決してそれ以外の余人等では無かったからであったのだ。

 だから。

(おのれ、小僧と小娘共めっ。よくもこの私に“恐れ”を抱かせおったな!!?)

 デュマは忌々しく思うモノの然りとて確かに、“魔力のバリアー”に守られている彼であっても今、この“炎の壁”を押し渡って行くのは余りにも危険な賭だった、しかも見た所、“それ”はまだまだ火力を上げようと思えば上げられる余地を残しており、しかも“厚み”だってどれ程あるのか解らないのである、迂闊に手を出すことは出来なかったのだ、ただし。

「・・・・・」

(まあ良いわ、この調子ならば、奴等も此方に手は出せまいよ!!!)

 “今の内に・・・”とデュマは思った、“魔力を極限にまで高めて奴等に目に物見せてやろう”と、“何しろ攻撃方法はまだ、いくらでもあるのだから”と。

 しかし。

「・・・・・?」

 そう思った次の瞬間には突如として、炎が中心目掛けて集約して行き、やがてそれは一人の女性の構えたる鞭へと纏わり付いてそこで“神秘の炎”を燃え滾らせるが、それを見た刹那に、デュマはまた驚愕してしまっていた、彼はてっきりこの炎を出していたのが蒼太だと思っていたのである、だから。

「バ、バカな。何故お前が・・・っ!!!」

 それだけ言うのが精一杯であったのであるモノの、一方のメリアリアは改めて襲撃態勢を取ると同時に油断無く身構え、側にいたオリヴィアもまた、“極光宝剣の型”を現し、デュマへと襲い掛かろうとした、それを。

 見て取ったデュマは一度剣を収めると両手を胸の前で組み、まるで祈るかのような態勢を取った、そうしておいてー。

「獄法、“疾火冥却”!!!」

「・・・・・っ!!!」

「きゃあああああっ!!!!?」

「ぐあああああ・・・っ!!!!!」

 何やら呪いの言葉を唱えるモノの、すると瞬間にも遥かに満たない僅かな刻限に、その辺り一帯を冥界の獄炎が駆け巡ってはその熱波と衝撃エネルギーとで蒼太達を吹き飛ばしていったのだ。

「・・・・・っ。な、なにっ!!?今のは」

 “神威か!!?”と、咄嗟に受け身を取って瞬時に起き上がった蒼太は思わず驚愕するモノの、確かに威力、発動方法は似てはいてもしかし、それは“神威”等では断じてなかった、もっと禍々しくて穢れと濁りに満ち満ちている“魔のうねり”、“鳴動”を感じるのである。

「・・・・・っ!!?」

(まさか・・・っ。邪法“獄門の道”か!!?確か“獄法”と呼ばれている、邪神の力を発動させる方法がある、と神から教わった事があるが、これが“それ”だと言うわけか・・・っ!!!)

 流石に“神威”が使えるだけあって、蒼太は瞬時に相手の扱った呪法の正体を見抜くと同時にその厄介さを認識した、あれがもし、“神威”と同等の威力、次元波動力を有しているのであれば、人間の身である自分達には回避も防御もまず不可能であり、大人しく食らい続けるしかない。

「メリー、オリヴィア・・・ッ!!!」

 蒼太は急いで彼女達の元へと駆け寄るが彼女達もまた落着の瞬間、受け身を取ってその暴虐なるエネルギー波を受け流して見せたのであるモノの流石に、如何な女王位と言えども、無傷と言う訳では全く無くて、そこら中に無数の切り傷を追っており、口の中も切っているのだろう、一筋の赤い鮮血が、唇の端から伝わっていた。

「メリー、オリヴィアも。口の中が・・・っ!!!」

「大丈夫よ、これ位っ!!!ちょっと切っただけだから・・・っ!!!」

「ああっ。これならば毎日の鍛錬の方が、まだ痛みを覚えたと言うモノだが・・・っ!!!」

「・・・・・」

(二人とも、元気そうだな。まだまだ余力があるのを感じる。しかし・・・っ!!!)

 蒼太は思った、“このまま食らい続けたなら”、“持って二発、酷ければ一発で再起不能に陥るぞ!!?”と。

(神威や獄法と言ったモノには、呪文の加護は一切効かない、そもそもこの二つと人間の暮らす自然界とじゃ、エネルギー波動の領域が違いすぎる!!!それだけじゃない、余りにも膨大かつ高次元な力の奔流が、それも極瞬の閃刻の合間に通り過ぎて行く訳だから人間や霊人、果ては“天使”や“悪魔”と言った存在さえもが反応が間に合わずに逸らす事も、吸収して跳ね返す事も能わず、何もかもが不発に終わる・・・!!!)

 そもそもがエネルギーを逸らしたり、吸収したりする為にはやって来る力の量、質を見極めつつ、タイミングを合わせて力を加えてやったり、はたまた或いは自身の中へと受け入れては己の波動に変換させなければならないのだが、神威や獄法の場合には、そのエネルギーの疾走が超光速であるのに加えて次元波動の波動係数が独特なモノであり、かつ非常に高過ぎる為に、天使や悪魔を含めた存在達にはそれらを吸収して己のモノとする、と言う真似が出来ないのである。

 それはちょうど、酒を分解する酵素や器官を持たない犬畜生に、無理矢理酒を飲ませるのに似ている、と言い換えても良く、彼等はだから余りにアルコールを摂取しすぎると(人間から見てそれほどの量では無かったとしても)、それだけでショック死を起こしてしまうのであった。

 蒼太はそれを知っていた、知っていたからこそ今後、どうやって戦えば良いのかを自問自答しているとー。

「蒼太さん、メリアリアさん。オリヴィアさんも!!!」

 “大丈夫ですか!!?”とアウロラが、大急ぎで駆け寄って来るモノの、そこへー。

「獄法、“暗雲粗相”!!!」

「・・・・・っ!!!!?」

「な、なにっ?これは・・・っ!!!」

「これは・・・っ?雨・・・!!!」

「これの何が・・・っ!!!」

 デュマが再び構えを取ると“獄法”を発動させて見せるモノの、すると俄に頭上が掻き曇り、そこから雨降り始めて来る。

 それに対して三人が怪訝そうな表情を浮かべ、何事かを言い掛けた、その時だった、雨に濡れた箇所に激痛が走って皮膚が破れ、みるみる内に血が溢れ出して来るモノの、それは間違っても真水等では断じて無くて、害意の結晶たる魔力が水の形を取って降り注いでいるだけであったのである。

 その為。

「生きているモノは全て傷付き、或いは朽ち果てて行く魔の雨だ。これを空から一挙に落とせばお前達がどうなるかは、解るな?」

「・・・・・っ!!!」

「・・・・・っ!!?」

「・・・・・っ!!!」

「・・・・・っ!!!」

 “神秘の炎よっ!!!”と、その言葉が終わるか終わらないかの内からメリアリアが叫んでいた、“その姿を顕現せよ!!!”と、すると。

 再びあの煌々なる炎の壁が渦を巻きつつ蒼太達4人を包み込み、その頭上までをもすっぽりと覆うが、その次の瞬間にはもう、デュマはさっと上空に手を上げてはそれを蒼太達目掛けて振り下ろして見せた、それと殆ど時同じくして。

 強大なる魔力の集中豪雨が蒼太達目掛けて襲い掛かるが、それらは悉くメリアリアの作り出した“炎の壁”に阻まれ、蒼太達には手が出せなかったモノの、それならばとデュマは今度は地中から蒼太達を攻める作戦に切り替えた、“獄法、土中喝破!!!”と彼が叫ぶと同時に蒼太達の足下が突如として爆発して四方に弾け、その光速に近い衝撃波と飛散物の弾丸が蒼太達に襲い掛かったのだ。

「ぐうううううううっ!!!!?」

「きゃああああああっ!!!!!」

「うあああああああっ!!!!!」

「ぐわああああああっ!!!!!」

 自らが“神威”を扱う事の出来る蒼太は、その威力や反動にも身体が付いて行く事が出来ていたため何とか堪え忍ぶ事が出来たモノの、他の三人は別だった、メリアリアもアウロラもオリヴィアも、みな悲鳴を挙げつつ思い思いの方向に吹き飛ばされて行き、そのまま地面に叩き付けられては身動き一つしなくなってしまっていた、余りにも凄まじい負荷が身体に掛かってしまった為に瞬間的に気を失ってしまっていたのであるモノの、しかし。

「グルルルルルルッ。漸くとどめか、手こずらせおって・・・」

 デュマはそう告げると再び胸の前で腕を組み、今度は蒼太だけでは無くて、それぞれに狙いを定めて“獄法”を発動させるつもりであったが、その時に。

「そうは、させないっ!!!」

 目の前に立ちはだかった青年がいた、言うまでもなく綾壁蒼太その人であったのであるモノの、彼は満身創痍の身を引き摺るようにして、それでも攻撃行動を行おうとするデュマと倒れ伏したるメリアリア達の間に割って入って来たのである。

「小僧か、ここまではよくやったと褒めてやる。しかしもはや勝敗は決したぞ?潔く死ねぃっ!!!」

 そう言うとデュマは“獄法、光葬死催”を発動させるがそれをー。

 蒼太は防いで見せた、たった1人で全てを受けきって見せたのであるモノの、彼は大津国流の極意である“創世・神龍波”の要領で次元と時空ごと、その暴虐なるエネルギーの奔流を、出来る限りで切り裂いて見せたのである。

「でやあああああああっ!!!!?」

「・・・・・!?」

 流石のデュマも余りの出来事に一瞬、訳が解らず呆然となったがそれでも、相手が自分の“獄法”に対して何らかの抵抗を示した事、ただし完全には防ぐことは出来なかった様子であり、元いた場所から何メートルかは奥へと追いやられてしまっている事等を確認していた、身体は更にボロボロになっており彼方此方から出血に加えて打撲や火傷を負っていて、常人ならば恐らくは、とっくに限界を超えているであろう事が見て取れるモノの、しかし。

「まだまだ・・・っ!!!」

「・・・・・っ!!!!!?」

 必殺の獄法を、部分的にとは言えども破られたデュマはいたくプライドを傷付けられてしまい、“おのれぃっ!!!”と叫んで蒼太を睨むと更なる“獄法”を発動させた。

「獄法、“水欠火葬”!!!」

「獄法、“暗明克葬”!!!」

「獄法、“総魔相殺”!!!」

 次々と放たれる、一撃必殺の“獄法”に対して蒼太はその都度剣を振り、必死に時空間ごと切り裂いてみせていた、この時彼にあったのは、メリーを、アウロラを、オリヴィアを守る、ただただその一念だけであったのであるモノの、この可愛い人達を、最愛の人達をほんの一瞬だけでも良いから、自分よりもほんの僅かな間だけで良いから何としてでも生かし切る、と言う、執念にも似た命を厭わぬ程の覚悟の束ねであった。

 それが彼をして、もはやとっくに限界を超えていた筈の蒼太の身体を突き動かしては5次元にまで影響を与える事の出来る極意“創世・神龍波”を連発させて、その必殺の筈の、そして何より自分の技より更に高次元な領域のエネルギーを疾走させて来る筈の“獄法”に相対させつつも、それらを不完全ながら相殺させていったのである。

「たりゃあああああああっ!!!」

「小癪なガキがああああああああっ!!!」

「・・・・・っ。う、ううっ、うん・・・っ。はっ!!!!!」

「・・・・・っ。ん、んん~っ、んん・・・っ。ああっ!!!!!」

「・・・・・っ。ぐ、むっ。んん・・・っ。ああうっ!!!!!」

 自身の耳元で聞こえてくるズドーンッ、ズドーンッ、と言う爆発音と、蒼太の一気呵成の掛け声に徐々に意識が現へと向けて浮上していた“彼女達”が、直ぐさま蒼太が戦っている事に気が付いて一気に覚醒していったのは、それから直ぐの事だった、地面に叩き付けられた事を思い出していた三人は直ぐさま痛む身体をそれでも何とか引き摺り起こすと必死になって蒼太の元へと駆け寄って行ったのである。

「・・・・・っ!!!」

「あ、あなたっ。あなたぁっ!!!」

「蒼太さん、蒼太さぁんっ!!!」

「蒼太、蒼太ぁっ!!!」

 口々にそう叫んでしがみ付き、涙ながらに訴えるモノの最初、蒼太はその呼び掛けに応えられなかった、三人を守ると言う、ただそれだけのための意識の権化と化してしまっていたから耳が聞こえなくなっていたのだ。

 その身はもはや完全に、ボロ雑巾の様になっていた、身体の顔と言わず胸、腹、背、四肢等至る所に縦に横に大小の深い切り傷が無数に走って出血していた、骨だって異常を来しているかも知れなかったし、それに何より酷い火傷を負っている箇所が数カ所にも昇っていて、今すぐ手当をしなければとんでもない事になる事は誰の目にも明らかな状態であった。

 しかし。

「・・・なた、あなたぁっ!!!」

「・・・うたさん、蒼太さぁんっ!!!」

「・・・うた、蒼太ぁっ!!!」

 最初は手足を誰かに掴まれた感触がして、次いで自分に泣きながら縋り付いて来る、三人の姿が目に入った所で漸く、蒼太は我に返った、“メリー”、“アウロラ”、“オリヴィア”。

 “ああ、良かった”と蒼太は思った、“君達は無事だったんだね?”とそう言って、口を動かそうとしたけれどももはや言葉は出て来なかった、変わりに。

 蒼太は笑った、ボロボロになりながらも、それでも三人の事を見つめて、儚げにその思いを口元に滲ませながら。

 そしてー。

 彼は力尽きたかのように、その場にドサリと仰向けに倒れ伏した、それを見て一瞬、呆然となったメリアリア達であったモノの、直ぐに何事かを泣き叫んだまま、蒼太に再びしがみ付いてきたのである、そんな彼女達をー。

 優しく抱き締めてやりたかったがもう蒼太には指先一つ、動かす力は残されてはいなかった、優しく頭を撫でてやりたい、とは思ったモノの、それでも身体に意志が伝わらずに少しも力が入らなかった。

「・・・・・」

(ああ。意識が、遠くなって行く・・・っ!!!)

 不思議と痛みや恐怖は無かった、ただ心地の良い、眠りのような微睡みが彼を包んで連れて行こうとするのであるが、それを必死になって呼び止めている人々がいた、メリアリア達三人であるモノの彼女達は気が気でなかった、蒼太が死んでしまう、蒼太がいなくなってしまう、自分達の最愛なる男性(ひと)が、この世界から永遠に消滅してしまう、それだけは嫌だ、絶対に嫌だ!!!

「あなた、だめっ。目を覚ましてええぇぇぇ・・・っ!!!」

「蒼太さん、死んじゃいや、死んじゃいやああぁぁぁ・・・っ!!!」

「そ、蒼太頼む、死なないでくれっ。君に死なれたら私は、私は・・・っ!!!」

 メリアリア達三人は、心の限りに希ったが、それでも蒼太の呼吸は弱くなり、瞳の光は鈍くなる一方だった、もう瞼が重くて仕方が無い蒼太がそれを閉じようとした時に。

 奇跡は起きた。

「ダメえええぇぇぇぇぇっっっ!!!!!」

「いやあああぁぁぁぁぁっっっ!!!!!」

「止めろおおおぉぉぉぉぉっっっ!!!!!」

 三人の花嫁達が全てを忘れ、ただただ“今、この瞬間だけに”、そして“蒼太の事だけに”意識を集中させて行った結果、彼女達は全員が、己が魂魄中枢に秘め宿したる“神の部分”と直結した、蒼太を思う、何処までもピュアで混じりっ気のない彼女達の心は現実を、音を感覚すらも何もかもをみな置き去りにしてはその精神のより深い深い領域にまで導き誘って行ったのである、そしてー。

 “霊性なる根源”、その最奥央芯と完全になるまで一体となり、そこに願いが込められてはそれら蒼太に対する何処までも何処までも澄み渡った、これ以上無い程にまで深くて確かな真愛と真心の迸りが己の中に眠る“内在神”によって認められ、受け入れられたその時に。

 彼女達は全員が、“あの光”を放っていたのだ。

「あなたっ、あなたあああぁぁぁぁぁっっっ!!!!!」

「蒼太さん、蒼太さあああぁぁぁぁぁんっっっ!!!!!」

「蒼太っ、蒼太あああぁぁぁぁぁっっっ!!!!!」

「・・・・・っ!!!」

(な、なんだ?身体が熱いっ。力が、全身に力が漲って来る・・・っ!!!)

 それは確実に蒼太の中に宿り在りたる、“神なる己”にまで届いていた、その“奇跡の光”はヒビが入っていた骨を修復し、大やけどや深い切り傷を負っていたその身を癒して元の立派なる偉丈夫へと回復させて見せたのである。

 暖かくて荘厳なる煌めきと輝きとに満たされた意識が再び現世へと浮上して行き、身体には魂精の気迫が溢れ返っていたのだ。

「・・・・・」

「あなたっ、あなたあああぁぁぁぁぁっっっ!!!!!!」

「蒼太さん、蒼太さあああぁぁぁぁぁんっっっ!!!!!!」

「蒼太、蒼太あああぁぁぁぁぁっっっ!!!!!!」

「みんな、みんな・・・っ!!!」

 “有り難う”と、蒼太は自分にしがみ付いて泣きじゃくる三人を、しっかりと抱き締めたままで御礼を言った、これで一体、何度目となるのだろうか、この子達に助けてもらったのは。

「君達のお陰だよ、本当に有り難う。みんな!!!」

「ウ、ウエェェェッ!!?ヒッグ、ヒッグ。グスウゥゥ・・・ッ!!!」

「ヒック、ヒック。ウ、ウエェェェッ!!?グス、グス・・・ッ!!!」

「ウ、ウウゥゥゥッ!!?グスウゥゥッ、ヒッグ。グス・・・ッ!!!」

 “そんな事、無いよ!!!”と蒼太の言葉に口々に応えると、花嫁達は再び夫の回復した肉体に、強く強く抱き着いた、もう決してこんな傷を負わないで欲しいと、危険な真似はしないで欲しいと、心の底から、魂の底からただただひたすら念じながら。

「ウ、ウウゥゥゥッ。グスッ、ヒグ・・・ッ!!!も、もうっ、危ない事、しないで・・・っ!!!」

「ヒッグ、ヒッグ。グス・・・ッ!!!そ、そうです蒼太さん、もう無茶はしないで下さいねっ!!!」

「グス、ヒッグ。ウ、ウウゥゥゥ・・・ッ!!!次にこんな真似をしたら、ただじゃおかないからな・・・っ!!?」

「みんな・・・っ!!!」

 “ごめん”、“本当にゴメンね”と蒼太が尚も謝ると、花嫁達はその肉体に一層、しっかりとしがみ付いた、そして。

 瞳を閉じては全身で、その温もりを感じようとするかのようにその身を夫へと擦り付けるが、一方で。

「うっぎゃああああああああっっっ!!!!!!!!」

(ま、眩しいっ。目が開けていられんっ、なんだ、この不快な光は・・・っ!!!)

 デュマはこの花嫁達の発した“奇跡の光”の照り返しに思わず目が眩んでしまい、その場で顔を手で覆って後退(あとずさ)るが、その隙に。

 完全回復を果たした蒼太は光の只中を、デュマへと向けて吶喊して行った、“みんな待っていて”と、“必ず無事に帰って来るから!!!”と心配そうな面持ちで、祈るように両手を胸の前で組み合わせたる花嫁達に見送られながら剣を上段に構えては、頭の上から相手を真っ二つにする算段であった、それを。

 辛うじて見て取ったデュマは自身も怯みながらも剣を構え、それに対して応戦するべく間合いを窺おうとするモノの、先程の光で目が眩んでしまい、正確な距離が測れずにいたのだ。

(く、くそっ。おのれえええぇぇぇぇぇっっっ!!!!!)

 いきり立つデュマであったが気配を感じるだけでは近くにいる事は解っても、具体的な場所が掴めないために相手の攻撃を躱しきれずに、またとどめを刺すことも出来ないでいたのであるが、もうこの時既に蒼太は己の間合いの軸線上にデュマを捕らえていた、だから。

 その振りかぶった聖剣“ナレク・アレスフィア”を相手目掛けて振り降ろしたのだ、しかし。

「ぎゃあああああああああっっっ!!!!!」

 ザッシュウウウゥゥゥゥゥッ!!!!!と言う音と同時にデュマの悲鳴が響き渡り、その場に“クレイディフ・シュヴァルツ”を握ったままのデュマの右手がドサリと落ちた。

 相手の必殺の意識を感じ取ったデュマは咄嗟に、用心の為にとその身を捻って脳天への直撃のみは何とか回避したのであったが、しかし。

「がああああああああっ!!!!!?ハアッ、ハアッ、ハアッ、ハアァァァ・・・ッ!!!!!」

 その代償は、余りにもデカかった、なんと彼は攻撃の際の要となる利き腕を、切り落とされてしまったのであるモノの当然、この機会を見逃すような蒼太では無い。

「デュマ、覚悟っ!!!」

「ぐううううううっ!!!」

 蒼太がそう叫んで、デュマにとどめの一撃を加えようとした、その時だ、俄にデュマの姿が薄れると同時に存在感が希薄となり、終いには全くその場から姿を消してしまっていた、それと呼応するかのように魔力の霧が晴れて世界には人々の喧騒や木々のざわめき、虫たちの鳴く声や草花の揺れる音が、響き渡るようになっていたのである。

「・・・・・」

「あなたっ。あなたあああぁぁぁぁぁっっっ!!!!!」

「蒼太さんっ。蒼太さあああぁぁぁぁぁんっっっ!!!!!」

「蒼太っ。蒼太あああぁぁぁぁぁっっっ!!!!!」

 近寄って来る花嫁達に再び抱き着かれては頬擦りをされながら、蒼太はそれでも油断無く周囲の気配を探って行った、辺りにはもはや“魔の気配”は何処にも無くて、“時空の歪み”も存在していなかった、ただただただただ何処までも何処までも、美しく澄んだ世界が、夜空が広がっているだけであったのであった。

「・・・・・」

(デュマの奴、逃げたんだ・・・!!!)

 蒼太は自分達が元の世界に帰って来た事、相手が完全に撤退した事等を見て取ると、花嫁達に再びゆっくりと語り掛けた、“帰ろう?”と優しい口調で力強く。

「お腹、空いちゃったな。なんか作ってくれる?メリー、アウロラ、オリヴィア・・・ッ!!!」

「ウ、ウウッ。グスッ、ヒッグ。ヒッグ・・・!!!そ、それは良いけど。もうっ、あなたったらっ!!!」

「ウ、ウェッ。ヒッグ、グスウゥゥ・・・ッ!!!そ、そうですっ。蒼太さんっ。あなたって人は・・・っ!!!」

「ウ、ウウッ。グスウゥゥッ、ヒッグ、ヒッグ・・・ッ!!!そ、そうだぞ!?バカ者、帰ったらお仕置きだ・・・っ!!!」

 自分にしっかりとしがみ付き、泣きじゃくりながらそう告げる花嫁達に、蒼太は少し困ったような顔をしながら“ゴメン、ゴメン”とそう告げるとメリアリアのアウロラの、そしてオリヴィアの頭をソッと優しく撫でてあげた。

 彼等の遥かに上空では美しい三日月(クレッシェント・ムーン)が姿を現しており、まるで蒼太に対して“それで良いぞ!!?”とでも言うかのように夜空でニカッと笑っていたのだ。
ーーーーーーーーーーーーーーー
 今回のデュマ戦は、蒼太君は実はかなり危ない所だったんです(蒼太君が疲弊しており、神人化出来なかったからではありますが)、それというのも。

 あのメリアリアちゃん達の放った“奇跡の光”が出ている間で無ければ撃退が出来なかったからです(蒼太君はこの時点で“神人化”している訳ではありませんでしたので・・・)、それというのは、高次元の光り輝きであるメリアリアちゃん達のそれは、蒼太君にとっては勇気と力を与えてくれるモノなのですけれども、デュマにとっては不快感を覚えて自分を威圧するモノのように感じられるんですね(現にデュマはそれを直視してしまった事により、目が眩んでしまっていました、それが無かったら如何に、花嫁達の力によって蘇れたとしても、それだけでは勝つことは出来なかったのですね)。

 今回の勝利(優勢勝ち、と言った所でしょうか)は即ち、“花嫁達のお陰で勝てた”と言えるでしょう(勿論、彼女達がくれたチャンスを蒼太君がモノにするだけの実力を持っていたからだと言えますが←それが無ければ如何に、彼女達が凄い力を発揮して助けてくれたとしても、“運命を切り開く能力の不足”即ち“決定的な力不足”でどうにもならなかったでしょうから)、まあもっともデュマもデュマで、部下達を使いっ走りにした挙げ句に捨て駒としてしまい(蒼太君が肉体的にも精神的にも疲弊してしまったのは、それが原因だったのですから)、それでも尚も敗れてしまったのですから、“お前、ちょっとさ・・・”と“キング・カイザーリン”から叱られる事となるでしょう。

 今回で一応、“ハウシェプスト協会”との一応の決着は着きました(またメリアリアちゃん、アウロラちゃん、オリヴィアちゃんの、“蒼太君の花嫁”としての覚醒も無事に済みました)、これで彼等も蒼太君達に容易に手を出す事が出来なくなり、戦略の根本的な変更を迫られる事になるでしょう(よって暫くは平和な日々が続きます)、蒼太君、メリアリアちゃん、アウロラちゃん、オリヴィアちゃん、本当にお疲れ様でした。

 そして皆様方に置かれましても、このような御時世の中で沢山の御声援、御愛顧を賜りました事、本当に感謝しております、誠に有り難う御座いました。

 物語はもう、終盤に入って来ておりますが、まだまだやらなくてはならないこと、書かなくてはならないこと等が多々御座いますのでもう少しだけ続きます、どうか今後とも、作者共々私と皆様方の物語であります“メサイアの灯火”をよろしくお願い申し上げます。

                 敬具。

           ハイパーキャノン。

          追申です。

 “獄法”と言うのは“邪神の扱う神威”であると思っていただいて結構なのですが、その次元領域は6次元~7次元です(ちなみに本物の邪神が使うと8次元~9次元まで届きます、当然、その分威力も凄絶なモノになって行きます)。

 これに対して神威と言うのは7次元から上の領域の神業全てをを指します(現状で、蒼太君が扱えるのは7次元~8次元の表層レベルまでです)、またメリアリアちゃんの扱う“絶対熱の極意”は7次元まで届きます(あれはメリアリアちゃんの魂魄中枢に秘め宿りたる“神秘の力”でありますので・・・。だからデュマの扱う“獄法”を防げたんですね)、そう言う事で御座います。

 また悪霊や悪魔、はたまた鬼をその魂魄根源の中枢央芯から砕き尽くして討ち滅ぼす事の出来る神威、“悪鬼滅砕”ですが(“魂砕(たまくだ)き”と呼ばれている、禁術奥義の一種です)、これにはより上位の力を持つ神威、“神羅封殺”が存在しております(此方は“邪神”等のより高次元の存在を封印、抹殺するためのモノです)←蒼太君はこれも使う事が出来ますが、今の所威力は8次元の表層レベル止まりです(神威、”雷神・建御雷神”に関しても同じ事であり、あれは本来の威力、“神力”はもっともっと上なのですが、今の蒼太君では8次元の表層レベルまでしか“神の力”を顕現させる事が出来ません)、なので彼ももっと鍛錬を積んだりしてパワーアップしなければなりません(そんな話もいつかやれたらな、等と考えております)。

 ちなみに次回は蒼太君がメリアリアちゃんの実家であるカッシーニ家、アウロラちゃんの実家であるフォンティーヌ家、そしてオリヴィアちゃんの実家であります“フェデラール家”を訪れて、それぞれの当主と対面し、今回の事を報告して結婚の(もっと言ってしまえば重婚の)許可をいただくお話となります。
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