メサイアの灯火

ハイパーキャノン

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ガリア帝国編

VSレプティリアン戦(デマーグ編)

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 今回はガイヤール戦からの連戦です(ちょっと短めなのですが、今回で“幹部戦”はケリが着きます)。

 ちなみに“神威”と言うのは非常に強力な力であり、現世でそのまま発動させると、次元や時空を超えて周辺の異世界線や自然環境に甚大なる影響を与えてしまいます(場合によっては凄まじいまでの爪痕を残す事になりかねないのです)。

 だから蒼太君は“神”として戦う際には無関係の人々や世界を巻き添えにしないために、周囲に結界を張り巡らせるのです(それだけ強力な力を使っている、と言う訳です)。

 なので幹部達が弱く見えるかも知れませんが、実際は彼等は非常に強力であり、それ故に蒼太君も“神の力”を纏わざるを得なかった、と言う訳です(逆に秘め宿したる、真の実力である“神の力”に目覚めた蒼太君の強さ、凄まじさの前では幹部達もそれほど強くはありません。油断さえしなければまず、負ける事は無いのです)。
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「・・・・・っ!!?」

(やれやれ・・・!!!)

 ガイヤール・デュポンを魂ごと抹殺し尽くした後に、それでも尚も“残心”を取って周囲に意識を張り巡らせた蒼太の感覚が、現実世界の自分達のいた座標に接近しつつある“三つのそれ”と多少、離れた場所から移動してくる新たな“魔”の気配を察知したのは、その直後の事だった、異変に気付いた彼は直ぐさま結界を解いて現実世界へと帰還を果たし、三人の“花嫁達”の出迎えを受ける。

「あなたっ!!!」

「蒼太さんっ!!!」

「蒼太っ!!!」

「みんな、有り難う!!!アイツはやっつけたよ。ただしまだ・・・」

 “やらなきゃならない事が残っている”と蒼太がそう言って、再び感覚のセンサーを最大限に発揮するモノのまずは“三つの気配”の方からだった、此方は恐らく、さっきの男の仲間か手下共だろう、それほどの力量は感じられないとは言えども決して無視できる存在では無い事だけは確かである、キチンと始末を付けておかねばならなかったが、一方で。

 もう一つの気配についてはやはり、対象が複数体いるように感じられるモノの、知覚できる限りにおいては反応が随分と微弱であり一見、無視しても差し障りのないモノのように思えたのであるがその実、“力”や“足取り”と言ったモノが妙に重たくてしっかりとした印象を受けるのでありこれは即ち、それなりの力量を持つ者が、それを隠して接近している、と言う事に他ならなかった、相手との距離は直線にして凡そ700m程であり、それは即ち、ちょうどこの“新興住宅地”の反対側の出入り口付近に“ソイツら”が存在している事を示していて、移動の速度から鑑みるに恐らくは向こうは徒歩か何かで此方へと向けて接近している、と考えるのが妥当であろうとは思う。

 ただし。

(これは・・・。“遮蔽幕”を使っているな・・・?)

 咄嗟に蒼太はそう判断するモノの何故ならば精神を研ぎ澄まさせて集中させ、注意深く探ってみるとソイツらの内、三体程は今現在近くにいて此方へと向かってくる連中と同レベル程度の“それ”なのであるがただし、残りの一体に関しては“内包している魔力の強度”が半端では無くてその濃度、総量は今し方彼が始末して来た男のそれと比肩して決して遜色の無いモノであったのであり、とてもの事放置しておける存在等では、間違っても無かったのである。

 だから。

 蒼太は密かに決意していた、“コイツらも残らず討ち滅ぼそう”と内心で何度も頷いて。

「・・・・・?」

「蒼太さん・・・?」

「どうか、したのか?」

「いいかい?メリー、アウロラ、オリヴィア。僕はまだやらなくちゃならない事があるから、一時ここを離れなければならないけれども・・・。皆は油断せずに付近を探りながら、負傷者の救助と人質の解放を行ってくれ。僕も“それ”を済ませた後に直ちに合流するから・・・!!!」

 “なにかあったら無茶はするな!!!”と、キョトンとした表情を浮かべて自分を見つめる“花嫁達”にそう言い含めて応えながらも蒼太は次の瞬間にはもう、まずは三体の“魔の気配”目掛けて“韋駄天の術”を発動させては現場へと赴いて行ったのであるモノの、一方で。

 そんな蒼太の放つ“神の気配”に漸くにして気が付いた男、デマーグ・バーグマンは此方も手下を引き連れて、押っ取り刀で“そこ”へと向けて歩み寄って来ていた、ガイヤールとソリが合わずに今回の事も“奴に任せてどうなるか見物してりゃいい”等と高をくくっていたデマーグだったが、そんな彼はだから、まだ当のガイヤール自身が討ち破られたのを知らずにおり、ただただただただ唐突に気配の消えた“アイツ”の所在の確認と、新しく出現して来た“現人神”に対処するべく歩を進めていたのである。

 ガイヤールに比べて確かに、武勇には優れるモノの、一方で感覚や判断力が鈍く、己を過信し過ぎるキライのあったデマーグはだから、“コイツを討ち滅ぼせば組織内で確固たる地位に就けるぞ!!?”と息巻いては手下共を引き連れて、現場へと向かっている最中であったのだ、そんな彼の目の前にー。

 様子を見に来た“ガイヤールの残党共”を瞬殺した蒼太はその後瞬時に転移して来た、あくまでも雅やかに、落ち着いた物腰で涼しい顔を見せたままー。

「・・・・・」

「・・・・・っ!!!!!?」

「・・・・・っ!!!!!!」

「!?!?!?!?!?」

「な、なんだっ!?コイツは・・・っ!!!!!!」

 突然の事に慌てふためく手下共に対して流石にデマーグは醜態をさらしこそはしなかったモノの、それでも一瞬、唖然とした面持ちとなり目の前に顕現を果たした“神”に対してその姿を眺めおおせていたのである。

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「なんだぁっ?てめぇは!!!」

 漸くにして我に返った手下共々、デマーグは蒼太の事を睨み付けるが蒼太も蒼太で何処までも澄んだ双眸に激しい怒りを燃えたぎらせながら、それ以上に鋭い視線をデマーグらに向けて彼等の事を射抜いていた、身長や体格は先程の男と同じかやや大きい位であり、詐術や技よりも力で押して来るタイプであろう事が見て取れる。

 全身からは魔力共々気力の充実が感じ取られており、“渾身の一撃”等を多用して来るかも知れないモノの、それにさえ注意するならばそれほど手こずる相手では無さそうであり、要するに油断さえしなければ、先程と同様に、決して負ける相手では無い。

「・・・・・」

「おい、てめぇ。人が聞いてるだろうが、何無視してくれてるんだ。こらっ!!!」

「コイツ、さっきからガン飛ばしてくれてるぜ?」

「やっちまいますよ?デマーグ様!!!」

「・・・待て!!!」

 彼我の実力差も感じ取れない部下達を制止しつつもデマーグは口を開いた、“ガイヤール”はどうしたんだ?”とそう言って。

「・・・・・?」

「お前、“神”だろう?ガイヤールを知らねぇ筈はねぇだろうが。アイツをどうしたかって聞いてるんだ!!!」

 そこまで言われて蒼太は漸く、先程名前を聞くまでも無く討ち倒してしまった男が“ガイヤール”と言う名前である事に気が付いて、こう返した、“アイツならばもう、この宇宙の何処にもいない”とそう告げて。

「魂自体を消滅させた。“存在の許容限界量”を容易く超えるほどの悪業を、その身に宿していたのでな。“輪廻の輪”には必要ないと判断した」

 “あれは”と蒼太が続けた、“死して後、いける世界すら無かったであろう”とそう言って、すると。

「・・・・・っ!!!」

「・・・・・っ!!?」

「・・・・・っ!!?」

「ガイヤール。いや、ガイヤール様が・・・っ!!?」

 “嘘だろう!!?”と手下共は明らかに狼狽えた様子で蒼太の言葉に反応していたモノの一方で、その様子を見ていた蒼太は漸くにして思い出していたのである、“エカテリーナ、ガイヤール・デュポン、デマーグ・バーグマン。この三人はハウシェプスト協会内でも相当なまでの実力を持っている、アンチ・クライスト・オーダーズの一員だ”と、前に尋問していた男から聞かされていた事を。

 と言う事は即ち、蒼太はその内の二人までを打ち破った事になるのであり、続いてはこの男である、見た所、あの“ガイヤール”には劣るモノの、それでもコイツも相当に薄汚い存在には違いなく、決してこのまま存続されることを許して良いレベルの悪逆等では断じて無い。

「・・・お前もあの男と同じだな、“デマーグ・バーグマン”。ここで死んでもらう!!!」

「・・・・・っ!!!」

「コイツ・・・ッ!!!」

「なんでデマーグ様の本名を・・・っ!!?」

 デマーグの部下達がそう言って、蒼太に触れようとした、その時だ、バアァァァンッ!!!と言う轟音と同時に雷(かみなり)が走って一番最初に掴み掛かろうとしていた男の手を思いっ切り弾き飛ばしたのである。

「うっぎゃあああぁぁぁぁぁっっっ!!!!!?」

「バ、バーレットッ!!?」

「て、てめぇっ。やりやがったな!!!」

「・・・・・」

 口々にそう叫んで今にも襲い掛かろうとする手下共には目もくれずに、蒼太はその場で先程と同じように両脚を少し開いて踏ん張ると光のオーラをいよいよ強めて胸の前で両掌を合わせ、合掌すると同時に真言を唱えて“神呪”を一気に発動させた。

「・・・“神威・神空断絶”!!!」

 すると。

 その言葉と同時に周囲の時空が断絶されて行き、蒼太を起点として半径300m程の空間が、白を基調とした虹色に輝く不思議な膜で覆われて行くのが見て取れたが、それと同時に。

 周囲から生き物や人間達の往来の気配、喧騒などが全て消え失せ、辺りが静寂に包まれるが、さて。

「・・・・・っ!!!!!?」

「・・・・・っ!!!!!!」

「な、なんだぁっ!!?コイツは・・・っ!!!」

「一体全体、どうなっていやがる・・・っ!!?」

「神威、“神幹総縛”!!!」

 口々に慌てふためく手下共に対して蒼太が続け様にそう言って念じた瞬間、彼等それぞれの体の周囲に五重の光の輪っかが出現しては一気に狭まり、まるで彼等を縛り上げるようにして手足と体の自由を奪った。

「な、なんだっ。コイツは・・・っ!!!」

「離しやがれっ!!!」

「ちくしょうっ。巫山戯た真似しやがって!!!」

 口々に罵りの言葉を吐き出す部下達を、その場に寝そべらせたまま蒼太は改めてデマーグに対して向き直った、すると。

「ぐははははははははっ、流石は“神”だなっ!!?ならばこっちも全力を出させてもらおうかい!!!」

 そう叫び様にデマーグは、己を一気にレプティリアンへと変貌させて行くと同時にその魔力、筋力、凶暴性、どれをとっても先程までのそれらとは比べ物にならない位に強大且つ凶悪なモノとなるモノの、しかし。

「・・・・・っ!!!」

「いくぜえええぇぇぇぇぇっ!!?カミサマよおおおぉぉぉぉぉっっっ!!!!!」

 そう告げると同時にデマーグは、直ぐさま己の憎悪と敵意の魔力で形作ったバトルアックスを顕現させては蒼太に向かって振り下ろして来た、その動きは極めて俊敏であり、巨大だからといって“ウドの大木”等と言うのとは決して訳が違っていたのだ。

 それでも。

「・・・・・」

「どりゃあああああああっ!!!!?そりゃっ。でりゃああああああああっっっ!!!!!!!」

 それを“バッチイイィィィィィンッ!!!!!”と蒼太の光のオーラは跳ね返して見せた、“波動の法則”に従えば確かに、荒々しくて低次元なデマーグの攻撃は、蒼太に掠り傷一つ付けられるような道理は無いが、油断する事は決して出来ない衝撃エネルギーである、要はするにそれだけのパワーをデマーグは発揮していた訳であった。

「うりゃああああああっ、おりゃあああっ。そいやああああああああっっっ!!!!!」

 たじろぐことなくその場に佇んで様子を見ている青年に対してデマーグは尚も手にした大斧を振り翳したり、激しく振り回したりして蒼太に向けて叩き付けるが、彼にはダメージ一つ与える事が出来なかった。

「ぐははははははははっ。どうしたどうした、カミサマよおおおぉぉぉぉぉっ!!?そんなんじゃ、勝負にならねぇぜっ。少しは撃って来て見ろってんだ!!!!!」

「・・・・・」

 自分が圧倒的なまでに不利なのにも関わらずにあくまでも、強気な姿勢を崩そうとしないデマーグの言葉に対して蒼太は息を思いっ切り吸い込んで丹田まで降ろすとそれを、呪いの言葉と同時に一気に外へと吐き出して見せた。

「神威、“神空裂破”!!!」

「・・・・・っっっ!!!!!!?」

 それは瞬間にすらも満たない程の、僅かな刻限での出来事だった、唐突に巻き起こされたる“神風の嵐”によって形成された、これ以上無いほどに強力で鋭利な無数の“真空の刃”が周辺一帯に吹き荒び、それらが瞬く間にデマーグの体を滅多斬りに切り刻んで通り抜けて行ったのである。

「ぐわああああああああっ!!!!?」

 自分でも訳が解らぬ合間に大ダメージを受けてしまったデマーグは堪らず苦悶に満ちた悲鳴を挙げつつ吹き飛ばされて、もんどり打って転げ落ちていったのだった。

「あっぐうううぅぅぅぅぅ・・・っっっ!!!!!?」

(・・・・・っ。ち、ちくしょうっ。なんだっ!!?今何をしやがったんだ、“神”の奴めっ!!!)

 そのまま地面に倒れ伏しては瞑想し、素早く傷を回復させて行くデマーグであったがその最中にも、頭の片隅で今の現象に付いて考えを巡らせるモノの、しかし。

(ダメだ、サッパリ解らねぇっ!!!)

 ワナワナとその巨体を震わせながら、何とか自由が効くまでに復元させた己が身を、再び立ち上がらせるモノの、こうした回復力や生命力はデマーグの方がガイヤールよりも優れていて、蒼太は“一気にケリを着けねばならない”と、考えを改めていた。

「くそったれがあああぁぁぁぁぁっ!!!!!まだまだいくぜえええぇぇぇぇぇっっっ!!!!!!!」

「神威、“神翼天翔”!!」

 気を取り直したデマーグが魔力と気力を振り絞り、いきり立って蒼太に襲い掛かろうとするモノの、その直前で。

 蒼太の発動させた新たな神威が、デマーグの体を壊乱状態に陥れた、この神威は“王雷絶華”、“神空裂破”の神力による超風雷の巨大な嵐を更に強力にして混ぜ合わせ、それらを片掌に球体状になるまで圧縮、集約させたモノであってその威力、凄まじさは大神そのものの顕現である“雷神・建御雷神”や異世界を含めた多重次元に影響を与えると同時に数個分の星を纏めて砕き、蒸発させる事の出来る完全必殺の法撃神技“神風迅雷”を除けば蒼太の扱う神威の中では最強クラスのモノだったのだ、それを。

 蒼太はやや強めの威力でデマーグ目掛けて叩き付けたのであり、その刹那の刹那のそのまた刹那にー。

 “デマーグの実体”は塵芥になるまで分解されて消失し、神威による怒濤のような猛烈なエネルギーの奔流が駆け抜けていった影響で一瞬、“完全なる真空”となった空間に流れ行ってくる風に吹かれてこの世界から完全に消滅していった。

 しかし。

「神威、“悪鬼滅砕”!!!」

 蒼太はそれだけでは終わらせなかった、ガイヤールにそうしたように、今や“霊体レプティリアン”と化したデマーグの魂魄に対してとどめの神威を発動させると彼を、この宇宙から完全に抹殺して見せたのであった。

「うっぎゃあああぁぁぁぁぁっっっ!!!!!!?い、嫌だ嫌だっ。消えたくねぇっ、消えたくねえよおおおぉぉぉぉぉーーー・・・・・・・っっっ!!!!!!!!!」

 それが“デマーグだったモノ”が最後に発した、断末魔の呻き声となったのであり、これを以て蒼太の、その時点に於ける“悪霊征伐”は取り敢えずの完了を見た、全てが終わった事を確認した蒼太は再び次元、時空を超えて周囲に意識を張り巡らせた後で、もはや脅威が完全に去った事を改めて確認し、神力で出来た結界を解いた、そうしておいてー。

 メリアリア達の様子を探っては彼女達が無事である事、差し迫った危険も無い事、そして三人によって、人質達も無事に救出された事等を感じ取って確認した上で自らも“神人化”を解いて“ミラベル本部”に連絡を入れ、敵の幹部二人と戦い、これを撃滅した事や、新たに重要参考人として6人の身柄を捕縛した事等を伝え、至急現場へと応援の要請を行う事としたのである。
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 ここまでで一応、幹部達は一人残らず残らず撃滅する事が出来ました。

 ですがまだです、まだ最大の宿敵である、“メイヨール・デュマ”が残っています。

 彼はガイヤールやデマーグの様には行きません、非常に強大なる力を誇っているのです(それも神人化した蒼太君とほぼほぼ互角の力をです)。

 ちなみに“神人化”すると消耗も激しく、一度になっていられる時間は蒼太君の場合は約5分~10分が限界です(だから蒼太君は勝負を急いだんですね)、しかも一回、なってしまうと次は数日は開けなければ体力、精神が回復しません(だからなれれば確かに無敵、不死身になれますが使い所が難しい奥義なのです)。

 つまりどんなに早くとも数日間に一回しか使えない能力なのです、それを蒼太君は今回、幹部達二人との連戦で既に使い果たしてしまいました、もし、こんな時にデュマが襲い掛かって来たら・・・。

 その場合は撃退する方法は、たった一つしかありません、同じく“神の力の願いと輝き”をその魂の内側に宿し持っている、メリアリア達“花嫁”の助けを貸りなければならないのですが、次回はそんなお話です(次回で三人全員が花嫁として覚醒します)。
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