167 / 476
ガリア帝国編
メリアリア・カッシーニ編3
しおりを挟む
今回のお話しは、“コブクロ”さんと言うアーティストの歌っていらっしゃる“宝島”と言う歌の歌詞にヒントを得て作らせていただきました(感謝、感謝です)。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「25、26、27、28、29、30っ!!もーいーかい?」
「まぁーだだよ!!」
「1、2、3、4、5・・・っ!!!」
6月の終わり。
季節はいつの間にかに春を過ぎ、初夏に差し掛かっていた、欧州ではもう少しでサッカーのオフィシャル・リーグが開幕する時期であり、各クラブのファン達サポーターはいやが上にも熱気を高める時期でもあったがこの間、蒼太とメリアリアは。
更にお互いへの関心と共に交流を深めて行った、基本的に、蒼太もメリアリアも授業が終わった後は毎日、家での鍛錬が待っており、特に蒼太のそれは父親である清十郎の強化方針も手伝って日に日に熾烈なモノになっていたのであるモノの、それでも彼は根を上げる事無く黙ってそれに堪え忍び、少しずつ教えをモノにしてはその肉体も精神も、修練の度に逞しいそれらへと徐々に進化、発展して行ったのだ。
一方のメリアリアもまた、それは全く同じであったが片や溢れる才能を、素直に発揮する事が出来る少女と感受性が強くて普段から色々と考え過ぎてしまうために、中々自身の実力を、そのまま用いて現す、と言う事が出来ないでいた少年。
訓練の大変さに自ずと違いが出て来るのは明白であったがしかし、自分の倅(せがれ)の持っている、類い稀なる高い精神性と法力、及び身体的素質を見出していた清十郎はだから、“無理はしないように”としながらも、それでも蒼太の未来を慮(おもんぱか)って出来うる限りの技や心構えと行ったモノを彼に伝えるようにと努め、そして一方の蒼太も蒼太でまた、なんだかんだ言いつつも、その教え、姿勢については共感できる所はあったから、その本質的部分においては彼の伝えたかった事や言いたかった事などを、しっかりとマスターする事が出来ていたのであるモノの、しかし。
「蒼太、毎日大変みたいだけど・・・。私、やっぱりおじさんに一言言って来てあげようか?」
「ううん。全然平気だよ、僕!!それより毎日強くなれてる気がして嬉しいし、もっと頑張らなきゃいけないって思うから・・・っ!!!」
「・・・・・っ。それは!!そうかも知れないけれど」
とある時、蒼太の様子が心配になって尋ねたメリアリアに対する本人次第からの言葉を聞いた瞬間、少女はこの少年の事を、思わずキツく抱き締めてあげたくて、暖かく包み込んであげたくて、そしてこの世の中の全ての苦しみと言う苦しみから守ってあげたくて仕方が無くなってしまっていた、この子をせめて癒してあげたい、生命力を分け与えてあげて、元の燃え盛る命の状態にまで回復させてあげたいと、そんな事を考えるモノのこの時、彼女は蒼太が何だか無茶をしているような気がしてならず、不安が消えなかったのである。
果たしてその予感は的中してしまう、蒼太が毎日続く厳しい訓練の肉体的精神的消耗から、普段滅多に引くことの無い風邪を引いてしまったのだ。
蒼太の病状は思ったよりも酷かったらしく、1週間は絶対安静が医者から厳命される事態となった、それを聞いたメリアリアは単身、蒼太の家に乗り込んだのである、せめて一目だけでも蒼太に会いたかったし、寄り添っていたかった、そして少しでも自分の元気を蒼太に分けてあげたかったのである。
一方で。
彼女はそれだけで済ますつもり等、決して無かった、自分の一番、大切な人を、掛け替えのない幼馴染(ボーイフレンド)をこんな目に合わせた清十郎に、文句を言ってやらねば気が済まないと思っていたのだ、果たして。
清十郎と対面したメリアリアは“どうして蒼太にそんなに辛く当たるんですか!!?”、“蒼太を殺す気ですか!!!”とかなり強い勢いで捲し立てたがー。
それに対する清十郎の答えはただ一つ、“申し訳ない”それだけだったのである。
そこへ蒼太の母親である楓も同席して謝って来た、“こんなつもりでは無かった”、とそう言って。
「ごめんなさい、メリアリアちゃん。貴女にまでそんな心配を掛けさせていたなんて・・・!!!」
「・・・・・っ!!!!!」
そう言って一切の言い訳も無く、二人から真正面から頭を下げられてしまうとメリアリアはもう、それ以上、何も言うことが出来なくなってしまっていた、本当はもっと言いたい事があるはずなのに、それ以上は言い過ぎであると、自然と自省の心が働いたのである。
「蒼太に、会わせて下さいっ!!!」
そう告げるとメリアリアは二人が何事かを言い出す前にはもう、その部屋を飛び出しており、蒼太の寝ている2階の寝室へと歩を進めていったのだった。
「はあっ、はあ・・・っ!!!」
「蒼太っ!!!」
「はあ、はあ・・・っ!!メ、メリー。来ちゃダメだよ、移っちゃうよ・・・?」
「私は平気よ!?それより蒼太が心配だわ、苦しく無い?お水、持ってきてあげよっか!!?」
「はあっ、はあ・・・っ!!う、うん。お水、飲みたい・・・!!」
“待っててね!?”とそれを聞いたメリアリアは今度は1階まで降りると台所を見付けてコップを探し、そのまま洗い場で軽く濯(ゆす)いでから、水をなみなみと注いで蒼太の元へとやって来た。
「お水・・・」
「う、うう~ん・・・」
蒼太は唸りながらも体を起こすとメリアリアがコップに持って来てくれた水をゆっくりと、しかしゴク、ゴク、と喉を鳴らして飲み干して行った。
ちょうど喉が渇いていた事も相俟ってそれは、この世のどんな美酒よりも甘露よりも、今の蒼太には美味しく思えた。
「ゴク、ゴク、ゴクン・・・!!ふうぅぅ。あ、有り難う、メリー・・・!!!」
「もうっ、蒼太ったら。心配したんだからね!!?」
「うん。メリー、有り難う。本当にゴメンね?わざわざ来てもらって・・・!!!」
「ううん、いいのっ。蒼太が無事でいてくれたのなら、私はそれで・・・!!!」
とメリアリアは少し顔を赤らめつつも俯き加減となり、それでもとても嬉しそうにして幼馴染(ボーイフレンド)の横顔をみる。
寝起きだからだろうか、その髪の毛はボサボサに乱れてはいたモノの、、それすらもワイルドな様相を呈しており中々に格好良い。
「だけど蒼太、本当に無茶したらダメよ?おじさんとおばさんには、良く言っておいたからね!!?」
「うん、有り難うメリー。でも僕もう大丈夫だよ、何だかメリーの顔を見てたら、元気が出て来ちゃった!!!」
「・・・・・っ。も、もう蒼太ったら!!!」
“しょうがない人ね!!?”とメリアリアが困った様に微笑みながらもしかし、それでも嬉しそうに照れつつ蒼太に告げるが彼女を喜ばせたのは会話の内容そのものよりも蒼太の体にある元気が実際に少しずつ回復し出しており、それが何だか以前よりも増して強固なモノになって来ているように感じた事と、彼の気持ちが前を向き始めていた事、そしてー。
それに加えてもう一つ、なにより大切だったのが、“彼が本当に無事そうであり”、尚且つそんな彼との間にこうやって“他愛も無い日常的な会話”が出来た事が、彼女にとっては掛け替えのない、最上のそれであったのだ。
そんな事があって後、しかし清十郎も楓も何故か、メリアリアを敬遠する事も無く、むしろ彼女が蒼太と遊んでくれる事を、喜んでいるかのような様相を呈しており、穏やかな笑みを浮かべて二人の事を見守っていたのであるモノの、そう言う訳もあって蒼太もメリアリアも一層、仲睦まじく遊ぶようになり、その回数は月に5回ほどにまで増えて行っていたのである。
「25、26、27、28、29、30っ!!もーいーかい?」
「もーいーよ!?」
“よしっ!!”とその言葉を聞いた蒼太は次の瞬間、弾かれたようにして、寄り掛かっていた木から離れて猛然と駆け出していた。
吹き抜ける風を真ん中を切り裂いて木々の梢を抜けて行き、メリアリアを探し出すのだ。
「はあっ、はあ・・・っ!!」
「・・・・・っ!!!」
(うふふ、蒼太ったら。必死になってる探しちゃってる・・・っ!!!)
幼馴染(ボーイフレンド)のそんな姿が面白くってメリアリアは、笑みを堪えるのに懸命だった、ここはルテティアの森の中であり、家族でピクニックに来たり、鍛錬で使ったりしていた為に蒼太にとってもメリアリアにとっても良く知っている地相であり、情景であったのだ。
だから。
「・・・・・っ!!?」
「・・・・・っ!!!」
(メリー、どこだろう?)
(こっちよ?蒼太・・・!!!)
二人は互いに感覚を研ぎ澄ませては知恵を絞り、体を動かして彼方此方へと移動しては蒼太は物陰に注意を払い、またメリアリアはその隙を突いて死角を利用し、発見されるのを防いでいた。
「はあっ、はあ・・・っ!!?」
「はあっ、はあ・・・っ!!!」
蒼太は夢中になってメリアリアを探し、メリアリアは見付かるまいと上手に隠れる、本当は早く見付けて欲しいのに、誰よりもなによりも先に探し出してほしいのに、だけど必死になって自分を見付け出そうとしてくれている少年の姿が尊くて、もっともっと見ていたくて。
そしてなによりかによりの話としては、彼のその、自分に向けてくる懸命さがこれ以上、無いほどに眩しくってついついメリアリアはその焦燥をグッと堪えて木陰の淵へと身を潜めるのである、・・・“私はここよ!!?”と心の中で、蒼太に聞こえますようにと、蒼太が見付けてくれますようにと、強く強く念じながら。
すると。
「メリーッ!!!」
「見付かっちゃったわ!!!」
まるでそんな彼女の願いに反応するかのようにして、蒼太が一直線に彼女の元へとやって来た、“ここにいるような気がしたんだ!!?”とそう言って。
「そしたらメリー、木から半分見えてたもん!!それで解ったの!!!」
「あん、もうっ。私ったらおドジさんね!!?」
とメリアリアは明るい声でクスクス笑うモノの、その笑顔が本当に楽し気で、幸せそうで、蒼太もまたとっても嬉しい気分になって来て、気が付くとついつい二人で声を挙げて笑い転げてしまっていた、蒼太もメリアリアも、幼いながらに解っていたのである、自分達が今、特別な瞬間に生きている事、そしてこんな瞬間がずっと続いてくれたら良いな、と自分自身が心の底から思っている事を、即ち満たされているのだ、と言う事を何となくではあったモノの、彼等は理解していたのである。
そして。
だからこそ、“メリーはどう思っているのだろう?”、“この子はどう思っているのかしら?”と、蒼太はメリアリアの事が、そしてメリアリアは蒼太の事が気になって仕方が無く、だからお互いに“相手もそうだったら良いのにな”と同じ事を願わずにはいられなかったのであった。
「じゃあ・・・。次は私の番ね!?蒼太は隠れて良いわよ!!!」
「よーし。僕、絶対に見付けられない所に隠れるっ!!!」
「あらっ!!?」
とその言葉にメリアリアは、興味深そうに微笑んだ。
「本当かしらっ?蒼太ってば凄く解りやすいんだから!!!」
「ううん、違うよ!?そんなこと、絶対に無いもん!!!」
「違わくないわよ、すぐに見付けてあげるんだから!!じゃあ、数えるからね?いーい?1、2、3、4、5・・・!!!」
「うわわわわっ!!?」
大変だと、蒼太は気が付いた、こんな事をしている場合では無かった、メリアリアが数え終わるまでに急いで隠れなければならないのである。
(ど、どこに隠れようか・・・?)
蒼太はキョロキョロと辺りを見渡した、勿論、メリアリアと同じ場所はダメだ、そんな事は彼のプライドが許さない。
かと言って木の上、30メートル以上(と言ってもあくまで感覚的なそれであったが)離れる事等は禁止されている、約束はキチンと守らなくてはならなかった。
「15、16、17、18・・・っ!!!」
(ま、まずいまずいっ!!!)
焦った蒼太は咄嗟に直ぐ側にあった木の切り株の根っこの向こう側に姿を隠した、ここならば回り込まれない限りかは、絶対に見付かるはずが無いと、蒼太はタカを括っていたのだが、一方で。
(だけどメリーは勘が鋭いからなぁ・・・っ!!!)
とも考えていた、油断しているとアッという間に見付かってしまい、それでは格好が付かなかった、幼い頃の男の子と言うのは、こう言うどうでも良いところで妙なプライドを発揮するのであって、蒼太もご多分に漏れずにおり、つまりはこの場合、言ったことを実行する事が(要するにメリアリアに簡単に見付けられない場所に隠れる事こそが)格好良く映る事だったのである。
だから。
「25、26、27、28、29、30っ!!もーいーかい?」
「もーいーよ!?」
その言葉を合図にメリアリアが捜しに来た時、蒼太は息を殺していた、やがてー。
タッ、タッ、タッ、タッとメリアリアの足音が近付いてくると同時に心臓がドキンドキンといい始める、彼女が周囲を探し回っている事が解ると嬉しい反面、見付かる事が悔しくて、自分が情け無い存在みたいに思えてしまっていた。
だけど。
「・・・・・!!!」
(あ、あれえぇぇ・・・!!?)
蒼太はおかしいと思った、メリアリアの気配は直ぐ側からすると言うのに、いつになっても“みーつけた”と言いに来ない、どうしたものか?と蒼太が後ろを向いた瞬間ー。
そこには満面の笑みで蒼太を見つめるメリアリアがいた、その顔は明らかに今、蒼太を見付けたものでは決して無かった、彼女はさっきからとっくに蒼太を見付けており、それを言うのを今か今かと待っていたのである。
「あ、ああ・・・っ!!!」
「蒼太、見ー付っけ!!はい、私の勝ち!!!」
「うう~ん・・・っ!!!」
と蒼太はこの少女に見付かった事が、見付けてもらえた事が嬉しい反面、こんなに早く見付かってしまった自身の不甲斐なさが悔しくて情け無くなってしまい、思わず呻いて悶絶してしまっていた。
「ねぇメリー、いつも僕の隠れた場所って、なんで解るの?」
「ふふーん、内緒っ!!!って言うか、何となく解るのよね?蒼太の隠れ場所って・・・!!」
とメリアリアは本当のことを言ったが実は後二つほど、彼に言っていない事があった、この時の蒼太はまだ、“自身の気配を消す”と言う事が完全には出来ておらずに追跡が容易だった事とー。
毎回のように同じ場所、もしくは似たような場所に隠れる為に極めて探しやすかったのだ。
「だから言ったじゃない?“すぐに解るわ?”って・・・!!!」
「ねえメリー、お願い。もう一回、僕が隠れても良い?」
「うーん・・・?」
とメリアリアは暫くの間、考えるようにしていたモノの、やがて“しょうが無いか!?”と言う顔で言った、“良いわよ?”とそう告げて。
「・・・でも。じゃあ、蒼太も私のお願い、聞いてくれる?また遊んで欲しいな、それも私のお家でね!!?」
「うん、いいよ?僕、メリーのお家でメリーと遊ぶ!!!」
「じゃあ良いかしら?このままここで数えるからね?1、2、3、4、5・・・!!」
「・・・・・!!?」
蒼太からの返答に満足したメリアリアが改めてその場で数を数え始めていると“メリー、メリーッ!!?”と蒼太が小さい声で叫んだ、“あれ見て、あれ!!”とそう言って。
「・・・・・?」
そう言って、メリアリアがカウントを停止して蒼太の指差す方を見てみるとー。
そこにはどこから現れたのか、つい今し方までは確かに影も形も見えなかった、金でも銀でも無い、不思議な金属で出来た装飾品を身に纏った、昔のローマ帝国やギリシア神民国の人々のような出で立ちをした男女の一団が出現していて、その中でも特に見目麗しい若いカップルを先頭に自分達の方へと近付いてくる。
「・・・・・っ!!!」
「・・・・・っ!!?」
カップルの内で女性の方は何か頭からヴェールのようなモノを被っており、胸の辺りには色取り取りの花で形作られているブーケを持っていたモノの、そんな彼等の動向を、蒼太もメリアリアも切り株の後ろに隠れたままで“一体なんなんだろう?”と思わず目を見張って追って行ったが、その一団からは非常に神々しくて清々しい、安らぎに満ち満ちたエネルギーが溢れ出していた。
そして。
そんな彼等の醸し出す“波動”を感じ取った瞬間、蒼太もメリアリアもまるで長い間離れ離れになっていた両親と再会した時のような、郷愁の情に似たような何かを感じていた、悪いものでは絶対に無い、では一体全体、何であろう?と考えて蒼太とメリアリアはしかし、その答を出せずにいたモノの、やがて彼等のちょうど目の前を通り過ぎるような位置にまで来た時に、その一団は立ち止まると、突如として先頭にいた男女のカップルが、前に向かって跪(ひざまず)き、恭しく頭を下げる、すると。
「・・・・・っ!!!」
「・・・・・っ!!?」
その先の空間にまるで、太陽の光線の集中したかのような眩い光の束が差し込んで来たかと思うと、そこからは豊かな顎髭を蓄えし立派な体躯の壮年の人物が姿を現して来ては両手を宙に翳(かざ)して何やらブツブツと、何某かの秘術であろう、文言のようなモノを唱え続ける、すると。
今度はそこに、大きな“月桂樹の冠”と色取り取りの花や枝で編まれている“花のティアラ”とが出現していて、それをその壮年の男性は、やはり聞き慣れない言葉で二人に何事かを語り掛けると、男性には月桂樹の冠を、そして女性には花のティアラを渡して被せると満足げに頷くモノの、蒼太もメリアリアもそれを見た瞬間、何だかとても貴重で大切な体験を、自分達がしているのだと気が付いた、それと同時にー。
何だか胸が熱くなって来た、自分達がとてつもなく有り難いモノを見ているんだ、見せられているんだと言う気になってきたのであるモノの、やがて“儀式”は終わったのか、男女のカップルが立ち上がると揃って後ろを振り向きそのまま、後続の人々に会釈をする。
すると彼等は一斉に二人を囲んでは、何やら聞き慣れない言葉で色々な事を語り掛けるが、何となくその光景からカップルは歓待を受けているのだと言うことが解って来た、そうしているとー。
次の瞬間、信じられない事が起こった、彼等が一斉に自分達の方へと向き直ると同時に優しく微笑んできたのである。
(人の子よ・・・!!!)
「・・・・・っ!!!!!」
「・・・・・っ!!!!?」
(な、なんだ?これは・・・っ!!?)
(頭の中に、直接声が響いて来る!!!)
蒼太とメリアリアは驚いたモノの、しかし彼等は逃げようとはしなかった、彼等は肌で感じ取っていたのである、彼等が自分達に対して害意が全く無い事も、邪な存在等では決して無い事も。
それになにより、彼等の見せた笑顔である、その笑顔は物凄いまでの優しさに満ち溢れていて、決して逃げる必要の無いことを二人に確信させた。
(“運命の番”に選ばれし人の子らよ!!!)
(お主達は、いつの日にか必ず結ばれるであろう!!!)
(可愛い観客さん、お互いを思い合ってね!!!)
そう告げると。
一番先頭のブーケを持っていた女性はそれを、メリアリア目掛けて投げ放ち、それは綺麗な弧を描いてメリアリアの胸中に、そしてその小さな手中にストンッと自然に収まった。
ところが二人がそれに目を奪われていた僅かな間にー。
その一団は霞の如くに消え去ってしまっており、後には風がサァサァ、サァサァと森の中を駆け抜けて行く音が、ただどこまでもどこまでも聞こえて来るだけだった。
「そんなモノを、見たのかね?」
「うん、ビックリしちゃった。ねっ?蒼太!!?」
「うん!!!」
その後。
メリアリアの一度帰った蒼太達は、事の顛末を簡単に夫妻に報告したが、夫妻にもその正体は解らなかった、彼等にはただそれが、嘘偽りでも夢でも無い、と言う事くらいしか解らなかったのである。
「しかし一体、何者であろうな。そのような話は聞いた事が無いからな・・・」
「あんた達の話が嘘じゃ無い事だけは解るよ?ただし私達にもそんな現象の報告は、今まで全く挙がってはいなかったからねぇ・・・!!!」
「失礼いたします・・・」
「ご機嫌麗しゅう、伯爵様、ご夫人様・・・」
そこへ今度は清十郎達が、息子を迎えのためにやって来た、それと言うのは初めて屋敷に招待された折りに彼等は息子が外泊させてもらった挙げ句に車で送ってもらっていたので申し訳無いのと心配の為に遊ぶ際にはこうして必ず、自分達で迎えに来るようにしていたのである。
「やあ清十郎殿、それに楓殿も。ようこそおいで下された」
「ゆっくりしていってちょうだいねぇっ!!!」
とダーヴィデ達はこの新たな来客の為に特に、アフタヌーンティーを用意してもてなしていったモノの、正直に言って最初はメリアリアから話を聞いていて“果たしてどのような人物であろうか?”等と考えていた夫妻であったがいざ実際に会ってみると中々の好人物であり、その性根も息子への思いも立派なモノがある、と認めた為に以降、屋敷への立ち入り、また自分達への接触、謁見も許可しており、それが故に二人はここまでやって来る事が出来たのであった。
「そんな光景を、見たのか!?」
「それは、おそらく・・・」
するとそれを聞いた清十郎と楓とが、何やら目を閉じて考え始めると同時にブツブツと真言を唱えて瞬時に深い瞑想状態に入って行く、それが終わるとー。
二人はゆっくりと瞼(まぶた)を開け放つとお互いに頷き合い、それから蒼太とメリアリアに向き直って告げた。
「それは多分、神々だよ。この西方の大地に住まう神々の一団だ。君達はその神々様方の結婚式を見たのだろう」
「貴方達はね?とても貴重で幸せな場面を目撃したのよ、いつまでもそれを忘れないように・・・!!」
「・・・・・っ!!!!!」
「・・・・・っ!!!!?」
「なるほど、しかし神々の結婚式とは・・・!!」
「そこに思いを至らせられなかったとはね!?」
と蒼太とメリアリアはまた驚愕してしまい、ダーヴィデとベアトリーチェは迂闊だった、と言わんばかりに宙を仰いだ。
「しかしよく、そんな場面を目撃出来たモノだな。普段は絶対に見られるモノでは無いぞ?」
「貴方達は余程運が良いのか、不思議な運命の下に生まれているのか、そのどちらかね?いずれにしても羨ましいわ!!」
と楓達が告げると蒼太達はまた照れ始めてしまい、お互いにお互いをチラチラと見つめるようにするモノの、彼等は単純に嬉しかったのである、蒼太はメリアリアと、そしてメリアリアは蒼太と一緒にまた一つ、素晴らしい体験が出来た事に、そして大切にして貴重な思い出が増えた事実に喜びを禁じ得なかったが、果たして。
「だけど凄い。神様の結婚式ってあんな感じなんだね!!?」
「ねーっ!!?ビックリしちゃったもんね!?凄い厳かで、だけどとっても華やかで、優しくて。凄く心が弾むと同時に穏やかな気持ちになったわ!!!」
そう言って喜びと共に語り合う少年と少女であったがそれを周囲の者達は呆然と見渡していた、一体、この子達はどう言った運命の下に生まれているのであろうかと、人様の人生にも関わらずに興味を禁じ得ないモノの、しかし。
(私達が立てた卦では、蒼太は確かにメリアリア嬢と結ばれる、と出ているのだ。しかし・・・)
(それと同時にあと二人、婚(くな)ぐ女性が現れる、と出ているのだけれど・・・。一体、どう言う事なのかしら?)
“しかもみんな貴族の血筋から出て来るって言う事なんだけど”と清十郎と楓は顔を見合わせて困惑していた、一方で。
ダーヴィデ達もまた戸惑いを覚えていた、と言うのは彼等もまた、蒼太がメリアリアの運命の相手であることは、この時既に熟知しており、そしてそれ以外にもあと二人ほど、妻となる者達が現れて全員で幸せになるであろう、と言うことも、些か度肝を抜かれたモノの承諾はしていたのである。
基本的には彼等はそれでも良いと思っていた、娘は人の本質を見る事の出来る確かな目と感性とを併せ持っていた様子であり、そしてそれは紛う事無き真実であってダーヴィデ達も“この少年ならば安心してメリアリアの事を任せられる”と太鼓判を押していたのであるモノの、ただし。
それとは別に、今回の一件が起きた、確かにメリアリアが神々に懐かしさを感じた、と言うのはまだ解る話なのだ、何故ならば自分達カッシーニ家(ハーズィ)は神の祝福を受けると同時にその願いと力の込められた神宝(かんたから)を送られし一族なのだから。
その身にその血に、その心に。
そしてなによりかによりの話としてはその“霊性なる根源”である“魂”自体にその光を、波動を蓄える事が出来る、即ち“自分のモノとする事が出来る”だけの高貴で確かなる存在だけが、“神によって認められたる者のみが”、生まれ出でる事を許されている、この家の跡継ぎとして生を受けていたのだから。
しかし。
(蒼太君までが何故、我等西方のと言えども“神”に対して懐かしさを抱いたのか?それが解らぬのだ!!)
(確かに日本人は感性が鋭くて礼節に厚い、それは解りやすく言ってしまえば“霊性が高い”と言う事さね。成る程それは解るとしても、しかし問題は別にある。類い稀なる精神性と法力とを兼ね備えているとは言えどもこの子達は、綾壁家の人々は市井な存在のはずだ、一般人にしか過ぎない筈なんだ。そんな彼等が、何故それ程までに・・・?)
ダーヴィデとベアトリーチェにはそこの部分がどうにもよくよく理解できなかったのであるモノの彼等とてまた、全てを知る者等では決して無かったし、そしてそれ故。
蒼太達一族が、大八洲の神々から祝福を受けし“原生日本人の末裔”であった、と言うこと、即ちー。
その願いと祈りのありったけを込めた創造された、神の愛と力とをその身に宿し続けている、人間であると同時に“生きた神宝なのだ”、と言うことを、この時まだ見抜けずにいたのである。
ーーーーーーーーーーーーーーー
ちなみに蒼太君とメリアリアちゃんは、自分達が結婚の約束をしたのは勿論、今回の“神様の結婚式”を見た事も、クラスメイト達等には一切の秘密にしています(言うとまたギャーギャー騒がれかねませんから)、それに秘密は=で火水であり、それはやがて神(カミ)となる、と言う教えが御座います。
二人はそれを知っている為に、そう言った事もあって今回の事も限られた人々にしか言わないようにしているのです(ちなみにメリアリアちゃんは自分が神様からブーケをもらった事や二人が言われた事等は誰にも言っていませんし、蒼太君にも口止めしています)。
敬具。
ハイパーキャノン。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「25、26、27、28、29、30っ!!もーいーかい?」
「まぁーだだよ!!」
「1、2、3、4、5・・・っ!!!」
6月の終わり。
季節はいつの間にかに春を過ぎ、初夏に差し掛かっていた、欧州ではもう少しでサッカーのオフィシャル・リーグが開幕する時期であり、各クラブのファン達サポーターはいやが上にも熱気を高める時期でもあったがこの間、蒼太とメリアリアは。
更にお互いへの関心と共に交流を深めて行った、基本的に、蒼太もメリアリアも授業が終わった後は毎日、家での鍛錬が待っており、特に蒼太のそれは父親である清十郎の強化方針も手伝って日に日に熾烈なモノになっていたのであるモノの、それでも彼は根を上げる事無く黙ってそれに堪え忍び、少しずつ教えをモノにしてはその肉体も精神も、修練の度に逞しいそれらへと徐々に進化、発展して行ったのだ。
一方のメリアリアもまた、それは全く同じであったが片や溢れる才能を、素直に発揮する事が出来る少女と感受性が強くて普段から色々と考え過ぎてしまうために、中々自身の実力を、そのまま用いて現す、と言う事が出来ないでいた少年。
訓練の大変さに自ずと違いが出て来るのは明白であったがしかし、自分の倅(せがれ)の持っている、類い稀なる高い精神性と法力、及び身体的素質を見出していた清十郎はだから、“無理はしないように”としながらも、それでも蒼太の未来を慮(おもんぱか)って出来うる限りの技や心構えと行ったモノを彼に伝えるようにと努め、そして一方の蒼太も蒼太でまた、なんだかんだ言いつつも、その教え、姿勢については共感できる所はあったから、その本質的部分においては彼の伝えたかった事や言いたかった事などを、しっかりとマスターする事が出来ていたのであるモノの、しかし。
「蒼太、毎日大変みたいだけど・・・。私、やっぱりおじさんに一言言って来てあげようか?」
「ううん。全然平気だよ、僕!!それより毎日強くなれてる気がして嬉しいし、もっと頑張らなきゃいけないって思うから・・・っ!!!」
「・・・・・っ。それは!!そうかも知れないけれど」
とある時、蒼太の様子が心配になって尋ねたメリアリアに対する本人次第からの言葉を聞いた瞬間、少女はこの少年の事を、思わずキツく抱き締めてあげたくて、暖かく包み込んであげたくて、そしてこの世の中の全ての苦しみと言う苦しみから守ってあげたくて仕方が無くなってしまっていた、この子をせめて癒してあげたい、生命力を分け与えてあげて、元の燃え盛る命の状態にまで回復させてあげたいと、そんな事を考えるモノのこの時、彼女は蒼太が何だか無茶をしているような気がしてならず、不安が消えなかったのである。
果たしてその予感は的中してしまう、蒼太が毎日続く厳しい訓練の肉体的精神的消耗から、普段滅多に引くことの無い風邪を引いてしまったのだ。
蒼太の病状は思ったよりも酷かったらしく、1週間は絶対安静が医者から厳命される事態となった、それを聞いたメリアリアは単身、蒼太の家に乗り込んだのである、せめて一目だけでも蒼太に会いたかったし、寄り添っていたかった、そして少しでも自分の元気を蒼太に分けてあげたかったのである。
一方で。
彼女はそれだけで済ますつもり等、決して無かった、自分の一番、大切な人を、掛け替えのない幼馴染(ボーイフレンド)をこんな目に合わせた清十郎に、文句を言ってやらねば気が済まないと思っていたのだ、果たして。
清十郎と対面したメリアリアは“どうして蒼太にそんなに辛く当たるんですか!!?”、“蒼太を殺す気ですか!!!”とかなり強い勢いで捲し立てたがー。
それに対する清十郎の答えはただ一つ、“申し訳ない”それだけだったのである。
そこへ蒼太の母親である楓も同席して謝って来た、“こんなつもりでは無かった”、とそう言って。
「ごめんなさい、メリアリアちゃん。貴女にまでそんな心配を掛けさせていたなんて・・・!!!」
「・・・・・っ!!!!!」
そう言って一切の言い訳も無く、二人から真正面から頭を下げられてしまうとメリアリアはもう、それ以上、何も言うことが出来なくなってしまっていた、本当はもっと言いたい事があるはずなのに、それ以上は言い過ぎであると、自然と自省の心が働いたのである。
「蒼太に、会わせて下さいっ!!!」
そう告げるとメリアリアは二人が何事かを言い出す前にはもう、その部屋を飛び出しており、蒼太の寝ている2階の寝室へと歩を進めていったのだった。
「はあっ、はあ・・・っ!!!」
「蒼太っ!!!」
「はあ、はあ・・・っ!!メ、メリー。来ちゃダメだよ、移っちゃうよ・・・?」
「私は平気よ!?それより蒼太が心配だわ、苦しく無い?お水、持ってきてあげよっか!!?」
「はあっ、はあ・・・っ!!う、うん。お水、飲みたい・・・!!」
“待っててね!?”とそれを聞いたメリアリアは今度は1階まで降りると台所を見付けてコップを探し、そのまま洗い場で軽く濯(ゆす)いでから、水をなみなみと注いで蒼太の元へとやって来た。
「お水・・・」
「う、うう~ん・・・」
蒼太は唸りながらも体を起こすとメリアリアがコップに持って来てくれた水をゆっくりと、しかしゴク、ゴク、と喉を鳴らして飲み干して行った。
ちょうど喉が渇いていた事も相俟ってそれは、この世のどんな美酒よりも甘露よりも、今の蒼太には美味しく思えた。
「ゴク、ゴク、ゴクン・・・!!ふうぅぅ。あ、有り難う、メリー・・・!!!」
「もうっ、蒼太ったら。心配したんだからね!!?」
「うん。メリー、有り難う。本当にゴメンね?わざわざ来てもらって・・・!!!」
「ううん、いいのっ。蒼太が無事でいてくれたのなら、私はそれで・・・!!!」
とメリアリアは少し顔を赤らめつつも俯き加減となり、それでもとても嬉しそうにして幼馴染(ボーイフレンド)の横顔をみる。
寝起きだからだろうか、その髪の毛はボサボサに乱れてはいたモノの、、それすらもワイルドな様相を呈しており中々に格好良い。
「だけど蒼太、本当に無茶したらダメよ?おじさんとおばさんには、良く言っておいたからね!!?」
「うん、有り難うメリー。でも僕もう大丈夫だよ、何だかメリーの顔を見てたら、元気が出て来ちゃった!!!」
「・・・・・っ。も、もう蒼太ったら!!!」
“しょうがない人ね!!?”とメリアリアが困った様に微笑みながらもしかし、それでも嬉しそうに照れつつ蒼太に告げるが彼女を喜ばせたのは会話の内容そのものよりも蒼太の体にある元気が実際に少しずつ回復し出しており、それが何だか以前よりも増して強固なモノになって来ているように感じた事と、彼の気持ちが前を向き始めていた事、そしてー。
それに加えてもう一つ、なにより大切だったのが、“彼が本当に無事そうであり”、尚且つそんな彼との間にこうやって“他愛も無い日常的な会話”が出来た事が、彼女にとっては掛け替えのない、最上のそれであったのだ。
そんな事があって後、しかし清十郎も楓も何故か、メリアリアを敬遠する事も無く、むしろ彼女が蒼太と遊んでくれる事を、喜んでいるかのような様相を呈しており、穏やかな笑みを浮かべて二人の事を見守っていたのであるモノの、そう言う訳もあって蒼太もメリアリアも一層、仲睦まじく遊ぶようになり、その回数は月に5回ほどにまで増えて行っていたのである。
「25、26、27、28、29、30っ!!もーいーかい?」
「もーいーよ!?」
“よしっ!!”とその言葉を聞いた蒼太は次の瞬間、弾かれたようにして、寄り掛かっていた木から離れて猛然と駆け出していた。
吹き抜ける風を真ん中を切り裂いて木々の梢を抜けて行き、メリアリアを探し出すのだ。
「はあっ、はあ・・・っ!!」
「・・・・・っ!!!」
(うふふ、蒼太ったら。必死になってる探しちゃってる・・・っ!!!)
幼馴染(ボーイフレンド)のそんな姿が面白くってメリアリアは、笑みを堪えるのに懸命だった、ここはルテティアの森の中であり、家族でピクニックに来たり、鍛錬で使ったりしていた為に蒼太にとってもメリアリアにとっても良く知っている地相であり、情景であったのだ。
だから。
「・・・・・っ!!?」
「・・・・・っ!!!」
(メリー、どこだろう?)
(こっちよ?蒼太・・・!!!)
二人は互いに感覚を研ぎ澄ませては知恵を絞り、体を動かして彼方此方へと移動しては蒼太は物陰に注意を払い、またメリアリアはその隙を突いて死角を利用し、発見されるのを防いでいた。
「はあっ、はあ・・・っ!!?」
「はあっ、はあ・・・っ!!!」
蒼太は夢中になってメリアリアを探し、メリアリアは見付かるまいと上手に隠れる、本当は早く見付けて欲しいのに、誰よりもなによりも先に探し出してほしいのに、だけど必死になって自分を見付け出そうとしてくれている少年の姿が尊くて、もっともっと見ていたくて。
そしてなによりかによりの話としては、彼のその、自分に向けてくる懸命さがこれ以上、無いほどに眩しくってついついメリアリアはその焦燥をグッと堪えて木陰の淵へと身を潜めるのである、・・・“私はここよ!!?”と心の中で、蒼太に聞こえますようにと、蒼太が見付けてくれますようにと、強く強く念じながら。
すると。
「メリーッ!!!」
「見付かっちゃったわ!!!」
まるでそんな彼女の願いに反応するかのようにして、蒼太が一直線に彼女の元へとやって来た、“ここにいるような気がしたんだ!!?”とそう言って。
「そしたらメリー、木から半分見えてたもん!!それで解ったの!!!」
「あん、もうっ。私ったらおドジさんね!!?」
とメリアリアは明るい声でクスクス笑うモノの、その笑顔が本当に楽し気で、幸せそうで、蒼太もまたとっても嬉しい気分になって来て、気が付くとついつい二人で声を挙げて笑い転げてしまっていた、蒼太もメリアリアも、幼いながらに解っていたのである、自分達が今、特別な瞬間に生きている事、そしてこんな瞬間がずっと続いてくれたら良いな、と自分自身が心の底から思っている事を、即ち満たされているのだ、と言う事を何となくではあったモノの、彼等は理解していたのである。
そして。
だからこそ、“メリーはどう思っているのだろう?”、“この子はどう思っているのかしら?”と、蒼太はメリアリアの事が、そしてメリアリアは蒼太の事が気になって仕方が無く、だからお互いに“相手もそうだったら良いのにな”と同じ事を願わずにはいられなかったのであった。
「じゃあ・・・。次は私の番ね!?蒼太は隠れて良いわよ!!!」
「よーし。僕、絶対に見付けられない所に隠れるっ!!!」
「あらっ!!?」
とその言葉にメリアリアは、興味深そうに微笑んだ。
「本当かしらっ?蒼太ってば凄く解りやすいんだから!!!」
「ううん、違うよ!?そんなこと、絶対に無いもん!!!」
「違わくないわよ、すぐに見付けてあげるんだから!!じゃあ、数えるからね?いーい?1、2、3、4、5・・・!!!」
「うわわわわっ!!?」
大変だと、蒼太は気が付いた、こんな事をしている場合では無かった、メリアリアが数え終わるまでに急いで隠れなければならないのである。
(ど、どこに隠れようか・・・?)
蒼太はキョロキョロと辺りを見渡した、勿論、メリアリアと同じ場所はダメだ、そんな事は彼のプライドが許さない。
かと言って木の上、30メートル以上(と言ってもあくまで感覚的なそれであったが)離れる事等は禁止されている、約束はキチンと守らなくてはならなかった。
「15、16、17、18・・・っ!!!」
(ま、まずいまずいっ!!!)
焦った蒼太は咄嗟に直ぐ側にあった木の切り株の根っこの向こう側に姿を隠した、ここならば回り込まれない限りかは、絶対に見付かるはずが無いと、蒼太はタカを括っていたのだが、一方で。
(だけどメリーは勘が鋭いからなぁ・・・っ!!!)
とも考えていた、油断しているとアッという間に見付かってしまい、それでは格好が付かなかった、幼い頃の男の子と言うのは、こう言うどうでも良いところで妙なプライドを発揮するのであって、蒼太もご多分に漏れずにおり、つまりはこの場合、言ったことを実行する事が(要するにメリアリアに簡単に見付けられない場所に隠れる事こそが)格好良く映る事だったのである。
だから。
「25、26、27、28、29、30っ!!もーいーかい?」
「もーいーよ!?」
その言葉を合図にメリアリアが捜しに来た時、蒼太は息を殺していた、やがてー。
タッ、タッ、タッ、タッとメリアリアの足音が近付いてくると同時に心臓がドキンドキンといい始める、彼女が周囲を探し回っている事が解ると嬉しい反面、見付かる事が悔しくて、自分が情け無い存在みたいに思えてしまっていた。
だけど。
「・・・・・!!!」
(あ、あれえぇぇ・・・!!?)
蒼太はおかしいと思った、メリアリアの気配は直ぐ側からすると言うのに、いつになっても“みーつけた”と言いに来ない、どうしたものか?と蒼太が後ろを向いた瞬間ー。
そこには満面の笑みで蒼太を見つめるメリアリアがいた、その顔は明らかに今、蒼太を見付けたものでは決して無かった、彼女はさっきからとっくに蒼太を見付けており、それを言うのを今か今かと待っていたのである。
「あ、ああ・・・っ!!!」
「蒼太、見ー付っけ!!はい、私の勝ち!!!」
「うう~ん・・・っ!!!」
と蒼太はこの少女に見付かった事が、見付けてもらえた事が嬉しい反面、こんなに早く見付かってしまった自身の不甲斐なさが悔しくて情け無くなってしまい、思わず呻いて悶絶してしまっていた。
「ねぇメリー、いつも僕の隠れた場所って、なんで解るの?」
「ふふーん、内緒っ!!!って言うか、何となく解るのよね?蒼太の隠れ場所って・・・!!」
とメリアリアは本当のことを言ったが実は後二つほど、彼に言っていない事があった、この時の蒼太はまだ、“自身の気配を消す”と言う事が完全には出来ておらずに追跡が容易だった事とー。
毎回のように同じ場所、もしくは似たような場所に隠れる為に極めて探しやすかったのだ。
「だから言ったじゃない?“すぐに解るわ?”って・・・!!!」
「ねえメリー、お願い。もう一回、僕が隠れても良い?」
「うーん・・・?」
とメリアリアは暫くの間、考えるようにしていたモノの、やがて“しょうが無いか!?”と言う顔で言った、“良いわよ?”とそう告げて。
「・・・でも。じゃあ、蒼太も私のお願い、聞いてくれる?また遊んで欲しいな、それも私のお家でね!!?」
「うん、いいよ?僕、メリーのお家でメリーと遊ぶ!!!」
「じゃあ良いかしら?このままここで数えるからね?1、2、3、4、5・・・!!」
「・・・・・!!?」
蒼太からの返答に満足したメリアリアが改めてその場で数を数え始めていると“メリー、メリーッ!!?”と蒼太が小さい声で叫んだ、“あれ見て、あれ!!”とそう言って。
「・・・・・?」
そう言って、メリアリアがカウントを停止して蒼太の指差す方を見てみるとー。
そこにはどこから現れたのか、つい今し方までは確かに影も形も見えなかった、金でも銀でも無い、不思議な金属で出来た装飾品を身に纏った、昔のローマ帝国やギリシア神民国の人々のような出で立ちをした男女の一団が出現していて、その中でも特に見目麗しい若いカップルを先頭に自分達の方へと近付いてくる。
「・・・・・っ!!!」
「・・・・・っ!!?」
カップルの内で女性の方は何か頭からヴェールのようなモノを被っており、胸の辺りには色取り取りの花で形作られているブーケを持っていたモノの、そんな彼等の動向を、蒼太もメリアリアも切り株の後ろに隠れたままで“一体なんなんだろう?”と思わず目を見張って追って行ったが、その一団からは非常に神々しくて清々しい、安らぎに満ち満ちたエネルギーが溢れ出していた。
そして。
そんな彼等の醸し出す“波動”を感じ取った瞬間、蒼太もメリアリアもまるで長い間離れ離れになっていた両親と再会した時のような、郷愁の情に似たような何かを感じていた、悪いものでは絶対に無い、では一体全体、何であろう?と考えて蒼太とメリアリアはしかし、その答を出せずにいたモノの、やがて彼等のちょうど目の前を通り過ぎるような位置にまで来た時に、その一団は立ち止まると、突如として先頭にいた男女のカップルが、前に向かって跪(ひざまず)き、恭しく頭を下げる、すると。
「・・・・・っ!!!」
「・・・・・っ!!?」
その先の空間にまるで、太陽の光線の集中したかのような眩い光の束が差し込んで来たかと思うと、そこからは豊かな顎髭を蓄えし立派な体躯の壮年の人物が姿を現して来ては両手を宙に翳(かざ)して何やらブツブツと、何某かの秘術であろう、文言のようなモノを唱え続ける、すると。
今度はそこに、大きな“月桂樹の冠”と色取り取りの花や枝で編まれている“花のティアラ”とが出現していて、それをその壮年の男性は、やはり聞き慣れない言葉で二人に何事かを語り掛けると、男性には月桂樹の冠を、そして女性には花のティアラを渡して被せると満足げに頷くモノの、蒼太もメリアリアもそれを見た瞬間、何だかとても貴重で大切な体験を、自分達がしているのだと気が付いた、それと同時にー。
何だか胸が熱くなって来た、自分達がとてつもなく有り難いモノを見ているんだ、見せられているんだと言う気になってきたのであるモノの、やがて“儀式”は終わったのか、男女のカップルが立ち上がると揃って後ろを振り向きそのまま、後続の人々に会釈をする。
すると彼等は一斉に二人を囲んでは、何やら聞き慣れない言葉で色々な事を語り掛けるが、何となくその光景からカップルは歓待を受けているのだと言うことが解って来た、そうしているとー。
次の瞬間、信じられない事が起こった、彼等が一斉に自分達の方へと向き直ると同時に優しく微笑んできたのである。
(人の子よ・・・!!!)
「・・・・・っ!!!!!」
「・・・・・っ!!!!?」
(な、なんだ?これは・・・っ!!?)
(頭の中に、直接声が響いて来る!!!)
蒼太とメリアリアは驚いたモノの、しかし彼等は逃げようとはしなかった、彼等は肌で感じ取っていたのである、彼等が自分達に対して害意が全く無い事も、邪な存在等では決して無い事も。
それになにより、彼等の見せた笑顔である、その笑顔は物凄いまでの優しさに満ち溢れていて、決して逃げる必要の無いことを二人に確信させた。
(“運命の番”に選ばれし人の子らよ!!!)
(お主達は、いつの日にか必ず結ばれるであろう!!!)
(可愛い観客さん、お互いを思い合ってね!!!)
そう告げると。
一番先頭のブーケを持っていた女性はそれを、メリアリア目掛けて投げ放ち、それは綺麗な弧を描いてメリアリアの胸中に、そしてその小さな手中にストンッと自然に収まった。
ところが二人がそれに目を奪われていた僅かな間にー。
その一団は霞の如くに消え去ってしまっており、後には風がサァサァ、サァサァと森の中を駆け抜けて行く音が、ただどこまでもどこまでも聞こえて来るだけだった。
「そんなモノを、見たのかね?」
「うん、ビックリしちゃった。ねっ?蒼太!!?」
「うん!!!」
その後。
メリアリアの一度帰った蒼太達は、事の顛末を簡単に夫妻に報告したが、夫妻にもその正体は解らなかった、彼等にはただそれが、嘘偽りでも夢でも無い、と言う事くらいしか解らなかったのである。
「しかし一体、何者であろうな。そのような話は聞いた事が無いからな・・・」
「あんた達の話が嘘じゃ無い事だけは解るよ?ただし私達にもそんな現象の報告は、今まで全く挙がってはいなかったからねぇ・・・!!!」
「失礼いたします・・・」
「ご機嫌麗しゅう、伯爵様、ご夫人様・・・」
そこへ今度は清十郎達が、息子を迎えのためにやって来た、それと言うのは初めて屋敷に招待された折りに彼等は息子が外泊させてもらった挙げ句に車で送ってもらっていたので申し訳無いのと心配の為に遊ぶ際にはこうして必ず、自分達で迎えに来るようにしていたのである。
「やあ清十郎殿、それに楓殿も。ようこそおいで下された」
「ゆっくりしていってちょうだいねぇっ!!!」
とダーヴィデ達はこの新たな来客の為に特に、アフタヌーンティーを用意してもてなしていったモノの、正直に言って最初はメリアリアから話を聞いていて“果たしてどのような人物であろうか?”等と考えていた夫妻であったがいざ実際に会ってみると中々の好人物であり、その性根も息子への思いも立派なモノがある、と認めた為に以降、屋敷への立ち入り、また自分達への接触、謁見も許可しており、それが故に二人はここまでやって来る事が出来たのであった。
「そんな光景を、見たのか!?」
「それは、おそらく・・・」
するとそれを聞いた清十郎と楓とが、何やら目を閉じて考え始めると同時にブツブツと真言を唱えて瞬時に深い瞑想状態に入って行く、それが終わるとー。
二人はゆっくりと瞼(まぶた)を開け放つとお互いに頷き合い、それから蒼太とメリアリアに向き直って告げた。
「それは多分、神々だよ。この西方の大地に住まう神々の一団だ。君達はその神々様方の結婚式を見たのだろう」
「貴方達はね?とても貴重で幸せな場面を目撃したのよ、いつまでもそれを忘れないように・・・!!」
「・・・・・っ!!!!!」
「・・・・・っ!!!!?」
「なるほど、しかし神々の結婚式とは・・・!!」
「そこに思いを至らせられなかったとはね!?」
と蒼太とメリアリアはまた驚愕してしまい、ダーヴィデとベアトリーチェは迂闊だった、と言わんばかりに宙を仰いだ。
「しかしよく、そんな場面を目撃出来たモノだな。普段は絶対に見られるモノでは無いぞ?」
「貴方達は余程運が良いのか、不思議な運命の下に生まれているのか、そのどちらかね?いずれにしても羨ましいわ!!」
と楓達が告げると蒼太達はまた照れ始めてしまい、お互いにお互いをチラチラと見つめるようにするモノの、彼等は単純に嬉しかったのである、蒼太はメリアリアと、そしてメリアリアは蒼太と一緒にまた一つ、素晴らしい体験が出来た事に、そして大切にして貴重な思い出が増えた事実に喜びを禁じ得なかったが、果たして。
「だけど凄い。神様の結婚式ってあんな感じなんだね!!?」
「ねーっ!!?ビックリしちゃったもんね!?凄い厳かで、だけどとっても華やかで、優しくて。凄く心が弾むと同時に穏やかな気持ちになったわ!!!」
そう言って喜びと共に語り合う少年と少女であったがそれを周囲の者達は呆然と見渡していた、一体、この子達はどう言った運命の下に生まれているのであろうかと、人様の人生にも関わらずに興味を禁じ得ないモノの、しかし。
(私達が立てた卦では、蒼太は確かにメリアリア嬢と結ばれる、と出ているのだ。しかし・・・)
(それと同時にあと二人、婚(くな)ぐ女性が現れる、と出ているのだけれど・・・。一体、どう言う事なのかしら?)
“しかもみんな貴族の血筋から出て来るって言う事なんだけど”と清十郎と楓は顔を見合わせて困惑していた、一方で。
ダーヴィデ達もまた戸惑いを覚えていた、と言うのは彼等もまた、蒼太がメリアリアの運命の相手であることは、この時既に熟知しており、そしてそれ以外にもあと二人ほど、妻となる者達が現れて全員で幸せになるであろう、と言うことも、些か度肝を抜かれたモノの承諾はしていたのである。
基本的には彼等はそれでも良いと思っていた、娘は人の本質を見る事の出来る確かな目と感性とを併せ持っていた様子であり、そしてそれは紛う事無き真実であってダーヴィデ達も“この少年ならば安心してメリアリアの事を任せられる”と太鼓判を押していたのであるモノの、ただし。
それとは別に、今回の一件が起きた、確かにメリアリアが神々に懐かしさを感じた、と言うのはまだ解る話なのだ、何故ならば自分達カッシーニ家(ハーズィ)は神の祝福を受けると同時にその願いと力の込められた神宝(かんたから)を送られし一族なのだから。
その身にその血に、その心に。
そしてなによりかによりの話としてはその“霊性なる根源”である“魂”自体にその光を、波動を蓄える事が出来る、即ち“自分のモノとする事が出来る”だけの高貴で確かなる存在だけが、“神によって認められたる者のみが”、生まれ出でる事を許されている、この家の跡継ぎとして生を受けていたのだから。
しかし。
(蒼太君までが何故、我等西方のと言えども“神”に対して懐かしさを抱いたのか?それが解らぬのだ!!)
(確かに日本人は感性が鋭くて礼節に厚い、それは解りやすく言ってしまえば“霊性が高い”と言う事さね。成る程それは解るとしても、しかし問題は別にある。類い稀なる精神性と法力とを兼ね備えているとは言えどもこの子達は、綾壁家の人々は市井な存在のはずだ、一般人にしか過ぎない筈なんだ。そんな彼等が、何故それ程までに・・・?)
ダーヴィデとベアトリーチェにはそこの部分がどうにもよくよく理解できなかったのであるモノの彼等とてまた、全てを知る者等では決して無かったし、そしてそれ故。
蒼太達一族が、大八洲の神々から祝福を受けし“原生日本人の末裔”であった、と言うこと、即ちー。
その願いと祈りのありったけを込めた創造された、神の愛と力とをその身に宿し続けている、人間であると同時に“生きた神宝なのだ”、と言うことを、この時まだ見抜けずにいたのである。
ーーーーーーーーーーーーーーー
ちなみに蒼太君とメリアリアちゃんは、自分達が結婚の約束をしたのは勿論、今回の“神様の結婚式”を見た事も、クラスメイト達等には一切の秘密にしています(言うとまたギャーギャー騒がれかねませんから)、それに秘密は=で火水であり、それはやがて神(カミ)となる、と言う教えが御座います。
二人はそれを知っている為に、そう言った事もあって今回の事も限られた人々にしか言わないようにしているのです(ちなみにメリアリアちゃんは自分が神様からブーケをもらった事や二人が言われた事等は誰にも言っていませんし、蒼太君にも口止めしています)。
敬具。
ハイパーキャノン。
0
お気に入りに追加
87
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

彼を追いかける事に疲れたので、諦める事にしました
Karamimi
恋愛
貴族学院2年、伯爵令嬢のアンリには、大好きな人がいる。それは1学年上の侯爵令息、エディソン様だ。そんな彼に振り向いて欲しくて、必死に努力してきたけれど、一向に振り向いてくれない。
どれどころか、最近では迷惑そうにあしらわれる始末。さらに同じ侯爵令嬢、ネリア様との婚約も、近々結ぶとの噂も…
これはもうダメね、ここらが潮時なのかもしれない…
そんな思いから彼を諦める事を決意したのだが…
5万文字ちょっとの短めのお話で、テンポも早めです。
よろしくお願いしますm(__)m
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる